あの作品のキャラがルイズに召喚されました @ ウィキ

ゼロのぽややん 10

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「以上! これで全部! もう何もないわ! 本当よ!」
 涙目になって叫ぶフーケ。
 ちょっとでも嘘や誤魔化しを入れようとすると、容赦なくナイフが飛んでくるのだ。そりゃもう必死である。
 五本目のナイフを構えながら、アオは難しそうな顔をしている。
 想像していたよりも、なかなか込み入った事情だった。
 フーケがただの悪人なら、話は簡単だったのだが。
 やり方は褒められたものではないが、彼女の根底に根ざしているものは善だ。ここで彼女を殺してしまえば、泣く者がいる。
 さて、どうしようか。
「……とりあえず、盗んだ『破壊の杖』を返してもらおうかな」
「そこよ」
 諦めたようにフーケが、渋々とチェストを指し示す。
 アオは、デルフを引き抜くと、切っ先をフーケに突きつけながら、そのまま伴ってチェストに近づいた。
「開けて貰えますか」
「はいはい、用心深い事で」
 フーケは無造作に蓋を開けた。もともと、罠も何も無かったのだ。
「はは、あんたでもそんな顔するんだね」
 アオが一瞬見せた呆気にとられた表情を見逃さず、してやったりと、フーケが笑う。
 だが、アオの反応が無い。
 チェストの中を凝視して固まっていた。
「あは、あはは、あはははは」
 そして笑いだした。おかしくて、おかしくて仕方ないと言わんばかりに。
「ちょ、ちょっと!?」
「お、おい相棒!?」
 フーケとデルフが、まさか発狂したのでは? と焦るほどだった。
「あはは、そうかそうか、これが、これが、『破壊の杖』か! 
 僕がここにいるんだもんな、これがあってもおかしくないか・・・・・・ぷっ、くくく!!
 でもこれが杖って、すっごいセンスだよね!!」
 アオは笑いながら、『破壊の杖』と名付けられた、彼のよく知るそれを手に取った。
「っ! 」
 剣を持った時と同様にわき上がる感覚に、一瞬、顔をしかめる。
「・・・・・・かなり古いが、状態は悪くない、か」
 少し考え込むように、腕を組むアオ。
「ねえ、フーケさん」
「な、なによ」
「頼みがあるんだけど」
「なんで私があんたの頼みな・・・ん・・・・・・」
 アオの浮かべた極上の笑みに、フーケは猫のように総毛立つ感覚を覚えた。
 断れるわけがない。

 一方、外で待ちぼうけのルイズたち。
「小屋に入ってからけっこう経つけど、ダーリンたちったら何やってるのかしら。・・・・・・はっ! まさか二人っきりなのを良い事に、ミス・ロングビルがダーリンに迫っているんじゃ」
「ツェルプストーじゃないんだから、そんなわけないでしょ!」
「あら、分からないわよ? お子様なヴァリエールには理解できないだろうけど、ダーリンの魅力は相当なものよ。密室で二人っきりだなんて、間違いが起きないわけがないわ!!」
「ま、まさか~」
 力強く断言するキュルケに、ルイズは笑い飛ばそうとするのだが、顔が引きつっている。 
「ミス・ロングビル」
 ここでタバサが口を開いた。
 二人の視線が、彼女に向く。  
「婚期を逃した女ざかり」
 とどめだった。
 ルイズとキュルケが顔を見合わせて頷くと、息もぴったりに小屋へ向かって駆け出す。

「あら?」
 ものすごい形相で走っていたキュルケが、怪訝そうに首をひねった。
 なぜだろう。目の前の景色に感じる、何とも言えない既視感。
 とくにあの盛り上がりつつある地面は、つい最近見たような。
「って、あれは!」
 あわてて急ブレーキを掛ける。
「ストーップ!!」
 言って、そのまま行こうとするルイズのマントを掴み止めた。
「ぐえ」
 マントで首が締めつけられ、およそ美少女らしからぬ声を上げるルイズ。
「ゴホゴホゴホ!! ・・・・・・あああんたね!? わたしを殺す気!? 下手するとマジで死ぬわよ、これは!!」
「そんな、些細な事どうでもいいでしょ! それより、あれを見て」
「些細じゃないわ!! ったく、なんなのよ」
 キュルケの指さす方を見て、ルイズが凍りつく。
 すでに形を成しつつある巨大な威容。
 間違いない、あれは。
「フーケのゴーレム!!」
 ゴーレムが小屋に向かって、その巨大な腕をのばす。
「いけない! あの中にはまだアオとミス・ロングビルが!!」
 それを見て、ルイズが悲鳴を上げる。
 ダバサが真っ先に反応し、自分の倍もある杖を振るい呪文を唱えた。
 竜巻がゴーレムを襲うが、ビクともしない。
 キュルケも続いて、『ファイアーボール』をぶつけるが効果が無い。
 ルイズも同じく『ファイアーボール』を唱えるが、火は出ず、ゴーレムの表面が爆発で弾けるだけだ。
「どうして、どうしてこんな時にも成功してくれないのよ!!」
 攻撃も、ルイズの悲痛な叫びも全く意に介さず、ゴ-レムの腕が小屋の屋根を突き破る。
 ドアから飛び出す人影があった。
 アオだ。
「よかった! 無事だったのね!!」
「ごめん、『破壊の杖』は取り戻したんだけど、ロングビルさんがあのゴ-レムに捕まった!」
 見れば、ゴーレムの左手にはミス・ロングビルが握られている。
「そんな!」
「僕に考えがある。すまないが、ほんの少しでいい。タバサにキュルケは、あのゴーレムの足止めをしてくれ。
 その間に、準備をするから」
「どうするの?」
 タバサの言葉に、アオは肩から吊り下げた『破壊の杖』を見せた。
「こいつを使う」
 あの奇妙な形は、確かに自分が以前、宝物庫で見たあの『破壊の杖』だ。
 どうやって使うのかは、まるで理解できなかったが・・・・・・。 
「わかった」
 こくりと頷くタバサ。
「任せてダーリン!」
 キュルケもウインクしながら返事する。
「わたしは、わたしはどうすればいいの?」
 一人なんの役目も伝えられてないルイズが、不安そうにアオを見る。
「君が要なんだ」
 言ってデルフを抜くと、ルイズを左脇に抱え上げた。
「えっ?」
 ルイズが驚く間もなく、烈風のごとき早さでゴーレムから距離を取る。
「ここらでいいだろう」
 ルイズを下ろしながら、ゴーレムを見据えるアオ。
 その距離約15メイル。
 近すぎれば危険だし、遠すぎれば外すおそれがある。
「お願い説明して。わたしが要っていったいどうすればいいの」
 アオは微笑みながら『破壊の杖』を展開させると、ルイズに手渡した。
「君がこいつで、あのゴーレムを倒すんだ」
「わたしが!?」
「さあ、僕の言った通りに構えて。使い方を間違えるとこっちが危なくなる」
 ルイズを膝立ちにさせ、『破壊の杖』を肩に担がせる。
「その立てた照準の間にゴーレムの中心をとらえて、僕が合図したらスイッチを押すんだ」
「それだけ?」
「そう。あとはタイミングの問題だけだ」
 アオはデルフを振りかざし、ゴーレムに向き合った。
「僕が、ロングビルさんを助け出す」
 ルイズは、巨大なゴーレムに比べてあまりにも小さなその後ろ姿に、引き止めたくなる気持ちをぐっと抑え込む。
 そしてただ一言、主として、自らの使い魔に言葉をかけた。
「任せたわ」
「了解」
 アオは、口だけを優しくほころばせると、ゴーレムに向かって飛び出した。

「くっ、くくく」
 握られたデルフが愉快そうに笑う。
「相棒よ。てめはたいした悪党だ。
 自分のご主人様までだまくらかして、自作自演のお芝居をしようてんだからな」
「いろんな事を丸く収めるためには、仕方なかったさ。でも、あのフーケさんがおとなしく助け出されると思うかい?」
「まあ、本気でこっちを潰しにかかるだろうな・・・・・・気合い入れろよ相棒!」
「ああ!」

「『ウインドブレイク』」
 タバサの唱えた呪文が、ゴーレムの足へと炸裂する。
 あれほどの巨体だ。末端にかかる負荷は相当なもののはず。
 そうにらんだタバサは、全ての攻撃をもっとも重量のかかる場所、足へと集中させていた。
 まあ、ミス・ロングビルが人質にとられているため、本体への攻撃はできない状態だったのだが。
 攻めあぐねていたキュルケも、タバサに倣い、足へと狙いを定めて呪文を唱える。
 風と炎の波状攻撃が、ゴーレムの進行を阻む。

 さすがにトライアングル二人を相手にするのは少々骨だね。
 ミス・ロングビルことフーケは舌打ちした。
 ゴーレムに掴まれた状態だが、それは見た目だけ、実際は内側に余裕があり、杖を振るぐらいのスペースがあった。
 聞き取れない程度の低い声で呪文を唱え、わずかな動作で杖を振るう。
 だが、あくまで表面上は捕らわれのミス・ロングビルを演じていた。
 このフーケ、なかなかの役者だ。
 攻撃を食らい、もろくなった足を補修補強したと思えば、また攻撃を食らう。
 さっさとあの男を追いかけたいのに、ゴーレムを一歩進ませるのにも苦労する有様だ。

 タバサとキュルケは見事に、ゴーレムを足止めする事に成功していた。

「お待たせ」
 戻ったアオが、タバサたちに声をかける。 
「この次は?」
 攻撃の手を緩めずに、タバサが指示を仰いだ。
「ありがとう、ここまでで十分だ。あとは僕がやる」
 タバサが、珍しく驚いたように目を見開く。
「一人で?」
「そんな無茶よダーリン!!」
 キュルケはアオにつかまった。正確には、腕にしがみついた。
 その規格外ともいえる胸を、惜しげもなく押し付ける。
 数多の男たちを陥落させてきた彼女の必殺技だったが、しかし、アオは眉一つ動かさなかった。
 やんわりとキュルケを振りほどくと、優しく言った。
「君たちの魔法だと、威力、性質、範囲、どれ一つとってもロングビルさんを助けるには不向きだ。
 でも、僕とデルフにならそれができる」
「まっ、ここは俺と相棒に任せておけって」
 正論だった。
 たしかに自分やキュルケの魔法では、ミス・ロングビルに影響を与えず、ゴーレムから助け出すのは難しい。
 それには、ごく狭い範囲で、しかも高い威力が必要。
 その点、彼の大剣での攻撃は理想的だといえる。
「なら、援護する」
「ありがとう。危なくなったら頼むよ」
「き、気をつけてね!」
 キュルケの言葉にデルフを高々と上げて応えると、見上げれば小山のような巨大なゴーレムに、ただ一人堂々と向かっていく。

 タバサはその風景に、いつか読んだ物語を思い出した。
 彼女の大好きな勇者の物語を。

「はん、主役のご登場かい。結局、ここまではあんたの筋書き通りになっちまったね」
 目の前まで来たアオに、憎憎しげに悪態をつくフーケ。
「ここまでは上出来すぎるぐらいだよ。最後までこうだと助かるんだけどね」
 お互いが聞こえる程度の大きさで話しているため、ルイズたちには、会話は聞き取れない。
「どうだろうねえ。演技には・・・・・・アドリブがつきもんさ」
 それが合図だった。
 ゴーレムが拳を振り上げるのを見て、アオがデルフを構える。
「あ~あ、やっぱりな」
 軽口を叩くデルフ。 

 地面を穿つ拳の連撃を、アオは死角という死角を縫うように動いてかわし、お返しとばかりに足を切りつけては離れるを繰り返す。
「ええい、ちょこまかとすばしっこい」
 ダメージはたいしたこと無いのだが、アオの動きを捉えきれず、フーケは内心苛立っていた。
 だが、ここまで微妙な均衡を保っていった両者の動きに、変化が現れた。
 足を滑らせたのか、前のめりになる形でアオの体勢が崩れたのだ。
「もらった!」
 それを見逃すフーケではない。
 ゴーレムの拳がうなりをあげて飛んでくる。
 迫り来る拳を目前に、アオが小さく笑う。
 当たるその刹那、上半身をひねるように回転させ、手にしたデルフを振り下ろし、ゴーレムの拳を打ちつけた。
 そう、斬るではなく、打ったのだ。 
 その反動で、アオの体が空中高く舞い上がり、彼の下を、風圧と共にゴーレムの拳が通過する。
 勢い余って、今度はゴーレムの体勢が崩れた。
 その腕に、アオが着地する。
「やっぱりてめは大した奴だよ相棒!」
 そう、アオはわざと体勢を崩して見せたのだ。
「おおぉぉ!」
 デルフの叫びと共にアオは跳躍すると、気合い一閃、ゴーレムの左手首を斬りつけた。

 だが、次に笑うのはフーケの番だった。

 ガギン!

 金属同士が激しくぶつかるような音をたてて、剣が弾かれた。
 手首の部分が一転、鋼鉄の固まりに変わっていた。
「しまった! こいつがあるんだった!!」
 昨晩、自らを打ち付けた感触を思い出し、デルフが悲鳴をあげる。
「あははは! この騙し合い、どうやら私に軍配が上がったようだね。
 魔法の使えないあんたに、空中でこれが避けられるかい!!」
 フーケの言葉通り、空中に放り出される形になったアオには避ける術がない。
 地を這うようなゴーレムのアッパーカットがアオに迫る。

「『エアハンマー』」
 まさに間一髪。
 横合いから放たれたタバサの『エアハンマー』がアオを吹き飛ばし、ゴーレムの拳が空振りする。
「もう、あんたって子は、毎度毎度ナイスよ!!」
 タバサは親指を立て見せたのだが、キュルケに抱きしめられてしまい、その胸に顔を埋めちょっと苦しそうだ。

 何とか受け身を取りながら着地し、デルフを地面に突き刺してブレーキを掛ける。
 かなり加減されていたのだろう、『エアハンマー』によるダメージはない。
 だが。
「ツッ!」
 左足に激痛が走る。
 無理な体勢での受け身のせいで、痛めたのだ。
「お、おい大丈夫かよ?」
 アオの異変に気がついたデルフに、焦りが走る。
「いや、ちょっとヤバイかも」
 あまり距離が離れていなかったため、すぐさまゴーレムが追撃してきた。
 なんとか攻撃を避けるアオだが、その動きには先程までの精鋭さが無い。
「どうやらさっきの攻撃も無駄にはならなかったようだね」
 フーケが勝利を確信し、薄く笑う。
 タバサにキュルケも事の事態に気づくが、ゴーレムに邪魔され近づく事ができない。
 それにアオとゴーレムの距離が近すぎて魔法も使えない。

 目を覆いたくなるようなその光景。
 すぐにでも駆け寄りたくなる衝動を必死に押さえ込み、『破壊の杖』を構え続けるルイズ。
「アオ!!」
 代わりに大声で叫ぶ。
「わたしはあんたに任せるって言ったわ!! あんたは、わたしの使い魔なんだから!! だから、だから・・・・・・」
 違う、こんな事を言いたいんじゃない。    
 ルイズは首を振ると、支離滅裂になりそうになる自分を落ち着かせるために、大きく息を吸い込んだ。
 そして、一番伝えたかった事、ただそれだけを叫ぶ。
「がんばれ!!」

 それは、アオの耳に確実に届いた。
 遠い昔に、どこかの誰かに言われた言葉。
 アオは笑った。笑って、笑い続けた。
 自分の中の摩耗した何かに、火がつく。
 デルフを握る両の手に力がこもる。
 痛みは、もう無い。
「お、おい相棒!」
 デルフが驚きの声を上げる。
「な、なんだこりゃ!? なにかが俺の体を這い上がってきやがる!?」
 無意識のうちに露出していた多目的結晶が、今までにないほどの輝きを放っていた。
 そこから、まるで樹木が根を張るかのように、複雑な模様がデルフの刀身を覆っていく。
 見覚えのあるものだった。
 かつての自分の乗機、その腕にプリントされていたのと同じ。
「精霊回路・・・・・・そんなまさか」
 やがて、小さな青い光の珠たちが、アオを、めぐりはじめる。
「こんな悪党に、こんなに醜くく汚れた僕に、君たちはまた力を貸してくれるのか?」

 タバサやキュルケ、フーケにさえ見えないその光を、ルイズは見た。
 あれはなに?
 太陽の光に照らされ、消えてしまいそうなほどの淡い光。
 その淡い光に照らされるアオ。
 その姿を見た瞬間、涙がこぼれた。

「突然なんだっていうんだい!」
 剣が青く輝きだしたのを見て、嫌な予感がしたフーケは、トドメを刺そうとゴーレムを動かす。
 振り下ろされる拳が、アオのいた地面にめり込む。しかしアオは先程と同じ、いや、それ以上の動きで跳躍してゴーレムの拳に乗り、さらに跳ぶ。
「はっ! こりない奴だね!」
 狙いのわかっているフーケは、すぐさまゴーレムの左腕部分を鋼鉄に変える。
 アオは一切を意に介さず。
 ただその手にした輝きを振った。
 それだけで、遮る物全てが文字通り粉々になって消し飛ぶ。
「精霊手・・・・・・いやこれは剣だから、精霊剣、かな。ありがとう、わずかとはいえ、こんな僕に力を貸してくれて」
 アオは、天に帰る光たちに祈るように呟いた。

 支えを失ったゴーレムの左手が、形を失った土塊と化して、フーケと共に落ちていく。
 フーケは呆然と、悲鳴をあげる事も、『レビテーション』を唱える事も忘れ、ただ落ちていった。
 その体を、アオが抱きとめる。
 見上げるフーケに、どこまでも透き通るような笑みを見せると、駆け出した。
「今だ、ルイズ!」

 合図を受け、ルイズが構えた『破壊の杖』のスイッチを押した。
 なんの反動もなく、栓抜きのような軽い音を立てて、何かが飛び出す。
 ルイズの目には歪な矢のように見えたそれは、白い煙の尾を引き、狙い違わずゴーレムへと突き刺さる。
 爆音を響かせ、ゴーレムの上半身が跡形もなく吹き飛んだ。
 あとに残された下半身も力無く倒れ込み、ただの土の山となった。
「や、やったああああぁぁ!!」
 『破壊の杖』を手に、ルイズが万歳した。

「やったじゃないのルイズ! あのフーケのゴーレムを倒しちゃうなんて!!」
 まず、真っ先に駆け寄ったキュルケが、ルイズを抱きしめた。
「グッジョブ」
 タバサもボソリと賛辞を送る。
「わ、わたしの力じゃないわ・・・・・・この『破壊の杖』のおかげよ」
 キュルケの抱擁からなんとか抜け出したルイズが、照れたように言う。
「いや、紛れもなく君の戦果だし、君たちみんなの戦果だ。どうやらフーケも逃げたみたいだしね。もっと誇ってもいいと思うよ」
「ああん、それもこれもダーリンの働きがあってこそよ~」
 背後からのアオの声に、キュルケが抱きつこうと振り向いて、固まった。
「って、なにをしているんですかミス・ロングビル!」
 それもそのはず、ミス・ロングビルが俗に言うお姫様だっこの状態で、アオに抱きかかえられていたのだ。
「彼女、なんか腰が抜けちゃったんだって」
 三人のうらやましそうな視線に、ミス・ロングビルが顔を赤くして謝る。
「す、すみません。あ、あのもう大丈夫ですから下ろしてください」
「そう? 無理はダメだよ?」
 アオは言って、彼女を下ろした。
 少しフラつくようだが、大丈夫なようだ。
「ねえ、ルイズ……なに怒っているのかな? えと『破壊の杖』を渡してくれるとありがたいんだけど」
「別にいぃ! お、怒ってなんかないわよ。はい、ど・う・ぞ!!」
 あきらかに怒っていた。
「あ、ありがと。はい、ロングビルさん」
 受け取った『破壊の杖』を、そのままミス・ロングビルに手渡す。
「え」
 ミス・ロングビルは放心したようにそれを見た。
「フーケは取り逃がしたけど、『破壊の杖』を取り戻しましたよ」
「え、ええ、オールド・オスマンも喜ばれるでしょう」
 しばらく『破壊の杖』を見つめていたミス・ロングビルは、さっきルイズがしたように肩にかけ、目の前のアオに狙いをつけた。
 その威力を目の当たりにしていたルイズにキュルケ、それにタバサが思わず後ず去る。
 アオは、笑顔のままだ。
 ミス・ロングビルは一瞬険しい表情をしたあと、溜息を漏らしながら、『破壊の杖』を肩から下ろした。
「……確かにこれは『破壊の杖』ですね。
 ですがわたくしが返却するよりも、あなたたちの手でオールド・オスマンにお返しするのが筋でしょう。
 結局、今回なんのお役にもたてなかったのですから」
 そう言って、アオに『破壊の杖』を返した。
「もう、ミス・ロングビルったら人の悪い。調べるためとはいえ、そんな危ない物をこちらに向けないでください。
 肝が冷えましたわ」
 キュルケが非難めいた口調で、不機嫌にミス・ロングビルを見た。
 ルイズとタバサも頷く。
 当のミス・ロングビルは、涼しい顔をして笑っている。
「いや、その心配はないよ」
 『破壊の杖』を元の大きさに縮めながら、アオが言った。
 皆が首をかしげる。

「だって、もうこれは『破壊の杖』って名前の、ただのガラクタなんだから」


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