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昼休みの決闘者たち


悟空とギーシュの決闘が始まる数分前、空きっ腹を抱えて食堂へやってきたコルベールは、食堂に残っている生徒がごく僅かで、その中にミス・ヴァリエールの使い魔は含まれない事に気付いた。
そして、遅めの昼食(材料が足りないのか、何故か賄いで出るようなスープとパンが少しだった)を採っている最中耳にした生徒の会話から、件の使い魔がヴェストリの広場でミスタ・グラモンを決闘を交えようとしていることを知った。
昼食を喉に詰まらせて激しく咳き込んだコルベールは、皿に残ったスープの残滓を急いで飲み干し、再び学院長の元へと駆け戻った。
学院長室の入り口の前で、ミス・ロングビルにばったり出くわす。

「ごきげんよう、ミスタ・コルベール。凄い汗ですが、急いでどちらへ?」
「実は、生徒たちが決闘を行おうとしているので、その件で報告をと」

ミス・ロングビルの顔色が変わる。

「ミスタ・グラモンとミス・ヴァリエールの使い魔ですね?」
「ご存知でしたか?」
「私もその件で報告をしようとしていたところです。宜しければ一緒にどうですか」
「是非に!」

ミス・ロングビルが扉をノックし、一言二言会話を交わして学院長室に入る。コルベールも後に続いた。

「なんじゃ? 二人揃って」
「ヴェストリの広場で、決闘をしようとしている生徒がいるようです。大騒ぎになっており、止めに入ろうとしている教師がいますが、生徒たちに邪魔されて、止められないようです」
「まったく、暇をもてあました貴族ほど、たちの悪い生き物はおらんわい。で、誰が暴れおるんだね?」
「1人は、ギーシュ・ド・グラモン」
「あの、グラモンとこのバカ息子か。オヤジに輪をかけて女好きじゃからの、おおかた女の子の取り合いじゃろう。まったく、あの親子は。相手は誰じゃ?」
「ミス・ヴァリエールの使い魔です」コルベールが口を挟む。
「…それは本当か、ミスタ・スポック」
「コルベールです。って、いきなりそんな突拍子も無い名前が出るのは非論理的です」
「そういうお前さんだってちゃっかり返してきとるじゃないか」
「教師たちは、決闘を止めるために『眠りの鐘』の使用許可を求めております」
「アホか。たかが子供のケンカを止めるのに、秘宝を使ってどうするんじゃ。放っておきなさい」
「判りました」

ミス・ロングビルの退室を見届けると、オスマンはコルベールに目配せした。

「さてと、ミスタ・コルベット」
「コルベールです。さっきよりマシですが、微妙に間違ってます」
「件の人物が本当にガンダールヴの幽霊かどうか、確認する機会が訪れたようじゃな」

オスマンが杖を振るうと、壁にかかった大きな鏡に広場の様子が映し出された。



ヴェストリの広場は、重苦しい沈黙に包まれていた。
ギーシュのワルキューレから繰り出される攻撃は、当たり所によっては一発で人間の骨くらい簡単にへし折るほどの威力がある。
それを何発も、しかも数分に渡ってその身に受け続けた男は、骨折どころか擦過傷すら負った様子が無い。
ミス・ヴァリエールの使い魔は化け物か。
物言わぬ彫像と化したギャラリーは、あれが「天使」という言葉だけでは説明できない「何か」である事を薄々感じ始めていた。
そしてギーシュは、この化け物に対し最も適切な自分の行動を、女性に浮気がバレた時の言い訳を考える時よりも遥かに速い速度で考えては没にしていた。
ワルキューレを再構築して戦う――精神力が保たない。それに、さっきの攻撃の結果から、徒労に終わるのは目に見えている。
自分が戦う――ワルキューレより遥かに劣る自分の攻撃が、この男に通用するはずが無い。
逃げる――有り得ない。貴族が決闘の最中敵に背を向けるのは、敵に倒されるよりも屈辱的な事だ。
降参する――尚更有り得ない。他に選択肢が無いとしても、グラモンの家名を汚したこの男にだけは。そう自分のプライドが言っている。
その他――考えろ、考えるんだギーシュ・ド・グラモン。この状況を打つ手を、1秒でも早く、考えろ……!
聞こえてきた足音に、ギーシュは我に返った。
ミス・ヴァリエールの使い魔が、こちらに向かって歩いてくる。
ギーシュは立ち上がろうとした。だが、腰が完全に抜けてしまって足に力が入らない。
やがて、悟空がギーシュの眼前に立ちふさがった。
こちらに手を伸ばしてくる。
止めを刺されることを悟ったギーシュは、生まれて初めて心の底から震え上がった。真の恐怖と決定的な挫折に……。
恐ろしさと絶望に涙すら流した。 これも初めてのことだった……。
ギーシュは既に戦意を失っていた…しかし、それは悟空にとっても同じだった。
既にギーシュからは闘志が失われているのを悟空は感じていた。
戦いとは、双方の実力が拮抗してこそ面白いものだ。
今のように、自分より遥かに力量の劣る相手と戦ったところで、悟空には面白くも何とも無い。
彼は常に、互いに全力を出し切って戦うことを望む男であった。

「立てっか? 手貸してやるから、つかまれ」
「は、はえ?」

涙と鼻水にまみれた顔のギーシュが、情けない声をあげる。

「今のおめえじゃオラには勝てねえ。多分さっきのがおめえの目一杯だったんだろ?」

見透かされていた。
その上、敵に情けをかけられた。
ギーシュは夢遊病者のように、無意識に悟空の手を取った。
悟空に手を引かれ、震える足腰に活を入れて立ち上がりながら、自分のプライドがズタズタにされているのを感じた。
ついさっきまで殺されることをあれほど怖がっていたのに、今はむしろ死んでしまいたい。

「悪かったな、おめえの家名に泥塗っちまって」
「え…?」
「ルイズに聞いたんだけどよ、名前間違えるってのはこっちじゃ誇りを傷つけることなんだってな。本当に悪ぃ事したな」
「あ…ああ」

誇りを傷つけられるのが我慢できないのはどうやらルイズだけではなく、この学院の生徒、いや、貴族というものは総じてそうらしい。
悟空は、貴族とは要するにベジータみたいなヤツなのだと結論付けた。
そして、自分にサイヤ人であることの誇りを教えてくれた男に、密かに感謝した。

「だからよ、今度からギーシュって呼んでいいか?」
「な、何だって?」
「オラあんまり長い名前だと覚えてても言い間違えちまいそうだからさ、単純に最初の名前でなら呼べると思うんだ」
「あ、ああ、それは構わない」
「じゃ、宜しくな」

使い魔が手を握手の形にして差し出す。
ギーシュは考えた。
この男は何なんだ?
あれ程攻撃を加えた自分に対し、反撃してくるどころか手をとって立ち上がらせ、挙句自分の非を詫びてきた?
食堂での一件を差し引いても、自分の非を詫びるのは普通、敗者の行いだ。
それをこの男は…。
少しの間迷った後、ギーシュはそれに応えた。

「まったく…君は色々と凄い奴だな、参ったよ。よければ名前を教えてくれ」
「オラ悟空。孫悟空だ」
「珍しい名前だな。ゴクウと呼んでいいかい?」
「ああ」
「改めて自己紹介させてもらう。ギーシュ・ド・グラモンだ。呼び方はさっき君が言ったとおり、ギーシュでいい」
「わかった」
「それと、僕からも宜しく」

握った腕を軽く上下に振る。
ギーシュは悟空の手を離し、ハンカチで涙と鼻水を拭き取り、晴れ晴れとした顔でギャラリーに向き直った。

「この決闘、ギーシュ・ド・グラモンの敗北をもって終了とする!」

ギャラリーのそこかしこからぽつぽつと不満の声が聞こえてくるが、ギーシュにはこの上ない完敗であった。
だが、不思議と悔しさは無かった。

「なあ、ギーシュ」
「何だい?」
「おめえが修行してもっと強くなったらさ、もう一度戦おうぜ。今度は決闘じゃなくて試合がしてえんだ」

ギーシュは苦笑した。そして清々しい気持ちで一杯になった。

「はは、僕が君と対等に戦えるようになるまではずいぶん時間がかかりそうな気がするね。…でも悪くない提案だ。僕が今以上に強くなったら、その時はまた手合わせ願うよ」
「ああ! …あ、そうだ」

悟空は腰に巻いた帯の隙間から小瓶を取り出した。
食堂でギーシュが落としたものだ。

「よかったー、割れてねえや。これ、おめえのだろ?」
「…これは……。ありがとう。さっきは無視して済まなかった」
「何だ、やっぱり無視してたんか」

悟空からギーシュに手渡された小瓶を見た生徒――ギーシュの取り巻きの一人だ――から声が上がる。

「おい、あれはモンモランシーの香水じゃないか?」

その一言は、池に投げ入れられた小石が立てる波紋のように周囲に影響した。

「そうだ、あの鮮やかな紫色は、モンモランシーが自分のためだけに調合している香水だぞ!」
「ギーシュ、お前モンモランシーと付き合ってたのか!」

沸き起こるギーシュに対する追求の中から、栗色の髪をした少女が歩いてきた。
目には涙を浮かべ、わき目も振らずギーシュの元へと歩いてくる。

「ギーシュさま…やはり、ミス・モンモランシーと……」
「彼らは誤解しているんだ。ケティ。いいかい、僕の心の中に住んでいるのは、君だけ…」

ケティと呼ばれた少女がギーシュの頬に張り手を食らわす。

「その香水を貴方が持っていたのが、何よりの証拠ですわ! さようなら!」

少女は涙も拭かずにその場を去った。
ギーシュが赤くなった頬を擦っていると、更にもう一人、金色の髪を巻き毛にした少女が歩いてくる。悟空はそれが件のモンモランシーだと理解した。
ギーシュが必死に弁解する。

「モンモランシー。誤解だ。彼女とはただ一緒に、ラ・ロシェールの森へ遠乗りをしただけで……」

首を振りながら言いつつ、冷静な態度を装っているが、冷や汗が額を伝っているのが目に取れた。
氷のような目つきでモンモランシーがギーシュを見つめる。

「やっぱりあの一年生に、手を出していたのね?」
「お願いだよ。『香水』のモンモランシー。咲き誇る薔薇のような顔を、そのような怒りで歪ませないでくれよ。僕まで悲しくなるじゃないか!」
「ふん!」

電光石火の速さで振り上げられたモンモランシーの右足が、寸分違わぬ正確さでギーシュの股間に深くめり込んだ。

『オウ!!!』

悟空を除く、その場の♂がギーシュを含め一斉に苦悶の表情を浮かべて股間を押さえる。
ギニュー特戦隊も驚きのチームワークがそこにあった。

「うそつき!」

怒鳴るように吐き捨て、その場を立ち去るモンモランシー。
白目をむき、冷や汗を脂汗へと変えながら前のめりにうずくまるギーシュ。
辺りにはギーシュの鳥を絞め殺したような呻き声と、呆れ顔の悟空がギーシュの腰を叩くトントンという音だけが聞こえる。
やがて、顔面蒼白になりながらフラフラと立ち上がったギーシュが、首を振りながら芝居がかった仕草で肩をすくめる。

「あ、あのレディたちは、薔薇の存在の意味を理解してないようだ…」
「ははっ、おめえ、ヤムチャみてえなヤツだな」
「うぐ、何だかよくわからないがひどく馬鹿にされてる気がする……」
「まあ、後で謝りに行ったほうがいいんじゃねえか?」



オスマンとコルベールは顔を見合わせた。
「あれのどこが決闘なんじゃ」
「座っているミスタ・グラモンをあの使い魔が立たせて、二人が握手したと思ったら…今度は痴話喧嘩ですか?」
「まったく人騒がせなヤツらじゃわい」

ミス・ロングビルとの会話のせいで、二人は肝心の戦闘を見過ごしていた。

「しかし、やはりあの使い魔のことは王室に報告すべきではないかと…」
「いや、仮にあれがガンダールヴの幽霊だったとしてもまだ時期尚早じゃ」
「何故です?」
「頭の眩し…ゲフンゲフン、頭の固い王室のクソッタレどもが幽霊の存在なんか信じると思うか?」
「言われてみれば……」
「お前さん、その反応じゃとまだあの使い魔にその辺訊いておらぬな?」
「ごもっともな事で。申し訳ありません」

オスマンは杖を握ると窓際へと向かった。遠い歴史の彼方へ、思いを馳せる。

「ふう~。…伝説の使い魔『ガンダールヴ』か……。一体どのような姿をしておったのだろうかのう…」
「『ガンダールヴ』あらゆる『武器』を使いこなし、敵と対峙したとありますから」
「…そういえば、あの男武器を持っとらんかったな」
「あ」



昼休みがそろそろ終わる。
決闘が終わったヴェストリの広場には、まばらに生徒が残っていた。
大多数の生徒は次の授業のため、教室へと移動している。

「本当に勝っちゃったわね…。…ていうかあれ、勝ったの?」
「負けてはいない。それに、実力では彼の方が上」
「そうね。本当、タバサの言うことは正しいわね」

賭けの配当金で懐が暖かくなったキュルケは、うっとりした顔で悟空を見やった。

「それにしても、改めて見るといい男よねえ…。あたし強い男って大好き」

タバサは一瞬読んでいる本から目を離してチラリとキュルケを見たが、何も言わず再び視線を本に落とした。

「正直言って、あんたがあんなに強いとは思わなかったわ」
「見直したろ?」
「…まあね。使い魔としては結構いいセン行ってるかしら。ところで教えて欲しいんだけど」
「何だ?」
「あんたがそんなに頑丈なのって、死んでるから? それとも、元々?」
「元々からだ」
「…マヂですか」

ルイズが悟空のことを彼女なりに褒めていると、顔を輝かせたシエスタが走ってきた。

「ゴ、ゴクウさん凄いです! 貴族相手に決闘して、勝っちゃうなんて! 私あんなに強い人見たの初めてです!!」
「死ななかったろ?」
「はい! 」

悟空の冗談はシエスタに気付かれなかった。どうやら、未だに悟空の事を「もの凄く強い天使」だと思っているらしい。

「シエスタ、っていったっけ」
「はい、ミス・ヴァリエール」
「わたしたち、授業があるから」
「あ、そうですね。私も料理長にこの事を報告しに行きたいので、これで失礼します」

ぺこりと頭を下げて、立ち去ろうとするシエスタに悟空が声をかける。

「シエスタ!」
「何でしょう?」
「今朝の洗濯物、いつ取りに行きゃいいんだ?」
「あ、私がミス・ヴァリエールの部屋に届けますから大丈夫ですよー」
「わかった。サンキュー」



午後の授業の後、ルイズはコルベールに呼び出された。

「君の使い魔の件だが…。彼に何でもいい、武器を与えてやってくれないか?」
「構いませんが…どうしてですか?」
「ちょっと思うところがあってね。とりあえず資金の幾分かは私が出すよ」

そう言って、ルイズにエキュー金貨20枚を手渡す。

「何分安月給なもので、これだけしか渡せないのが申し訳ないが」
「お気持ちだけで十分です。これは取っといて下さい。それに、わたしもあいつに武器を持たせたらどうなるか、ちょっと興味が出てきました」
「ありがとう。武器を与えたら教えてくれ」
「わかりました。明後日の虚無の日に街へ行ってみます」
「宜しく頼むよ」



「よう、待ってたぜ、『我らの拳』!」

夕食時、厨房に入ってきた悟空を、マルトーが抱きつきながら出迎えた。

「うわっ、何すんだ、気持ち悪ぃ! 我らの拳って何のことだ!?」
「あんたは俺たちと同じ平民なのにあの偉ぶった貴族の小僧に拳骨ひとつで勝ったんだ。我ら平民の誇り、我らの拳だ」

どうやら、マルトーは悟空を平民だと思っているらしい。
ふとシエスタの方を見ると、「忘れてた」といわんばかりの表情を浮かべて悟空とマルトーを交互に見つめている。
スキンシップを終えて満足したマルトーが厨房の奥へ引っ込むと、シエスタが謝ってきた。

「ご、ごめんなさいゴクウさん、私料理長にゴクウさんが天使だって事言うのすっかり忘れてました」
「オラも言うの忘れてたんだけどよ、本当はオラ、天使じゃねえんだ」
「へ?」
「話せば長くなるんだけど、とりあえずはその『平民』って事にしてくれてもいいぞ」
「は、はい!」

自分たちと同じ平民だと聞かされ、シエスタの笑顔がいっそう明るくなった。
やがて、悟空に食べさせるためのスペシャルメニューが運ばれてくる。
食器の数は減ったが、量は昼に勝るとも劣らない。

「見た目は少ないかも知れねえが、量は昼とあまり変わらねえはずだ。思う存分食ってくれ!」
「サンキュー! じゃ、いただきまーす!!」

惚れ惚れする勢いで料理を胃袋に収める悟空。
そしてそれを惚れ惚れと見つめながら悟空におかわりを注ぐシエスタ。
そんな二人を惚れ惚れと見つめるマルトー。
満腹の者が見てもまだ空腹を覚えそうな、見事な食べっぷりであった。

「なあ、お前どこで修行した? 一体どんな事をしたらあんなに強くなれるのか、俺にも教えてくれよ」
「別に特別な事はねえぞ。毎日ひたすら修行するだけだ」

悟空の言葉は嘘ではない。
今日見せた強さは、あくまで氷山の一角であり、日頃の鍛錬で十分に出せる実力の範疇であった。

「お前たち! 聞いたか!」

マルトーは厨房に響くような大声で怒鳴った。若いコックや見習いたちが、返事を寄越す。

「聞いていますよ! 親方!」

「本当の達人と言うものはこういうものだ! 大事なのは日々の積み重ねだ。見習えよ! 達人は怠けない!!」

コックたちが嬉しげに唱和する。

『達人は怠けない!』
「やい、『我らの拳』。そんなお前がますます好きになったぞ。どうしてくれる」
「あひふふおああんへんひへうえお」
「何だって?」

ずぞぞぞぞ、と口に含んだヌードル状のものを啜り込み、そのまま飲み込む。
コックから、「おい、今の量一食分はあったぞ…」とか、「ちゃんと噛めよ…」などと呟きが漏れた。

「抱きつくのは勘弁してくれよ」
「そうか、そりゃ残念だ。じゃあお前の額に接吻させてくれ」
「もっと嫌だ! オラそういう趣味はねえぞ!」
「がはは、冗談だ。おい、シエスタ! 我らの勇者に、アルビオンの古いのを注いでやれ」
「はい!」

先に食事を終えたルイズは、そっと厨房の中を覗き見、自分の使い魔が厨房の皆と打ち解けているのを見て少し嬉しくなった。
強い、素直、人望がある。宇宙人の使い魔も結構悪くない。



翌朝、昨日の宣言通りに自分で洗濯をこなしてきた悟空をルイズはとても褒める気になれなかった。
靴下やブラウスなど、それなりに強度があるものは一応綺麗に洗ってある。
だが、肝心の――ルイズのお気に入りである――シルクの下着がひどい有様だった。
恐らく他の衣類と同様にジャブジャブと水洗いしてしまったのだろう、よれたりところどころ破れたりしていて、もう二度と履けない。

「……あんた、これ見なさい」
「わ…わりい。慎重に洗ったつもりなんだけど、どうしても布地が戻んなかったんだ」
「あんた、シルクの下着洗ったことある?」
「ねえな」
「…はあ、やっぱりね……。いい? シルクは水洗い厳禁なの。ぬるま湯で2、3回押し洗いするの。揉み洗いだとすぐに繊維が駄目になってしまうわ」
「へえ」
「そして、洗った後は軽く絞って陰干し。軽くよ。いいわね」
「難しいな…。自分から言っといてなんだけどよ、やっぱシエスタに頼んだ方がいいんじゃねえか?」
「なんで? 他のはちゃんとできてるじゃない」
「いや、力加減が難しくてよ、実を言うとあっちだっておっかなびっくりだったんだ」

そう言って、手際よく洗えている靴下を指差す。
悟飯が小さい頃は悟空も洗濯を手伝っていたが、人造人間と戦うための修行の頃から、だんだん洗濯中に服を破いてしまう事が多くなって、チチに洗濯はもういいと止められていたのだった。

「…まあ、あんたがシルクの洗濯をマスターするまでに何枚もわたしの下着が駄目になる可能性を考えたら、確かにそっちの方がいいかもね」

ルイズは妥協すると、悟空を連れて朝食へと向かった。


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