あの作品のキャラがルイズに召喚されました @ ウィキ

Zero ed una bambola   ゼロと人形-20


「くそ! あの無能貴族共め!」

 ミス・ロングビルは部屋に戻るなり苛立ち気にそう吐き捨てた。

「あの馬鹿貴族! どんな調査したか知らないけど、私が人を殺した? ふざけるんじゃないわよ!」

 テーブルの上に置いてあるワインを乱暴に掴み取ると一気に飲み干す。
 こんなに荒れているのも全ては魔法研究所から送られた最終報告書が原因なのだ。

「結局あそこの連中もそれを信じるここの教師も皆同じか」

 学院に届いた報告書にはこう書かれていた。
『モット伯襲撃の実行犯は十数人が徒党を組み行われたものと推察される。その首魁は土くれのフーケであり他のメイジが関与した痕跡は一切見当たらない。 エレオノール・ド・ラ・ヴァリエール』
 簡単にまとめればこうだ。

「エレオノールとかいう貴族、少しはまともかと思ったけど結局こいつも同じ穴の狢ね。出世や保身のことばかり…」

 確かに土くれのフーケと呼ばれ、幾多もの貴族の屋敷に侵入し、彼らのお宝を強奪してきた。だがが一度たりとも人を傷つけたことはない。
 椅子に座り、今度はグラスにワインを注ぐ。

「人は殺さないし、傷つけもしない」

 まるで自分自身に言い聞かせるように呟き始める。

「そんなことをしたらあの子達に顔向けが出来ないからね」

 初めは復讐心からだった。貴族が慌てふためく様が面白くて楽しくて仕方がなかった。だがいつからだろうか、それがが虚しくなってきたのは。
 ぽっかりと心に空いた虚無感、退屈な日々。それを埋めてくれたのは……。
 何かを懐かしむような目でグラスに注いだワインを見つめる。何を思い出しているのか、その頬が自然と緩む。
 静かに、ゆっくりとワインを飲みはじめた。

「ふぅ、さてこれからどうしようかね」

 空になったグラスをテーブルに置くと小さく溜息を吐く。

「早いとこ盗みに入らないといけないわ」

 アカデミーから来たあの女は近々査察が来るといっていた。恐らく尻尾は掴まれてはいないだろうが万が一のこともある。早めに仕事に取り掛かった方がいいだろう。
 正直言ってもう少し宝物庫を破るための情報が欲しかったけど仕方がない、ここはいつも通り強引にことを進めるか……。

「ここでの生活…悪くはなかったけどね」

 気付けばポツリと呟いていた。

 ミス・ロングビル、いや土くれのフーケは慌てて首を左右に振ると自身を戒めるようにぴしゃりと自分の頬を叩いた。

「くだらない感傷に浸っている暇なんてないのよ。これも全てあの子達を食わせていくためなんだから…」

 そうだ、泥を被るのは私だけで十分だ。決意に満ちた目ですっと椅子から立ち上がり、窓の方へと歩み始める。

「もう後には引けないわ」

 二つの月を眺め、彼女は一体何を思うのか……



Zero ed una bambola   ゼロと人形



「ねぇアンジェリカ?」
「はい? 何ですか」

 自室に戻ったルイズはアンジェリカを膝の上に乗せ、彼女の髪を梳きながら優しく話し始めた。

「アンジェが起きる前までわたしの姉が来てたのよ」

 何気なくアンジェリカに姉が来ていたことを告げる。

「ルイズさんのお姉さんですか? きっと素敵な方ですよね?」

 アンジェリカは弾んだ声で答える。

「ふふ。そうね~。ちょっとキツイ性格してるけどわたしの自慢の姉よ」

 ルイズは誇らしげに語り始めた。

「わたしはね。三人姉妹の末っ子なの。ここに来てたのはエレオノール姉様で一番上の姉よ」
「もう一人の方は何というお名前なのですか?」
「ちぃ姉さま、カトレア姉さまも優しい人なんだけどちょっと病気がちなの」
「そうなのですか」

 ルイズは以前から気になっていたことを口にした。

「ねぇ、アンジェ。アンジェって姉妹とかいるのかしら?」

 それはただの好奇心からだった。

「ちょっとアンジェ。どうしたの?急に俯いたりしちゃって」

 知るはずもないのだ。アンジェリカがどのような境遇にあるかなど……。

「覚えて…ないです…」

 ポツリと、か細く、小さな声で呟いた。

「そんな、覚えてないって…。家族のことでしょう?」

 ルイズが聞くもアンジェリカは顔を伏せたままだった。背後からではその表情は窺うことは出来ない。

「ご両親とか…姉妹のこととか…何も覚えていないの?」

 アンジェリカはゆっくりと左右に首を振る。

「ごめん、アンジェ。ごめんね」

 後ろからそっとアンジェリカを抱きしめた。
 そう大事なことを忘れていた。今回の件で分かっていたはずだ。原因は不明だがアンジェリカは記憶を忘れてしまう……そんな症状があることを。

「ちょっと無神経だったわね。でもまさか大事な人のことまで忘れてしまうなんて…」

 可哀相に……だがその言葉がルイズの口から出ることはなかった。何故ならルイズはある考えに辿り着いてしまったのだ。
 いつか……自分のことも忘れてしまうのではないか? そんな不安がルイズに過ぎる。
『嫌よ! そんなのは嫌!』

「ルイズさん。泣いているのですか?」
「え?」

 気が付けば一筋の涙がルイズの頬を伝わっていた。

「泣いてなんかいないわよ」

 ルイズはそう答えると抱きしめる手に少し力を入れる。アンジェリカは抵抗することもなくそれを受け入れた。

「ルイズさん?」
「アンジェ、もう少し…もう少しこのままで…」
「はい!」

 うれしそうにアンジェリカは返事をするのだった。



Episodio 20

La luna per guardare gentilmente
月は優しく見守る


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