「そ、そうですな! 美人はただそれだけで、いけない魔法使いですな!」
「そのとおりじゃ! 君はうまい事を言うな! コルベール君!」
「そのとおりじゃ! 君はうまい事を言うな! コルベール君!」
当麻とルイズ、キュルケにタバサの四人は呆れて、そんな二人の様子を見ていた。
四人はフーケを捕まえた後、学園長室へと向かい、この事実を報告した。そして、オスマン氏はその場にいたコルベールと、フーケもといミスロングビルについて話したのだ。
それがもうなんともくだらない理由で、命を賭けて戦ってきた相手によくそんな話が出来ると四人は実感した。
と、ようやくオスマン氏は四人の鋭い視線に気付いたのか、照れ笑いを隠すかのように咳ばらいをした後、本題に入るため真剣な表情へと変える。
「さてと、君達はかの有名なフーケを捕まえた。『破壊の本』が壊れたのは残念だが……まぁ話を聞いた後となっては壊した方がよかったかもしれんな」
当麻以外の三人は、誇らしげに礼をした。
「フーケは城の衛士に引き渡した。これで一件落着だ」
オスマン氏は父親のように一人ずつ優しく頭を撫でた。
「君たちの、『シュヴァリエ』の爵位申請を、宮廷に出しておこう。追って沙汰があるじゃろう。といっても、ミス・タバサは確かすでに『シュヴァリエ』の爵位を持っているから、精霊勲章の授与を申請しておこうか?」
当麻には何を話してるのかさっぱりだが、三人が喜んでいる限りきっと素晴らしいことだろうな、と距離を置いて眺めていた。
「本当ですか?」
キュルケが、驚いた声で言った。
「ほんとじゃ、いいのじゃ、君達はそれぐらいの事をしたのじゃから」
ルイズはそこで気付く。ちらっと当麻を見ると、肩や腕、足に右手と至る所に包帯がしてある。
今回の戦いの主役は当麻である。ゴーレムを倒したのも、『破壊の杖』も壊したのも、そしてフーケを倒したのも全部。
そして誰よりも傷を負った。当麻の幻想殺しのせいで魔法の治療は出来ない。だからああやって自然治癒力に頼るしかない。
胸がギュッ、と苦しめられるような気分に陥ったルイズは、何か当麻にも褒美を与えるべきだと思った。
「あの……オールド・オスマン。トウマには何もないのですか?」
四人はフーケを捕まえた後、学園長室へと向かい、この事実を報告した。そして、オスマン氏はその場にいたコルベールと、フーケもといミスロングビルについて話したのだ。
それがもうなんともくだらない理由で、命を賭けて戦ってきた相手によくそんな話が出来ると四人は実感した。
と、ようやくオスマン氏は四人の鋭い視線に気付いたのか、照れ笑いを隠すかのように咳ばらいをした後、本題に入るため真剣な表情へと変える。
「さてと、君達はかの有名なフーケを捕まえた。『破壊の本』が壊れたのは残念だが……まぁ話を聞いた後となっては壊した方がよかったかもしれんな」
当麻以外の三人は、誇らしげに礼をした。
「フーケは城の衛士に引き渡した。これで一件落着だ」
オスマン氏は父親のように一人ずつ優しく頭を撫でた。
「君たちの、『シュヴァリエ』の爵位申請を、宮廷に出しておこう。追って沙汰があるじゃろう。といっても、ミス・タバサは確かすでに『シュヴァリエ』の爵位を持っているから、精霊勲章の授与を申請しておこうか?」
当麻には何を話してるのかさっぱりだが、三人が喜んでいる限りきっと素晴らしいことだろうな、と距離を置いて眺めていた。
「本当ですか?」
キュルケが、驚いた声で言った。
「ほんとじゃ、いいのじゃ、君達はそれぐらいの事をしたのじゃから」
ルイズはそこで気付く。ちらっと当麻を見ると、肩や腕、足に右手と至る所に包帯がしてある。
今回の戦いの主役は当麻である。ゴーレムを倒したのも、『破壊の杖』も壊したのも、そしてフーケを倒したのも全部。
そして誰よりも傷を負った。当麻の幻想殺しのせいで魔法の治療は出来ない。だからああやって自然治癒力に頼るしかない。
胸がギュッ、と苦しめられるような気分に陥ったルイズは、何か当麻にも褒美を与えるべきだと思った。
「あの……オールド・オスマン。トウマには何もないのですか?」
「残念ながら……彼は貴族ではない」
「でもっ!」
ルイズの意見を一蹴するオスマン氏。それでも尚、食らいつこうとするルイズに、当麻は肩に手をやった。
「俺の分は大丈夫だから気にすんな」
「でも! 当麻が一番頑張ったじゃない! なのに何もないなんて!」
「俺は別に何かを貰いたいから頑張ったんじゃねぇよ」
当麻は小さく笑った。
「それに、主様のご褒美は使い魔のご褒美でもあります。わたくし上条当麻はお喜びでありますよ?」
ルイズは言葉に詰まる。本当に当麻はそう思っているのだと、素直に感じてしまうからだ。
オスマン氏はそんな二人のやり取りを見つめながら、ポンポンと手を打った。
「さてと、明日の夜は『フリッグの舞踏会』じゃ。これなら予定通り執り行えるだろう」
キュルケの顔が再び輝く。
「そうでしたわ! すっかり忘れておりました!」
「明日の主役は君たちじゃ、早く戻ってゆっくりと休みたまえ」
三人は礼をすると、ドアに向かった。
ルイズは立ち止まったままの当麻に目をやる。当麻は視線に気付いたのか、
「先に行っててくれ」
と、伝える。ルイズは何か言おうとしたが、頷いてそのまま立ち去った。
オスマン氏は当麻に向き合った。
「何か用があるのじゃろう?」
当麻は頷く。
「何でも聞きたまえ。出来るだけ力になろう。と、その前に……」
オスマン氏は当麻に向かって頭を下げた。
「そのような傷を負ってまで、フーケを捕まえた事にホントに感謝してる。爵位は授けられぬが、こんな老人の頭で許してはくれぬか」
コルベールも同じように頭を下げる。突然の事態に当麻は驚きながらもこたえる。
「あーいえ、ホント大丈夫ですから。これじゃあ本題に入りにくいので……」
と、苦笑いを浮かべながらも当麻は髪の毛をかく。すると、オスマン氏はコルベールに退室を促した。内心当麻の話にわくわくしていた為、誰にでもわかるように落ち込みながら、しぶしぶ部屋を出て行った。
そこで当麻はようやく本題に入る。
「あの『破壊の本』は、こちらの世界のものではないですよね?」
「でもっ!」
ルイズの意見を一蹴するオスマン氏。それでも尚、食らいつこうとするルイズに、当麻は肩に手をやった。
「俺の分は大丈夫だから気にすんな」
「でも! 当麻が一番頑張ったじゃない! なのに何もないなんて!」
「俺は別に何かを貰いたいから頑張ったんじゃねぇよ」
当麻は小さく笑った。
「それに、主様のご褒美は使い魔のご褒美でもあります。わたくし上条当麻はお喜びでありますよ?」
ルイズは言葉に詰まる。本当に当麻はそう思っているのだと、素直に感じてしまうからだ。
オスマン氏はそんな二人のやり取りを見つめながら、ポンポンと手を打った。
「さてと、明日の夜は『フリッグの舞踏会』じゃ。これなら予定通り執り行えるだろう」
キュルケの顔が再び輝く。
「そうでしたわ! すっかり忘れておりました!」
「明日の主役は君たちじゃ、早く戻ってゆっくりと休みたまえ」
三人は礼をすると、ドアに向かった。
ルイズは立ち止まったままの当麻に目をやる。当麻は視線に気付いたのか、
「先に行っててくれ」
と、伝える。ルイズは何か言おうとしたが、頷いてそのまま立ち去った。
オスマン氏は当麻に向き合った。
「何か用があるのじゃろう?」
当麻は頷く。
「何でも聞きたまえ。出来るだけ力になろう。と、その前に……」
オスマン氏は当麻に向かって頭を下げた。
「そのような傷を負ってまで、フーケを捕まえた事にホントに感謝してる。爵位は授けられぬが、こんな老人の頭で許してはくれぬか」
コルベールも同じように頭を下げる。突然の事態に当麻は驚きながらもこたえる。
「あーいえ、ホント大丈夫ですから。これじゃあ本題に入りにくいので……」
と、苦笑いを浮かべながらも当麻は髪の毛をかく。すると、オスマン氏はコルベールに退室を促した。内心当麻の話にわくわくしていた為、誰にでもわかるように落ち込みながら、しぶしぶ部屋を出て行った。
そこで当麻はようやく本題に入る。
「あの『破壊の本』は、こちらの世界のものではないですよね?」
オスマン氏の目が光る。
「こちらとは?」
「こちらの本に無詠唱で呪文が発動、かつ防御魔法が自動で発動するのは存在しないと、習いましたから」
「ではあの本はなんだと思うのじゃ?」
オスマン氏の質問に、当麻は一拍置き、別方向からこたえる。
「俺はここの人間じゃありません」
「本当かね?」
「はい。ルイズの『召喚』で、こっちの世界に呼ばれたと思います」
「ふむ……」
オスマン氏は目を細めた。
「そしてあの『破壊の本』は、恐らく魔導書、こちらの世界の武器です。つまり誰かが俺と同じように来た、という事になる。誰か知っていますか?」
オスマン氏は、ため息をついた。
「あれを私にくれたのは、私の命の恩人じゃ」
「その人は……今何処に?」
「消えてしまった。今から三十年も昔の話じゃ」
「……消えた?」
「三十年前、森を散策していた私は、ワイバーンに襲われた。そこを救ってくれたのがその人じゃ。彼は魔術を使ってワイバーンを吹き飛ばした後、その本を貰ったのじゃ。そして去ってしまった。しかし……」
「しかし?」
オスマン氏は話を続ける。
「その人は言っていた。『この本を開いてはならない。来るべき時に誰かによって使われるが、それはその時の為だ』と」
「それがフーケ……?」
「わからん。今となっては何もわからん」
「そう、ですか」
当麻は嘆いた。せっかく手に入れた手掛かりが無駄になっていく。その人だって死んでるかもしれないし、生きてたとしても何処にいるのかわからない。
どうしよう出来ない自分にため息をつく。
「すまんの。ただ、私はおぬしの味方じゃ。これだけは信じてくれ」
オスマン氏は再び当麻に向かって頭を下げた。
「恩人の本が悪用されるのを阻止くれた。これは私個人での礼じゃ」
「ありがとうございます」
当麻は素直にそう言った。そうした方がいいかな、と思ったからだ。
「おぬしがどういう理屈でこっちの世界にやってきたのか、私なりに調べるつもりじゃ。でも……」
「こちらとは?」
「こちらの本に無詠唱で呪文が発動、かつ防御魔法が自動で発動するのは存在しないと、習いましたから」
「ではあの本はなんだと思うのじゃ?」
オスマン氏の質問に、当麻は一拍置き、別方向からこたえる。
「俺はここの人間じゃありません」
「本当かね?」
「はい。ルイズの『召喚』で、こっちの世界に呼ばれたと思います」
「ふむ……」
オスマン氏は目を細めた。
「そしてあの『破壊の本』は、恐らく魔導書、こちらの世界の武器です。つまり誰かが俺と同じように来た、という事になる。誰か知っていますか?」
オスマン氏は、ため息をついた。
「あれを私にくれたのは、私の命の恩人じゃ」
「その人は……今何処に?」
「消えてしまった。今から三十年も昔の話じゃ」
「……消えた?」
「三十年前、森を散策していた私は、ワイバーンに襲われた。そこを救ってくれたのがその人じゃ。彼は魔術を使ってワイバーンを吹き飛ばした後、その本を貰ったのじゃ。そして去ってしまった。しかし……」
「しかし?」
オスマン氏は話を続ける。
「その人は言っていた。『この本を開いてはならない。来るべき時に誰かによって使われるが、それはその時の為だ』と」
「それがフーケ……?」
「わからん。今となっては何もわからん」
「そう、ですか」
当麻は嘆いた。せっかく手に入れた手掛かりが無駄になっていく。その人だって死んでるかもしれないし、生きてたとしても何処にいるのかわからない。
どうしよう出来ない自分にため息をつく。
「すまんの。ただ、私はおぬしの味方じゃ。これだけは信じてくれ」
オスマン氏は再び当麻に向かって頭を下げた。
「恩人の本が悪用されるのを阻止くれた。これは私個人での礼じゃ」
「ありがとうございます」
当麻は素直にそう言った。そうした方がいいかな、と思ったからだ。
「おぬしがどういう理屈でこっちの世界にやってきたのか、私なりに調べるつもりじゃ。でも……」
「でも?」
「何もわからなくても、恨まんでくれよ。なあに。こっちの世界も住めば都じゃ。嫁さんだって探してやる。
当麻はさすがにこれには戸惑いを覚えた。なんというか、本当になりそうな気がしたからだ。
「何もわからなくても、恨まんでくれよ。なあに。こっちの世界も住めば都じゃ。嫁さんだって探してやる。
当麻はさすがにこれには戸惑いを覚えた。なんというか、本当になりそうな気がしたからだ。
その次の日の夜、舞踏会は食堂の上の階で行われた。当麻は一人バルコニーの枠にもたれ、のんびりと過ごしていた。
当麻のすぐ傍には、シエスタが持ってきてくれた肉料理と水。
先程まではキュルケと話していたが、パーティが始まった瞬間、中に入ってしまった。
後で踊りましょと言われたが、今では沢山の男たちに囲まれている。ありゃ無理だな、と当麻は素直に思い、今度はタバサに目をやる。
黒いパーテイドレスに身を包んだタバサは、一生懸命にテーブルの上の料理と格闘している。
あいつ大食いかよ……、と腹ぺこシスターの存在を思い出しながら当麻は肉をかじった。
と、ホールの壮麗な扉が開き、ルイズが姿を現した。
門に控えた呼び出しの衛士がルイズの到着を告げた。
当麻は気にせず再び食モードに入る。せっかくの機会だ。食べるだけ食べよう。
「どう? パーテイは」
当麻は聞き覚えのある声に、視線を前に移す。そこには白いパーテイドレスに身を包んだルイズがいた。
ほとんどの男たちはその美貌に驚くのだが……
普段から美少女美人たちと仲がよい当麻は普段通り接する事が出来てしまう。
「まぁ、料理がうまいからそこそこ。てか踊らないのか?」
ルイズの向こう、中央のホールでは、音楽が奏で始め、貴族たちが優雅にダンスを踊り始めている。
当麻の質問にルイズは手を黙って手を指し伸べた。
「えぇと、これは?」
「踊ってあげても、よくってよ」
目を逸らし、ルイズはちょっと照れたように言った。
(こ、これはーこれはー!?)
遂にルイズルート、ハッピーエンドかー、と当麻は喜ぶ。
(いや、落ち着け、最後まで気を抜くな。不幸が待ち構えているぞ!)
「構わないが……俺踊れないぞ?」
言いながら、差し伸べた手を掴む。
「大丈夫、私に合わせればいいから」
二人は並んで、ホールへと向かった。
当麻のすぐ傍には、シエスタが持ってきてくれた肉料理と水。
先程まではキュルケと話していたが、パーティが始まった瞬間、中に入ってしまった。
後で踊りましょと言われたが、今では沢山の男たちに囲まれている。ありゃ無理だな、と当麻は素直に思い、今度はタバサに目をやる。
黒いパーテイドレスに身を包んだタバサは、一生懸命にテーブルの上の料理と格闘している。
あいつ大食いかよ……、と腹ぺこシスターの存在を思い出しながら当麻は肉をかじった。
と、ホールの壮麗な扉が開き、ルイズが姿を現した。
門に控えた呼び出しの衛士がルイズの到着を告げた。
当麻は気にせず再び食モードに入る。せっかくの機会だ。食べるだけ食べよう。
「どう? パーテイは」
当麻は聞き覚えのある声に、視線を前に移す。そこには白いパーテイドレスに身を包んだルイズがいた。
ほとんどの男たちはその美貌に驚くのだが……
普段から美少女美人たちと仲がよい当麻は普段通り接する事が出来てしまう。
「まぁ、料理がうまいからそこそこ。てか踊らないのか?」
ルイズの向こう、中央のホールでは、音楽が奏で始め、貴族たちが優雅にダンスを踊り始めている。
当麻の質問にルイズは手を黙って手を指し伸べた。
「えぇと、これは?」
「踊ってあげても、よくってよ」
目を逸らし、ルイズはちょっと照れたように言った。
(こ、これはーこれはー!?)
遂にルイズルート、ハッピーエンドかー、と当麻は喜ぶ。
(いや、落ち着け、最後まで気を抜くな。不幸が待ち構えているぞ!)
「構わないが……俺踊れないぞ?」
言いながら、差し伸べた手を掴む。
「大丈夫、私に合わせればいいから」
二人は並んで、ホールへと向かった。
二人は軽く手を握り、当麻はルイズに出来るかぎり合わせるようにした。右手と肩と腕と足が痛かったが、まぁ普段の入院レベルと比べればマシだ、と言い聞かせる。
ルイズはそんな当麻の為を思ってかゆっくりとステップを踏み始める。
「ねぇ、トウマ、信じてあげるわ」
「何をだ?」
「……あんたが別の世界から来たって事」
ルイズは踊りながらもそう呟いた。
「あぁ……、何でだ?」
「あの『破壊の本』を見たらそう思っちゃうじゃない」
まぁ確かになー、と答える当麻にルイズは少し俯いた。
「ねえ、帰りたい?」
「まぁな。出来る事なら今すぐに帰りたいけど、どうしようもないもんな」
そうよね……、と呟くと、二人はしばらく無言で踊り始めた。
あ、これ慣れると面白いな。とちょっとダンスの楽しさがわかってきた当麻。一方のルイズは頬を少しばかし紅潮に染め、当麻の顔から目を逸らす。
「どした?」
当麻が不思議に思って聞くと、ルイズの顔がさらに赤くなった。
「あ……、その……あ、ぁりがとぅ」
小さく、当麻にしか聞こえないぐらい小さく呟いた。突然の展開に思わず「へ?」と聞いてしまった。
「その……フーケの時助けてくれたじゃない。だから……」
(あれ、もしかしてこれ不幸なし?)
当麻はオチ無しのこの状況に喜びを噛み締める。
「気にすんな、それを言ったらお前の魔法がなかったら終わりだったろ?」
「……ねぇ?」
ルイズは再び質問する。最後にどうしても答えて欲しいから。
「何でそこまでボロボロになってまで頑張ったの?」
うん? と、当麻は一度だけルイズの言葉を確かめて、それから答えた。
ルイズはそんな当麻の為を思ってかゆっくりとステップを踏み始める。
「ねぇ、トウマ、信じてあげるわ」
「何をだ?」
「……あんたが別の世界から来たって事」
ルイズは踊りながらもそう呟いた。
「あぁ……、何でだ?」
「あの『破壊の本』を見たらそう思っちゃうじゃない」
まぁ確かになー、と答える当麻にルイズは少し俯いた。
「ねえ、帰りたい?」
「まぁな。出来る事なら今すぐに帰りたいけど、どうしようもないもんな」
そうよね……、と呟くと、二人はしばらく無言で踊り始めた。
あ、これ慣れると面白いな。とちょっとダンスの楽しさがわかってきた当麻。一方のルイズは頬を少しばかし紅潮に染め、当麻の顔から目を逸らす。
「どした?」
当麻が不思議に思って聞くと、ルイズの顔がさらに赤くなった。
「あ……、その……あ、ぁりがとぅ」
小さく、当麻にしか聞こえないぐらい小さく呟いた。突然の展開に思わず「へ?」と聞いてしまった。
「その……フーケの時助けてくれたじゃない。だから……」
(あれ、もしかしてこれ不幸なし?)
当麻はオチ無しのこの状況に喜びを噛み締める。
「気にすんな、それを言ったらお前の魔法がなかったら終わりだったろ?」
「……ねぇ?」
ルイズは再び質問する。最後にどうしても答えて欲しいから。
「何でそこまでボロボロになってまで頑張ったの?」
うん? と、当麻は一度だけルイズの言葉を確かめて、それから答えた。
「自分のためだよ」