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ウィザーズ・ルーン~雪風の翼~4

 今までの悔しさ、恨みつらみをこめてルイズを馬鹿にしたのがそもそもいけなかった。
 食堂にきて、あーまた固いパンと汁だけのスープかよ、と思いながら床――席にあらず――につく。
 そこでルイズが顔を真っ赤にいて、肩をぶるぶる震わせながら「ごごご、ご主人様をばばば、馬鹿にするなんてイケナイ使い魔ね!」とかなんとかいいながらサイトのエサ――朝食にあらず――をとりあげてしまった。
 しかたなく外をうろうろしていると、メイドのシエスタに賄いを食べさせてもらえるということで、ついてきたのだが……
 そこには先客がいた。しかも結構見覚えのある顔の。



 シチューの美味さ、シエスタの優しさに感激しながら、サイトはシチューを貪った。
 この世界で始めて人の優しさに触れた気がする。
 この世界の人間は、サイトを雑用扱いしたり、使い魔扱いしたり、ろくでもないものばかりだった。
 それと比べてシエスタのなんと優しいことか!

 食事が終わったところで、何故か紅茶まで飲んでいる男――ヘイズと名乗った――に何故か手が汚れていたことを訊ねると、
「コック長のマルトー親父が人手不足だって言うからな。こっちとしても賄いとはいえ食事を貰う身なんで、仕込みの手伝いをやらせてもらってたんだ。働かざるもの食うべからずってな」
 じゃがいもの皮むきなんて何度やったかわからねえ、などとぼやくヘイズを眺めながら、実はこいつもなんだかんだ言って雑用してるのかと同情する。
 けれど同時に反発もする。つまりは俺も何か食べたければ、何か手伝えってことか? と。
 それでも毎日なにか手伝いをしていれば、紅茶までもらえるほどの待遇になるのなら、それは魅力的だな、とヘイズに対抗心を燃やしながら、
「じゃあさ、シエスタ。俺にも何か手伝えることはないかな?」
 と提案する。
「なら、デザートを運ぶのを手伝ってください」

 そして事件は始まる。



 ヴェストリの広場は今や、生徒達で埋め尽くされていた。
 事の始まりはギーシュが落とした香水をシエスタが拾ってしまったことで、ギーシュの二股がバレてしまったことだ。
 そこで下級生のケティと同級生のモンモランシーに同時にフラれたギーシュは、あろうことかその責任をシエスタに吹っかけたのだ。
 当然サイトは抗議した。「お前の責任じゃねえか」と。
 初めて優しくしてくれたシエスタに、ここ数日で不満が募りまくっていた貴族が無理難題を言っているのだ。
 つい反骨心が芽生え、売り言葉に買い言葉でああだこうだと言い争った挙句、「決闘だ!」ということになった。

 サイトは生徒達の後ろにシエスタを、片隅の木の陰にキュルケとタバサとヘイズを見つけた。
 みんなに見せてやりたかった。貴族だろうがなんだろうが、自分がぶっ倒してやる姿を。
 そうすれば自分に対する待遇も変わるだろうと信じて。
「ギーシュが決闘するぞ! 相手はルイズの平民だ!」
 生徒達がはやし立てるのを聞きながら、俺にも名前ぐらいあるんだよ! と心の中で毒づく。
 ギーシュは薔薇の花を手元で弄びながら、周囲に答えている。
 ――このキザ野郎め。
 貴族に馬鹿にされるフラストレーション、貴族に対する嫌悪感。
 サイトの我慢はすでにほとんど限界であった。
「逃げずに来たことだけは、誉めてあげようじゃないか」
 ギーシュが言葉を発するたびにそれは大きくなっていく。
「誰が逃げるかよ」
「そうか、では始めよう」
 その言葉と同時、サイトは駆け出す。
 ケンカは先手必勝だ。
 それに先日ヘイズが言った「とんでもない力」というものが自分にも備わっているかもしれない、とサイトはそう思ったのだ。
 左手の変なルーンが自分にパワーを与えてくれると信じて。
 鼻っ柱に拳をぶち込めば、あの鼻持ちならない野郎もおとなしくなるだろう。
 しかしその思いはあっさりと打ち砕かれる。
 ギーシュの振った造花の花びらが地面から、女性型の甲冑を呼び出しサイトの顔を殴り飛ばしたのだ。

 不意打ちを悪びれないように、芝居がかった仕草でギーシュは言う。
「僕はメイジだ。だから魔法で戦う。よもや文句はあるまいね?」
「て、てめえ……」
「僕の二つ名は『青銅』! だからこの青銅のゴーレム『ワルキューレ』がお相手するよ」
 サイトが反応するまもなくゴーレムの拳が、今度はサイトの腹にめり込む。
 たまらず吹っ飛ばされるサイト。
 殴られて痛む腹部を押さえ、よろめきながら、立ち上がろうともがく。
 ――ちくしょう、俺にはなんの力もないのかよ!
 期待させたヘイズを恨むが、それよりもあのゴーレムをなんとかしなければ。
 そう思いながらも動かない体に焦燥を募らせる。
 そこに桃色の髪を振り乱して、ルイズが駆け出してくる。

「ギーシュ! いい加減にして! 決闘は禁止されているはずじゃない!」
「おや、ルイズ? 禁止されているのは貴族同士の決闘のはずだよ? 貴族と平民の決闘に関する取り決めなんてない」
「そ、それは今までそんなことがなかったから……」
 しどろもどろになりながら答えるルイズを横目に、大げさな身振りで
「それとも何かい? 君はよもやその平民が好きなのではあるまいね?」
「う、うるさい! 私は自分の使い魔が勝手に決闘して、勝手に怪我するのが嫌なだけよ!」
 真っ赤な顔で否定するルイズ。
「うるせえな……」
 勝手に盛り上がっている二人を尻目に、ふらつきながらも立ち上がる。
 そしてその目はまだ死んでいない。
「誰が怪我するって? 勝手に決めんなよ」
「サイト!?」
「やっと名前で呼んでくれたな」
 なんだ慌てたら、結構可愛い顔をするんだな、とどうでもいいことを考える。
「バ、バカッ! なんで立つのよ! 立ち上がらなければ、殴られずにすむのに!」
「貴族だかメイジだか知らねえけどよ……そんなもんがなんだってんだよ、くだらねえ。そろいも揃って威張り散らしやがって」
 そしてギーシュを睨みつける。
「もはや、やるだけ無駄だと思うがね」
 ギーシュは造花を弄りながら答える。


 ヘイズはその様子をタバサとともに見守っていた。タバサの友人であるキュルケもいっしょである。
「ねえ? あの子勝てるの? どう見ても勝てそうにないんだけど、本当にあの子特別な力なんてあるの?」
 キュルケが疑問をぶつけてくる。
「「無理」だな」
 タバサとヘイズが同時に答える。
 ヘイズは服装から、サイトがこの世界の平民ではないと見抜いていた。
 仮にあの少年がヘイズと同じ世界から来たのなら、先天性魔法士か情報制御技術かそれに準ずる技術を持った人物であると考えていたのだ。
 だからこそ、「隠し玉」という言葉を使った。
 しかしどうやらシティかプラントに住んでいただけの、ただの少年だったようだ。
 誤算だった。
「……あのままでは彼は死ぬ」
「わたしにもそう見えるわ」
 立ち上がってからのサイトはと言うと、一方的にやられ放題で、第三者からみればどうみてもリンチにしか見えない。
 少年がその身をくの字に折るたびに、「うわ……」というキュルケの呟きが聞こえた。
 完全にヘイズの誤算だった。
 手助けするつもりで放った言葉が、あのリンチを煽ってしまったのだと思うと、申し訳なくなってくる。
「もう見てられねえ。オレが出るぜ。いいよな、タバサ?」
 タバサはただぽつりと、
「絶対に怪我しちゃダメ」
 とだけ言った。珍しく本を片付けて、最後まで見守るつもりのようだ。
「もちろんだ。ついでにタバサの使い魔がただの平民じゃないってところをみせてやる」
 ヘイズは一息に立ち上がると、キュルケの「え?」という言葉や、タバサの視線を背に浴びながら、決闘の中心地へと向かった。

 ギーシュは嘆息していた。
 タバサの連れている自称メイジの使い魔が言う「隠し玉」を見せようともせずに、平民は無様に攻撃を食らい続けている。
 ――実は隠し玉なんて何も持っていないのではないのかね?
 ギーシュはこれまでの戦いでそう判断していた。
 元々二股がばれたことの、腹いせ程度のものだったのだ。
 ルイズの使い魔が、本当にただの平民かどうか確かめたい気持ちもあったが、見せしめに痛めつけられればそれでよかった。
 もはやあの平民の使い魔に勝ち目はない。
 ルイズには可哀想だが、あとは適当に痛めつけて、それで終わりだ。
 考えをまとめると、ギーシュはサイトにとどめをさすべく、ゴーレムに命令を出そうとした。
 が、それは一人の男の乱入によって妨げられる。
「あー……、降伏してくれるとうれしいんだが。……無理だよなやっぱ」
 頭をがしがしと掻きながらけだるそうに呟く、タバサの使い魔の姿がそこにあった。

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