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ゼロHiME~嬌嫣の使い魔~ 第六話


 「ほな、厨房のほうへいってきます」
 「それじゃ、後で合流しましょ」

 掃除が終わり、一緒に食堂に向かったルイズと静留が入り口で分かれようとした時、中から男女が押し問答するような声が聞こえてきた。

 「シエスタさん……?」
 「ちょっと、シズル!」

 声を聞いて駆け出した静留を追って食堂に入ったルイズが目にしたのは、おろおろとして立っているシエスタと、その彼女になにやらクレームをつけている金髪の巻き毛と胸に挿した薔薇がトレードマークの学友ギーシュ・ド・グラモンの姿だった。

 「君のおかげで2人のレディの名誉が傷ついてしまった、どうしてくれるんだね?」
 「も、申し訳ありません、どうかお許しを」

 シエスタは怯えた表情でギーシュにぺこぺこと頭下げる。

 「一体、何があったの?」
 「シエスタさん、なんぞ粗相でもしてまいましたん?」
 「ああ、あれ? あのメイドが親切に落とし物を拾ったのが原因で、モンモランシーとケティとの二股がばれたギーシュが八つ当たりしてるとこよ」

 ルイズと静留がそばにいたキュルケに尋ねると、馬鹿馬鹿しいといった感じで答える。

 「大体、僕が知らないと言ってるんだから、適当に話をあわせて後でこっそり渡すとか機転を利かしてくれたまえ。まったく、これだから君ら平民は――ぷべらっ!」

 更に言葉を続けようとしていたギーシュは、急に奇声を上げて吹っ飛ぶ。いつの間にかシエスタとギーシュの間に割り込んでいた静留が、ギーシュの顔面に右の拳を思いっきり叩き込んだのだ。

 「なっ……!」 
 「なかなかやるわね」

 静留の行動にルイズや周囲が驚愕の声(キュルケは賞賛の声)を上げる。

 「へ、平民の分際で……父上にも殴られたこともないのに」
 「そらどうも失礼しましたな。二股かけて失敗した上に、それをシエスタさんに当り散らす甲斐性なしがおったさかい思わず殴ってしもたわ。大方、その殴ったことないあんたの父親いうんも息子と同じ甲斐性なしなお方なんやろけど」

 頬を押さえて睨みつけてくるギーシュに向かって、静留は見下すような笑顔でしれっと言い放つ。

 「貴様、僕だけでなく父上まで愚弄したな! もう許さんぞ、決闘だ!」
 「決闘どすか、随分ともっさいプライドどすなあ」
 「くっ……ヴェストリ広場で待つ、逃げずに必ず来たまえ。君に貴族への礼儀というものを教えてやる!」

 ギーシュはそう言い捨てると、友人達を引き連れて食堂から出て行った。

 「ああ、私のせいでとんでもないことに……一体どうすれば」
 「シエスタさんは気にせんでもよろし。うちが勝手にこうた喧嘩やし」  
 「でも、相手は貴族なんですよ……シズルさん、殺されちゃいます……」

ギーシュが出て行った後、静留は真っ青な顔でガタガタと震えるシエスタに優しく声をかけるが、シエスタはそのまま泣き崩れてしまう。

 「ほら涙をふきなはれ、うちは大丈夫、安心しなはれ」

 静留はシエスタを抱き起こし、涙を拭いて落ち着かせると厨房の方へ戻らせる。

 「シズル、あなた何やってるの! 貴族相手に喧嘩売るなんて!」
 「何ぞ、不味いことでもありますん?」

 シエスタと入れ替わりに駆け寄って来たルイズに、静留はけろっとした表情で答える。

 「当たり前でしょ! 平民が貴族に勝てるわけないんだから!」
 「おや、心配してくれはりますん? うれしいおすな」
 「べ、別にそういう訳じゃ……と、とにかく、勝手に決闘して怪我なんかされちゃ主人である私の恥になっちゃうんだから、ギーシュに謝ってきなさい!」

 静留の妙にうれしそうな言葉にどぎまぎしながらルイズはギーシュに謝罪するよう命令したが、静留は首を振って拒否の意思を示す。

 「残念やけど、その命令だけはきくわけにはいきまへん」
 「なんでよ」
 「ルイズ様、うちは娘さんを泣かす男だけはどうしても許しておけへんのどす。せやから、この決闘、認めておくれやす」

 そう言うと静留は命令を拒否され、不満げに頬を膨らませるルイズをその緋色の瞳でじっと見つめる。
 ルイズも負けじと静留の瞳を見つめ返すが、やがて根負けしたのか大きなため息を吐いてぷいっと顔をそらした。

 「ああ、もう分かったわよ! 静留の好きにしなさい。そのかわり、受ける以上は負けたら承知しないんだから! いいわね、分かった?」
 「安心しておくれやす。ルイズ様のお墨付きもろた以上は負けしまへん」

 (本当にこれでよかった――のかしら?)

 許可を出したものの、ルイズはいまいち自信が持てなかった。


 食事を終えた静留たちが広場に着くと、既にギーシュとその取り巻き、噂を聞いた大勢の野次馬が集まっていた。

 「諸君! 決闘だ!」

 ギーシュが胸に挿した薔薇の造花を手にして掲げると、広場から歓声が巻き起こる。

 「ギーシュが決闘をするぞ! 相手はルイズの平民だ!」

 (ようまあぎょうさん集まりはりましたなあ。よっぽど暇なお人が多いんやろか)

 「待っていたよ、ルイズの使い魔のお嬢さん。逃げずにここへ来たということは、この青銅のギーシュにさっきの非礼を詫びてくれるのかな? もっとも許しはしないがね」
 「青銅だかガランドウか何や知らんけど――うちが詫びなあかんことは何もあらしまへんえ? 寝言は寝てから言いなはれ」

 優雅なポーズを決めて言い放った口上に対する静留のけんもほろろな返答に、ギーシュは顔を引きつらせる。

 「まったく主人に似てずいぶんと強情な使い魔のようだな。詫びを入れれば少し痛い目を見る程度ですませてやろうと思っていたが……いいだろう、存分に痛めつけてやるから覚悟したまえ――いでよ、ワルキューレ!」

 ギーシュが手にした薔薇を振るうと、花弁が一枚零れ落ち、青銅製の武装した乙女を模したゴーレムが現れた。

 「僕はメイジだ。だから魔法で戦う。よもや文句はあるまいね? これが僕のワルキュ……え?」

 ギーシュが自慢げにワルキューレの説明をしようとした瞬間、風を切るような音と共にワルキューレが切り刻まれ、ガシャガシャと音を立てて地面に転がる。

 「おやおや、大層な登場のわりには、随分と脆いお人形さんやねえ」

 ギーシュを周囲が唖然としている中、ムチ状になった『殉逢』の刃先を収めながら静留が拍子抜けしたような口調で呟く。

 「な、なんだ、それは! どっから出した!」
 「別にどっからでもよろしおす。それより、お人形さんがのうなったみたいやけど……まだ続けはりますん?」
 「くっ――誰がやめるものか! この青銅のギーシュをなめるなぁッ!」

 静留の言葉に怒り狂ったギーシュは6つのワルキューレを呼び出すと、一斉に静留に向かって突撃させた。
四方から押し寄せるワルキューレに静留が押し潰されると誰もが思った瞬間、静留は上に向かって跳躍し、ワルキューレの突撃を交わす。そのまま『殉逢』を上段に振りかぶり、互いに激突した反動で無様に転倒したワルキューレ達に向かって一閃させ、6つのうち5つを瞬時にバラバラに切り裂いた。

 「――ば、馬鹿な!」

 ギーシュは慌てて残る一体を自分の盾にするが、あっけなく切り裂かれた上に石突きを腹に叩き込まれ、地面に転がった。

 「ぐうぅ……ま、まだ……終わらん……」
 「残念やけど、これで詰みましたえ」

 静留はそう言って、なんとか身を起したギーシュの喉元に『殉逢』の切っ先を突きつけた。

 「ま、参った! 僕の負けだ、勘弁してくれ」
 「ほな、うちの勝ちどすな」

 ギーシュは冷や汗ダラダラで敗北を宣言し、静留が『殉逢』を消し去ると、そのまま地面にへたり込んだ。

 「さあ、勝者の権利で、煮るなりなり焼くなり好きにしたまえ!」

 負けたのがよほど悔しかったのか半ば自棄になって叫ぶギーシュに、静留はやれやれといった感じで声をかける。

 「勝ったからって別にどうもしませんえ。ただ、うちはシエスタはんと二股掛けた娘らに謝って欲しいだけなんどす」
 「分かった、彼女達に謝るよ」

 てっきり無理難題を吹っかけてくると思っていたギーシュは、『謝るだけでいいうという』静留の言葉にほっとした表情を浮かべて答える。

 「それでよろし。ギーシュさん、これに懲りたら二度と娘さんを泣かしはらんように精進しなはれや。それから――今度同じことしはりましたら、泣いて謝っても許しまへんえ」

 静留は最後に笑顔で念押しすると、広場から立ち去る。その笑顔はゾッとするような凄みがあり、周囲の生徒達――特に男子は恐怖に震えながら彼女を見送った。
 しかし、それを向けられた当の本人であるギーシュにはそうは見えなかったようで――

 「ああ、なんという慈悲に満ちた女(ひと)なんだ! 敗れた僕に気遣う言葉をかけた上に微笑んでくれるとは! 彼女こそ僕の女神だ!」

 などと、とんでもない見当外れな勘違いを恍惚した表情で絶叫し、周囲の生徒達をドン引きさせていた。

 「ギイィ~~~シュ!」

 そんなギーシュに二股にかけられたうちの一人、見事な金髪巻き髪の少女――モンモランシーが憤怒の表情で近づいてくる。

 「やあ、モンモラ……ぐはっ!」
 「こんの浮気もんが~、往生せいや~!!」
 「うぎゃあああ~~~~!」

 広場にモンモランシーのストンピングキックの嵐を受けるギーシュの断末魔の叫びがひびきわたった。


 さて、中央塔の最上階、学院長室。
 決闘の一部始終を『遠見の鏡』で見ていたオスマンとコルベールは顔を見合わせた。

 「み、見ましたか、オールド・オスマン! 自在に取り出せる武器を振るい、ワルキューレをいとも簡単に切り伏せたあの姿! 彼女こそ伝説のガンダールヴです! 早速、王宮に報告して指示を仰ぎませんと」
 「それには及ばん」

 興奮するコルベールを手で制すると、オスマンは厳しい口調で言葉を続ける。

 「彼女が本当に強大な力を持つ伝説のガンダールヴだとすれば、万が一にも王室の連中に存在を知られてはいかん。あのボンクラどもに戦の口実になる戦争の道具を与えることになっては堪らんからの」
 「はっ!」

 コルベールは顔を引き締めると慌しく部屋から出て行った。

 「……しかし、全然見えんかったのう……あの娘の下着……のう、モートソグニルや」

 机の上でチーズを齧る自分の使い魔であるハツカネズミに、オスマンはぼやいた。



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