あの作品のキャラがルイズに召喚されました @ ウィキ

ゼロのおかあさん-3

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食器を片付け戻ってきた時ものの、荒垣とルイズは沈黙したまま時を過ごしていた。
ちなみに、ルイズはベットの上。荒垣はちゃっかり椅子に座っている。
普段のルイズだったら、ここぞとばかりに主従関係を叩き込むのだが、今回はそうもいかない。
睨み合いで無念の敗北。その後自室まで運ばれ、下手すれば食べ損なっていた夕食も食べる事が出来た。
もとを辿れば睨んだ荒垣が悪いような気もするが、その後の処理をしたのも荒垣。
上手に出るか様子を見るべきか。心の中の天秤で比べてみたものの、考えれば考えるほど後者のほうに傾く。
そもそも、召喚した後はまともな会話すらしていない気がする。
「えっと、あんたは……その……へ、平民……なのよね」
ルイズの問いに、少し間を置いてから荒垣は口を開く。
「この世界で言えば、そうなるわな」
その特殊な言い回しに首を傾げるルイズだったが、平民であったと言う事実のほうが重要だったため聞き流す。
「なら、私はあんたより立場が上なのもわか……る?」
強く出ようとしたが、どうにも視線を合わせながらだと上手くいかない。
このままでは、荒垣が帰ってくるまで頭に思い描いた予想図から大きく外れてしまう。
見えないように深呼吸し、普段通りの自分を思い出して言葉を紡ぐ。
「私は貴族。あんたは平民。で、普段ならこうして私の部屋にいるのも失礼に当たるの。
  けど、あんたはあたしの使い魔だから、と、特別にここにいても良いのよ!
  もちろん、あんたがここにいる条件として色々してもらうわ! だって使い魔だもの!
  その代わり、あんたの衣食住をこの私が責任持って面倒見る。使い魔の面倒を見るのは当然だから!
  えっと、それから、使い魔だから……たしか、あっと、ととと、とにかく、あんたは私の使い魔って事!」
始めの頃は文として成り立っていたが、一気に捲し立てたため、後半部分はややおかしくなってる。
全てを吐き出して肩で息するルイズを尻目に、荒垣は動作なく立ち上がると、ルイズの眼前まで迫った。
あまりの圧迫感に、ルイズの呼吸はますます荒くなっていく気がした。
それでも、負けるものかと必死になって荒垣を見上げてみる。
「な、なによ!?」
「具体的に、俺は何をすりゃあいい」
「は?」
当たり前と言えば当たり前とも言える質問に対し、思わずキョトンとしてしまうルイズ。
だが、即座に頭を振るって気を取り直す。
後で改めて伝えようとしていた事だが、本人が尋ねてきたのなら都合がいい。
「まず第一に、主の目となり耳となり、その五感が主と……繋がらないわね」
「そうみたいだな」
「だ、第二に秘薬のための材料を探す事。けど、これは構わないわ」
「あ?」
「しゅ、主人が構わないって言ってるんだから口答えしない! それより、三つ目が一番重要なんだけど……」
そっと荒垣を盗み見る。睨みつけられると正直怖いが、それぐらいだろう。
他の貴族の男子に比べれば逞しそうだが、魔法が使えないのでは意味が無い。
「主人を守るって言う事なんだけれど、あんた何か出来る?」
ほんの少しだけ荒垣の瞼が吊り上ったが、特に何かするでもなく両手を上着に突っ込んだ。
「……何も無いな」
「そう……ま、期待はしてなかったから諦めるわ。しっかしあんた見た目ほど使えないのね」




この頃には、ルイズも元の調子を殆ど取り戻していた。
だがら気付かなかったのかもしれない。目の前で静かに怒りを蓄えている男の眼差しを。
あと何度か偉そうにしたら最後、召喚した時と同じ目に会うと気付いておらず、ルイズは服を脱ぎ始めた。
「おい、なにしてんだおめぇは」
「着替えよ……って言うか、あんた私のことおめぇとか言うのやめなさい。ご主人様でしょ」
背中を向けて着替えていたため、荒垣の叱るような視線にも全く気付けない。
そうこうしているうちに、ルイズは着替えた服と下着を荒垣の背中に投げつける。
「んだこりゃ?」
「それ、明日の朝洗濯しといてよね。あんたのせいで余計な洗濯物増えたみたいだし。使い魔なんだから当然よ」
最後までこちらに顔を見せぬまま、ルイズは再び布団を被った。
もしかしたらルイズの本能が恐怖を覚えて、それで顔を見せなかったのかもしれないが、後の祭りだ。
「おい」
「ああ、そこにある毛布を特別に使わせてあげるわ。ありがたく思いなさい」
適当に方向を差したルイズの指に、なにやら硬い感触が当たる。
何かと思ってルイズが視線を移動させると、そこには無表情ながらも睨みつける荒垣の姿があった。
「ひっ」
あまりの恐ろしさに、ルイズの喉から小さな悲鳴が漏れる。
その様子を見て、荒垣はなにをするでもなく、ただゆっくり顔を近づけて呟いた。
「言葉が足りなかったみてぇだな」
「……っ」
視線を逸らそうにも身体が動かない。金縛りにでもあったようだ。
荒垣の瞳に映ったルイズの顔は、自分が予想したよりも遥かに怯えていた。
「俺は『衣食住の面倒』の代わりに『何をすりゃあいい?』と聞いたんだ。
  断っておくが、てめぇの使い魔とやらになるとは一言も口にしちゃいねぇ」
「なん――」
文句を飛ばそうとするが、いつの間にか喉が渇いて唇が上手く動かない。
そうこうしている間に、荒垣は床にあった毛布と洗濯物を詰め込んだ籠を手にとると扉へと手を掛けた。
「とりあえず、洗濯はしてやるし明日はきちんと起してやる。じゃあな」
「ぁ――」
ルイズが文句を並べる隙を与えず、荒垣は扉の向こう側へと消えていった。
いなくなった途端、体中の金縛りが解けて血が一気に巡る感覚を覚える。
「な、な、な……なんなのよあの態度!」
怖がっていたの事よりも、あの態度に腹を立てる気持ちのほうが前に出た。
「あれだけすんなり話を聞いていたくせに、最後の最後で反抗的になるなんて!
  ししし、しかも「使い魔にならない」ですって!? そんな事認める訳ないじゃない!」
荒れに荒れたルイズは、悔しそうに枕を叩いた。
(せっかく召喚できた使い魔があんなのなんて!)
だからルイズは気付かなかった。
どうして荒垣がすんなりこの世界を認めたのかも、それを一切語らなかった事も。



    ▽    ▽    ▽



辺りが静まり返っている中、荒垣は月を見上げながら一人建物の外に立っていた。
「月が二つたぁ、あいつらが聞いたらいやな顔するだろうな」
その顔には、先程見せたような怒りの感情は見当たらない。
一呼吸置くと、荒垣は夜露をしのげそうな場所を探し始めた。
歩くついでに、荒垣は改めて現在の状況を確かめる。
「ロングビルって女も、シエスタって嬢ちゃんも、嘘をついてた訳じゃなかったんだな」
二人とも先程のルイズと同じような『貴族と平民』の関係を話してくれた。

曰く、この世界では魔法が使えるものが貴族である。
曰く、魔法が使えない人間は平民となり貴族に従う。
曰く、この場所はその貴族たちを育てる学校である。
曰く、荒垣はその貴族の一人であるルイズに召喚され使い魔となった。

あまりにも突拍子も無い話に頭に痛くなるが、二人とも真顔で話していたのを見る限り事実なのだろう。
では逆に、荒垣は地球や日本について自身の話せる範囲の事を話したのが、どちらも首を捻った。
念には念をとマルトーにも質問したが、二人と同じような返答であった。
結論だけ見れば、荒垣はルイズに召喚されこの異世界に飛ばされた事になる。
だが、そこに至るまでに重大な問題点があるのだ。
それは、荒垣真次郎というペルソナ使いは『一度死んだ』という事。
まさかあの瞬間が嘘だとは、荒垣は微塵も思っていない。
ならここが地獄か天国かという考えもあったが、それはあっさり放棄する。
思いつく様々な結論を消去法で削っていき、残った答えをつなぎ合わせてみる。
(つまり、あのガキに生き返えらされたってわけか)
馬鹿馬鹿しい話だが、そう考えないとバラバラなピースが綺麗に嵌らない。
だが生き返ってみたものの、正直荒垣は心を持て余していた。
生きてきた時間こそ短かったが、あの瞬間の最期まで悔いはなかった。
だから、ここで再び命を宿されても感謝の気持ちを抱けない。
さらに悪い事に、それを盾にして面倒を見ろと言うルイズに使える気にもなれなかった。
もともと人に従うのを嫌う傾向にあった荒垣が、ルイズという荷物を引き受け喜ぶはずが無い。
明確な理由があり、自身もそつなくこなす天田と違い、ルイズはただひたすら手のかかる子供だ。



(とても同じガキたぁ思えねぇな)
先程の偉ぶった様子を思い出し、苦笑いを浮かべる。
ルイズは勘違いしていたが、荒垣はルイズに対して睨んだのは最初の一回。
それ以外は、殆ど子供の癇癪を眺めるように見ていただけなのである。
(ま、何と言われようが使い魔とやらをするつもりはないがな……それに)
その先を考えて荒垣は頭を振るう。拾った命だからなのか、余計な考えが頭にちらつく。
気付けば、馬小屋のような建物の前まで辿り着いていた。
「ま、とりあえず寝りゃいい考えも浮かぶだろ」
肩をすくめ、小屋の中へと入っていく。
「きゅい?」
「ん?」
足を踏み入れると、見るからに竜の姿をした生き物が、困惑した表情でこちらを見つめていた。
「っと、悪いな。お前の寝床だったか」
「きゅい」
「寝床を探していただけだ、せっかく寝ていたとこ悪かったな」
「きゅいきゅい!」
「あ?」
見ると、竜が口を突き出して荒垣の上着を銜えていた。
「いや、ここはお前の寝床だろ」
「きゅいきゅい」
上着から口を話すと、竜は自身の腹部に視線を落とす。
その意図を理解した荒垣は、こちらでは初めて見せる顔を見せていた。
「良いのか?」
「きゅい!」
「……悪い。一晩世話になる」
洗濯物が詰め込まれた籠を傍に置き、荒垣は竜の腹部に背を預け毛布を被った。
それを見届けた竜も、安心したように瞼を閉じて眠りの世界に入っていく。
一人と一匹が寝息を立て始めた頃、小屋の中で少しずつ変化がおきていた。
荒垣は気付かなかったが、他にもいた大きい生き物達が、荒垣が風で冷えないような位置に座り直していたのだ。
この晩、最近では一番冷え込んだ夜を迎えたトリスティン魔法学院だが、荒垣が風邪をひくことはなかった。



    ▽    ▽    ▽



早朝に目が覚めた荒垣は、周囲にいた生き物達に礼を言うと洗濯場を探して歩き回っていた。
数分間歩いた所で、ようやくお目当ての場所に到着するが、どうやら先客がいたようだ。
「あ、アラガキさん。おはようございます。もしかして、お洗濯ですか?」
「あぁ」
荒垣の態度に気にする様子もなく、その少女は柔らかそうな笑みで仕事に戻った。
先に洗濯をしていたのは、昨日世話になったシエスタである。
シエスタは自分の持ってきていた洗濯物を手早く、けれど丁寧に洗い終えると、手の甲で汗を拭った。
「おわりました」
「みてぇだな」
「あ、その……宜しければそのお洗濯、私が代わりにしておきましょうか?」
荒垣が抱えていた籠の中身を見て、その洗濯物がルイズの所持品だと理解したシエスタ。
だが、荒垣は何も言わずにシエスタの隣に座ると、瞬時に衣類を区分けしていく。
「申し出はありがたいが、俺が請け負った仕事だからな」
「そうですか」
少しだけ寂しそうにしながら、シエスタは荒垣の手を見る。
最初こそ洗濯板に手間取った印象があるが、あとはシエスタが目を見張る程の仕事振り。
その見た目とのギャップが可笑しかったのか、シエスタはうっかり笑みを零してしまう。
「あ、すみません」
「……こういった事は慣れてるからな」
怒られると思ったシエスタだったが、その真意を汲み取りまた笑みを浮かべる。
荒垣の仕事振りを見ていたシエスタは、男ながらも繊細な作業が出来る手腕に見入っていた。
(そう言えば、アラガキさんが使い魔になったって本当なのかしら?)
良く見れば左手にルーンが掘られてある。荒垣の逞しい手にミスマッチな気がするシエスタ。
荒垣が若干距離を取りつつあるのに気付かないまま、シエスタは食い入るようにその仕事ぶりを見つめていた。
だからなのか、後ろから近付いてくる一つの影に対し無防備な姿を晒してしまう。
「おおいシエ――すまねぇ」
「ど、どうしていきなり謝るんですかマルトーさん! というかいつからそこに?」
「いやだってお前、今の表情を見たらそう思うだろう。なぁ兄ちゃん!」
「……」
シエスタからの質問に半分だけ答えると、意味ありげな視線で荒垣を見る。
が、視線を送られた本人は、熱心な様子でこびりついた汚れを退治していた。
「あの! そんな! そうじゃなくて! そう言った事じゃなくですね!」
「はっはっはっ! ま、しっかり愉しんだら仕事に戻ってくれや」
「ま、マルトーさんっ! ごめんなさいアラガキさん。その、変な事言われて……」
「別に気にしちゃいねぇよ」
慌てふためくシエスタとは対照的に、荒垣は未だ黙々と下着を洗っていた。
「えと、その……あ! もし何かありましたらまた来てください! それじゃあ!」
洗濯を終えた籠を抱えながら、顔を真っ赤にしたシエスタは逃げるように去っていく。
それを背中で見送りつつ、荒垣は丁寧な手つきで最後の下着の汚れを落としていた。




    ▽    ▽    ▽



洗濯を滞りなく終えた荒垣は、それを干し終えるとルイズの部屋に向かった。
洗濯はともかく、起床については自分から言い出したことなので異論は無い。
音もなくドアを開けると、ルイズは見るからに子供と言わんばかりの寝相で寝ていた。
気絶していたとは言え、あれだけ寝たのによく寝れるものだと荒垣は感心する。
(何だかんだ言っても、まだガキなんだな)
本人が聞いたら怒り狂うような考えだが、口にしていないためルイズには届かない。
近付いてみると、ベットの上の主は涎を垂らしながら笑っていた。
「くふふ。きゅるきぇとはちがうのだよきゅるきぇとは~
  ふるえるぞおちち。もちつけるほどぼよん。きざむぞきょにゅーのびーと。ぴんき~おーばーどらいぶー」
いきなり叫びだしたルイズは、ベットの上で奇妙な踊りを始めた。
そして、最後の言葉と共に両手を天井に突き出すと、何事も無かったかのように腕を降ろし寝入ってしまった。
「……なにやってんだこいつは」
呆れつつ部屋の隅にたたんであったタオルで涎をふき取る。
すると、満足したかのような表情を浮かべ両手でシーツを握り締める。
その様子を見て、荒垣はふと「赤ん坊を世話するのはこういう事か」と納得した。
ちなみに、もともと色気づいた類の話には、全くと言っていいほど興味が無い荒垣。
それがなくとも、ルイズを自分よりかなり年下と勝手に思い込んでいる。
さらに追い討ちを掛けるのは、百年の恋も冷めそうな今の姿。
要約すると、ルイズの姿を見て何一つ邪な思考を浮かべる様子はなかったという事。
そうこうしているうちに、ルイズはまたも身体を強引に曲げて奇妙なポーズをとり始めた。
が、荒垣はその頭を鷲掴みにすると、ゆっくりと上に持ち上げていく。
「あだ、あだだだだだだだだっ」
突然の出来事に軽くパニック状態になるルイズ。
その隙に掴んでいた手を離すと、未だ頭が混乱しているルイズの耳元で両手を勢い良く叩いた。
「きゃうぁ!」
夢の世界から強引に引き摺り下ろされたルイズは、自分の置かれている状況を認識するのに時間がかかった。
ふと、誰かからの視線を感じ顔を上げると、そこには自分を見下ろす不気味な男の顔があった。
「新手のスタンド使い!?」
「……何寝ぼけてんだ」
「ふぇ? あ、あんた確か……そうだ。夢じゃなかったんだっけ」
「喋ってる暇があったら手を動かせ。そして早く着替えろ。俺は外に出ている」
「え、あ、うん」
言われた通り着替えようとし、衣装ケースの取っ手に手を掛けたところで気付いた。
「じゃなくて! 着替えさせて!」
「……なんだと?」
「だ、だから、着替えさせてって言ったの! 命令よ!」
暫く睨み合いが続くが、聞いていた時間に遅刻すると気付いた荒垣が先に折れた。
(男相手にこれじゃ、本当にガキなんだろうな)
またも当人が聞いたら荒れ狂いそうな事を思い浮かべたが、口にはしない。
腹の中に押し込んだ怒りを押さえ込み、呆れた表情を浮かべた。
「着替えはどこにある?」
「そこよ」
「ちっ……」
舌を打ちつつも、手早く制服を取り出しベットに運ぶ。
そして、ルイズに両手を挙げさせるとつっかえる事無く着せる事に成功した。
「初めてにしては上出来ね」
「……」
着替えが済んだので、次は身だしなみを整えていたルイズが額を押さえて呻き声を上げた。
「ねぇ、なんだか頭が物凄く痛いんだけど」
「知るか。それより朝食に行かなくていいのか?」
「なんだか釈然としないけど、確かにそろそろ時間ね」




額に手を当てながらも、ルイズは威勢良く扉を開けて廊下へと出た。
その後ろを、荒垣が無言でついて行く。
「はぁいルイズ」
部屋を出ると、殆ど同じタイミングで隣の部屋から誰かが出てきた。
ルイズよりも明らかに「育っている」その人物は、玩具でも見るようにルイズを見下ろし言葉を続ける。
「朝から男と連れ立って出てくるなんて、なかなかやるじゃない」
「違うわよ! これは……つか……つか」
「つか?」
「使い魔よ! 悪い!?」
「悪いも何も、まだ何も言って無いじゃないの」
「言ってるじゃない! その眼が!」
「あら。ごめんあそばせ」
態度がまる分かりなのを承知しながら、少女は悪びれもせず謝罪してくる。
その今にも高笑いしそうなその少女を、ルイズは顔を真っ赤にして睨み付けた。
「あははは、そんなに睨まないでよ。それより私の使い魔を見て」
そう言って背中から出てきたのは、爬虫類を大きくしたような姿で、赤い鱗をした生き物だった。
特徴的なのは、尻尾から途切れる事無く燃え続ける炎だ。
「この子の名前はフレイム。火竜山脈のサラマンダーよ。さ、フレイムご挨拶して」
「きゅるきゅる」
心なしか、荒垣のこめかみが動いたのだが、気付いたのはフレイムのみだった。
見詰め合うフレイムと荒垣を他所に、二人は口喧嘩のようなものを始めていた。
「しっかし、平民を呼んじゃうなんて前代未聞よね」
「くっぅ!」
「で、これがその平民って訳」
品定めをするような眼で荒垣を見る少女。
それに気分を害した様子もなく、荒垣は無言のフレイムと見詰め合っていた。
「ふぅん……そこそこいい男だけど、平民じゃあね~。あなたお名前は?」
「荒垣だ」
「アラガキね。私はキュルケよ。ま、もしルイズが嫌になったら来てもいいわよ平民君」
「ちょっとキュルケ! 人の使い魔を誘惑しないで!」
「うふふ。相変わらず怒った顔が面白いわね。さ、行くわよフレイム……フレイム?」
「きゅるきゅる」
キュルケに呼ばれたのに気付いたものの、フレイムは名残惜しそうに荒垣を見つめてた。
「あら、私以外にこんな反応……ねぇアラガキ。あなた本気で私の所に来ない?」
「いい加減に――」
「あっはっは。冗談よ。それじゃあお二人さん。お先に」
掴みかかりそうなルイズの手をあっさりかわすと、キュルケは笑いながら去っていった。
「なんなの全く! いい、あの女に近付いちゃ駄目よ! 命令なんだから!」
「……」
「ちょっと! 聞いてるの!?」
「飯の時間に遅れるぞ」
「あ、ちょっと、待ちなさいコラ! 昨日の話の続きだってあるんだから!」
道中ルイズの叫びを無視しながら、荒垣は食堂へと足を運ぶ事となった。
余談であるが、その途中で出会った他の使い魔は、漏れる事無く全員が荒垣に視線を送っていた。

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