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『使い魔くん千年王国』 第二十五章 地獄の門

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大気の生霊(せいれい)を呼び出すため、外界に出る松下。太陽が地平線の上に出るまでに、呪文を唱えなくては。
しかし、眼下遠くの闇には、燃え盛る炎が見えた。タルブの村の方角だ。轟音も聞こえる。
「あっ! あれは、フネ(飛行船)ではないか……空襲か!」
さしもの松下も仰天し、寺院に戻って二人に急を知らせる。

「何てこと! あれは、アルビオンの艦隊ではないですか」
「奴らめ、不可侵条約などとはおこがましい。覚悟はしていたが、全くの奇襲ですぞ」
まあ、不可侵条約など破られるために存在する。日本とソ連のように。
「ど、どうしましょうメシア! 村が……!」

「ミスタ・コルベール、シエスタ。火竜たちに乗って、急いで村人をここまで誘導しましょう。
 それから『悪魔』を呼び出します」
山の麓には、すでに村人の姿も見られた。火竜に追われている者もいる。
「はい、ミスタ・マツシタ! 一刻を争いますな!!」

艦隊からは、凶暴なオーク鬼やトロール鬼も降下し、人間を貪り喰らう。
松下とコルベールは魔法でそれらを撃退しつつ、村人たちを山の上へと導く。
シエスタも村人たちを宥め、いくらか死傷者は出たものの、数十人が寺院へと避難できた。
村はなお、燃えている。


「エロイムエッサイム、エロイムエッサイム、我は求め訴えたり!
 朽ち果てし大気の生霊よ、眠りから覚めよ!
 気体より踏み出でて、万人の父の名の下に行う、我が要求に答えよ!!」

火竜の山の崖上。松下は全身に汗をかきながら、一心不乱に呪文を唱える。
地水火風の激しい変動が起こり、黒雲は渦を巻いて雷雨が降り出す。落雷が火竜を撃墜する。
もうすぐ夜明けだ、早く召喚を完成させなければ。
やがて黒雲の中から白く巨大な『生霊』が現れ、ザワザワと音を立てて近づく。

「天地万物を混乱に陥れている地獄の悪鬼よ!!
 陰気なる棲家を去りて、三途の川の此方へ来たれっ!!」

地下の魔法陣の中の大地が鳴動し、生臭い空気がたちこめる!
コルベールとシエスタの眼前で、円形の魔法陣の中の大地は、ドロドロの溶岩のように廻り出した!
松下に誘導された『生霊』は、バーーーンという物凄い音とともに魔法陣の中へ飛び込む!!
ずるり、とその中から、人間の形をしたものがせり上がる。
いや、さらにその下にも……。

「おおっ」
召喚されたのは、いくつもの彫像が刻まれた、巨大な青銅の『門』であった。
その上には松下しか読めない文字で、こう書いてあった。

『Per me si va ne la citta dolente, per me si va ne l'etterno dolore,
 per me si va tra la perduta gente. Giustizia mosse il mio alto fattore;
 fecemi la divina podestate,la somma sapienza e 'l primo amore.
 Dinanzi a me non fuor cose create se non etterne, e io etterno duro.
 Lasciate ogne speranza, voi ch'intrate' 』

すなわち、

『我を過ぐれば憂ひの都あり、我を過ぐれば永遠の苦患あり、
 我を過ぐれば滅亡の民あり。義は尊きわが造り主を動かし、
 聖なる威力、比類なき智慧、第一の愛我を造れり。
 永遠の物のほか、物として我よりさきに造られしはなし、しかしてわれ永遠に立つ、
 汝等こゝに入るもの一切の望みを棄てよ』

……と。


翌朝。トリステイン魔法学院にも、早くも急報は伝わっていた。
「たたた、大変だ! 戦争だ! 諸君! アルビオン軍が攻めてきた!」
「「ええっ!?」」
生徒や教師の間に、動揺が広がる。

「ラ・ロシェールとタルブの村を奇襲で占領して、戦艦が次々と降下しているらしい」
「やっぱり! 『レコン・キスタ』は最初からトリステインを攻める気だったんだ!」
「でもゲルマニアからの援軍は間に合いそうにない……けど、どうなるんです?」
「うむ、それで、アンリエッタ姫殿下が、おん自ら軍を率いて出陣するとかしないとか」
「姫様が!?」
「マザリーニ枢機卿はお止めしたらしいけど……」

タルブと聞いて、ルイズは飛び出す。
「タバサ! シルフィードを出して! タルブの村へ行くわ!」
「了解」
「あらルイズにタバサ、私も行くわ。確かマツシタくんも行っているんでしょ?」
いつもの面々が集まり、空へ。しばらくすると、ルイズのポケットから声が聞こえてきた。
松下から預かっていた、遠隔通話用のマジックカードだ。

『ぼくだ、ルイズ! 松下だ! タルブにアルビオン艦隊が攻めて来た!!』
「ええ、知っているわ! 今、タバサの風竜でそっちに向かっているの! 無事でしょうね!?」
『今は山奥の寺院にいる! 村人のいくらかはここに避難させた。
 これからぼくは「悪魔」を召喚し、艦隊にぶつける!! なるべく離れていろ!!』

簡潔に用件を伝え、通話を終える。松下は全身の力を使い果たし、ぐったりしている。
「め、メシア、この『門』は何なのでしょう。ひょっとして……」
「『La Porte de l'Enfer』……これは『地獄の門』だよ、シエスタ。これを開けられるのは『罪と死』か、『神とメシア』かだ。
 今からこれを開け、悪魔の力でアルビオン艦隊を滅ぼしてやろう。肩を貸してくれ」


「今の、マツシタくんから?」
キュルケが問い、ルイズは肯く。シルフィードに乗り、最大速度でタルブへ向かう。
早くも煙と炎、そして巨大な艦隊が平原に集まっているのが見えてきた。
黒雲から雷雨が降りしきっているが、炎が弱まる様子はない。

「この調子じゃ、私たちにはできることもなさそうね。それとも艦隊に突っ込んでみる?」
「あるわよ、できること! 村人だって生き残りがいるでしょうし、多少の損害を与えて足止めとか……」
「焼け石に水ね。とりあえずマツシタくんと合流しましょう」
「同意見」
冷静なキュルケとタバサに、トリステイン人のルイズはつい激昂する。
山の方に、寺院らしき建物が微かに見える。あそこにマツシタたちがいるのだろう。
「さ、行くわよ。『ゼロ』のルイズに、何ができるっていうの」

「ッッッ! ツェルプストー!! 馬鹿にしないで! 私は、私は、『ゼロ』なんかじゃ……!!」
その時、ルイズの脳に直接声が響く。指にはめた『水のルビー』が輝き、『始祖の祈祷書』と共鳴し始める。
白紙のページに、文字が浮かび上がる。


《否、お前は『ゼロ』だ。偉大なる『ゼロ』なのだ》
《おお、『虚無』よ。大いなる『虚空の蔵』よ》
《万物の最小の微塵は汝のものなり》
《開け、その力で『虚無の門』を開くのだ》

―――『ゼロ』という二つ名もそう悪いものでもない。
    『東方』でゼロは『0』と書くのだが、これはプラスにもマイナスにもなる
    無限の可能性を持った円環であり、未分化の力である『ウロボロスの蛇』を象徴する。
    また無尽蔵の扉である時空間の子宮でもあり、仏教における……
    ……だから現代量子力学における『ゼロ』というのは、無限大と無限小の……
    エネルギーがどこから湧き出すかと言えば、つまりさっき説明した次元間の断裂が…―――


地上で詠唱される松下の呪文にあわせ、トランス状態になったルイズは『虚無の門』を開く呪文を唱え始めた。
「エロイムエッサイム、我は求め訴えたり……」

(つづく)

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