あの作品のキャラがルイズに召喚されました @ ウィキ

虚無の王-06


 トリステイン魔法学院の図書館を訪れた空が最初にした事は、頭上を見上げる事だった。天井が高い。無闇に高い。大聖堂だって、ここまでは高くは無いだろう。なにより驚くべきは、立ち並ぶ本棚だ。ざっと見た所、高さは30m余。
 これは最早、凄いと言うより馬鹿げている。
 学院の図書館は当然、メイジの為に在る。平民が立ち入る場所では無い。司書は空を見咎めたが、結局、何も言わなかった。約束通り、コルベールは話を通しておいてくれたらしい。
 取り敢えず、閲覧席を探す。
 オスマンやコルベールとの約束――――自分が元の世界に戻れる様、協力する――――を、空は当てにしていない。
 ルイズの使い魔を自分に押し付けた時点で、オスマンにとって、この面倒な問題は解決済みだろう。コルベールにしても、唯一話が合う相手との別れを、積極的に望むとは考え難い。
 帰る方法は自力で見付けなければならない。その為にも、文字の読み書きを憶える必要が有る。学習課程で、ルイズにテキストを書いてやるのも良いだろう。彼女がその気になれば、だが。

 閲覧席では、一人の女の子が読書に耽っている。昨日、車椅子を起こし、帽子を拾ってくれた子だ。よほど夢中なのだろう。青い瞳をキラキラと輝かせている。

「よ、嬢ちゃん。昨日はアリガトさん」

 その挨拶に、タバサは何の反応も示さなかった。

「もしもーし」

 返事無し。肩を叩いても、振り向かない。

「おーい」

 タバサは本を閉じた。満足気な吐息が漏れる。数秒、読後の余韻に浸ると、立ち上がり、杖を振るった。レビテーションの魔法だ。今し方手にしていた本を大きな大きな本棚に収め、次なる一冊を物色している。
 その姿を真下から見上げつつ、空は図書館に人が居ない理由が何となく判った。この構造では、女生徒は使用を控えるだろう。当然、男子生徒にも来る意味が無くなる。タバサの様な幼女を目当てとする、特殊な趣味の持ち主も居ない、と言う訳だ。

「しっかし、とことんシカトかい」

 少し、気分が悪い。あの仏頂面から、どんな物でもいい、リアクションを引き出してやれないものだろうか。取り敢えず、タバサが使用していた椅子を退けて、席を占拠する。
 数冊の本を抱えて、タバサが戻って来る。さて、彼女はどうするだろう。使っていた席には、空が居る。断固自分の権利を主張して、退くように要求するのか、衝突を避けて、別の席を選ぶのか。その時には、どんな顔を見せるのか――――
 結論から言うと、空の予測はどちらも外れた。タバサは何事も無かったかの様に元居た場所へ座り、何事も無いかの様に本を開いた。



「あんな、嬢ちゃん――――」

 ちょこんと膝の上に座り、黙々、読書を始めたタバサに、空は言った。驚くべきマイペースぶりだ。

「ちょいと、頼みが有るんやけど」

 返事が無い。視界の両脇に収まる様に、両手の指をうねらせて見せる。卑猥な動きだ。伊達に、女を悦ばせて来てはいない。それでも無反応。超マイペース人間同士だが、今は互い、相手の奇行に動じてはやらぬと、意地になっているきらいも有る。
 しゃあない――――空は人差し指を立てる。
 タバサはピクン、と身を強張らせた。空の指先が、触れるか触れないかのタッチで背筋をなぞったからだ。

「何?」

 漸く、返事が返って来た。これでも振り向かないのは、天晴れと言うべきだろうか。

「嬢ちゃん、字の読み書きを教えてくれへん?」
「読み書き?」
「せや。ワイ、この国の字読めへんで、ごっつう不便しとってな。な、頼むわ」

 タバサは少し考え、

「条件が有る」

 昨日の使い魔召喚儀式。空は体をまるで動かさずに、契約の儀に及ぼうとするルイズの下から抜け出した。その時、足下の草原が靡き、舞い散った事を、タバサは見逃していない。
 空は“風”を操った。杖も持たず、いや、魔法さえ使わず。

「それを教えろ、て?」

 タバサは無言で頷いた。

「別にええで。せやけど、ここでやったら、大変な事になりよるからな。今度、て事でええか?」

 また、頷く。

「そう言えば、教室で嬢ちゃんの顔を見いへんかったけど、サボリ?」
「昨日は合同」
「なるほど。別クラスやったか」

 タバサとルイズはクラスが違う。とは言え、彼女のクラスを訪ねた所で、やはりその姿を見る事は出来なかっただろう。尤も、それはいちいち言う必要も無い事だ。

「教材」

 短く言うと、タバサは一番薄い本を開いた。



 アルヴィーズの食堂――――
 ルイズはぼんやりと匙を進めていた。味が判らない。そもそも何を食べているのかも判らない。先刻の会話が、頭をぐるぐると回っていた。

 ワイが“空”の飛び方、教えたるっ――――

 空はそう言った。ルイズは即答出来なかった。気付いた時、言っていた。

「……イカロスに飛び方を教わる程、馬鹿じゃないわよ――――」

 自分は何故、あんな事を言ってしまったのだろう。
 空がイカロスの話を口にしたのは、同級生がフライの魔法で、教室に向かう所を目撃した時だ。あの時は、単純に馬鹿な平民の、馬鹿な話だと思っていた。
 だが、空は言った。飛び方を教える、と。
 空の言う“飛ぶ”は目標の実現だ。だとしたら、あのイカロスの寓話は、単純に愚か者の話では無く、夢を追いかけ、挫折した男の話ではないのか。そして、空は自分をイカロスに準えているのではないだろうか。
 空にとっての、蝋で固めた翼は、あの脚ではないだろうか。
 そこまで考えた時、大きな笑い声が耳を刺した。デザートを待つ間、気の早い歓談に興じる生徒達の声だ。

「なあ、ギーシュ!お前、今は誰とつきあってるんだよ!」
「誰が恋人なんだ?ギーシュ!」
「つきあう?僕にその様な特定の女性はいないのだ。薔薇は多くの人を楽しませる為に咲くのだからね」

 そこでは、金の巻き髪にドレスシャツのキザ男、ギーシュ・ド・グラモンが冷やかす友人達をあしらっていた。

(馬鹿みたいっ)

 内心でルイズは唇を尖らせる。
 年頃ながら、ルイズは色恋沙汰に興味を示さない。婚約者のワルド子爵に比べたら、同級生など子供っぽく見えてならないのだ。そんな彼女の態度を、女生徒達はお高く止まっている、と忌み嫌う。
 加えて、ルイズは容姿端麗、学問優秀な優等生で、態度も至って強気。おまけに公爵家の四女と来ている。魔法を使えない事を徹底的に馬鹿にされるばかりか、お為ごかしに庇って見せる友人の一人も居ないのは、当然と言えば当然だった。

 正面に向き直ると、ルイズは再び考え込む。
 召喚。そして契約から、未だ二日目だ。自分は空の事を殆ど知らない。判っているのは、おかしな事に詳しい事、弟が居る事、犬を三匹飼っている事、
異世界から来た事(自己申告)、系統に相当する“道”を極めた元“王”である事(かなり疑わしい)、そして恐らく、過去に大きな挫折を経験している事。それだけだ。
 空の住んでいた国は、どんな場所なのだろう。そこで、どんな生活を送っていて、どんな人生を歩んで来たのだろう。自分が召喚する事で、その全てを奪ってしまった。事の重大さに改めて思いが至り、ルイズは睫を伏せる。
 その事について、空は恨み言の一つも言わない。それ所か、自分が認められるように協力する、とさえ言う。

 爆発はお前にしか起こせへん。お前だけの魔法やろ――――

 思えば、そんな風に言ってくれたのも、空が始めてだ。今までは、家族も、クラスメートも、誰もが自分の失敗を笑うだけだった。 自分を馬鹿にしない相手。自分を認めてくれる相手。空の言葉が嬉しくないと言えば嘘になる。
 だが、その申し出を受けるか、となると別問題だ。
 何か系統に目覚めたのか――――そう父に問われた、とする。

「はい。爆発の系統です」

 そんな風に答えられる訳が無い。
 常に革新を追い求める、アナーキズムの権化ストームライダー。
 伝統を継承し、秩序を担う封建貴族。
 両者の間には埋め難い溝が有る。
 だが、今のままでは空が言う通り、10年経っても何の成果も出ないかも知れない。



 そこまで考えた時だ。突然の鋭い音が、ルイズの思考を断ち切った。無視しようとした時、どこかでガラスが砕けた。グラスを落としたにしては大きく、必要以上に重い音――――何事だろう。
 割れたのは、ワインの瓶だった。割れた場所は、ギーシュの頭だった。キザ男が自らの血と赤い葡萄酒にまみれて、頭をフラフラと揺らす中、暴行犯モンモランシーは寧ろ自分が被害者であるかの様な顔で走り去った。
 どうせ、恋愛ゴッコの末の、馬鹿馬鹿しい痴話喧嘩だろう。無視して、考え事を続けようとした時、

「おい、君!君が軽率に、香水の瓶なんかを拾い上げたおかげで、二人のレディの名誉が傷付いた!どうしてくれるんだね!」

 ギーシュの怒鳴り声がした。貴族らしからぬ、粗暴な声だった。

「あー、もうっ!っるさいわねっ!」

 人が考え事をしていると言うのに、なんと言う事だろう。怒りに駆られて、ルイズは立ち上がった。




「なんか、下が騒がしないか?」
「気のせい」

 図書館――――二人は相変わらずの状態で、勉強を続けていた。タバサが単語の一つ一つを指差しながら音読、空は要点をメモしながら、携帯に録音する。

「やっぱり。食堂で何か起きとる」

 実の所、その声はタバサにも聞こえていた。空と言う闖入者は居るにしても、本の世界に入り込んでいた彼女は、敢えて無視したのだ。だが、食堂と聞いて考えが変わる。
 読書に夢中で、昼食を忘れていた。よく有る事だ。だが、健啖家のタバサにとって、一食抜きは辛くは無いにしても、極めて無念な事だった。

「ちょいと様子、見に行こか」

 一も二も無く同意すると、空は出入り口に向かう代わりに、窓を開けた。車椅子がジャンプする事に驚く間も無く、外に飛び出す。
 ここの高さはどのくらいだっただろう。自身の使い魔シルフィードを呼ぶべきか。杖を振るうべきか――――直後に、タバサはそれが必要無い事に気付いた。
 車椅子の車輪が、塔の壁を捉える。その瞬間に加速。地面が恐るべき速さで近付いて来る。
 落ちているのでは無い。エア・トレックの初歩、壁走り〈ウォール・ライド〉。
 車椅子は確かに、壁面を走っていた。



 目の前にルイズが居る。肩をいからせ、眦をつり上げている。

 何故、こんな事になってしまったのだろう――――

 ギーシュ・ド・グラモンは内心、困惑していた。
 事の発端はポケットから転げ落ちた香水の瓶だ。モンモランシーから送られた、紫色の香水。メイドの娘がそれを拾い上げて、テーブルに置いた。
 御陰でケティに二股がばれた。連鎖反応でモンモランシーにも浮気がばれる。頬を張られ、ワインの瓶で頭をカチ割られた。
 心臓の鼓動と、髪を濡らす流血のリズムは、完全に一致していた。人体の不思議に思いを馳せている時、飛翔の靴を履いたメイドは、遙か彼方に走り去っていた。
 正直、あの時は頭に血が上っていた。文字通りの意味だ。金髪の半ばが赤毛に染まる。

「おい、君!」

 大声でメイドを呼び戻し、説教をした。君の軽率な行動が、二人のレディの名誉を傷つけた。どうしてくれるのだ――――
 メイドはひたすら頭を下げ続けた。頭から血の気が抜けた御陰か、徐々に冷静さが戻って来ると、自分のしている事が、なんとも馬鹿らしく感じて来た。平民に貴族の機知を要求してどうする。

「もういい。行きたまえ」

 そう言おうとした。それで終わる筈だった。その時、間に割って入って来たのだ。ゼロのルイズが。

「あの二人の名誉を傷つけたのはあんたでしょ。恥知らずにも二股をかけたあんたよ。それを平民のメイドに八つ当たり?馬鹿じゃないの?」

 ルイズは何時にもまして毒舌だった。どうやら、虫の居所が悪いらしい。そう言えば、どこかの教室から爆音が聞こえた記憶が有る。とにかく宥めよう――――拍動する頭で考えた時、友人達や周囲の女生徒が声を上げた。

「そうだ!お前が悪い!」

 ここで、ギーシュはカっとなってしまった。貴族同士の私闘は禁止されている。もし、引くに引けない状況に陥りそうになったら、まず、周囲で煽る人間を黙らせろ――――そんな兄達の教えも、すっかり頭から消えた。
 言い争いが始まった。あまりの烈しさに、実はギーシュは三股をかけていて、その相手がルイズなのでは、と囁く声さえ出る始末だ。

「何故、そのメイドを庇って、僕に噛みつくんだい?そうか、君はゼロだからな!同じ様に魔法を使えない平民を、お友達とでも勘違いしたんだろう!」
「ふん!あんたなんか、一生薔薇でもしゃぶっていればいいんだわ!」

 こうなれば、売り言葉に買い言葉だ。言い争いが、罵詈雑言の応酬に変わるまで、さしたる時間は必要無かった。
 暫くすると、形勢は目に見えて傾き始めた。元々、ギーシュはボキャブラリーに乏しい。対して、ルイズは怒ると多弁になるタイプだ。ナルシストの少年は忽ち追い詰められた。
 ギーシュの手が懐に伸びた事で、罵り合いは無言の睨み合いに変わった。決闘は禁止。だから、なんだ。ここまで言われて、黙って引き下がれるものか。相手の雰囲気を察して、ルイズも杖に手を伸ばす。
 すわ、決闘か――――野次馬達が固唾を飲んだ時だ。二人の間に一陣の“風”が滑り込んだ。



 小さな悲鳴が、立て続けに上がった。室内に小型の風竜が飛び込んでくれば、誰だって平静ではいられない。巻き起こる風がナプキンを、テーブルクロスを舞い揚げ、燭台を倒し、皿を、グラスを粉砕する。

「到着――――」

 車椅子がカーペットを引き裂き、片輪状態で急停止。空転していたモーターホイールが停止した時も、食堂の生徒達は唖然としたままだった。
彼等にとって、車椅子とは、塔の外壁を駆け下り、石段を一っ飛びに跳び越え、時速100リーグで走れる様な代物では無い。
 一番、驚いているのは眼前でその姿を捉えた二人だ。ギーシュも、空の膝に腰掛ける女の子を発見したルイズでさえ、声も無い。
 タバサは何事も無かったかの様に車椅子から降りると、自分の席に向かう。良かった、食事は片付けられていない――――何事も無かったかの様に祈りを捧げ、何事も無かったかの様に食事を始める。

「あんた、何してたの?」
「彼に本を読んで上げていた」

 その光景を想像して、キュルケは吹き出した。誰がどう見ても、タバサ“が”本を読んで貰っている様にしか見えなかっただろう。
 取り敢えず髪を整えてやる。勉強中、何か新しい発見がある度に空が撫で回した御陰で、水色の髪は乱れ放題乱れる所か、所々絡んでいた。
 一方――――

「なんだ、君は?――――ああ、あの時、召喚された平民か」
「お、兄ちゃん。昨日はドモな」
「君。貴族の間に割って入るとは、どう言うつもりだ?どうやら主人からまともに躾を受けていないと見えるな」
「まあまあ。で、ルイズ。何が有った?」
「大した事じゃないわ――――」

 激高するギーシュをよそに、ルイズは説明する。

「なるほど、そら兄ちゃんが悪いわ。たかだか二股バレたくらいでフラレる、てだらし無さ過ぎやろ」

 空は当然の結論を出したが、理由があまり当然では無かった。何、あいつ――――その言葉は当のギーシュよりも、寧ろルイズを始めとする女生徒達の反感を買っていた。

「まあ、兄ちゃん薔薇やってからなあ。しゃあないわ。薔薇一輪やったら、奪り合いになるの決まっとる」

 ――――だが、自分は違う。空は続ける。

「その点、ワイは“空”やからな。誰もが仰ぐ、でっかい“空”や。モテたでー、悪いけど」

 冷たい目線の幾つが、生暖かい物に変わった。そうか、こいつは“馬鹿”なのだ。ギーシュに輪をかけた馬鹿だ。この時、別の意見を持った30人弱、ルイズのクラスメートはその殆どが姿を消していたが、それを見咎める者は居なかった。



「ま、失恋もまた楽し。兄ちゃんもめげすに気張れや」

 そう肩を叩く手を、ギーシュは乱暴に払い除けた。空は苦笑を浮かべた。自分が戯ければ戯ける程、生真面目に目を釣り上げるその態度は、嘗ての僚友を彷彿とさせた。

「どうやら、貴族に対する口の利き方を知らない様だな」

 声が、怒りに震えている。

「オイオイ……ま、兄ちゃんには一度世話なっとるし、怒らす気、無かったさかい。取り敢えず、同じ平民のシエスタと、不肖の御主人様に成り代わって謝っとくけど……ゴメンチャイ♪」

 笑顔の一言は、ギーシュの神経を鉋の様に逆撫でした。無意識の内に薔薇を象った杖を抜き放ち、気付いた時には迷わず、相手の鼻先に突きつけていた。決闘禁止令など、最早頭のどこにも残っていない。土台、法で慣習を駆逐するにも限度が有る。

「よかろう!君に礼儀を教えてやろう!丁度いい腹ごなしだ」
「ギーシュ!決闘は禁止されている筈よ!」

 これは何の冗談だ。そう尋ねようとした空は、ルイズの一言で納得した。それにしても、決闘を挑むのに薔薇を使うとは、おかしな作法も有る物だ。やはり、この国は変わっている。

「冗談やない。決闘つーのは、一人前の男がやるもんやろ。半人前を相手に出来るかい」

 純情な少年の勇敢な申し出を、空はすげなく断った。

「逃げるのか!なるほど、魔法を知らないメイジの使い魔が、礼儀も、勇気も、名誉も知らないのは当然だな!さすがは、ゼロのルイズの使い魔だ!」

 傍から見ていたキュルケは、思わず額を抑えた。空から笑顔が消えている。どうやら、ギーシュは狼の尻尾を踏んだらしい。

「……ま、ワイも臆病風に吹かれた、言われるんは不本意やし……ほんなら、ワイから申し込もか」
「なんだって?」
「そや。こないなんどや?なんたら言う推定二人のお嬢ちゃんと、シエスタと、まあついでに御主人様の名誉回復の為に――――!」

 空の手が、不意に肩を叩いた。マントの肩章。グラモン家の家紋が縫い付けられた場所だ。ギーシュは反射的に目を落とし、愕然とする。そこには、見た事も無い紋章が上張りされていた。

「賭けい。誇り〈エムブレム〉を」

 食堂中にわっ、と声が広まった。ルイズは驚きのあまりに声を失い、当のギーシュは真っ青な顔で身を震わせている。家紋を汚された――――貴族にとって、これ以上の屈辱は無い。

「け、けけけ……――――っ」
『決闘だ――――っ!!』

 怒りのあまりに、声も出ないギーシュに代わって、生徒達は一斉に叫んだ。


 ――――To be continued


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