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薔薇乙女も使い魔  第2話  上



桜田ジュンは、傷つきボロボロで、片膝をついていた。

目の前には青銅製の大きな人形、剣を持った戦乙女-ワルキューレ-が一体
その向こうには、ニヤニヤと余裕をかますキザなヤツ-ギーシュ

周囲の生徒達も、後ろの真紅と翠星石も、ルイズも、事の成り行きを見守っていた

ある者は見下しながら
ある者は同情しながら
ある者は期待しながら
ある者は嘲笑しながら
ある者は心配しながら

ジュンは考えた

どうしてこうなったんだろう、自分はなんでこんなことしてるんだろう


            『決闘』


 キュルケと別れて食堂へ向かうルイズ・ジュン・真紅・翠星石達。
 ルイズ以外は皆、トリステイン魔法学院を珍しそうに眺めながら歩いていた。
 既に他の生徒の姿はない。まだ食堂に入っていないのは、お寝坊さんのキュルケと、
ルイズ達一行くらいだろう。既に本塔バルコニーにも、寮塔からやってくる女子生徒を眺
める男子生徒の姿はない。
  ルイズが食堂の扉を開けようとした時、ジュン達はちょっと困った顔をした

「どうしたのよ。さっさと入って朝ご飯にするわよ」
ルイズに声をかけられたものの、3人とも、特にジュンが困惑していた

「あの、ルイズさん。やっぱりまずいんじゃないでしょうか」
「なにがよ?」
キョトンとした顔で、ルイズがジュンに聞き返した。
「いやその、僕らは使い魔って立場でしょ?ここ、教師や生徒用の食堂じゃないですか」
「だから何よ」
「使い魔は外で待ってる見たいなんですけど・・・・」

 といって指さした先には、外で主達を待ってる大きな竜、宙に浮く目玉のお化け、ヘビ
その他色々が居た。

「だからって、あんた達を外で待たしたら、あんた達朝食はどうするのよ」
「うーんそれは困りますねぇ、やっぱり朝ご飯は大事ですぅ」
「そうね。でも、郷に入りては、と言うわ。余計なトラブルを避けたいのも本当よ」
 翠星石と真紅も、果たして入って良いモノかどうか、困っていた。

そんな彼らを見て、ルイズは腰に手を当てビシッと言った
「あーのーね、こんなところで気後れしてどうするの?これからあんた達はトリステイン
魔法学院でうまくやって行かなきゃならないのよ。まずはしっかり使い魔として!堂々と
しなさいよ。その後、教室ででも紹介するわ
 でなきゃ、誰もあんた達みたいな正体不明の連中を、まともに相手にしないわよ」
 そう言われてジュンと翠星石は、うーんとうなって顔を見合わせた。

 真紅はため息を一つついて、一歩前に出た
「しょうがないわ。こんな大勢の前に自分から堂々と姿を現すのは初めてだけど、せめて
ローゼンメイデンとして恥ずかしくないようにしましょう」
「そ、そんな、真紅ぅ~」
 翠星石は未だ決心が付かず、オロオロしている。

 ジュンは、黙って扉を見上げていた。
 彼にとって、その扉は地獄門のように恐ろしげだ。知らず知らず、彼の背中を嫌な汗が
つたう。まるでその扉が、自分にのしかかってくるかのように感じていた。

ルイズは扉に手をかけたまま、話を続けた。
「それに、昨日教室に戻らなかったでしょ?おかげでみんなに使い魔の正式なお披露目を
してないのよ。
 昨日も話したけど、メイジの格は使い魔で分かるっていうくらいなんだから。ちゃんと
みんなに紹介しとかないと、あたしも困るの」
そう言ってルイズはあっさり扉を開けて、中に入った。

「さぁ、早く入ってよね」
 ちょっと苛ついたルイズに促され、真紅は入っていった。
 ジュンは目を閉じ、大きく息をつき、拳を固く握りしめ、ゆっくりと大きく一歩を踏み
出した。
 その後ろを翠星石がこわごわとついて行った。


 アルヴィーズの食堂では、既に全学年が座っておしゃべりしていた。教師達も中階のロ
フトに揃って歓談に興じている。全てのテーブルに豪華な飾り付け、飾られた花、フルー
ツが盛られた籠。周囲の壁際には精巧な小人の彫像。

 ルイズ達が食堂に入ってきた瞬間、全ての視線がルイズ達に、いや、ルイズが連れてい
る使い魔とおぼしき3人に注がれた。一瞬で場を沈黙が支配した。

 ルイズは全ての視線が集まった事を満足げに見渡し、胸を張って歩き出した。
 真紅は、少しひるみはしたものの、すぐに動揺を抑えてツンとすました。そして、ジュ
ンを見上げた。

 彼の足は震えていた。大粒の汗をかき、目を伏せ、今にも逃げ出しかねない姿だった。

「こらチビ人間!なーにをビビッてるですか!?しゃきっとするです!!」
と、ジュンをはげました翠星石は、ジュンの足の後ろに隠れていた。
「そうよジュン。あたし達がこの世界に来た目的を忘れないで」
真紅も彼を前へと促す。

 ジュンは大きく深呼吸した。そしてゆっくりと前を向いた。
 何百人という人間達の視線が、全て自分に集中している。好奇、軽蔑、無関心、様々な
視線が彼を突き刺す。一瞬目を伏せそうになった自分を押さえ込み、前を見続けた。
 ジュンは、震える足を必死で前に進ませ、ルイズの後をついていった。
 そして真紅と翠星石も、そんなジュンを暖かく見つめて、彼の後ろを歩き出す。



 ルイズは壁に控えるメイド達の方へ行き、ジュン達の分のイスを用意するように命じた。
命じられたメイドは困ってしまった。
「あ、あのミス・ヴァリエール様。ここは学院の教師と生徒の方々の食堂でして、それ以
外の方の使用は・・・」
「そうも行かないわ。平民を使い魔にしちゃった以上、ちゃんと彼らにも食事を与えない
と、主としての義務が果たせないわ」
 そうは言われましても~と、カチューシャで纏めた黒髪とそばかすが可愛いメイドが、
どうすればいいのかなー?と迷っていた。


 そんな彼らの姿を見て、テーブルの生徒達はひそひそと話していた。

--なぁ、あいつら、いったい何だ?
--あの平民のガキは、ルイズが召喚した使い魔だよ。でもあの小さいのは・・
--コルベール先生が人形だっていってたけど、どうみても生きてるとしか
--良くできたゴーレムやガーゴイルだろ?メイジがどっかから操ってるだけさ
--いやそれが、昨日見たのよ!あの人形が自分で勝手に動いてしゃべってるの
--第一、増えてるわ。緑のは昨日いなかったし。どっから現れたの?
--じゃあ、あのガキは、どっか近くに住んでる貴族だってだけだろ
--いや、先生ディティクトマジックで確かめてた。間違いなくただの平民だって
--すると、インテリジェンスソードみたく自分で考えて、メイジの魔力も無しに勝手に
 動く、生物にしか見えないほど精巧に出来た、人間とおしゃべりも出来る人形!?
--ありえねー!なんだよそりゃ、周りのアルヴィーズなんか目じゃねえな
--人間喚ぶわ、あんな人形がついてくるわ、さすがゼロのルイズ?
--でも、あんな可愛い人形、なんであんな平民の子供が二つも持ってるの

 生徒達のひそひそ話はいつまで経っても終わりそうにない。それを背中で聞いていたル
イズは、初めて軽蔑と嘲笑以外の評価を得て、これでもかと優越感に浸っていた。「いえ、
もう外でいいですよ」というジュンの声も聞こえないほど、悦に入っていた。


「あー、ミス・ヴァリエール。早く席についてくれないと、朝食が始められないのだが」
 そう言って声をかけてきたのは、コルベールだった。教師を代表してロフトから降りて
きたようだ。他の教師達もこっちをじっと眺めている。
「申し訳ありません、コルベール先生。ですが、使い魔達にも食事を与えねばなりません
ので」
ルイズは、さも当然のごとく答えた。
「えーっと、困ったな。しょうがない、君、名前は?」
コルベールに名を尋ねられたメイドは、慌てて名乗った
「あ、はい。シエスタと申します」
「それではシエスタさん。特例として彼らの同席を認めます。でも席がないので、そこの
壁際にでもテーブルを持ってきてもらえませんか?」
「はい、承知しました。少々お待ち下さい」
と言ってシエスタは他のメイド達の方へ駆けていった。

「あ、それなら僕も手伝います」
と言ってジュンもメイド達の方へ走っていった。
「ちょっと、ジュンはいいのよ。テーブル持ってくるの待ってればいいわ」
「いや、やっぱ僕らが迷惑かけてるんだし、これくらいしないと」
ルイズが止めるのを聞かず、シエスタ達の方へ駆け寄った。

「すいません、手伝います」
「いいんですよ!これがあたしたちの仕事ですから、気になさらず待ってて下さいな」
「え、でも・・・」
「それに、こういうことしないと、メイドとして立つ瀬がありませんわ」
 と言ってシエスタ達は入り口近くの壁際に、机とイスと食事をささーっと運んできた。

「すいません、ありがとうございます。あ、僕はジュンです。桜田ジュン」
と言ってジュンはシエスタ達にペコリと頭を下げた。
「いえいえ♪私はシエスタです。よろしくお願い致します」
「あたしはローラです。以後よしなにお願い致します」
 メイド達もジュンに礼をした。ジュンはどう見ても貴族ではないし、年下の子供なこと
もあり、メイド達のジュンに対する印象はグッと良くなったようだ。


 ようやくアルヴィーズの食堂に居る全員が席に着いた。しかしやっぱり視線がちらちら
とジュン達に向かっている。教師達はコルベールに何か聞いている。おそらく、あの平民
と人形達はどうだった、とかいってるのだろう。
 ジュン達はイスに座って、豪華な食事を前にしていた。真紅と翠星石は、かなり背の高
いイスに座っているものの、やっぱり高さが足りていなかった。テーブルから頭がちょっ
と出ているだけだ。
「貴族って朝からこんなに食うのかなぁ」
「そんなわけないでしょ、ほとんど残すでしょうね」
「まぁったくもったいないですねぇ。食べ物への感謝が足りんです!」
 ジュン・真紅・翠星石は、目をつむって祈っている貴族への疑問をぶつけあっていた。

「偉大なる始祖ブリミルと女王陛下よ・・・」

 祈りの声の唱和も終わり、ようやく食事が始まった。
 と同時に、ジュン達以外の全員がメイド達も含めて驚いて固まり、次いでざわざわとしはじめた
 真紅がパンを口に入れていた。
 翠星石がハムをほおばっていた。
 彼らは、生まれて初めて、食事をする人形を見た

--コルベール先生。あれ、やっぱり生き物ですわね
--いやその!いえ、ミス・シュヴルーズ、私が昨日見たとき、確かに人形だったんです
--どこの世界に、食事する人形がいるんですか。きっと未確認の亞人でしょう

 教師達も、一体彼らは何なのか、と真紅・翠星石から目が離せない。
 だが貴族のプライドと礼法が邪魔して、誰も食事中に彼らへ近寄る事が出来ない

 居心地悪いなーっと思いつつも彼らは食事を続けた。ジュンは胃が痛くなってきた
気がしたが、無理にフルーツを口に押し込んだ。
 ルイズはルイズで、周囲からの質問に「さーねー♪」とツンとおすまししていた。

 そんなこんなで、朝食の時間は落ち着かないまま終わり、ルイズはさっさとジュン達を
連れて食堂を小走りで出て行った。
 後にはどよどよと声を上げる人々が残った。



「ここよ」
ルイズに連れてこられたのは、ジュンと真紅が最初に召喚された広場だった。
「だめですぅ、ローザ・ミスティカの気配はないですぅ」
「でしょうね。もしあったら、最初にここへ来た時に私が気付いたでしょうから」
「うーん、何か手がかりでも残ってないかなー」
翠星石・真紅・ジュンが、広場をキョロキョロと探し回っている。

「ねぇ、そのローザ・ミスティカってどんなの?」
ルイズが歩き回るジュンに尋ねた。
「えーと、紅い宝石みたいなヤツ。結構大きくて、キラキラしてて、ふよふよ浮いてる。
ローゼンメイデンの魂みたいなもんだよ。全部集めたら、お父様に会えるんだってさ。
 召喚した時見なかった?」
「うーん、見なかったというか、召喚の時の爆風で飛んでいったかもしれないし、土煙が
すごかったから」
「爆風って・・・よく俺たち無事だったなぁ」
 しばらく広場を見回っていた真紅と翠星石は「ここはダメ」とつぶやいた。ジュン達
は諦めて、ルイズと共に授業へ行くことにした。



 大学の講堂のような教室にはいると、生徒達が一斉にルイズ達へ振り向いた。様々な使
い魔達を連れたメイジの生徒達。その中には、周囲に男子生徒をはべらせたキュルケの姿
もある。
 皆、ルイズ達一行を見て、ぼそぼそとささやき憶測を巡らせている。
 ルイズ達が後ろの扉から入ってくると同時に、教師の女性も前の扉から入ってきた。
彼女もルイズ達一行を見つめながら、教壇に立つ。

「さ、席に着くわよ。ホラこっちいらっしゃい」
ルイズはジュンと人形達を促したが
「いや、僕らは生徒じゃないから。邪魔しないように後ろで立ってるよ」
「いーから、ホラいらっしゃい」
やっぱりここでもジュンは前へ行こうとしない。

「もしもし、ミス・ヴァリエール。とにかく席についてもらえませんか?」
「あ、すいませんシュヴルーズ先生。この子、遠慮してしまって」
 シュヴルーズがルイズに声をかけたのを皮切りに、他の生徒達も声を上げ始めた。

「おーいゼロのルイズ、いい加減その使い魔を紹介してくれよー」
「そーよ。そこの平民はどっかから連れてきたとして、その亞人は何なのよ?」
「つか、人形にしても亞人にしても見たことなくて、いったい何なのかわかんなくて、み
んな困ってるのよ。おまけに増えてるし」
「召喚の後、教室戻らなかったでしょー?もう使い魔紹介してないの、あんただけよ」

そんな声を聞いて、シュヴルーズも頷いた。
「そうね。良い機会だから使い魔と、そこの亞人達も紹介して下さいな」

ルイズはここぞとばかりエッヘンと胸を張った。
「しょうがないですわねー♪でも、紹介はこの子達自身でしてもらいますわ
 ほら、ジュン。しっかりしなさいよ!」
 バンッと背中をルイズに叩かれ、ジュンはおずおずと一歩前に出た。下に居並ぶ年上の
メイジ達と、教壇のシュブルーズが、彼を見上げている。
 思わず目を逸らし、後ろへ下がりそうになる。

「ジュン、大丈夫よ。緊張しても間違えても、別に構わないわ」
真紅が優しく声をかけ、意を決し、震えてはいるが大きな声で叫んだ。

「は!初めまして皆さん!!ぼ、ぼ、僕は、昨日、るる、ルイズさんに召喚された、さ、
桜田ジュンです!
 よっろろしく、おねぎゃいしますっ!!」

ぷっ

 ジュンのあまりのイッパイイッパイさに、教室中に失笑が広がった。ジュンは真っ赤な
顔でダラダラ汗を流し、ヘロヘロと教室の後ろのカベにもたれかかった。そんなジュンの
情けない姿を見たルイズは「あっちゃー」という感じで顔を手でおおった。

 ジュンのズボンを、真紅が引っ張った。
「机が高くて前から私の姿が見えないの。抱き上げてちょうだい」
 そう言われて、ジュンは真紅を右手に、ついでに翠星石を左手に、力なく抱き上げた。

「初めまして皆様。私の名は真紅。ジュンの人形です。お会い出来て光栄ですわ」
 と言って真紅はすぃっと頭を下げた
「あ、あの・・・私は、翠星石、ですぅ。ジュンの人形です」
 ジュンにしがみつきながら、それだけ言うと、ジュンの胸に顔を埋めてしまった。

「と言うわけでして、皆様、私の使い魔達をヨロシクお願い致しますわ♪」
「ちょっちょっと待ちなさいミス・ヴァリエール!」
 自己紹介を終えようとしたルイズに、 シュヴルーズが叫んだ。
「なんでしょうか、シュブルーズ先生」
「その亞人、人形と名乗りましたか?」
「はい、名乗りました」
「冗談はおよしなさい!どこの世界に食事する人形がいるんですか!?」
「ここにいます。二人とも、みんなに見せてあげて」

 ルイズに言われた真紅と翠星石は、それぞれ服の袖をスルスルとまくりあげ、腕の球体
関節を示した。
 生物にはありえない腕の作りを見た生徒達は、おお~と、どよめきのこえをあげた。そして
シュヴルーズは、あんぐりと開いた口が塞がらなかった。

「みみみミス・ヴァリエール!」
 ようやくシュヴルーズが声を絞り出した。
「それが、その子達が、人形だと!?」
「はい、人形です」
断言されて、彼女は二の句が継げなかった。
「あの、先生。そろそろ授業を始めて頂けませんか?」
「あ・・・う・・・そ、そうですね。ともかく授業を始めましょう」
 ルイズにしれっと言われ、シュヴルーズはぎくしゃくと授業を始めた



 昼食前の教室で、黙ってほうきをはくルイズの姿があった。ジュンと人形達も、教室内
に散乱したガラスや燃えカスを片付けている。
 ルイズはシュブルーズに「教壇で練金をしてみなさい」と言われ、周囲が止めるのも聞
かず、意地をはって魔法を使い、大爆発させていた。ルイズは罰として、魔法無しでの教
室掃除を命じられ、ジュン・真紅・翠星石も掃除をしていた。

 ルイズは黙々とほうきをはいている。だがジュンは、そんなルイズになかなか声をかけ
られなかった。もともと小柄なルイズの後ろ姿は、更に小さく弱々しく見えていた。真紅
と翠星石も、何故彼女のあだ名が「ゼロ」なのか、痛いほどよく分かり、どう励まそうか
と思案していた。

最初に口を開いたのはジュンだった。
「あのさ、ルイズさん」
「・・・・なによ」
ルイズは手を休めず、ジュン達に背を向けたまま答えた。
「僕はつい最近まで、学校が嫌いでした。ずっと学校に行ってませんでした」

「へぇ、そうなの」
ルイズは素っ気なく答え、掃除を続ける。

「たった一度、試験に失敗しただけで、耐えられませんでした。自分に絶望して、周りの
人の期待に応えられなかったの許せなくて、恥ずかしくて、自分の部屋から一歩も出ない
生活を続けました。ほんの最近までの事です」
「そう・・・」

ルイズは相変わらず掃除の手を休めない。

「でも、僕のねえちゃんや、真紅や、翠星石や、いろんなみんなが、僕が部屋から出るの
を待っててくれました。こんな僕でもいつか必ず立ち直ってくれるって、信じていてくれ
ました」
「・・・・」

ルイズの手が、ゆっくりと動きを止めた。

「正直、僕は自分に自信は無いです。今日だって見たでしょ?僕は相変わらず、人前に出
るのが怖いんです。過去を思い出して、足が震えるんです。
 でも、僕は人前に出ようと思いました。外の世界にやる事が出来ましたから。いつまで
かかるか分からないけど、とにかく、無駄でも良いから、やってみようと思います」

「ふーん…そうなんだ」
ルイズがようやく、ジュン達の方に振り返った。そしてツカツカとジュンに詰め寄った。
「で、あんたまさか、あたしを励ましているつもり?」
「え?」
 至近距離から面と向かって問われて、ジュンは思わず目をそらした。
 性格はともかく、ルイズはなかなかの美少女。そんなルイズに顔を近づけられて、ジュ
ンは思わず頬を赤く染めてしまう。
「うーんと、まぁ、そうです。つまり、元気出してねって」
頬をポリポリかきながら、つぶやくように答えた。



「ふっざけんじゃないわよっ!」
バシィッ!

ルイズは持っていたほうきで、思いっきりジュンの頭をひっぱたいた!
「あいだぁっ!んな、いきなりなにすんですか!」
「このルイズ様が落ち込んでるぅ?バカ言わないで!あんたみたいなガキンチョに同情さ
れるほど、貴族の名誉は軽くないのよ!
 今に見てなさい。ヴァリエールの名に恥じないメイジになって、みんなまとめてギャフ
ンと言わせてやるんだから!そんときは、あんたも、そこのお人形達も、自分から下僕に
して下さいっていわせてやるんだからね!!」

 一気にまくし立てたルイズは、そのままの勢いで掃除を始めた。ジュンはルイズの剣幕
に押され、キョトンとしている。
 そんなルイズとジュンをみて、真紅と翠星石は顔を見合わせてクスクス笑った。

「ちょっとそこの人形達!手を休めるんじゃないわよ。ボサッとしていたらお昼ご飯に間
に合わないじゃない!!」
「ハイハイわかったですよぉ、もう、ちんちくりんは素直じゃないですねぇ」
「誰がちんちくりんよ!?それと、ハイは一回でいい!」
「ハーイですぅ~」
 そう言って、翠星石も手早く掃除した。そんな彼らを見る真紅の瞳は温かかった。



 昼食
 ようやく教室の掃除を終えた一行は食堂へ向かっていた。
 既に昼食は始まっている。ロフトに教師達の姿はない。生徒達は朝食時より気楽に食事
している。
 さすがに2度目にもなると、真紅と翠星石への視線は減っている。それでも二年生達か
ら広まる「間違いなく人形」という情報は
「誰が何の目的で作ったんだろう?」
「なんで平民があんな人形持ってるんだろう?」
「人形なのにどうして食事するんだろう?」
「食べたモノはどこでどうなって、どこから出ていくんだろう?」
という、ごく自然な疑問へと集中していった。
 入り口横の壁際で食事する彼らの姿は、相変わらず注目の的だった。



「可愛いお人形さん達ですねぇ~」
 ジュン達のテーブルに飲み物を持ってきたシエスタが、ジュンに話しかけた。
「ええ、それにとっても良い娘達ですよ。ちょっと性格悪いけど」
 ジュンの顔に、バターの切れ端が二個飛んできた。真紅と翠星石がジュンを睨んでる。
そんな人形達を見て、食後のデザートを運んでいたローラも目をキラキラさせていた。
「すごいですね、まるで生きてるみたい!これもマジックアイテムなんですか?」
「マジックアイテムだなんて失礼ですねぇ!この翠星石は、れっきとしたお人形です!」
 アイテムと言われた翠星石がイスの上に立ち上がり、腰に手を当ててプリプリ怒っていた。
 そんな姿を見て、シエスタは更に目を輝かせてた。
「うわぁ~可愛いぃ~♪平民のあたし達には魔法は分からないですけど、これって凄い高
名なメイジの方が作られたんでしょうね~」

「ちょっと!無駄話はやめてデザートをこちらに持ってきなさいな」
「「は、はいぃっ!!」」
 突然背後のテーブルから学生に命じられ、二人は慌てて振り返り、駆け出そうとした。
だが、よほど慌てたのだろう、背後に立っていた男子学生達にシエスタがぶつかってしま
った。彼らも好奇心からジュン達に話しかけに来たのだろう。
 その中の一人、金髪にフリル付きシャツのキザなメイジからカターンと音がした。紫の
液体が入ったガラスの小瓶が、彼のポケットから床に落ちていた。

「ん・・・落としたよ」
 と言ってジュンはビンを拾い上げ、薔薇をシャツのポケットに挿した貴族へ手渡そうと
した。だが、その貴族の顔は引きつって汗ダラダラだった。

「あ、それモンモラシーの香水じゃ」
「へぇ~。ギーシュ、お前モンモラシーと付き合ってたんだ」
「違う。いいかい君たち・・・」
 汗をたらしたキザな貴族は誤魔化そうとした。だが、茶色のマントを着た少女が学生達
のテーブルからコツコツと歩いてきて、ボロボロと泣き出した。
「ギーシュ様・・」
「彼らは誤解してるんだケティ、これは・・・」
 必死に弁解するキザの頬を、ケティと呼ばれた少女がひっぱたいた。
 更に二年生のテーブルから、見事な巻き毛の女の子がやってきた。
「モンモラシー、誤解だ、これは・・・」
「嘘つき!」
 モンモラシーはギーシュの言い訳など耳を貸さず、香水をどぼどぼとギーシュの頭にぶっ
かけて去っていった。

 いきなりの修羅場に、ジュンはあっけにとられていた。



「…きみ」
「…僕、ですか?」
「そう、きみ」
 ハンカチでゆっくり顔を拭くギーシュが、ジュンを指さした。
「君が軽率に瓶を拾ったおかげで、可憐なるレディ達を傷つけてしまったよ」
「…へ?」
 ジュンはキョトンとした。一体何を言われたのか、本気でしばらく分からなかった。

 なんだどうしたと、周囲の視線が更に集まる。

「なぁにを言ってるですかぁこのキザヤローは!どう見てもあなたがふたまたしたのが悪
いです!」
 あっけにとられたジュンにかわって翠星石が叫んだ。
「その通りだギーシュ! お前が悪い!」
 タイミングのいい横槍に周囲からクスクスと笑いが起こる。
 真紅は何も言わず、紅茶を飲んでいる。

「ふん…君はゼロのルイズが呼び出した、平民の使い魔だったな」
 ギーシュはジュン達を一瞥して、バカにしたように鼻を鳴らした。
「…そうだけど、何?」
「その人形達は、君のかい?」
「んー、ちょっと違うけど、そう思ってくれてもいいかな」
「ははっ!さんざん失敗したあげく、呼び出したのは平民の坊やか!しかも片時もお人形
を手放さない、女の子みたいなヤツだ。さすがゼロのルイズだな」

 瞬間、ジュンの顔が紅潮した。それを見たギーシュ達はニヤッと笑い、小声で二言三言
ささやきあった。
 ギーシュはバカにした口調で、ジュンをバカにし続けた。

「ん?どうしたかね平民、顔が赤いよ。お人形遊びをしているのがばれても恥ずかしがる
事はないだろう?まだ子供なんだから」
「僕は確かにこの国で言う平民だけど、名前はあります。ジュンです、桜田ジュン」
「はっ!平民の名前なんかどうでもいいね。君はただの平民、平民の坊やだよ」
「そしてあなたは貴族の恥さらしね」

 今まで黙っていた真紅がイスの上に立ち、ギーシュを睨み付けた。
 ギーシュも顔を赤くして、こめかみに血管を浮かせながら真紅を睨み付けた。

「…どうやらこの平民も、平民の人形達も、貴族への口の利き方を知らないようだね」
「私の国での貴族の礼法は存じております。でも、この国では二股かけてレディを辱める
方を貴族というのでしたら、確かに私はそんな貴族への口の利き方を知りませんわ」
 真紅はギーシュを見上げて言い返した
「し、真紅ぅ、それは言い過ぎですぅ。ケンカしちゃダメです」
 最初に叫んだはずの翠星石が、真紅をおさえようとした。だが翠星石を無視して、真紅
はギーシュを睨み続けた。

 ギーシュはジュンを見下ろした
「ふん、どうやら君たちは礼儀を学ばねばならないようだね。丁度良い腹ごなしだ」
 ジュンはギーシュを見上げた。
「・・・分かった」
 ジュンはギーシュの目を見返した。だがギーシュは、ジュンの足が小刻みに震えているのに気付き、
口の端を下品に釣り上げた。
「ふふん、武者震いと言う事にしてあげよう。ヴェストリの広場に来たまえ」
 そう言ってギーシュ達は、ジュンを見張る一人を残して食堂を出て行った。

「あ、あの・・・」
 そういってジュン達に近づいてきたのは、シエスタとローラだった。
「ご、ごめんなさい!もともと悪いのは、仕事をさぼっておしゃべりして、あの方々にぶ
つかった私たちなのに!」
 そう言って思いきり頭を下げた二人を前にして、ジュンはへなへなぁ~とイスに座り込んだ。
「い、いえ…いいんですよ。気にしないで下さい」
「そんな!あ、あの、その、今からでも謝れば、きっと許してもらえるから、だから、そ
の・・・貴族の方を怒らしたら、平民の私たちは、必ず殺されるから、だから・・・ごめ
んなさいっ!!」
 シエスタとローラは走って逃げていった。

「にげちゃったですねぇ、情けないです」
 翠星石が腕組みして呆れていた。
「まぁいいわ。異世界に来た以上、いずれはこういう事もあると覚悟していたわ。行きま
しょう、翠星石」
 真紅がイスから降りようとした。だが二人の手をジュンが掴んだ。
「いや、二人とも待って欲しい。僕に行かせて欲しい」
「な!ジュン、何いってるのよ」
 叫んだのは、野次馬をかき分けて駆け寄ってきたルイズだった。ルイズはジュンの前に
立ち、腰に手を当ててしかりとばした。
「ジュン!あんたは何の魔法もない、ただの平民なのよ。魔法を使える貴族に勝てるわけ
無いでしょうが!」
「ん~、魔法の事は分からないけど、多分ボコボコにされるかな?」
 ジュンはルイズに額を指先でツンツンされながら、さも当然のように答えた。
「何言ってるのよ!あんたがボコボコにされただけじゃなく、殺されでもしたら、あん
たを使い魔にしたあたしの面目も丸つぶれよ!
 今なら謝ったら許してくれるから、早く謝ってらっしゃい!」
「そうだね、そっちの方が良いと思う。でもね…」
 ジュンはよっこらせと立ち上がると、広場へ向かって歩き出した。
「行きたいんだ、なんとなく」

「ちょ、ちょっとジュン。待ちなさい」
「どうしたんですか!?ジュン、待つですよー」
 真紅と翠星石がトテトテと後を追う。
「ああもう!ホントに、勝手なんだから。私の立場も考えてよね!」
 ルイズも後を追った。


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