あの作品のキャラがルイズに召喚されました @ ウィキ

おかしな使い魔

ルイズはこの上なく緊張していた。
この儀式、サモン・サーヴァントだけは失敗するわけにはいかない。サモン・サーヴァントさえ失敗するようなら、
皆が…なによりルイズ自身が、ルイズを魔法使いだとは認められなくなってしまう。
「始祖ブリミルよ…私は今まで、誰よりも真面目に勉強しました。魔法の修練だって、一日も休まずにこなしてきました」
ルイズは桃色の髪を翻らせて、杖を掲げる。
「だから、この儀式だけは、サモン・サーヴァントだけは!成功させてください!」
ルイズは呪文を唱えて、勢いよく杖を振り下ろした。
あたりに、盛大な爆音が響き渡る。

煙の中から、こんもりした何かの山が姿を現した。

またいつもの通り失敗か。そう思って口を開こうとした生徒達の間に、ざわめきが生まれた。
「見ろよ、ゼロのルイズが…何だあれ?」
「マジックアイテムか?石か何かみたいな大きさだが」
「生きてるのか?山になってるぞ」
ルイズは召喚が『一応』成功した事に安堵しながら、自分でもそれが何なのか分からず、
すがるようにコルベールへと視線を送る。コルベールは未整理ながらも、自説を語り始めた。
「えー…ミス・ヴァリエール。あれが何なのか、私にもわかりません。一つ一つが生きてはいないようですが、
何らかの魔法に近い力はあるようです。ですから、あれは使い魔たる要件を満たす存在であろう、と私は判断します。
おそらくは群体生命といってさしつかえないのではと考えられますので、
そのうちのどれか一つと契約を行ってください。それで『コントラクト・サーヴァント』は完了するでしょう」
長ったらしいコルベールの解説にため息で答えて、ルイズはあらためて『それ』に向き直った。
薄茶色の本体の上に、こげ茶色の染料が塗られている。かすかに嗅いだ事のない甘い匂いが漂ってきて、
それが未知のアイテムである事をうかがわせた。
「ルイズちゃん、やればできるんだね。こんな使い魔、見たことも聞いたこともないよ」
『それ』に向き合い値踏みするルイズの戸惑いを察知したのか、
大きな杖を持った少女がルイズを励ました。
「シャルロット…」
シャルロットは、笑顔の似合う優等生。
魔法が使えずバカにされていたルイズを何度となく励ましてくれた、
ルイズの唯一の『親友』なんだろうとルイズが勝手に思っている、そんな存在。
「ルイズちゃんが召喚したんだから、きっとすごい使い魔になるんだと思うよ。卵か何かかな?」
「だといいんだけど」
シャルロットの快活さにわずかに励まされたルイズは、
自らの呼び出した謎の石と契約するべく、歩を進めた。
意外と軽く柔らかかったそれを掌にのせ、契約の呪を唱え、口付ける。
顔を近づけたルイズは、その石の甘い香りに気がついた。もしかしたら、これは何かお菓子のようなものなのだろうか?
使い魔のルーンが刻まれ、コントラクト・サーヴァントは滞りなく終了した…かに見えた。
だが次の瞬間。なんと『それ』がみるみる膨らみ、ついには二つに分裂し始めたではないか!
「え、えええ!?」
あぜんとするルイズをよそに、残りの『それ』にもルーンが刻まれ、二つは四つに、四つは八つに、八つは十六個に…
草原の上の小山が、みるみる大きくなってゆく。
その様子を見ていた生徒達はまず反射的に笑い転げた。
「見ろよ!初っ端から使い魔を暴走させてるぜ!」
「さすがルイズ、無機物の使い魔すら制御できないのか!」
生徒達がルイズを嘲笑する間にも、『それ』は分裂を繰り返し、無軌道に増殖を続ける。
「これは…まずいかもしれませんね。ちょっと、皆さんは下がっていなさい」
ようやく事態に気付いたコルベールが、巨大なファイヤーボールを『それ』にぶつけたが、
炭化した部分の体積はそのままに、みるみるうちに元の薄茶色とこげ茶色の石が全てを覆いつくし、
また何事もなかったかのように分裂は再開。
いつのまにか、その柔らかい石は魔法学院の中庭を埋め尽くすまでに増殖していた。

柔らかい石のような使い魔。彼には本当の名前がある。

そう、生を受けた世界で彼は「くりまんじゅう」と。そう呼ばれていた。



ガリア王ジョゼフの待つリュティスの王城に風竜が降り立ったのは、間もなくの事であった。
「た、大変なのね!魔法学院でおかしな使い魔が召喚されて、それで、どんどん増えて、
そろそろこっちにも来ちゃいそうなの!」
「なんだと!魔法学院からここまでか?」
「シャルロットは!シャルロットは無事なのかい!?」
「大丈夫なのね、全部やっつけられるほどゆっくりじゃないけど、押し潰されるほど早くもないのね」
一通りの状況を掴んだジョゼフは、いかに対処すべきかと知恵を働かせ始めた。
その傍らでしきりに頭をかいているのは、オルレアン公シャルル。
ガリア王ジョゼフの弟であり、王を影に日向に支えてきた人物。シャルロットの父でもある。
「それにしたって僕の娘が、そして世界が大変なのは間違いない!兄さん、一緒に来てくれるかい?」
「当然だ、我が弟。我らには…」
ジョゼフはそこで言葉を切り、玉座の裏から奇妙な形の箱を二つ取り出して、にやりと笑った。
それを見たシャルルはわが意を得たとばかりに頷くと、重々しい決意の篭った声で呟いた。
「自分の力ではどうしようもない時…ド・ラ・エモンの言ったその時がついに来たんだね、兄さん」



魔法学院は、既にそのほとんどをくりまんじゅうによって埋め尽くされていた。
魔法の使えないルイズや使用人たちは分裂が起こるたびに右往左往し、
その上に浮かんだ生徒や教師が魔法を使って何とか事態を収拾しようとするが、
圧倒的なくりまんじゅうの物量の前になすすべもなくただ浮いている、そんな状況である。
そんな状況の中。空中に桃色の扉が現れて、二人の人物が飛び出した。
言わずと知れたガリア王ジョゼフと、オルレアン公シャルル。
シャルルの箱から取り出された「どこでもドア」が、二人を一瞬にして魔法学院に誘ったのだ。
二人は空中から状況を俯瞰し、その圧倒的な物量に言葉を失う。
「これは…」
さすがのジョゼフも、どう対処していいのかわからない。
「兄さん、どうしたらいいんだろう!?」
「心配するな、ド・ラ・エモンはこんな時のために、おれにもこれを残して行ってくれたのだ」
そう言ったジョゼフは、小脇に抱えた奇妙な形の箱を置くと、蓋を開いた。
中にあったのは、円筒形の太く短い棒のようなもの。杖にしてはすこし太すぎるような気がするが…
ジョゼフは迷うことなくそれを掴み、天高く掲げて雄叫びを上げた。
「ビッグライト~!」
それが収まっていたその脇には、ハルケギニアの文字で「ビッグライト」と書かれているようだ。
二人はたがいにその光を浴びせあい、学院の塔のその上まで届く高さにまで巨大化し、
そして、学院中に広がったくりまんじゅうをわしづかみにして、食べ始めた。

殲滅が始まった。そのやわらかい物体をお菓子と睨んだジョゼフの推測は、どうやら当を得ていたらしい。
だが、あまりに量が多いために、殲滅は遅々として進まない。
「兄さん、僕らだけじゃ食べきれないよ!」
「困ったな、おれもだんだん腹いっぱいになってきたぞ」
弱音を吐いた二人の前に、呆然と父の姿を凝視していたシャルロットが現れた。
「何をしてるの?」
「おおーシャルロット!いいところに来た!何か知恵はないか?」
「うむ、このお菓子を殲滅せんと二人で頑張ってるわけなのだが…そろそろ限界が近くてな」
「なーんだ、簡単だよ。二人でダメなら、皆で食べればいいじゃない」
満腹の腹に無理やりくりまんじゅうを押し込んでいた二人は、思わず顔を見合わせた。
「ははは、そうか!ここには立派な貴族たちがたんといらっしゃるじゃないか!一緒に世界を救ってもらえばいいんだね!」
「よし、シャルロット、この『ビッグライト』を使って、皆さんに協力してもらいなさい」
「うん!」
シャルロットはビッグライトを受け取って、魔法学院の教師・生徒たちに事情を説明し始めた。
男子を中心に志願者が多く集まり、次々とライトの光を浴びては、くりまんじゅう殲滅に参加してゆく。

そんな中、マリコルヌは志願者に加わらず、とあるチャンスを一心に待っていた。
そう。聡明な男子なら既にお気づきであろう、『見える』瞬間。
ビッグライトの光を浴びた女子が無防備にスカートの下を曝け出し、
巨大なレース編みのそれを拝む、ただその一瞬のためにマリコルヌは名誉を捨てた。
マリコルヌの心臓が早鐘を打ち、いまかいまかとその瞬間を待ち構える。
しかし、マリコルヌは見落としていたのだ。
ビッグライトを使うのがシャルロットであり、シャルロットは実に聡明な女子であるという事実を。
すなわち、シャルロットはマリコルヌに視線を走らせ、男子だけを巨大化させた。
巨大化したマリコルヌは、その憤りを全てくりまんじゅうにぶつけた。否、そうするしか、なかった…。

こうして、くりまんじゅうは跡形もなく消え去った。
だが、ゼロのルイズがいるかぎり、第二第三のくりまんじゅうが召喚されないという保証はどこにもないのだ。
「兄さん、何とかなったね。これからも、一緒に頑張っていこうね」
「ああ。何と言っても、ド・ラ・エモンとの約束だからな。皆、仲良くしないと…な」
ド・ラ・エモン。君が出て行って、おれの部屋はがらんとしちゃったよ。今日も君がいてくれたらって何度思ったかもしれない。
でも、おれが守る。君が素敵だって言ってくれたこの世界を、おれが絶対に守るから。
だから安心して、ノビ・ノビタ君のそばにいてやってくれよな。

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