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男達の使い魔 第十五話

「プロペラ、回します!」

その一言と同時に、シエスタが真空殲風衝を放ち、ゼロ戦のプロペラを回す。
その事実に、江田島は少しだけ驚いた。まだ年端もいかない少女が、真空殲風衝を使うとは思わなかったのだ。
しかし、その目を見て納得する。外見は全く違うとは言え、確かに彼女の目は「大豪院」に連なるものの目であったのだ。
だから、江田島は

「大義である!ルイズとやら、準備は良いか?」

そう言ってルイズを見つめた。その目には、深い海のような優しさがあった。そして威厳があった。
その様子に、ルイズは一瞬言葉に詰まる。しかし、彼女はやはり誇り高いトリステインの貴族であった。

「誰に向かっていっているのよ!それよりとっとと追い払って、帰ってくるわよ!」

初対面にも関わらず、ルイズは江田島の目を見つめ返してそう言った。

その様子に江田島は大きくうなずく。おそらく彼女にとっては初めての戦場であるのだろう。その瞳にはほんの少しの恐れがあった。
しかし、それを遥かに上回る大きさの、純粋な何かがあった。

ルイズはずっと考え続けてきたのだ。自分は魔法を使えない、シエスタや使い魔達のように強くはない。
考えて考えて考え抜いた結果、今のルイズがある。

(私は貴族よ。ならば決して後ろを見せない!取り乱さない!それに……)

ルイズは親友のアンリエッタのことを考える。
今の彼女ならば、自分から先頭に立つに違いない。そして敗北が決まるまで決して退くまい。
そう、ウェールズの死を告げた時、アンリエッタがそう心で誓ったのをルイズは見ていたのだ。
ならば、今のルイズは、自分がアンリエッタのためにできることをするだけである。

そんな気持ちが江田島にも伝わったのか、江田島はにやりと笑って大きく叫んだ。

「道を開けーい。ゼロ戦、発進するぞ!」

その瞬間、ゼロ戦に命が舞い戻る。
ふわりと浮き上がったとき、ルイズは興奮を隠せなかった。
そう、これほど巨体が魔法によらずして空を飛び始めたのだ。

数十年ぶりに命を取り戻したゼロ戦は、一瞬で遥か彼方へと消えていった。
その瞬間塾生達は、確かに塾長の声を聞いた気がした。

「わしが男塾第三の助っ人である!」


「むう。少し遅れたようだな。」
「王大人!」

桃が驚いて振り向くと、そこには王大人がいた。
富樫の治療はいいのかと詰め寄る桃に、王大人はにやりと笑って振り返る。
そこには、助っ人二号の肩を借りて地面に降りる富樫の姿があった。
そのことに安堵の表情を浮かべる桃達に、王大人は真剣な顔をして言った。

「それよりも、早く江田島殿を追いかけるぞ。少々気になることがあってな。」

王大人と、ルイズの使い魔達は、戦風吹き荒れるタルブの村を目指すことになった。


時は数分前に遡る。

江田島平八が意識を取り戻したとき、そこには最近行方不明になっていた一号生達の姿があった。
そのことに江田島は安堵する。そう、彼らは無事生きていたのだ。
彼らは、一様に呆けたように江田島を見つめていた。そう、まるでこれが白昼夢であるかのように。
だから、江田島は応えることにした。

「わしが男塾塾長江田島平八である!」

その言葉に、周りにいたシエスタとルイズは思わず耳を押さえてうずくまる。
頑丈に作られたはずの新男根寮すら、大きく震えていたのだ。

だが、効果は抜群であった。

見る見る内に一号生達の顔色に生気が戻る。それと同時に虎丸などは感極まって泣き出しそうな顔をしていた。
それを見届けた江田島は、桃の方を見ると声をかけた。

「状況を報告せい!」

「押忍!一号生筆頭剣桃太郎、状況を報告します。」

そして桃は手短に状況を報告した。
ここが異世界のハルケギニアであることを。自分達がこのルイズなる少女の使い魔をしていることを。
そして今は戦争中であり、この少女の手助けをしようとしていることを。

それらの言葉一つ一つを江田島はかみ締める。
桃は、意味もなく嘘を言うような男ではない。おそらく言っていることは全て真実であろう。
そう判断した江田島は、まずはルイズの方へと向き直った。

「こいつ等が世話になった。この江田島、礼を言おう。」

「え、いえこちらこそ。」

思わぬ江田島の言葉にルイズは困惑していた。
この男からは、ルイズ自身の母である「烈風カリン」から感じるものと同じものをルイズは感じていたのだ。
そんな怖い時の母と似た雰囲気を持つ江田島に頭を下げられたルイズが思わず困惑してしまうのも無理はなかろう。

そうして礼を言い終わった江田島は、ゼロ戦と幻の大塾旗を見上げる。
かつての友、佐々木武雄が己の命をかけて守ったものだ。決して粗略に扱えるものではない。

(お主の故郷を守るため、今しばらく借りるぞ。)

そうして心の中の佐々木に語りかけた江田島は、先ほど話を聞いていた通りにルイズを乗せると空高く舞っていった。

「「「塾長!ルイズ!御武運を!!」」」

一号生達が敬礼をしてその様子を見送っていた。


江田島は怒りを隠そうとはしていなかった。
ギリギリと歯をかみ締める。怒りの炎の宿った目で眼下のタルブの村を見つめる。

そこにはかつて美しかったであろう平原が移っていた。
アルビオン軍は、官民の区別なくこの平原を焼き払おうとしているようであった。

(塾長。後は頼みます。)

そんな時、江田島の耳に、ふと大豪院邪鬼の声が聞こえたような気がした。
そう、ここは大豪院邪鬼が、その生涯の果てに命をかけて守り抜いた地でもあるのだ。
そんな大切な場所を汚すようなやつ等を、江田島平八は許しはしない。

その時、江田島の視界の端に、敵竜騎兵の姿が映った。

「ルイズよ。あのでかぶつの前には必ず送り届けるゆえ、今しばらく辛抱せい!」

「へっ?」

まだ竜騎兵を捉えることのできていないルイズが一瞬間抜けな声を上げる。
しかし、江田島はそれを無視して急上昇を開始した。後ろから、苦しそうな呻き声が響いていた。


「三匹目だ」

そうしてブレスを放とうとした竜騎兵は己が目を疑った。
信じられない速度で敵竜は急上昇をすると、次の瞬間には自分の後ろにいたのだ。
江田島が、かつての友人坂井某から教わった必殺技『ひねり込み』である。

(ば、ばかな!)

そう思った瞬間、その竜騎兵は爆散した。


ゴホゴホと咳き込んだルイズは、荒っぽい運転に文句を言おうとして思いとどまる。
そう、ここはすでに戦場であるのだ。

「右下から三騎来ているわよ。いい?絶対にわたしを『レキシントン』まで送り届けなさい!」

その言葉に江田島は不敵な笑みで応えると、続いて襲いかかってきた三騎へと逆に襲い掛かった。

天下無双江田島平八、それを止めるに足る技量が、知力が、そして何より度胸がレコンキスタ軍には足りていなかった。

そう、この男を除いては。
次々と味方が落とされていくのをワルドはじっと眺めていた。
そうして分析する。今の竜では、真正面からでは勝てない。
たとえ不意を突いても、一対一では手傷を負わせるのが精一杯に違いない。
だからこそワルドはじっと勝機を待っていた。


見渡す範囲の敵騎を打ち落とした江田島は、再度『レキシントン』へと侵攻を開始した。
しかしその時、予期せぬトラブルが襲う。

ガクン、とゼロ戦がぶれる。

「きゃあ!」「ぬう!」

かつての大戦の後、ほとんどメンテナンスされることのなかったこのゼロ戦である。
また、韻竜とすら戦った歴戦の機体でもあるのだ。
いかに魔法によって劣化をとどめてあるとはいえ、修理には限界がある。
このハルケギニアにおいて、これ程壊れかけたゼロ戦を修理しきることはできなかったのだ。
韻竜との戦いで負った損傷部からパーツが一部剥がれ落ちる。
機体が不安定そうに空で揺れていた。

その瞬間を見逃すワルドではなかった。


「勝機!」

ワルドは思わず叫んでいた。
完全無欠に思えた敵が、思わぬトラブルか何かで手間取っているようであった。
これを見逃しては、おそらく自分に勝機はあるまい、そうワルドは考えていた。

(それに)

その竜の中には、ピンク色の髪をした人物が乗っていたのだ。
ならば、一緒に乗っているのはルイズの使い魔に違いない。
ワルドの左腕がうずいていた。その顔には残忍な笑みが浮かんでいた。

今、エア・スピアーがゼロ戦を襲う。


ドン!

硬い何かが機体をたたく音がする。計器が次々と警報を告げる。
ついに、ルイズは死を覚悟した。この高度から落ちて助かるはずはない。
ただ、アンリエッタの力になれそうにないことだけが残念であった。
最後にルイズは、憎き敵を見つめた。
そこには、残忍な笑みを浮かべるワルドの姿があった。

何とか機体を立て直そうとする江田島であったが、もはや機体は制御を受け付けなかった。
コクピットが爆発する瞬間江田島は、今は亡き友、佐々木武雄の声を聞いた気がした。


「やった!」

人が乗っている部分が爆発するのを確認したワルドは、思わず右手を握り締める。
あれでは乗っていた人物は生きてはいまい。

しかし、それでもまだゼロ戦は飛んでいた。
パイロットを失って、致命的な損傷を受けて、それでもまだ『レキシントン』へと飛んでいた。

往生際が悪い、そう思ったワルドは地面へと叩き落すべく、己の竜をゼロ戦へと進めた。

ドスン

ワルドの耳に、何か重いものが着地する音が響いたのはその時であった。


(江田島よ。後は任せろ。)

確かに江田島にはそう聞こえた。その瞬間江田島はルイズを抱えて空へと飛び出していた。
男の、友の言葉である。二言はない。
ならば自分は眼前の露払いをするだけである。

そう考えた江田島の下に、敵竜の姿があった。


振り向いたワルドは、一瞬己の目を信じることができなかった。
確かに殺したはずの敵が、自分の竜へと乗り移っているのだ。無理もあるまい。
しかし、その一瞬が致命傷となった。
慌てて呪文を唱えようとする。

「ライトニング……」

「遅い!」

素早く懐にもぐりこんだ江田島の拳が一閃する。

次の瞬間ワルドは、自分が凄まじい速度で水平に飛んでいくのを感じた。
そしてワルドの意識は闇へと落ちていった。

「わしが男塾第三の助っ人である!」

ワルドを遥か彼方へと吹き飛ばした本人は、そう名乗っていた。


ようやくルイズは我に帰ったとき、江田島は竜を手なずけていた。
『何故か』『拳状に』頭部を変形させていた竜は大変従順であった。

「佐々木武雄少尉に敬礼!」

江田島の声が走る。思わずルイズは手を頭のところに上げていた。
見ると、江田島も見事な色気のある敬礼をしていた。
その視線の先には、黒煙をあげながらも『レキシントン』へと突撃をしていくゼロ戦の姿があった。


『レキシントン』から次々と魔法の火が飛ぶ。
一撃一撃とゼロ戦はその姿を削られていくが、勢いは止まらない。

(馬鹿な!何故落ちない!)

『レキシントン』にて砲撃を担当していた士官は、そう思ったところで意識を失った。


ルイズはその様子をじっと眺めていた。
ただの機械仕掛けのゼロ戦に、何故かシエスタや自分の使い魔達のことを重ねてしまったのだ。

ボロボロになりながらもゼロ戦は進軍していく。その勢いは微塵たりとも衰えない。

ついにゼロ戦が『レキシントン』へと突撃して爆散する。
その時、ルイズに耳には、見知らぬ男の雄叫びが聞こえていた。

気づくと、ルイズの口からは呪文が漏れていた。

「エオルー・スーヌ・フィル・ヤルンサクサ……」


『レキシントン』では消火活動が続いていた。
敵竜の突撃によるダメージは決して少なくはない。しかし、それでもまだトリステインと戦える。
ボーウッドはそう判断していた。
そしてそれは正しかった。その瞬間までは。


相変わらずルイズの視線の先では、『レキシントン』が黒煙をあげ続けている。
しかし、徐々にその煙は治まりを見せていた。
そのことを確認したルイズは、最後の呪文を唱えることにした。
あのゼロ戦が作った隙を逃すわけにはいかないのだ。

「エクスプロージョン!」

その瞬間膨大な魔力がルイズの体を駆け巡る。
そうして発動したエクスプロージョンは、空間にすら歪みを与え、敵艦隊を炎上させた。


アンリエッタと、ようやく到着したルイズの使い魔達は、その瞬間を見ていた。
凄まじいまでの閃光が走り抜けた次の瞬間、全敵艦隊が炎上していたのだ。
全員事態の変化についていけない中、アンリエッタだけが祈りを捧げていた。

「ありがとう、ルイズ。わたしのお友達……」

そう言って、彼女は進軍を宣言した。
トリステインの勝利は目前へと迫っていた。


そんな中ルイズは、息を荒くしながら江田島にもたれかかっていた。
エクスプロージョンはルイズの全精神力と引き換えに莫大な成果を挙げていた。
見れば、まだ空間が歪んでいるのが分かる。
その時、

「ぬう!」「きゃあ!」

白い光が彼らを包んでいた。


「お、おいアレを見ろ!」

虎丸が思わず空を見上げて叫ぶ。
そこでは、ルイズと塾長を載せた竜が白い光に包まれているのが見て取れた。

次の瞬間、そこには何も残ってはいなかった。
ただ、その光の先には、懐かしい男塾の校舎があったのを、彼らは見ていた。
状況が全くつかめないまま、飛燕が皆の気持ちを代弁するかのように呟いたのが印象的であった。

「……我々は恐ろしい人を塾長に持ったようです。」


しかし、王大人だけはその様子を真剣な様子でじっと見つめていた。

(さすがは江田島殿。これで手がかりがつかめた!)

男達の使い魔 第一部 完



NGシーン

雷電「むう、あの技は!」

虎丸「知っているのか雷電!?」

雷電「あれぞまさしく周の時代に失伝したとされる飛念離個魅(ひ・ねんりこみ)!」

周の時代、最強と謡われた拳豪に風魯経羅(ふう・ろへら)なる人物がいる。
彼が最強と謡われた理由の一つにその技があった。
風魯経羅は、己の手に持った二つの棒をまわして自由自在に空を飛びまわったという。
時には遥か上空へ、時は急旋回を。
念を駆使して飛び回るその姿はとても一個人の保有する念の量では不可能と言われるほど人間離れしていたという。
しかし、その姿は優美を極めて人々を魅了した。
そんな人々が尊敬の意を込めて、彼の技を飛念離個魅と呼ぶようになるまでそれほど時間はかからなかった。
なお、このような故事に明るい坂井氏が、己のゼロ戦での技をひねり込みと呼ぶようになったのは、極めて納得のいく理由である。
また余談ではあるが、この話がシルクロードを伝わって欧州とハルケギニアに伝わり、
回転するもの一般をプロペラと呼ぶようになった、というのは今やもう常識である。

民明書房刊 「古代中国に学ぶ一般常識百撰」(平賀才人撰)



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