「マコトを捨てて」
「それはもう死んでる」
「埋葬してやった方が彼のためだ」
「正直言って気持ち悪い」
「というか怖い」
などと言えるはずがない。言ったら言葉はノコギリで襲い掛かってきそう。
そうしたら魔法の使えない自分に勝ち目なんて無い。
だからルイズは我慢するしかなかった。
我慢できた理由は、責任。
自分が言葉を召喚してしまったからとか、コルベールの腕切断とか。
そういうものの責任を、使い魔の主として背負っているから、我慢できている。
つまりルイズ以外の人にとっては到底我慢できる問題ではない、という事。
「それはもう死んでる」
「埋葬してやった方が彼のためだ」
「正直言って気持ち悪い」
「というか怖い」
などと言えるはずがない。言ったら言葉はノコギリで襲い掛かってきそう。
そうしたら魔法の使えない自分に勝ち目なんて無い。
だからルイズは我慢するしかなかった。
我慢できた理由は、責任。
自分が言葉を召喚してしまったからとか、コルベールの腕切断とか。
そういうものの責任を、使い魔の主として背負っているから、我慢できている。
つまりルイズ以外の人にとっては到底我慢できる問題ではない、という事。
――ファイヤーボール等で鞄ごと焼却処分すればよくね?
――オールド・オスマンが固定化かけたらしいから無傷じゃね?
――あのジジイ、余計な事しやがって。油かけて燃やせばいけるんじゃ?
――仮に燃やせても、黒コゲ生首か頭蓋骨を持ち歩くだけじゃね?
――相手は平民なんだからシンプルに命令すればよくね?
――じゃあお前が命令してこい。腕を落とされてもいいならね。
――風の魔法で鞄を奪って、中身をどっかに埋めちゃおうよ。
――あ、それいい。そうしようそうしよう。
――オールド・オスマンが固定化かけたらしいから無傷じゃね?
――あのジジイ、余計な事しやがって。油かけて燃やせばいけるんじゃ?
――仮に燃やせても、黒コゲ生首か頭蓋骨を持ち歩くだけじゃね?
――相手は平民なんだからシンプルに命令すればよくね?
――じゃあお前が命令してこい。腕を落とされてもいいならね。
――風の魔法で鞄を奪って、中身をどっかに埋めちゃおうよ。
――あ、それいい。そうしようそうしよう。
マコトを捨てて、とは言えなかったけれど、床で寝なさい、は言えた。
言葉は文句ひとつ口にせず、毛布一枚で床に横たわる。
「床は硬いですね。でも大丈夫、誠君は私が抱いていて上げますから痛くありませんよ」
どうやら言葉は自分がどんな扱いを受けようと構わないようだ。
『誠と一緒』という条件さえ満たしていればの話だが。
床で寝なさい、がうまくいったから、誠を鞄に入れっぱなしに、と言ったら断られた。
「部屋にいる時は、誰の視線も気にする事なく、誠君と一緒にいられますから」
私の視線も気にしてよ、とルイズは嘆く。
とはいえ、これで寝起きにいきなり目覚まし生首を目撃しなくてすむ。
安心して眠ったルイズは、完璧に油断していた。
「ルイズさん、朝ですよ。起きてください」
起きた。
目の前に言葉がいた。
縦にふたつ、顔が並んでる。
上は言葉、下は誠。
「……そう来たか」
言葉は誠を抱いたままルイズを起こしたのだ。
ルイズは朝の洗顔のついでに、ほろりと涙をこぼすのだった。
言葉は文句ひとつ口にせず、毛布一枚で床に横たわる。
「床は硬いですね。でも大丈夫、誠君は私が抱いていて上げますから痛くありませんよ」
どうやら言葉は自分がどんな扱いを受けようと構わないようだ。
『誠と一緒』という条件さえ満たしていればの話だが。
床で寝なさい、がうまくいったから、誠を鞄に入れっぱなしに、と言ったら断られた。
「部屋にいる時は、誰の視線も気にする事なく、誠君と一緒にいられますから」
私の視線も気にしてよ、とルイズは嘆く。
とはいえ、これで寝起きにいきなり目覚まし生首を目撃しなくてすむ。
安心して眠ったルイズは、完璧に油断していた。
「ルイズさん、朝ですよ。起きてください」
起きた。
目の前に言葉がいた。
縦にふたつ、顔が並んでる。
上は言葉、下は誠。
「……そう来たか」
言葉は誠を抱いたままルイズを起こしたのだ。
ルイズは朝の洗顔のついでに、ほろりと涙をこぼすのだった。
朝食や部屋の掃除など、滞りなくすませた言葉は、
ルイズの授業に同席するため教室に向かっていた。
言葉は授業が楽しみだった。
異世界の魔法学院で、魔法の勉強をするというのもそうだが、
何より誠と同じ教室で勉強できるというのが嬉しかった。
以前はクラスが違ったせいで学校ではあまり一緒にいられず、
お互いのクラスには、言葉と誠を引き離そうとするクラスメイトがいた。
西園寺世界。清浦刹那。澤永泰介。加藤乙女。他にも、他にも、他にも。
でもここにはそんな邪魔者はいない。いないから、安心していられる。
ルイズの授業に同席するため教室に向かっていた。
言葉は授業が楽しみだった。
異世界の魔法学院で、魔法の勉強をするというのもそうだが、
何より誠と同じ教室で勉強できるというのが嬉しかった。
以前はクラスが違ったせいで学校ではあまり一緒にいられず、
お互いのクラスには、言葉と誠を引き離そうとするクラスメイトがいた。
西園寺世界。清浦刹那。澤永泰介。加藤乙女。他にも、他にも、他にも。
でもここにはそんな邪魔者はいない。いないから、安心していられる。
「ウインド・ブレイク」
背後から突然の突風。
風は鞄を狙って吹き飛ばしたため、言葉はその場に転ぶ程度ですんだ。
だが。
「きゃっ……ま、誠君!」
言葉は教室に向かう廊下では他に人がいなかったため、
鞄を開けたまま持ち歩き、中にいる誠とお喋りしていたのだ。
だから、開いたままだった鞄から、誠の、首が。
「うわぁっ!?」
予想外の事態に、風の魔法を使った生徒が驚く。
言葉はその生徒には目もくれず、吹き飛んだ誠の首を拾いに走る。
だが廊下の前方の曲がり角に待機していた別の生徒が、再び風で誠を吹っ飛ばす。
教室とは反対方向に転がって行く誠。
言葉は、理解した。
ココニモ邪魔者ガ、イル。
濁った双眸が鋭さを増し、言葉は放置された鞄を掴みながら角を曲がって走る。
誠の首は宙に浮いて移動していた。
きっとレビテーションという魔法だと言葉は判断し、誠の首を奪おうとするメイジを探す。
敵は複数。背後からの一人、曲がり角の一人、今レビテーションを使っている一人。
計三人。
殺す。
背後からの一人と曲がり角の一人は顔を見ていない。
でも殺す。
レビテーションを使っている一人は進む先にいる。
まず殺す。
言葉は、鞄の中に右手を突っ込んだ。
そして鞄をその場に捨て去る。
右手には、誠の首と一緒に鞄に入っていた、ノコギリ。
左手には、ルイズによって刻まれた使い魔のルーンが、輝いて。
疾風の如く言葉は廊下を駆ける。
その速さに驚愕したレビテーションの使い手は、慌てて次の奴にバトンを渡す。
あらかじめ開けておいた窓から、誠の頭を放り出したのだ。
予定では、これでもう言葉は追いかけてこれないはずだった。
後は広場にある植木の下に掘ってある穴にこいつを放り込んで埋めるだけ。
背後から突然の突風。
風は鞄を狙って吹き飛ばしたため、言葉はその場に転ぶ程度ですんだ。
だが。
「きゃっ……ま、誠君!」
言葉は教室に向かう廊下では他に人がいなかったため、
鞄を開けたまま持ち歩き、中にいる誠とお喋りしていたのだ。
だから、開いたままだった鞄から、誠の、首が。
「うわぁっ!?」
予想外の事態に、風の魔法を使った生徒が驚く。
言葉はその生徒には目もくれず、吹き飛んだ誠の首を拾いに走る。
だが廊下の前方の曲がり角に待機していた別の生徒が、再び風で誠を吹っ飛ばす。
教室とは反対方向に転がって行く誠。
言葉は、理解した。
ココニモ邪魔者ガ、イル。
濁った双眸が鋭さを増し、言葉は放置された鞄を掴みながら角を曲がって走る。
誠の首は宙に浮いて移動していた。
きっとレビテーションという魔法だと言葉は判断し、誠の首を奪おうとするメイジを探す。
敵は複数。背後からの一人、曲がり角の一人、今レビテーションを使っている一人。
計三人。
殺す。
背後からの一人と曲がり角の一人は顔を見ていない。
でも殺す。
レビテーションを使っている一人は進む先にいる。
まず殺す。
言葉は、鞄の中に右手を突っ込んだ。
そして鞄をその場に捨て去る。
右手には、誠の首と一緒に鞄に入っていた、ノコギリ。
左手には、ルイズによって刻まれた使い魔のルーンが、輝いて。
疾風の如く言葉は廊下を駆ける。
その速さに驚愕したレビテーションの使い手は、慌てて次の奴にバトンを渡す。
あらかじめ開けておいた窓から、誠の頭を放り出したのだ。
予定では、これでもう言葉は追いかけてこれないはずだった。
後は広場にある植木の下に掘ってある穴にこいつを放り込んで埋めるだけ。
「あ、来た」
金髪ロールの愛らしいモンモランシーは、窓から放られた鞄をキャッチしようとした。
そこで、あれ? と首を傾げる。
鞄にしては、ちょっと小さい、というか丸い。
クルクルと回転しながら飛んでくるそれに向けて、何となく手を伸ばすモンモランシー。
すると吸い込まれるように鞄(?)はモンモランシーの腕の中におさまった。
何だろうこれ?
見る。
灰色の顔。
「ひっ、ひぃ……ひゃぁあああぁぁぁっ!?」
悲鳴が学院に響いた。
金髪ロールの愛らしいモンモランシーは、窓から放られた鞄をキャッチしようとした。
そこで、あれ? と首を傾げる。
鞄にしては、ちょっと小さい、というか丸い。
クルクルと回転しながら飛んでくるそれに向けて、何となく手を伸ばすモンモランシー。
すると吸い込まれるように鞄(?)はモンモランシーの腕の中におさまった。
何だろうこれ?
見る。
灰色の顔。
「ひっ、ひぃ……ひゃぁあああぁぁぁっ!?」
悲鳴が学院に響いた。
今日の授業は何だか妙だった。
授業を休んでる生徒が四人もいる。
その中にモンモランシーも含まれている事もあって、
彼女と友達以上恋人未満な関係の男、青銅のギーシュはちょっと心配していた。
すると。
「ひゃぁあああぁぁぁっ!?」
悲鳴。この声は、モンモランシー?
真っ先に反応したのはルイズだった。
そろそろ来てもいいはずの言葉が来ていない。そして悲鳴。
また何かやらかしてしまったと直感的に悟ったルイズは教室から飛び出して行く。
それを見てギーシュも危機を察知し、窓からレビテーションを使って飛び降りた。
授業を休んでる生徒が四人もいる。
その中にモンモランシーも含まれている事もあって、
彼女と友達以上恋人未満な関係の男、青銅のギーシュはちょっと心配していた。
すると。
「ひゃぁあああぁぁぁっ!?」
悲鳴。この声は、モンモランシー?
真っ先に反応したのはルイズだった。
そろそろ来てもいいはずの言葉が来ていない。そして悲鳴。
また何かやらかしてしまったと直感的に悟ったルイズは教室から飛び出して行く。
それを見てギーシュも危機を察知し、窓からレビテーションを使って飛び降りた。
レビテーションも使わず二階の窓から飛び降りてきた言葉を見て、
モンモランシーの顔は蒼白に染まる。
言葉は、じっとモンモランシーを見つめて問いかけてきた。
「誠君はどこですか?」
「え?」
その時ようやく、モンモランシーは自分が何をしたかに気づく。
生首をキャッチしてしまった彼女は驚きのあまり、それを全力で放り投げてしまった。
結果、伊藤誠行方不明。
首を返してごめんなさい、という逃げ道は断たれた。
モンモランシーが首を隠したと完全に勘違いされている。
「誠君はどこですか?」
「あの、その」
「誠君はどこですか?」
「れ、れ、レビテーション!」
逃げよう。モンモランシーが杖を振ると同時に、その身体が宙に浮く。
相手は平民だから、宙に浮かれたらどうにもできないはず。
だが二メイルも浮かんだ頃だろうか、いきなり下腹に何かがぶつかってくる。
「え」
「誠君はどこですか?」
言葉が、腰にしがみついていた。二メイルの高さを己の脚力で跳んで。
そして、モンモランシーの背中を、ノコギリの冷たい感触が叩く。
「イヤァァァッ!!」
恐怖に精神を掻き乱されたモンモランシーはレビテーションを解いてしまい、
地面に向けて背中から落下する。言葉はというとモンモランシーを離して軽やかに着地。
そして、背中を打ち付けられて咳き込んでいるモンモランシーの隣に立ち、
首に、ノコギリを、当てる。
「誠君はどこですか?」
壊れた人形のように同じ事を繰り返す言葉。
眉は不機嫌そうに寄せられていて、虫けらを見下すような冷たい視線を向けられる。
モンモランシーの顔は蒼白に染まる。
言葉は、じっとモンモランシーを見つめて問いかけてきた。
「誠君はどこですか?」
「え?」
その時ようやく、モンモランシーは自分が何をしたかに気づく。
生首をキャッチしてしまった彼女は驚きのあまり、それを全力で放り投げてしまった。
結果、伊藤誠行方不明。
首を返してごめんなさい、という逃げ道は断たれた。
モンモランシーが首を隠したと完全に勘違いされている。
「誠君はどこですか?」
「あの、その」
「誠君はどこですか?」
「れ、れ、レビテーション!」
逃げよう。モンモランシーが杖を振ると同時に、その身体が宙に浮く。
相手は平民だから、宙に浮かれたらどうにもできないはず。
だが二メイルも浮かんだ頃だろうか、いきなり下腹に何かがぶつかってくる。
「え」
「誠君はどこですか?」
言葉が、腰にしがみついていた。二メイルの高さを己の脚力で跳んで。
そして、モンモランシーの背中を、ノコギリの冷たい感触が叩く。
「イヤァァァッ!!」
恐怖に精神を掻き乱されたモンモランシーはレビテーションを解いてしまい、
地面に向けて背中から落下する。言葉はというとモンモランシーを離して軽やかに着地。
そして、背中を打ち付けられて咳き込んでいるモンモランシーの隣に立ち、
首に、ノコギリを、当てる。
「誠君はどこですか?」
壊れた人形のように同じ事を繰り返す言葉。
眉は不機嫌そうに寄せられていて、虫けらを見下すような冷たい視線を向けられる。
「ひっ、ゆ、許して……」
貴族のプライドなど一瞬で切り捨てられた。
モンモランシーは瞳いっぱいに涙を浮かべる。
「駄目です」
死刑宣告。
直後。
「ワルキューレ!」
モンモランシーを挟んだ対面から青銅のゴーレムが植物のように生え、
右手に持った短槍で言葉のノコギリを弾き飛ばす。
言葉は不快な表情を浮かべて、声のした方を見た。
青銅のギーシュが、薔薇の杖を持って立っている。
「無事かい!? モンモランシー!」
「ギーシュ!? ああ! ギーシュ、来てくれたのね!」
「僕が来たからにはもう大丈夫! 誇り高き美の戦士ワルキューレがその平民を」
言葉はノコギリを腰の横に構えると、そこから水平に一閃した。
耳が痛む甲高い音がして、ワルキューレの胴体が両断される。
言葉の持つ居合いの技術とガンダールヴの力の前では、
例え得物がノコギリだろうと青銅のゴーレムでは話にならなかった。
ギーシュもモンモランシーの仲間と判断した言葉は、矛先をギーシュに変えた。
「誠君はどこですか?」
「マコト? 何だそれは、僕は知らないぞ」
「誠君はどこですか?」
「知らないって言ってるだろ。平民の癖に、貴族に対して無礼じゃないか!
今すぐモンモランシーに謝罪しろ!」
「誠君はどこですか?」
「僕の話を聞いているのか!?」
「誠君はどこですか?」
「だから……」
「誠君はどこですか? 誠君はどこですか? 誠君はどこですか?」
「話を……」
「誠君誠君誠君誠君誠君誠君誠君誠君誠君誠君誠君誠君誠君誠君誠君誠君……」
「わ、ワルキューレェェェッ!!」
言葉の狂気に耐え切れなくなったギーシュは、
薔薇の花弁を大地に舞わせ新たなワルキューレ六体を出現させる。
しかもそれぞれのワルキューレは異なる武装で言葉に対峙していた。
貴族のプライドなど一瞬で切り捨てられた。
モンモランシーは瞳いっぱいに涙を浮かべる。
「駄目です」
死刑宣告。
直後。
「ワルキューレ!」
モンモランシーを挟んだ対面から青銅のゴーレムが植物のように生え、
右手に持った短槍で言葉のノコギリを弾き飛ばす。
言葉は不快な表情を浮かべて、声のした方を見た。
青銅のギーシュが、薔薇の杖を持って立っている。
「無事かい!? モンモランシー!」
「ギーシュ!? ああ! ギーシュ、来てくれたのね!」
「僕が来たからにはもう大丈夫! 誇り高き美の戦士ワルキューレがその平民を」
言葉はノコギリを腰の横に構えると、そこから水平に一閃した。
耳が痛む甲高い音がして、ワルキューレの胴体が両断される。
言葉の持つ居合いの技術とガンダールヴの力の前では、
例え得物がノコギリだろうと青銅のゴーレムでは話にならなかった。
ギーシュもモンモランシーの仲間と判断した言葉は、矛先をギーシュに変えた。
「誠君はどこですか?」
「マコト? 何だそれは、僕は知らないぞ」
「誠君はどこですか?」
「知らないって言ってるだろ。平民の癖に、貴族に対して無礼じゃないか!
今すぐモンモランシーに謝罪しろ!」
「誠君はどこですか?」
「僕の話を聞いているのか!?」
「誠君はどこですか?」
「だから……」
「誠君はどこですか? 誠君はどこですか? 誠君はどこですか?」
「話を……」
「誠君誠君誠君誠君誠君誠君誠君誠君誠君誠君誠君誠君誠君誠君誠君誠君……」
「わ、ワルキューレェェェッ!!」
言葉の狂気に耐え切れなくなったギーシュは、
薔薇の花弁を大地に舞わせ新たなワルキューレ六体を出現させる。
しかもそれぞれのワルキューレは異なる武装で言葉に対峙していた。
「アイスソード!」
「オートクレール!」
「カムシーン!」
「デルフリンガー!」
「ヴァレリアハート!」
「ガラティーン!」
六体のワルキューレ!
六本の剣!
「それ以上抵抗するなら容赦しないぞ!」
六体は列を成して言葉へと肉薄していった。
対する言葉は正面からワルキューレ達に向かって疾駆する。
一体目とすれ違い様に胴を両断する言葉。
二体目とすれ違い様に首を刎ねる言葉。
三体目とすれ違い様に肩から脇腹まで両断する言葉。
四体目とすれ違い様に剣もろとも腕を切り落とす言葉。
五体目とすれ違い様に下腹部を開腹する言葉。
六体目とすれ違い様に頭から股間まで一刀両断する言葉。
「そ、そんな馬鹿な……」
六体のワルキューレの残骸を背に、恐怖に腰を抜かすギーシュの眼前に、言葉。
「誠君はどこですか?」
「し、知らない」
「……」
青銅のワルキューレを次々に屠ったノコギリが、ギーシュの首へ。
モンモランシーが叫ぶ。
「や、やめて! ギーシュを殺さないで!」
言葉は振り返って、問う。
「誠君はどこ――」
「コトノハー!」
ぜいぜいと息を切らしながら、ルイズが広場に駆け込んできた。
誠の首を抱えて。
「ま……誠君!」
「はぁっ、はぁっ、間に、合った……」
ルイズに駆け寄り、誠を渡されると愛しそうに頬擦りする言葉。
それを見て、助かったと胸を撫で下ろすギーシュとモンモランシー。
だがその二人に、ルイズがうんざりとした表情で言う。
「ちょっと。あんた達コトノハに何したのよ?
私が偶然植木の陰に落ちてたマコトを見つけなかったら殺されてたわよ?」
「ぼ、僕はただモンモランシーの悲鳴が聞こえたから……」
ルイズとギーシュの視線がモンモランシーに向く。
殺されかけたギーシュとしても、なぜこうなったのか知りたいようだった。
まさかここで「あの首を奪って埋めちゃうつもりでした」なんて言えない。
そこでモンモランシーはこう答えた。
「オートクレール!」
「カムシーン!」
「デルフリンガー!」
「ヴァレリアハート!」
「ガラティーン!」
六体のワルキューレ!
六本の剣!
「それ以上抵抗するなら容赦しないぞ!」
六体は列を成して言葉へと肉薄していった。
対する言葉は正面からワルキューレ達に向かって疾駆する。
一体目とすれ違い様に胴を両断する言葉。
二体目とすれ違い様に首を刎ねる言葉。
三体目とすれ違い様に肩から脇腹まで両断する言葉。
四体目とすれ違い様に剣もろとも腕を切り落とす言葉。
五体目とすれ違い様に下腹部を開腹する言葉。
六体目とすれ違い様に頭から股間まで一刀両断する言葉。
「そ、そんな馬鹿な……」
六体のワルキューレの残骸を背に、恐怖に腰を抜かすギーシュの眼前に、言葉。
「誠君はどこですか?」
「し、知らない」
「……」
青銅のワルキューレを次々に屠ったノコギリが、ギーシュの首へ。
モンモランシーが叫ぶ。
「や、やめて! ギーシュを殺さないで!」
言葉は振り返って、問う。
「誠君はどこ――」
「コトノハー!」
ぜいぜいと息を切らしながら、ルイズが広場に駆け込んできた。
誠の首を抱えて。
「ま……誠君!」
「はぁっ、はぁっ、間に、合った……」
ルイズに駆け寄り、誠を渡されると愛しそうに頬擦りする言葉。
それを見て、助かったと胸を撫で下ろすギーシュとモンモランシー。
だがその二人に、ルイズがうんざりとした表情で言う。
「ちょっと。あんた達コトノハに何したのよ?
私が偶然植木の陰に落ちてたマコトを見つけなかったら殺されてたわよ?」
「ぼ、僕はただモンモランシーの悲鳴が聞こえたから……」
ルイズとギーシュの視線がモンモランシーに向く。
殺されかけたギーシュとしても、なぜこうなったのか知りたいようだった。
まさかここで「あの首を奪って埋めちゃうつもりでした」なんて言えない。
そこでモンモランシーはこう答えた。
「わ、私はただ、授業に出る気になれなくて、散歩してただけよ。
そうしたらいきなり窓から、その、アレが落ちてきて、悲鳴を……」
「じゃああなたは、私から誠君を奪おうとした人達の仲間じゃないんですね?」
誠との頬擦りをやめた言葉が、疑わしげな視線をモンモランシーに向けた。
「ちょっとコトノハ、マコトを奪おうとした人達って何よ?」
「……ルイズさん。今日の授業、誰か欠席してませんでしたか?」
「え? えーと、そういえばモンモランシー以外にも三人くらい……」
「それは誰ですか?」
質問されて、ようやくルイズは事態を把握した。
モンモランシーも関わっているかどうかは解らないが、
欠席した三人は言葉から誠を奪って処分してしまおうと考えたに違いない。
だって自分も処分できるものなら処分したいから。
「……誰だったかしら。あまり気にしてなかったから」
ここで名前を教えたら、多分、その三人は殺される。
どう誤魔化そうかと悩んでいると、言葉は感情の無い声で言う。
「そうですか。解りました、もういいです」
「え? そ、そう?」
呆気なく言葉が引き下がり、安心するやら不気味やら、ルイズの心中穏やかではない。
そして言葉は、ノコギリと誠を持ったままモンモランシーに歩み寄った。
「な、何よ」
「あの人、あなたの彼氏ですか?」
「え……?」
意外な問いにモンモランシーは目を丸くする。
言葉は小声で話しかけているため、ルイズとギーシュには聞こえない。
どう答えたものかと一瞬迷って、助けに来てくれたギーシュを思い出して。
「そうよ。ギーシュは私の恋人。それが、どうかしたの?」
「……いえ。ただ、忠告して上げようと思って」
「忠告?」
言葉の唇が、笑う。
「恋人を、誰かに盗られたりしないよう、注意した方がいいですよ」
「それって、どういう……」
「誠君みたいに、なっちゃいますから」
そうしたらいきなり窓から、その、アレが落ちてきて、悲鳴を……」
「じゃああなたは、私から誠君を奪おうとした人達の仲間じゃないんですね?」
誠との頬擦りをやめた言葉が、疑わしげな視線をモンモランシーに向けた。
「ちょっとコトノハ、マコトを奪おうとした人達って何よ?」
「……ルイズさん。今日の授業、誰か欠席してませんでしたか?」
「え? えーと、そういえばモンモランシー以外にも三人くらい……」
「それは誰ですか?」
質問されて、ようやくルイズは事態を把握した。
モンモランシーも関わっているかどうかは解らないが、
欠席した三人は言葉から誠を奪って処分してしまおうと考えたに違いない。
だって自分も処分できるものなら処分したいから。
「……誰だったかしら。あまり気にしてなかったから」
ここで名前を教えたら、多分、その三人は殺される。
どう誤魔化そうかと悩んでいると、言葉は感情の無い声で言う。
「そうですか。解りました、もういいです」
「え? そ、そう?」
呆気なく言葉が引き下がり、安心するやら不気味やら、ルイズの心中穏やかではない。
そして言葉は、ノコギリと誠を持ったままモンモランシーに歩み寄った。
「な、何よ」
「あの人、あなたの彼氏ですか?」
「え……?」
意外な問いにモンモランシーは目を丸くする。
言葉は小声で話しかけているため、ルイズとギーシュには聞こえない。
どう答えたものかと一瞬迷って、助けに来てくれたギーシュを思い出して。
「そうよ。ギーシュは私の恋人。それが、どうかしたの?」
「……いえ。ただ、忠告して上げようと思って」
「忠告?」
言葉の唇が、笑う。
「恋人を、誰かに盗られたりしないよう、注意した方がいいですよ」
「それって、どういう……」
「誠君みたいに、なっちゃいますから」
何とか殺害をまぬがれたモンモランシーだったが、言葉の重く心に響く忠告は、
確かにモンモランシーの根深いところに植えつけられた。
それが発芽するのは、まだ先の話。
そして言葉は、今日の授業を欠席した人が誰かを教師に訊ねに行った。
でも。
すでにこの事件を知っていた、この時限の教師は、それが誰かを教えなかった。
だから言葉は思った。
この教師は生徒をかばっている。もしかしたらこの教師が黒幕かもしれない。
炎蛇のコルベール。やっぱりこの人は……。
確かにモンモランシーの根深いところに植えつけられた。
それが発芽するのは、まだ先の話。
そして言葉は、今日の授業を欠席した人が誰かを教師に訊ねに行った。
でも。
すでにこの事件を知っていた、この時限の教師は、それが誰かを教えなかった。
だから言葉は思った。
この教師は生徒をかばっている。もしかしたらこの教師が黒幕かもしれない。
炎蛇のコルベール。やっぱりこの人は……。