あの作品のキャラがルイズに召喚されました @ ウィキ

小ネタ:核金

 眼前で暴れるその巨大なゴーレムを前に、ルイズは悔しさのあまり奥歯が砕けるほどに口をかみ締めていた。
 学友たちが魔法でゴーレムに応戦している中、ゴーレムは自分へ一切注意を払っていなかったから。
 それは己が脅威に値しないという態度の表れ。
 情けなさのあまり心臓がはじけそうなほど、頭に血が上っていた。


 その春の使い魔召喚の日、何度も何度も、それこそ日が暮れるほどの失敗の後ゼロのルイズの眼前の煙の中にあったのは、六角形の金属板だった。
 何らかの特殊な金属でできているらしい、それでも生き物ですらないそれに口づけ、ルイズは涙をこらえながら自室に戻っていった。
 金属板の中央の文字が消え、ルーンがゆっくりと浮かび上がった。


 ゴーレムは依然眼前で暴れている。
 自分には何もできない。
 爆発はあくまで爆発、狙いも良く定まらないそれは最悪味方を誤爆しかねかった。
 ルイズは一人、ポケットの中の金属板を握り締めた。


 使い魔は契約した主人と感覚を、あるいは知識を共有する。
 その金属板にも無論それが存在したという記憶があり、その元の持ち主の記憶がある。
 その金属板は夢の中、ルイズの夢に記憶、否、記録を送り込んだ。
 それはかつての戦いの思い出。

 勝利の記憶、貪り食われる人間、飛び散る臓物、砕かれる骨肉。
 敗北の記憶、正気を失った子供たち、刺し貫く刃、砕け行く主の体。
 戦いの記憶、はじけ飛ぶ黒煙、空を舞う羽、麗しの日々。
 静寂の記憶、暗い倉庫の中、瞬く光、輝く鏡。

 記憶は思い出としてルイズの夢を駆け巡る。
 そんな夢の暗闇に輝く一筋の光の中、これ以上ないくらいエレガントな青年が背中を向けてポーズを決めて嗤っていた。

 ルイズはもう一度その金属板を握り締め考えていた。
 あのゴーレムの主フーケは自分をどうするだろう?
 おそらくは殺そうとするだろう。
 そしてそのときは間違いなくキュルケとタバサは殺されている。
 ならば賭けてみるのもいいかもしれない。

 所詮自分はゼロなれば。

「フーケ!」

 叫んで駆け出し金属板をその手に握る。
 それを掲げ少女は、ありったけの声で叫んだ。

「助けてパピヨン様!」
(ノンノン! もっと愛を込・め・て! パピ! ヨン!)

 変な幻聴を聞いたルイズの手の中で光が生まれた。

 金属板は発光しまるで機械のように分解されはじけ飛ぶ。
 その抗生物質も、構成情報も、保有するエネルギーも、物理法則も、その一切合切をまるで魔法のように無視してその機能を実行した。
 光が納まると同時に空中に湧き上がる水、それは蝶のように姿をかえルイズの周りを飛びまわる。
 ルイズの背中から同じく水が湧き上がり、大きな蝶の羽を形作った。


「蝶? ゼロじゃなくなったのはほめてやるがこんな水滴ごときで何とかなると思ってんのかい!?」

 ひらひら舞って近づいてくる蝶の一頭を、フーケは煩わしそうにゴーレムで軽く払い飛ばす。

 直後光と轟音が炸裂し、ゴーレムのその巨大な右腕は右肩ごと吹き飛んで地に落ちた。

 唖然とするフーケに向かってルイズの周りを舞う透明の蝶が次々と飛来する。
 悲鳴を上げてゴーレムを再構成、急いで楯にする。
 だが次々飛来する蝶の群れに爆撃されて砕け散り、その後には砂の山しか残ってはいなかった。

 森の中からボロボロになったロングビルが現れるまで、ルイズは高らかに笑い続けた。


 何故それがそこにあるのか? そんなことは誰にもわからない。
 だがそれは確かにルイズに召喚され、かつての主の力の形を引き継いで受け継がれた。
 その金属板の名は“核鉄”、使用者の思いを形に変えて力を与える魔法の金属。
 かつての世界で超人・パピヨンと呼ばれた男に用いられ、後に危険物として封印された61番。

 かつての黒色火薬と違いその蝶を構成するのは透明の液体。
 地球という星の上で“ニトログリセリン”と呼ばれている微細な振動で炸裂する危険物質。

 後にレコン・キスタに属する七万の軍隊を、風竜のはるか上空からばら撒かれた蝶たちでその旗艦レキシントン号ごと爆沈せしめ、“地獄蝶のルイズ”と呼ばれるようになる少女の、これは小さな第一歩であった。
 エレガントな仮面をかぶり爆音をBGMに、ルイズは今日も空を舞う。

「蝶・サイコー!!」


『ハルケギニアより愛を込・め・て♪』




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