トリステインの城下町、その中に隠れるように存在するうらぶれた武器屋。
サイトはルイズに連れられて来たものの、未だ響く腰の痛さのほうが大きかった。
決闘騒ぎ以来、何度かヘイズと自分の力について話したのだが、その結果わかったことは、
ヘイズ曰く「お前には銃は向いてない」、だそうだ。
なんでもヘイズのいた世界には「騎士」なる対魔法士専門の魔法士がいて、「騎士剣」と呼ばれる剣を操り、幾多もの魔法士を屠ってきたのだという。
そしてサイトの能力は、騎士の能力「身体能力制御」に似ているらしい。
なので銃よりも剣のほうが馴染みやすいはずなのだそうだ。
サイトはルイズに連れられて来たものの、未だ響く腰の痛さのほうが大きかった。
決闘騒ぎ以来、何度かヘイズと自分の力について話したのだが、その結果わかったことは、
ヘイズ曰く「お前には銃は向いてない」、だそうだ。
なんでもヘイズのいた世界には「騎士」なる対魔法士専門の魔法士がいて、「騎士剣」と呼ばれる剣を操り、幾多もの魔法士を屠ってきたのだという。
そしてサイトの能力は、騎士の能力「身体能力制御」に似ているらしい。
なので銃よりも剣のほうが馴染みやすいはずなのだそうだ。
「随分と寂れた店だなあ……あだっ!」
「入って早々失礼でしょうが、恥ずかしいわね」
店の中は未だ太陽の照りつける真っ昼間だというのに薄暗く、異様な雰囲気を醸し出していた。
先客らしき黒髪の少年は壁にかけられた武具を見て、うーんとうなっている。
店主らしき親父は、入ってきたルイズを胡散臭げに眺め、タイ留めの五芒星を見て、重々しく口を開いた。
「貴族の旦那。うちはまっとうな商売をしてまさあ。お上に目ぇつけられるようなことはしてませんぜ」
「客よ」
ルイズはそれだけ言って、親父のほうにつかつかと歩み寄った。
「使い魔に剣を買うつもりよ。なにかいいのはないかしら?」
「こいつはおったまげた。最近は貴族が下僕に剣を持たせるのが流行ってますが、まさか使い魔にもたせるとは! いえいえ、ではここらへんでどうですかい」
そう言って主人は、ハンドガードの付いたきらびやかなレイピアを取り出した。
「これじゃダメね。使い魔に持たせるんだもの。もっと大きくて太いのがいいわ。それと流行ってるってどういうこと?」
「最近土くれのフーケっていうメイジがあちこちで盗みを働きまくっているらしいよ」
サイト達より先に店に来ていた少年が、こちらを向いて語りだした。
「何でも貴族を専門に狙って、あちこちを荒らしまわっているとか。貴族は怯えて下僕にまで剣を持たせる始末さ」
魔法士相手に勝てる一般人なんて真昼にいくらいだよ、と呟きながらかぶりを振った。
とそんなことを聞いているうちに、主人はさきほどのレイピアよりもきらびやかに装飾がされた大剣を持ってきた。
「旦那、これなんかはどうです。かの高名なゲルマニアの錬金魔術師シュペー卿の鍛えた作品でさ。魔法がかかっているから、鉄だろうと一刀両断です。おやすかあありませんぜ?」
なるほど、刀身が鏡のようになめらかで美しく、装飾があちこちに散りばめられている。
拵えもりっぱで相当の値打ち物であることが分かった。
「入って早々失礼でしょうが、恥ずかしいわね」
店の中は未だ太陽の照りつける真っ昼間だというのに薄暗く、異様な雰囲気を醸し出していた。
先客らしき黒髪の少年は壁にかけられた武具を見て、うーんとうなっている。
店主らしき親父は、入ってきたルイズを胡散臭げに眺め、タイ留めの五芒星を見て、重々しく口を開いた。
「貴族の旦那。うちはまっとうな商売をしてまさあ。お上に目ぇつけられるようなことはしてませんぜ」
「客よ」
ルイズはそれだけ言って、親父のほうにつかつかと歩み寄った。
「使い魔に剣を買うつもりよ。なにかいいのはないかしら?」
「こいつはおったまげた。最近は貴族が下僕に剣を持たせるのが流行ってますが、まさか使い魔にもたせるとは! いえいえ、ではここらへんでどうですかい」
そう言って主人は、ハンドガードの付いたきらびやかなレイピアを取り出した。
「これじゃダメね。使い魔に持たせるんだもの。もっと大きくて太いのがいいわ。それと流行ってるってどういうこと?」
「最近土くれのフーケっていうメイジがあちこちで盗みを働きまくっているらしいよ」
サイト達より先に店に来ていた少年が、こちらを向いて語りだした。
「何でも貴族を専門に狙って、あちこちを荒らしまわっているとか。貴族は怯えて下僕にまで剣を持たせる始末さ」
魔法士相手に勝てる一般人なんて真昼にいくらいだよ、と呟きながらかぶりを振った。
とそんなことを聞いているうちに、主人はさきほどのレイピアよりもきらびやかに装飾がされた大剣を持ってきた。
「旦那、これなんかはどうです。かの高名なゲルマニアの錬金魔術師シュペー卿の鍛えた作品でさ。魔法がかかっているから、鉄だろうと一刀両断です。おやすかあありませんぜ?」
なるほど、刀身が鏡のようになめらかで美しく、装飾があちこちに散りばめられている。
拵えもりっぱで相当の値打ち物であることが分かった。
「すげえ! これ欲しい!」
「や、これは辞めといた方がいいんじゃないかな……なんていうか鉄を型に流して固めただけだよ。刀身が輝いてるのは銀とかのメッキだし」
はしゃぐサイトを遮るように、こんこん、と刀身を叩きながら少年が忠告した。
鍛治で作ったならともかく、錬金で作った剣なんてそんなもんだよね、と嘆息する少年を尻目にどこからともなく声が聞こえた。
「おめ、ガキの癖に分かってるじゃねーか。はっは。親父、こいつにかかっちゃ、おめのぼったくりも形無しだな」
声の主はどこだろう、とサイトは視線を巡らせる。
「やい、デル公! てめえは黙ってろ!」
そういう主人の視線は、サビの浮いたボロボロの剣に向けられている。
それは薄手の長剣で、ボロボロで見栄えこそ悪いものの、拵えはなかなかに悪くない。
「インテリジェンスソード!?」
ルイズはしゃべる剣を見て、驚愕の声を上げた。
「へー、しゃべる剣なんておもしろいじゃないか」
そう言って剣を掴むサイト。
「おでれーた。おめ、「使い手」か。悪いことは言わね。買うなら俺にしな」
「決めた。俺こいつにするよ。ルイズ、これを買おう!」
「ああ、それなら新金貨百で結構でさ。なあに厄介払いだ、売れてくれたほうがせいせいしまさ」
サイトは剣を掴んではしゃぐが、
「いやよそんなの! 私はもっと見栄えのいいのが欲しいの!」
ルイズは手をぶんぶん振りながら嫌がるが、
「でもルイズ。確か今日は新金貨百しか持ってきてないって言ってなかったっけ?」
というサイトの鶴の一声で購入が決定した。
そして少年はこの店で一番頑丈な奴ね、と注文をつけてナイフを購入した。
なんでも自前のナイフを火のメイジに熔かされて、多めに予備が欲しかったからとか。
「や、これは辞めといた方がいいんじゃないかな……なんていうか鉄を型に流して固めただけだよ。刀身が輝いてるのは銀とかのメッキだし」
はしゃぐサイトを遮るように、こんこん、と刀身を叩きながら少年が忠告した。
鍛治で作ったならともかく、錬金で作った剣なんてそんなもんだよね、と嘆息する少年を尻目にどこからともなく声が聞こえた。
「おめ、ガキの癖に分かってるじゃねーか。はっは。親父、こいつにかかっちゃ、おめのぼったくりも形無しだな」
声の主はどこだろう、とサイトは視線を巡らせる。
「やい、デル公! てめえは黙ってろ!」
そういう主人の視線は、サビの浮いたボロボロの剣に向けられている。
それは薄手の長剣で、ボロボロで見栄えこそ悪いものの、拵えはなかなかに悪くない。
「インテリジェンスソード!?」
ルイズはしゃべる剣を見て、驚愕の声を上げた。
「へー、しゃべる剣なんておもしろいじゃないか」
そう言って剣を掴むサイト。
「おでれーた。おめ、「使い手」か。悪いことは言わね。買うなら俺にしな」
「決めた。俺こいつにするよ。ルイズ、これを買おう!」
「ああ、それなら新金貨百で結構でさ。なあに厄介払いだ、売れてくれたほうがせいせいしまさ」
サイトは剣を掴んではしゃぐが、
「いやよそんなの! 私はもっと見栄えのいいのが欲しいの!」
ルイズは手をぶんぶん振りながら嫌がるが、
「でもルイズ。確か今日は新金貨百しか持ってきてないって言ってなかったっけ?」
というサイトの鶴の一声で購入が決定した。
そして少年はこの店で一番頑丈な奴ね、と注文をつけてナイフを購入した。
なんでも自前のナイフを火のメイジに熔かされて、多めに予備が欲しかったからとか。
店を出たサイトと剣は自己紹介をした。
もはや二人は一蓮托生。相棒同士の交流というわけだ。
「俺は平賀才人だ」
「オレ様はデルフリンガーだ、デルフと呼びな」
それを横目で見ながらルイズはまだぶつぶつ言っていたが、もはや財布の中身はスッカラカン。
他の剣を買おうにも買えず、泣く泣く自分を納得させた。
さて後は帰るだけだ、ということで少年と別れようとしたその時だった。
「また会ったな小僧。貴様に受けた傷が、貴様を思い出すたびに疼いたぞ。さあオレに貴様の焼け焦げるニオイを嗅がせてくれ」
三人の前に、明らかにその界隈のものと判る姿をした男が現れた。
顔に走った火傷の痕、真っ黒なマント、そして鉄棒みたいな杖。
恐らく傭兵であろう、メイジの姿だ。
「僕は便利屋やってるんだけど、その時にあいつといざこざがあってね。何故か僕を目の敵にするから、痛めつけて逃げてきたんだけど、まさかここまで追ってくるとは思わなかったよ」
ナイフと引き換えだったし死ぬかと思ったけどね、と言いながら少年は、先ほど購入した厚みの短剣を引き抜く。
少年の表情に焦りの色が見える。
「杖も呪文も用いぬのに魔法を使い、人ならざる速度で駆け回る! ならば思わずにはいられまい! オレはこいつを殺せるのかとな!!」
マントをばさりと翻し、男は杖を構えた。
「この『白炎』メンヌヴィルを相手に逃げ切ったのは、貴様が二人目だ。隊長殿を殺す前に、まずは貴様を焼き尽くさねばオレの心は晴れん!」
無茶苦茶だよこの人、とため息一つ。少年はサイトたちのほうを向かないまま、叫んだ。
「ここは僕がなんとかするから、ふたりは逃げて。絶対になんとかしてみせるから」
少年は自分が盾になって、ルイズたちを逃がすつもりなのだろう。
しかし、少年の思いはあっさりと打ち砕かれる。
「貴族が傭兵風情を相手に逃げてなんかいられないわ」
「いくぜデルフ! 初お目見えだ!」
「おお!? 相棒、オレ溶かされるのは勘弁だぜ……」
ルイズは杖をとりだし、サイトは剣を引き抜いて構えている。
約一名――本?――を除いて、すでにやる気満々であった。
「みんな!? これは遊びじゃないんだよ!?」
少年がいさめるもすでに、臨戦態勢。
なによりメンヌヴィルがにたりと蛇を連想させる笑みを浮かべていて、もはや逃がしてくれそうにない。
もはや二人は一蓮托生。相棒同士の交流というわけだ。
「俺は平賀才人だ」
「オレ様はデルフリンガーだ、デルフと呼びな」
それを横目で見ながらルイズはまだぶつぶつ言っていたが、もはや財布の中身はスッカラカン。
他の剣を買おうにも買えず、泣く泣く自分を納得させた。
さて後は帰るだけだ、ということで少年と別れようとしたその時だった。
「また会ったな小僧。貴様に受けた傷が、貴様を思い出すたびに疼いたぞ。さあオレに貴様の焼け焦げるニオイを嗅がせてくれ」
三人の前に、明らかにその界隈のものと判る姿をした男が現れた。
顔に走った火傷の痕、真っ黒なマント、そして鉄棒みたいな杖。
恐らく傭兵であろう、メイジの姿だ。
「僕は便利屋やってるんだけど、その時にあいつといざこざがあってね。何故か僕を目の敵にするから、痛めつけて逃げてきたんだけど、まさかここまで追ってくるとは思わなかったよ」
ナイフと引き換えだったし死ぬかと思ったけどね、と言いながら少年は、先ほど購入した厚みの短剣を引き抜く。
少年の表情に焦りの色が見える。
「杖も呪文も用いぬのに魔法を使い、人ならざる速度で駆け回る! ならば思わずにはいられまい! オレはこいつを殺せるのかとな!!」
マントをばさりと翻し、男は杖を構えた。
「この『白炎』メンヌヴィルを相手に逃げ切ったのは、貴様が二人目だ。隊長殿を殺す前に、まずは貴様を焼き尽くさねばオレの心は晴れん!」
無茶苦茶だよこの人、とため息一つ。少年はサイトたちのほうを向かないまま、叫んだ。
「ここは僕がなんとかするから、ふたりは逃げて。絶対になんとかしてみせるから」
少年は自分が盾になって、ルイズたちを逃がすつもりなのだろう。
しかし、少年の思いはあっさりと打ち砕かれる。
「貴族が傭兵風情を相手に逃げてなんかいられないわ」
「いくぜデルフ! 初お目見えだ!」
「おお!? 相棒、オレ溶かされるのは勘弁だぜ……」
ルイズは杖をとりだし、サイトは剣を引き抜いて構えている。
約一名――本?――を除いて、すでにやる気満々であった。
「みんな!? これは遊びじゃないんだよ!?」
少年がいさめるもすでに、臨戦態勢。
なによりメンヌヴィルがにたりと蛇を連想させる笑みを浮かべていて、もはや逃がしてくれそうにない。
「では、嗅がせてもらおうか。貴様の肉が焼ける香りをな!」
男が杖を突き出し、炎の塊が次々と繰り出される。
射線上の少年は、来るのが分かっていたかのようなタイミングで横っ飛びに回避。
と同時に、サイトはメンヌヴィルに向かって駆け出す。
援護するように、淡青色結晶の槍が男を取り囲み逃げ場をなくす。
そして振り上げた剣はメンヌヴィルを斬り……裂かなかった。
「甘いわ!」
杖を振るい周囲の結晶を焼き払う。が、それに呼応して大爆発が引き起こされた。
「く……!」
爆風を覚悟して剣を構えたが、予想した爆発の衝撃はやってこない。
気づけば、いつの間にやらサイトの傍まで駆け寄っていた少年が、片手を突き出している。
「風のメイジなの!?」
ルイズは叫ぶ。
氷の槍や風の防壁で爆発から身を守る技術。つまりそれは、「雪風」のタバサと同系統のメイジ。
「それとは少し違うんだけど……気をつけて。奴はまだやられちゃいない」
「嘘だろ! あの大爆発のど真ん中にいたんだぞ!?」
「いや、そいつの言うとおりだぜ相棒。よおく見てみな」
爆発で生じた灰燼が消えてくると、その中から炎に包まれたメンヌヴィルが姿を現した。
あの大爆発の最中にもかかわらず、傷一つ負っていない。
「オレは火のメイジ。故にオレの炎の鎧はオレの炎以下の炎など通さん。さあ、次はお前が焼け焦げる臭いをオレに嗅がせてくれ」
にい、とメンヌヴィルは唇を歪ませる。
男が杖を突き出し、炎の塊が次々と繰り出される。
射線上の少年は、来るのが分かっていたかのようなタイミングで横っ飛びに回避。
と同時に、サイトはメンヌヴィルに向かって駆け出す。
援護するように、淡青色結晶の槍が男を取り囲み逃げ場をなくす。
そして振り上げた剣はメンヌヴィルを斬り……裂かなかった。
「甘いわ!」
杖を振るい周囲の結晶を焼き払う。が、それに呼応して大爆発が引き起こされた。
「く……!」
爆風を覚悟して剣を構えたが、予想した爆発の衝撃はやってこない。
気づけば、いつの間にやらサイトの傍まで駆け寄っていた少年が、片手を突き出している。
「風のメイジなの!?」
ルイズは叫ぶ。
氷の槍や風の防壁で爆発から身を守る技術。つまりそれは、「雪風」のタバサと同系統のメイジ。
「それとは少し違うんだけど……気をつけて。奴はまだやられちゃいない」
「嘘だろ! あの大爆発のど真ん中にいたんだぞ!?」
「いや、そいつの言うとおりだぜ相棒。よおく見てみな」
爆発で生じた灰燼が消えてくると、その中から炎に包まれたメンヌヴィルが姿を現した。
あの大爆発の最中にもかかわらず、傷一つ負っていない。
「オレは火のメイジ。故にオレの炎の鎧はオレの炎以下の炎など通さん。さあ、次はお前が焼け焦げる臭いをオレに嗅がせてくれ」
にい、とメンヌヴィルは唇を歪ませる。
「もう四の五の言ってられないね。あれを防ぐような奴が相手だ。奥の手を使うから、少しの間あいつを引きつけて」
少年は意を決したように、ナイフを握りなおすと、メンヌヴィルの横側に回りこもうと走り出した。
「させるか、小僧!」
当然男は少年を狙おうと杖を持ち上げるが、
「てめえの相手はこっちだぜ!」
その隙に接近していたサイトが剣を叩きつける。
メンヌヴィルはたまらず、振り下ろされる剣を杖で受け止めた。
「小癪な。ならばまずは、貴様から焼き尽くしてやろう」
そういってサイトに向けて炎球を放った。
「うあああっ!!」
剣で受け止めるが、その火が刀身に燃え移り消えない。
「サイト!!」
叫び声一つ、ルイズの失敗魔法がメンヌヴィルに叩きつけられる。
爆発をまともに受けて、メンヌヴィルはうめき声をあげながらよろめいた。
その一瞬の間にメンヌヴィルの死角に接近していた少年が、ナイフを突き刺し間髪入れず逆の手をメンヌヴィルに突き出す。
するとメンヌヴィルを包み込む空間が、一瞬揺らめいたかと思うと、その刹那メンヌヴィルはどこかに消え去ってしまった。
「はあー。寿命が縮まったよ。できればもう二度と相手にしたくない」
少年はため息ひとつ。ナイフをしまいながら脱力した。
サイトとルイズも同じ思いだった。
少年は意を決したように、ナイフを握りなおすと、メンヌヴィルの横側に回りこもうと走り出した。
「させるか、小僧!」
当然男は少年を狙おうと杖を持ち上げるが、
「てめえの相手はこっちだぜ!」
その隙に接近していたサイトが剣を叩きつける。
メンヌヴィルはたまらず、振り下ろされる剣を杖で受け止めた。
「小癪な。ならばまずは、貴様から焼き尽くしてやろう」
そういってサイトに向けて炎球を放った。
「うあああっ!!」
剣で受け止めるが、その火が刀身に燃え移り消えない。
「サイト!!」
叫び声一つ、ルイズの失敗魔法がメンヌヴィルに叩きつけられる。
爆発をまともに受けて、メンヌヴィルはうめき声をあげながらよろめいた。
その一瞬の間にメンヌヴィルの死角に接近していた少年が、ナイフを突き刺し間髪入れず逆の手をメンヌヴィルに突き出す。
するとメンヌヴィルを包み込む空間が、一瞬揺らめいたかと思うと、その刹那メンヌヴィルはどこかに消え去ってしまった。
「はあー。寿命が縮まったよ。できればもう二度と相手にしたくない」
少年はため息ひとつ。ナイフをしまいながら脱力した。
サイトとルイズも同じ思いだった。
さて命からがら助かったということで、そういえば少年の名前を聞いてなかったなと思い出した。
サイトが聞くと、ああそうだった、と頭を振って
「紹介が遅れたね。僕は天樹錬。便利屋をやりながら、あちこちで情報を集めてるんだ」
と手を差し出した。
「俺は平賀才人。でこっちが俺のご主人様のルイズ」
この世界には珍しい日本人風の名前だな、と思いながら、
「俺の知り合いにも一人便利屋がいるんだ。今は使い魔をやってて、名前はヘイズって言うんだけど」
「ヘイズ!? まさか、人食い鳩の!?」
「人食い鳩?」
この世界にはヘイズという有名な鳥の使い魔でもいるのだろうか、と思いながら、
「ヘイズは人間だよ。なんかでっかい船を持ってて、船が使い魔なんだ。確か船の名前はHunter Pigeon……」
「間違いない! 僕の知ってるヘイズだ。ああそうだ……それならこれをヘイズに渡しておいて」
そう言って少年は紙にサラサラと何かをかき、ルイズに手渡した。何か人名のようなものが英語の綴りで書かれている。
「えーと、エドワード・ザイン? あとはよく分からないや」
英語の成績はあまりよくないサイトである。
筆記体の入り混じった英文を読めるはずもなかった。
「とにかくそれを渡してくれれば、分かるはずだから!」
それだけ言い残して錬は去ってしまった。
サイトが聞くと、ああそうだった、と頭を振って
「紹介が遅れたね。僕は天樹錬。便利屋をやりながら、あちこちで情報を集めてるんだ」
と手を差し出した。
「俺は平賀才人。でこっちが俺のご主人様のルイズ」
この世界には珍しい日本人風の名前だな、と思いながら、
「俺の知り合いにも一人便利屋がいるんだ。今は使い魔をやってて、名前はヘイズって言うんだけど」
「ヘイズ!? まさか、人食い鳩の!?」
「人食い鳩?」
この世界にはヘイズという有名な鳥の使い魔でもいるのだろうか、と思いながら、
「ヘイズは人間だよ。なんかでっかい船を持ってて、船が使い魔なんだ。確か船の名前はHunter Pigeon……」
「間違いない! 僕の知ってるヘイズだ。ああそうだ……それならこれをヘイズに渡しておいて」
そう言って少年は紙にサラサラと何かをかき、ルイズに手渡した。何か人名のようなものが英語の綴りで書かれている。
「えーと、エドワード・ザイン? あとはよく分からないや」
英語の成績はあまりよくないサイトである。
筆記体の入り混じった英文を読めるはずもなかった。
「とにかくそれを渡してくれれば、分かるはずだから!」
それだけ言い残して錬は去ってしまった。
Hunter Pigeonの操縦席。そこでキュルケが語ったのは、二人がいかにして出会いそして仲良くなったのかという話だった。
「ド・ロレーヌやトネー・シャラントたちが、髪と服を燃やされて塔から逆さづりになってたあの事件は、あんた達の仕業だったのね」
「ええ、そうよ」
あきれたようなモンモランシーの声に、満足げに答えるキュルケ。
「しかし自業自得とはいえほとんどリンチみたいなものだね」
「貸し借りというよりは、キュルケ様が個人的に痛めつけたかっただけではないかと推測します」
ギーシュとハリーは同様に、意見を述べた。
ヘイズもおおむね同意見であった。
が、ヘイズは気づいた。確かにそれは友情の証なのだろうと。
ヘイズは思い浮かべる。
何もかも失い、この世に絶望しきっていたあの日、食料目当てに押し入ったあの家で出会った恩師を。
リチャード・ペンウッド。先生と呼ばせるあの男がいなければ、便利屋として今までやってくることはできなかった。
タバサも留学生としてやってきた学校で、初めてできた友人。
師弟と友人という違いはあれど、それは大きな存在だったに違いない。
そう思い、ヘイズは思い立ったように言葉を吐き出す。
「よし、そういうことならオレも今日からタバサの友達だな。便利屋と雇用主でも使い魔と主でもなく、なんのしがらみもない友人同士ってことだ」
そう胸を張って発言したのだが、
「今更キミは何を言ってるんだね?」
「あんたたち、もうすでに友人同士じゃないの」
「しゃべれるようになった動物でも、使い魔が主を呼び捨てになんてしないわよ、普通は」
ギーシュにモンモランシーにキュルケに次々と否定された。
さらにタバサはというと、
「雇用契約は破棄。そのかわりずっといっしょにいること」
と無愛想な顔を赤くしながら呟いた。
このあと、ヘイズがキュルケたちに散々からかわれたのは言うまでもない。
「ド・ロレーヌやトネー・シャラントたちが、髪と服を燃やされて塔から逆さづりになってたあの事件は、あんた達の仕業だったのね」
「ええ、そうよ」
あきれたようなモンモランシーの声に、満足げに答えるキュルケ。
「しかし自業自得とはいえほとんどリンチみたいなものだね」
「貸し借りというよりは、キュルケ様が個人的に痛めつけたかっただけではないかと推測します」
ギーシュとハリーは同様に、意見を述べた。
ヘイズもおおむね同意見であった。
が、ヘイズは気づいた。確かにそれは友情の証なのだろうと。
ヘイズは思い浮かべる。
何もかも失い、この世に絶望しきっていたあの日、食料目当てに押し入ったあの家で出会った恩師を。
リチャード・ペンウッド。先生と呼ばせるあの男がいなければ、便利屋として今までやってくることはできなかった。
タバサも留学生としてやってきた学校で、初めてできた友人。
師弟と友人という違いはあれど、それは大きな存在だったに違いない。
そう思い、ヘイズは思い立ったように言葉を吐き出す。
「よし、そういうことならオレも今日からタバサの友達だな。便利屋と雇用主でも使い魔と主でもなく、なんのしがらみもない友人同士ってことだ」
そう胸を張って発言したのだが、
「今更キミは何を言ってるんだね?」
「あんたたち、もうすでに友人同士じゃないの」
「しゃべれるようになった動物でも、使い魔が主を呼び捨てになんてしないわよ、普通は」
ギーシュにモンモランシーにキュルケに次々と否定された。
さらにタバサはというと、
「雇用契約は破棄。そのかわりずっといっしょにいること」
と無愛想な顔を赤くしながら呟いた。
このあと、ヘイズがキュルケたちに散々からかわれたのは言うまでもない。