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『虚無と金剛石~ゼロとダイアモンド~』-3(後編)


その参.懐古 (後編)


 アランを召喚した生徒―ルイズの処遇は、放課後職員会議を開いて決めるが、決して悪いようにはしない……と、オスマンから言質をとったことで、アランはようやく喉の奥に刺さった魚の小骨が取れたような爽快な気分になっていた。

 コルベールによれば、使い魔召喚は、学生の今後の属性や方向性を占う重要な儀式であり、同時に2年生への進級試験も兼ねているとのこと。
 それを聞いた時から気にはなっていたのだが、つい後回しにしてしまっていた。
 何しろ、精霊神が介入するほどのイレギュラーで、自分がこの世界に送られたのだ。
 そんな異常事態を引き当ててしまったばかりに、その女生徒が進級し損なったと言うのは、さすがに後味が悪い。
 その点、学院長自身が善処すると言ったからには心配あるまい。

 晴れ晴れとした気分で、アランは食堂へ向かっていた。

 学院内にあるとは信じられない(まぁ、貴族の子弟専用の学校だから、無理ないのかもしれない)ほど豪華な食堂の作りに感心しつつ、アランは席についた。
 ほどなく朝食が供される。
 朝ご飯として食べるには少々ヘビーなメニューなのだが、ここが異国(と言うか異世界)だと言うことから、ここではこれが普通なのかと納得して食事を始めるアラン。
 そう割り切れば、アドベンチャラーズイン(冒険者の宿)の堅いパンと塩味のキツいスープでも文句を言わずに口にしていた彼にとっては、文句を言う筋合いはない。
 むしろ、これだけ美味な食事を調理できる料理人に感動したくらいだ。
 ちょうどそこへ顔見知りのメイドが通りかがったので、声をかける。

「仕事中すまないね、シエスタ。ちょっと聞きたいことがあるのだが、いいだろうか?」

 もちろん、シエスタとしては憧れの白馬の王子様(!)からの申し出に否やはない。

「はいっ、何なりとお聞きください」

「いや、この食堂はすごいな。食堂の内装もそうだが、料理人の腕前も並じゃない。これほど美味な料理は久しぶりに口にしたよ。さぞ名のあるシェフなんじゃないかい?」

「本当ですか? そう言っていただければ、料理長のマルトーさんも喜ぶでしょう。
何でも、王都でも有数の料理人だったマルトーさんを、学院長様自らが引き抜かれたと言う話ですけど……」

 と答えながら、シエスタは、周囲の生徒や同僚たちから注目されていることに気づいた。
 一介のメイド風情が、噂の”異国の王子”と親しく言葉を交わしていることへの露骨な嫉妬なのだろう。

「いや、些細なことで呼び止めてすまなかったね」

 そんな微妙な雰囲気を彼も感じ取ったのだろう。アランはシエスタと会話を打ち切った。

「とんでもありません。それでは……」

 一礼してシエスタは給仕の仕事に戻った。

 *  *  *

 食事ののち、自室として与えられた部屋に戻ろうとしたアランは、ドアの前にふたりの女性、と言うか少女が立っていることに気づいた。

「おや。どなたですか?」

「お初にお目にかかりますわ、アラビク殿下。私の名はキュルケ・アウグスタ・フレデリカ・フォン・アンハルツ・ツェルプストー。この学院の2年生に在籍しております」

 背の高い肉づきのよい赤毛の少女の方が、マナーにかなった名乗りをしてくる。

「そして、こちらはタバサ。私と同じ学年に属する友人です」

「こちらこそ始めまして。それで、私に何か御用かな?」

 と、それまで黙っていた小柄な青い髪の少女の方が一歩進み出た。

「―殿下は優秀な治療の魔法の使い手とお見受けします。お伺いしたいことがあり、まかり越した次第です」

 いつになく饒舌に喋るタバサに、キュルケは驚いた。

(この目は……ワケありだな)

 流石にそこまではわからないものの、タバサと名乗る少女の瞳に宿った覚悟と気迫を読み取ったアランは、部屋の扉を開け、ふたりを中に招いた。

「それで、先程のような聞き方をするということは、誰か治したい人がいるんだね?」

「はい……」

「あらかじめ言っておくと、私の使う魔法は君たちのそれとは系統や原理そのものが異なる。
 また、私は剣をとって戦うことにその修錬の多くを割いてきた。魔法は余技に近いもので、呪文を扱うことに関しては、さほど得意でもない」

 アランはそう答えたものの、実のところ、これはいささか謙遜が過ぎる台詞だった。
 7レベルまでのすべての僧侶魔法を習得しているのみならず、 冒険者仲間だった僧侶のアルハイムから、徹底的に魔法の扱いに関するレクチャーを受けているのだ。
 下手な中級プリーストよりは、よほどしっかりした知識と詠唱技術を持っているのだが、周囲の後衛が全員、高速詠唱や呪文の応用をマスターしているため、どうも自分を低く見るキライがあるらしい。

「それでも構わない。殿下の治療に関する能力を教えていただきたい」

 (やれやれ……。まぁ、どの道、授業で話すつもりだったしな)

 タバサの真剣な目つきは変わらなかったため、アランは自分の扱う僧侶魔法の性質と能力に関してレクチャーすることにした。

「…………と言うわけだ。君の治したい人が負傷しているのか、何らかの病気なのかは知らないが、理論上、MADIを使えば回復させることはできると思う」

「―呪いは?」

「呪いを受けている場合は、少々厄介だ。本格的な呪詛の類いは私の手には余る。ただ、それが”死”や”霊”に関係するような類いのものなら、解呪によって消去ないし緩和できる可能性はあるだろう」 

 小一時間にわたるアランの説明を聞いた末、しばし考え込むタバサ。

「ご理解いただけたかな、ミス・タバサ?」

「―ありがとうございます」

 ペコリと頭を下げて、アランの部屋を出て……行こうとして、ふとタバサは立ち止まり、アランの方に振返った。

「もし、私が”その人”をここに連れて来たら、殿下にその”MADI”の呪文を使っていただけますか?」

「ああ、約束しよう」

 真剣なタバサの表情に対して、アランはいともあっさり頷いた。

「―そのときは、お願いします」

「あ、ちょっと、タバサ、待ちなさいよ……では殿下、慌ただしくして申し訳ありませんが、私も本日は失礼致します」

 ふたりの少女が退室していくのをアランは温かい目で見つめていた。

 王族の義務うんぬんを抜きにして、元々正義感の強いアランとしては、困っている人を見捨てることは本意ではないし、目の前のタバサという学生が真面目で思慮深い性格であることは、ここまでの会話で十分理解できた。
 彼女がほとんど面識のない自分に頼んでくると言うことは、よほど大事な人が、かなり大変な状態になっているのだろう。

 これまでの自分は、王都奪回の大義名分のもとに、敵を蹴散らし斬り伏せることにばかり身命を捧げてきた。
 幸いに本懐は果たせたわけではあるし、この異郷の地で第二の人生を始める機会を得られたのだ。身につけた呪文の力をもって医者の真似事でもして、命を奪うのではなく命を救うことに尽力するのもいいかもしれない。
 今後の人生の目的が少しだけ見えたような気がして、いくぶん気が楽になるアランだった。

 ――もっとも、ハルケギニア全土を巻き込む運命の嵐は、この勇者をいつまでも悠長に遊ばせておくような真似はしないのだが……それは、また後の話である。

 *  *  *

 その日の午後、どうにも憂鬱な気分のまま放課後を迎えたルイズは、学院長室に呼び出されたことで、さらにその憂鬱度を強めていた。

(やっぱり、使い魔を持てなかったから留年って言い渡されるのかしら)

「失礼します、ルイズ・フランソワーズ・ル・ブラン・ド・ラ・ヴァリエールです」

「うむ、入りたまえ」

 許可を得てからドアを開け、学院長室に足を踏み入れる。
 と、そこで室内にいた面々を見てルイズは硬直した。

 部屋の主であるオールド・オスマンと、その秘書のミス・ロングビルはいい。
 召喚に立ち合っていたコルベールがいることも、まぁ予測の範囲内だ。
 しかし、自分が召喚した異国の王子、アラビク殿下までがいるとは……。

「わざわざ君を呼び出したのはほかでもない。使い魔召喚の儀式についてじゃ」

(もしかして、王子を召喚して使い魔にしようとしたから不敬罪?
 いいえ、殿下はこの国の王族ではないんだし、そこまでは……。
 でも、見せしめとして放校なんてことはあるかも。
 ああ、そんなことになったらお父様に顔向けできないわ)

 どうやらかなりテンパっている様子。

「2年生に進級するためには、使い魔が不可欠じゃが、さすがに異国の王族、しかも系統が異なるとはいえ、メイジでもある方を使い魔にするわけにはいかん。そこで……」

 真っ青な顔でグルグル目になっているルイズを、おもしろそうに見やったのち、オスマンは爆弾を落とした。

「ミス・ヴァリエール。改めて召喚の儀式をしてもらおう」


 <つづく>

と言うわけで、めでたくルイズは再召喚に挑戦できることとなりました。よかったね、ルイズちゃん!

「…………れだけ」

ん? 何かな?

「私の出番、これだけなのか、って聞いてんよ! 大体、前回の引きだと、いいことあるんじゃなかったの?」

うん、だから再召喚。退学にもなってないし、成功すれば留年もしない。いいことづくめでしょ。

「うがぁ、納得できるかーーーーーーーっ!」 ドンガラガラガッシャーン!


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