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双月の女神 第六章1

人払いをした学院長室にて、コルベールとオスマンは神妙な顔つきで話し合っていた。
と言うのも、先程、異例であるミカヤの召喚について、コルベールが学院図書館特別閲覧区画『フェニアのライブラリ』で、
調べていた文献があったからであり、該当する情報を入手したのだ。

「では、間違いないのじゃな?」
「はい。ミス・ミカヤの額のルーンの写しと、文献の中にあったルーン文字は一致しておりました。」

コルベールが持ち出した書物は、『始祖ブリミルの使い魔』。
その一項の中の文字と、彼が模写したミカヤの額のルーン文字は完全に同じだった。
―――神の頭脳『ミョズニトニルン』。あらゆる魔道具を行使でき、そのルーンから得られる膨大な英知をもって、
始祖ブリミルを導いたとされる、賢者の使い魔。

「それが正しく、ミス・ミカヤが『ミョズニトニルン』であるならば、確かに一大事じゃな。」
「はい、オールド・オスマン。ミス・ミカヤは言うに及ばず、ミス・ヴァリエールも・・・。」

そこでコルベールは言葉を切るが、含む意味はオスマンに十分に伝わった。
すなわち伝説の再来。ルイズは現代に再臨した、伝説の系統『虚無』の担い手ということになる。

「しかし、まだ確証は得られておらぬ。決めつけるのは早計かも知れん。」
「確かに。しかし、可能性を否定することも難しいかと思います。」

異界の精霊魔法と、それ自体に力を持つ杖を振るうミカヤ。
魔法を使えないルイズが『世界』を越え、召喚したことは異端とも言える。
考察をしながら論議する二人だったが、扉をノックする音にそれを打ち切られた。

「誰じゃ?」
「私です、オールド・オスマン。ロングビルです。」

扉の向こうの、エメラルドグリーンの、肩を覆う真っ直ぐな髪の女性―――学院長付秘書のロングビルが報告に来た。
普段はオスマンのセクハラを受ける等、女性としては散々な目に遭っている、下縁眼鏡が似合う美人である。

「ヴェストリの広場で決闘をしている生徒がいるようで、大騒ぎになっています。
止めに入った教師もいましたが、生徒達に邪魔をされて、止められないようです。」

この聡明な彼女には珍しく、焦りを見せた口調で報告をしてくるのに違和感を感じたオスマンは、もしや、と思いつつも、
気に止めぬ様子を繕い、先を促す。

「全く、暇を持て余した貴族ほど、性質の悪い生き物はおらんわい。
で、誰が暴れておるんだね?」
「一人は、ギーシュ・ド・グラモン。」

ロングビルが上げた人物の名に、心からの呆れた口調で返すオスマン。

「あのグラモンのところの馬鹿息子か。大方女の子の取り合いじゃろう。
相手は誰じゃ?」
「それが・・・・・。
メイド服を召していたので、見間違いかと思われたのですが・・・。」

そう区切りロングビルは、一息飲んでから、その事実を告げた。

「ミス・ミカヤです。」

やはり、という表情になるオスマンとコルベール。

「教師達は、決闘を止める為に『眠りの鐘』の使用許可を求めております。」

オスマンはあらゆるものを見通す、鋭い視線になりつつも、あくまで口調は投げやりに、ロングビルに指示する。

「メイド服姿をしていたから、平民と勘違いをして因縁をつけて来たんじゃろう。
あえてその決闘を受けたからには、何か心算があるはずじゃ。
ミス・ミカヤに任せておきなさい。」
「分かりました。」

その指示に従い、学院長室からロングビルは去って行った。

「オールド・オスマン。御覧になられますか?」
「うむ。わしらの推察が当たるかも知れん。」

そう二人は頷くと、オスマンは壁に掛かった、学院中の遠見を可能にする大鏡に杖を振るった。





ファイアーエムブレム外伝 ~双月の女神~

第一部 『ゼロの夜明け』

第六章 『神の頭脳(ギーシュの章)』





時間は、決闘騒動の発端まで、遡る―――

ルイズと共に、失敗魔法により、荒れた講堂の掃除を済ませたミカヤは、昼食の手伝いの為に、再びメイド服で給仕に勤しむ。
ルイズに付き切りではあるが、気に入った給仕を、貴族は専属にすることがあるので、周囲は気に止めることはない。

「私、魔法を使おうとすると、さっきみたいに爆発するの。
今まで、四大系統だけじゃなくて、日常に使う『コモン・マジック』すら爆発しちゃう・・・。」

あれから幾分か落ち着きを取り戻しているものの、深く沈んでいる感情を隠し切れていない。
しかし、ミカヤは彼女の言葉と、先程の授業で学んだことから、引っかかるものがあった。
四大系統全てが、爆発現象になるのはあまりにもおかしい。
もしや、と一つの可能性が脳裏に浮かぶ。

「魔法の成功回数は、魔法を学び始めた時からゼロ。
だから、私の二つ名は『ゼロ』のルイズなんて言われてるの・・・。」

そこまで言ったルイズは、劣等感と、先程の失敗からの落ち込みから目頭に涙を溜める。
ここでミカヤは、ルイズに言葉をかけた。

「ルイズ。確かに人が使える魔法が使えず、失敗ばかりかも知れないわ。
でも、こうは考えられないかしら?
もしかしたら貴女だけにしか使えない、特別な魔法があるかも知れない、て。」
「私だけの・・・、魔法・・・?」

ミカヤを見上げ、訝しげに聞くルイズ。
微笑を浮かべながら、彼女の心をほぐすように、優しく語り掛ける。

「そう。使える魔法がなければ、見つけ出すの。
考え方次第では、意外なものが「答え」になる知れないわ。」
「・・・・・。」

彼女の一言一言を噛み締めるように、ルイズは考える。
自分に使える魔法とは?
ミカヤが使うような精霊魔法だろうか?それとも、まったく別のものだろうか?

「ミカヤさん!あちらへのデザートの配膳をお願い致しますわ!」

そこへ、シエスタから声がかかり、二人の話は打ち切られた。
見ればそろそろ、デザートの配膳をするタイミング。
ミカヤはシエスタに返事をし、席から離れた。

「分かりました!・・・じゃあルイズ、後でね。」
「うん・・・。」

出来るだけ早く帰ってきて欲しい、というニュアンスを交え、上目遣いでミカヤに頷くルイズ。
それに笑みで返すと、デザートの乗るバットを受け取りに厨房へと向かった。





ゆるいウェーブの、金の短髪の少年―――『青銅』の二つ名を持つギーシュ・ド・グラモンは、歴代の魔法将軍の家系の
四男である。
しかし、兄らやこの学院の同期と見比べると、未だ『土』系統ただ一つの『ドット』であるため、何かと見比べられることが
多い。
それでも、軍人家系の息子らしく、同期の中では一目置かれていた。
問題は血筋故か、色を好むということである。
端正な顔つきであることもあり、女生徒への受けが良い。

「なあギーシュ!お前、誰と付き合っているんだよ?」
「一体誰が恋人なんだ?この色男!」

それを鼻にかけ、自身を「薔薇」と呼ぶ少年は、周囲の同期達に浮いた話で冷やかしを受けていた。

「付き合う?この僕が?
薔薇はより多くの乙女の為に咲く。そのような特別な女性はいない。
いや、いてはならないのだ。
誰かが摘み取ってしまうと、後の乙女達が薔薇を見られなくなってしまうじゃないか。」

芝居がかった仕草で友人達に、自分が如何に多くの女性から好意を寄せられて
いるかをアピールして見せる。
それに、はやし立てる友人達。
とてもではないが、女性には聞き難い言葉である。
―――事実、デザートの配膳で来て、その台詞を聞いたミカヤは、
内心溜め息をついていた。

「あら?」

その時、ギーシュのポケットから小瓶が転がり落ちた。
自身の所まで転がってきたそれを拾い上げると、瞬時に頭の中に製造者、過程が知識として入り込む。

「どうしましたの?あら、その香水・・・・・。」

その様子を一人の少女に見咎められてしまう。ギーシュに想いを寄せる―――くすぶり続ける淡い炎、『燠火』の二つ名に
相応しい、栗色の髪のメイジ、ケティ・ド・ラ・ロッタだった。
彼女は食事を終え、休憩時間の誘いにギーシュを探して来たのだ。
悪いことに、香水の製造者である女性と同じく、恋をする相手を。
この紫色の香水を製造出来るメイジを、ケティは一人しか知らなかった。

「やはり・・・・・、ミス・モンモランシと・・・・・。」

途端に思いつめた表情になり、涙が溢れた。

「貴族様・・・。」

恋に裏切られた少女に、声を懸け辛いミカヤ。
メイド服を着ている為、ルイズ以外とは平民として振舞っている。

「それは私が届けますわ。お渡しくださいな。」
「分かりました。」

あの少年には悪いが、これも良い薬になろうと判断したミカヤは、言われた通り渡す。
それを受け取ると、今度はケティは怒りをたたえた形相に変わり、ギーシュの方に足を向け、開口一番怒鳴りつけた。

「ギーシュさま!」
「な、何だいケティ?何をそんなに怒っているんだい?」

自身が粉をかけている後輩の様子に狼狽するギーシュに対し、ぬけぬけと、とさらに怒りを強め、ミカヤに視線を向けつつ、
彼女から受け取った香水を見せる。

「先程、そちらのメイドから受け取ったものですが、これはどういうことですか?」
「おいおい、その香水はもしや、モンモランシーの香水じゃないか?」

それを目ざとく見抜いた友人。
ミカヤが召喚された時、ルイズをからかった少女の一人、モンモランシーのみが製造できる、鮮やかな紫色の香水。
これがギーシュのポケットからこぼれ、それに対し、怒りの感情をぶつけるケティから、結び付けられる答えは一つ。

「ケ、ケティ、落ち着くんだ。僕の心に住んでいるのは君だけなんだ・・・。」

そう、浮気である。
必死に弁明しようとするギーシュに、ケティは―――

「言い訳は聞きたくありません。」

その言葉と共に、平手打ち一閃で斬り捨てた。

「その香水が貴方のポケットから出てきたのが何よりの証拠ですわ。
さようなら!」

香水瓶をテーブルに手荒な動作で置き捨てると、そのまま足を踏み鳴らし去って行った。
だが、泣き面に蜂。彼の不幸はこれだけではなかった。
遠くの席から此方の様子を見ていたモンモランシーが、これでもかと言わんばかりの憤怒の形相で向かってきたのだ。

「やっぱり、あの1年生に手を出していたのね。」
「モンモランシー、誤解なんだ。彼女とは一緒にラ・ロシェールの森へ
遠乗りしただけで・・・。」

ころころと表情を変えるギーシュの思考をたどると、ミカヤは納得する。
彼にとって、モンモランシーこそが本命であり、落ち着いたところで、他の女性に粉をかけた。
しかしながら、甲斐性の無さがこうして露見した以上、関係の修復は困難だろうと、瞑目する。
そうしている間にも、モンモランシーは言い訳をしようとするギーシュに、ワインを開けて頭の上からかけ、踵を返しつつ、
破局の言葉を告げた。

「嘘つき!あんたなんかもう知らない!!」

彼女が去って行った方向を呆然と見送るギーシュ。
暫しの間、その空間は沈黙に包まれた。
おもむろにハンカチを取り出すと、心では泣きつつも、虚栄心でそれをひた隠しにした、芝居がかった動作でこう言った。

「あのレディ達は薔薇の存在の意味を理解していないようだ。」

それに溜め息をつき、その場を後にしようとするミカヤだったが、ギーシュは先程の、ケティが持ってきた香水を拾い上げた
人物である彼女を呼び止めた。

「待ちたまえ、そこのメイド。」
「何でしょうか?」

自業自得とは言え、恋敗れ、怒りの鞘当を探していたギーシュ。
巫女の姿をしていないことと、平民として振舞っているために、噂のルイズが召喚したミカヤとは知らずに、
声をかけたのである。

「君が軽率に香水の瓶を拾い上げたおかげで、二人のレディの名誉が傷ついた。
どうしてくれるんだね?」
「申し訳ありません。貴族様の所有されるものとは露知らず。」

頭を下げるミカヤ。しかし、反省の無いこの少年に一言添えた。

「しかし、お言葉ながら申し上げます。
あの時、お二人のお心を傷つけたのは貴族様、貴方ではないでしょうか?
身分は違えど、同じ女として、私は思います。
私に腹いせをされるよりも、まずはお二人に申し開きと謝罪を。」

きっぱりと、そして堂々と告げるミカヤの姿勢に、ギーシュは一瞬呑まれかける。

「その通りだ、ギーシュ!お前が悪い!」
「まずは弁解してこいよ、甲斐性無し!」

それに友人達が迎合し、茶々を入れる。
こうなってしまうと、彼のプライドは引き裂かれてしまい、怒りの感情しか浮かばなかった。
何より、自身の行動は図星を突かれていたからだ。
腹いせ、と。
図星を突かれた人間は、反省か、癇癪の二つの行動の内、一つを取る。

「平民の分際で、貴族に対するその不敬な物言い。万死に値する!
どうやら、メイドとしての教育が行き届いてないようだな!」

ギーシュの場合、後者を選んだ。
貴族である自身が、メイド姿をしているミカヤは平民にしか見えない。
平民からの説教など、許容できなかったのである。

「ちょうどいい。ちょっとした腹ごなしだ。
君に貴族に対する礼儀を、僕自ら躾けてくれよう。」

その言葉に、周囲はあわ立った。
今の台詞は決闘の申し込みの文句だった。
平民のメイドに見える、ミカヤに決闘等、と正気を疑った。

「待て、ギーシュ!相手は平民だぞ!」
「幾ら決闘禁止法に抵触しないと言っても、メイジと平民じゃマズイだろ!?」

騒ぎを聞きつけて、近くに来たシエスタも驚愕の表情を浮かべていた。
如何に、ミカヤがメイジとは聞いていても、このままではミカヤが殺されてしまうという、最悪の事態を想像することは
難くない。
仲良くなれるかも知れない、銀髪の乙女を血で汚させたくない。
一度目をつぶった後、彼女は覚悟を決めた表情に変わる。
異国から旅して来たと言う、今は亡き、故郷の祖父譲りの蒼い瞳を見開き、
口を開こうとした。

「分かりました。その決闘、受けましょう。」

しかし、ミカヤはそれを受諾したことで、その覚悟は霧散した。

「いい心がけだ。」

それに満足したように、大仰に頷くギーシュ。

「しかし、平民とは言え、私もメイジ。私の魔法の使用許可が条件です。」
「それぐらいならば構わないよ。身分は違えど、メイジたるもの、杖を持たず闘うは愚者の振る舞いだ。」

ミカヤの条件を飲みつつ、踵を返す。

「ヴェストリの広場で待っている。給仕の仕事が一段落したら来たまえ。
くれぐれも、逃げないようにな。」
「分かりました。すぐに参ります。」

ギーシュの後姿にそう返すミカヤ。
彼は振り返ることなく、食堂を後にした。

色恋の修羅場が一転、決闘騒ぎに発展してしまったものの、食堂の喧騒はなりを潜めた。
まずは杖と魔導書を取りに行くために歩き始めたが、シエスタとルイズが駆けつけて来た。

「ミカヤお姉さま、どうしてギーシュとの決闘を受けたの!?」
「ミカヤさん、お願いだから行かないで。殺されちゃう。」

それぞれに口を開き、思い止まらせようとするが、ミカヤは二人に優しい笑みをたたえながら、横に首を振る。

「大丈夫ですよ。少し、浮気のことを懲らしめて来るだけですから。」

そう言うと、近くにいたギーシュの友人に一言告げ、退室する。

「少し準備をして参ります。」
「終わったら来いよ、メイド。」

不遜な物言いで返す友人。

「ああ、もう!ミカヤお姉さまもあんな奴、放っておけばいいのに・・・・・。」

極度に興奮しているために、自身が『ミカヤお姉さま』と言っていることに気づいていないルイズは、ミカヤの後を追いかける。
その場に立ち尽くし、思いつめた表情のシエスタを残して。

「・・・・・ミカヤさん、万が一のことがあれば、私が貴女を守ります。
お祖父ちゃんから譲り受けた技と、大剣『アロンダイト』に誓って・・・・・。」

―――――そして、伝説がこの学院に降臨する様を、目の当たりにすることになる。

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