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白き使い魔への子守唄 第5話 ゲルマニアの女

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ルイズから使い魔として認められ、オールド・オスマンよりハクオロと名づけられた彼だが、
日常生活にたいした変化は少なかった。使い魔は所詮使い魔という事か。
朝はルイズより早く起きて彼女を起こし、井戸から洗顔と歯磨きのための水を汲んでくる。
それから着替えを渋々手伝って、食事も相変わらず床で食べているしメニューも貧しい。
使い魔として認められた事で、一応パンとスープの量が増えはしたが。
その後ルイズの部屋を掃除したり、服や下着を洗濯したりと、気分はすっかり主夫である。
それでも変わった事があるとすれば、やはり厨房関係のものだろうか。

   第5話 ゲルマニアの女

「『我等の仮面』が来たぞ!」
ルイズから与えられる貧しい食事のため腹を空かせると、ハクオロは厨房を訪れる。
最初はシエスタから余り物を分けてもらうつもりだったのだが、
料理長のマルトーという気前のいい男に気に入られていた。
彼は魔法を使って威張る貴族を毛嫌いしており、ギーシュに勝ったハクオロを大歓迎する。
余り物などではない、焼き立てのパンや肉のたっぷり入ったシチューをご馳走してくれる。
最初は貴族に出す食事以上に豪勢なメニューをそろえてくれたが、
胃がもたれるからという理由で軽めの料理にしてもらうようハクオロが頭を下げたのだ。
ちなみに今日のシチューはハクオロ用に特別こしらえた物ではなく、
貴族達に出しているのと同じ物だった。
「こんなにおいしいのに、残す人もいるんですか」
「ああ、もったいねぇ。あいつ等はうまい料理を作るのがどんなに大変か解っちゃいねえ!
 その点、我等が仮面は皿を洗う必要が無いくらい綺麗に食べてくれるから嬉しいぜ」
「好き嫌いをすると、何だか誰かに怒られるような気がして」
「そりゃきっと、親の躾がよかったに違いねえ!」
「ですが、ここで出された料理はどれもおいしいものばかりで驚いています」
「ほう、だったらこいつも食ってみるかい? さっぱりしててうまいぜ」
と、マルトーはサラダを出してきた。
「生野菜ですか。健康によさそうですし、これなら朝に食べても胃もたれはしませんね」
「だったら、これから毎日このサラダを食ってもいいんだぜ」
「いいんですか? ではお言葉に甘えさせていただきます」
と、サラダも食べないうちからハクオロは約束した。
で、サラダを食べてみる。
「んぐっ……!?」
仮面の下が青くし、口元を押さえるハクオロ。それを見て厨房のみんなが爆笑する。
「我等が仮面! どうだ、はしばみ草のサラダは! うまいだろう?」
はしばみ草というのか、とハクオロは皿に盛られた菜っ葉のような野菜を見た。
口腔に広がる強烈な苦味は吐き気すらもよおすほどで、
我慢して飲み込んでも後味がしつこく残り、彼は水を三杯もおかわりした。
「……何ですか、これは!」
「ははは! いや、我等が仮面があまりにうまそうに飯を食ってくれるからな。
 ちょっとしたイタズラよ。気を悪くしないでくれ、ワッハッハッ」
「この苦さは……前もって教えてもらっていないと、心臓に悪い」
「そうは言うがな、はしばみ草が好きな変わり者もいるらしいぞ」
「……人それぞれ味の好みがありますからね」

その時、アルヴィーズの食堂で青髪の少女が珍しくくしゃみをしたとかしないとか。


「ところで申し訳ないのですが、このサラダを毎朝というの……」
「はははっ、解ってるよ。こっちも冗談のつもりなんだからな。
 でも、これだって俺達が丹精込めて作った料理なんだ。残されちまうのは悲しいなぁ」
「……まあ、苦いのも慣れればそんなには……」
マルトーの気持ち悪い泣き落としを受けたハクオロは、渋々サラダを口に運ぶ。
「さすが我等が仮面! 男だねぇ。貴族の野郎達とは違うぜ。
 あいつ等は魔法ができるからって威張りすぎてやがる。
 火の玉を出したり、ドラゴンを操ったり、土から城や鍋を作ったり……」
「……鍋? メイジがわざわざ鍋のような調理器具まで作ったりするんですか?」
「何言ってんだ。土のメイジじゃなきゃ鉄を造るなんて無理な話だ」
「じゃあ、フライパンや包丁、薪割りの斧なども、土のメイジが?」
「当たり前じゃねーか。まあ、そうやって俺達平民も世話になっちゃいるが、
 こうやって絶妙の味に料理を仕立て上げるのだって、言うならひとつの魔法さ!」
相槌を打ちながら、ハクオロは鉄について考えていた。
もしやここでは金属の類いはすべて、土のメイジの錬金で作られているのだろうか。
「鍛冶師などはいないんですか?」
「鍛冶師? そりゃ、いるさ」
「鍛冶師もやはり貴族なんですか?」
「そりゃ魔法で金属を造るんだから貴族さ。それを専門にしてる高名な錬金魔術師もいる。
 まあ貴族の資格を剥奪されたメイジが鍛冶師をやってるなんて場合もあるが」
はしばみ草の苦味をこらえながら、ハクオロは興味深くマルトーの話を聞く。
そしてこの國では平民が貴族に勝つ事など、本当に奇跡のようなものだと理解する。
今さらながらよくギーシュに勝てたものだ、あのような奇策は二度と通じまい。
(貴族はこの世にとってなくてはならない存在であり、絶対の強者でもある。
 それが悪いとは言わないが、かといって民草を蔑ろにしていい理由にはならん。
 といっても、同じく平民である私がそういった問題をどうこうできる訳もないが)
思案しながらも律儀にはしばみ草のサラダを口に運ぶハクオロ。
次第に考え事すら億劫になり、ふと窓の外を見ると、キュルケのサラマンダーがいた。
確か、名前はフレイムだと紹介された。
(何でこんな所に? 食事の匂いに釣られてきたのだろうか?)
何とか食事を終えたハクオロは、マルトーから生肉を一枚もらうと、
それを外から自分を見つめていたフレイムに差し出してみる。
フレイムは大喜びで生肉を焼いて食べた。
ハクオロは手渡しで生肉を渡そうとしたので、生肉のついでに自分の左手も焼かれた。
軽い火傷ですんだが、その日の洗濯はシエスタに代わってもらう事に。

朝食、掃除、洗濯等を終えたハクオロはルイズの授業のお供をする。
ちなみにコルベールに頼んで紙とペンをもらい、
ハクオロなりに授業の内容をまとめたり、
自分の知識と照らし合わせて魔法の考察をしたりするのだが、
黒板に書かれる字が読めないため、教師の言葉を一語一句聞き逃せないのが難儀だった。
もちろんハクオロは自分の知っている文字で書いているため
他の人からしたらミミズがのたくったような落書きにしか見えないし、
文字が縦に続いているというのもかなり意味不明だった。横文字文化と縦文字文化の違い。
ハクオロは水からワインを作る魔法などは「反則だ」とショックを受けたり、
秘薬からポーションを作る授業ではなぜか「エルルゥ」という名を思い出した。
(しかし、便利なものだな魔法とは。基本となるコモンマジックだけでも生活が変わる。
 そういえば、サモン・サーヴァントとコントラクト・サーヴァントもコモンマジック。
 錬金は土系統の魔法らしいからうまくいかなかったようだが、
 ルイズはコモンマジック程度なら練習すれば使えるようになるのでは?)
授業後、ハクオロはさっそくルイズにコモンマジックの練習を提案した。
いくつは疑問点があるものの召喚はできたのだからという理由で説得したが、
やはり召喚自体満足のいく結果ではなかった事と、
失敗した時の爆発の威力がなぜか上がっているため、余計に失敗を恐れているようだった。
自室で練習して失敗でもしたら、あの部屋の家具はすべて買い直す事になりかねない。
そうやって相談してる時、妙な気配に気づいてそちらを見ると、フレイムがいた。
自分に何か用でもあるのだろうか? ハクオロが首を傾げている間にフレイムは姿を消す。


学院長室の一階下に宝物庫がある。
巨大な鉄の扉には閂と錠前で守られ、さらに『固定化』の魔法をかけられている。
故に堅牢無比。
だから鍵を開ける『アン・ロック』など通用するはずもなかった。
それを確かめたロングビルは錬金を扉にかけてみたが、これも効果は無い。
他に手段はないかと思案していると、階下から足音がし、ロングビルは杖をしまった。
やって来たのはコルベールで、ロングビルは世間話でもするように訊ねる。
「ミスタ・コルベールは宝物庫の中に入った事がありまして?」
「ええ、ありますよ。お宝ガラクタひっくるめて所狭しと並んでおります」
「でしたら『天照らすもの』はご存知?」
「ああ、あれにはつい見惚れてしまいましたな」
「まぁ、興味が湧きますわ。詳しくお聞かせ願えませんか?」
「よろしいですよ」
ロングビルの色香に酔ったコルベールは、秘宝や宝物庫の弱点など自慢げに語る。
おかげでロングビルは大喜びで、フリッグの舞踏会を一緒に踊る約束をするのだった。

生徒達の夕食後、ハクオロは厨房で足りない腹を満たすついでに、
朝に負った火傷の包帯をシエスタに取り替えてもらっていた。
「朝は災難でしたね」
「ああ。だが利き手でなくてよかった」
「でも決闘の時といい、左手ばかり怪我してますね」
「何だか、私は不幸の星から逃れられない運命にある気がしてならん」
「そんな大袈裟ですよ」
シエスタの無邪気な笑いに幾分か心を癒されたハクオロは、
心底シエスタに感謝しながら女子寮へと戻った。
ところが、寮に入ってすぐの所でキュルケの使い魔フレイムが待ち構えていた。
「ん……何だ?」
「きゅるきゅる」
「頭を下げたりなんかして、今朝の事を詫びている?」
「きゅるきゅる」
フレイムは頭をぺこぺこと下げた後、ハクオロの服のすそを咥えて引っ張った。
「私に何か用でもあるのか?」
とりあえずついていって見ると、戸が開いているキュルケの部屋に案内された。
使い魔を使ってキュルケが自分を呼び出したという事か。
入ってみると部屋の中は真っ暗で、奥の方からキュルケの声がした。
「扉を閉めて」
「私に何か用か?」
彼女の声色に不吉なものを感じたハクオロは用件を聞こうとしたが、
彼が戸を閉めないと解るったキュルケは暗がりの中で杖を振った。
すると扉は勝手に閉まり、さらに鍵までかかってしまう。
その瞬間、彼の脳裏に稲妻が走った。
この展開は、間違いなく悲劇的な末路を迎える。
本能的に扉に手をかけ、ガチャガチャと取っ手を回そうとする。
が、回らない。錠を開けなければ、錠、どこだ、あった、えいっ。
「あ、開かない……」
「魔法で錠を閉めてるから、力ずくでぶち破るか、『アン・ロック』を唱えないと無理よ」
恐る恐るハクオロが振り返ると、室内に立てられていたロウソクがひとつずつ灯っていく。
スタート地点はハクオロの周辺で、ゴール地点はキュルケの周辺、ベッドだった。
薄明かりの中、炎の揺らめきがキュルケの艶かしい褐色の肌を照らす。
扇情的なベビードールという下着を着け、
豊かに実ったメロンのような柔肉の果実がレースの下着を持ち上げている。
(いかん……いかんですよ、これは)
雄の本能によりハクオロの視線はそれに釘づけになる。
嗚呼、この胸は、この大きくて丸くて柔らかそうな胸は。
胸の大きな黒髪の美女が脳裏に浮かぶ。なぜか獣耳で猫のような尻尾が生えてる。
胸の大きな金髪の美女が脳裏に浮かぶ。なぜか背中から天使のような白い翼を生やしてる。
胸の大きな銀髪の美少女が脳裏に浮かぶ。なぜか背中から鴉のような漆黒の翼を生やしてる。


「そんな所に突っ立ってないで、いらっしゃいな」
色っぽい彼女の声に導かれるように、ふらふらと彼はベッドに向かった。
これは決して誘惑に負けているのではなく、その、記憶が、そう、何か思い出せそうで。
キュルケの前まで行くと、ふいに、彼女は影のある表情を見せた。
「あなたは、あたしをはしたない女だと思うでしょうね」
「あ、いや、別にそんな事は……」
「思われても仕方がないの。解る? 私は『微熱のキュルケ』……燃え上がりやすいの。
 そう、これは恋。恋をしているのよ、あなたに! あの時! あの瞬間から!
 ギーシュのワルキューレを倒して、劣勢になっても土壇場で引っくり返す力強さ!
 私の胸を雷が打ったわ! そして! 私の心の中にあった火と、
 雷で打たれた時、新たに生まれた火、ふたつの火が胸に宿った。
 ひとつひとつでは単なる火だけど、ふたつ合わされば炎になる!
 炎となった恋は無敵よ! だから、私の情熱を受け止めて! ダーリン!」
ベッドから飛び上がったキュルケは、たわわな胸をハクオロの胸に押しつけて抱きつく。
グニャリと歪む柔らかな感触にハクオロはたまらなくなった。
その隙をついて、キュルケはハクオロを引っ張り倒す。ベッドの上に、自分の上に。
「うわっ」
バランスを崩して倒れたハクオロは突っ伏した。キュルケの、谷間に。
頬を両側から包む熱を持った柔らかさ。
「やんっ、積極的なのね」
「ち、違……自分は……」
キュルケの手がハクオロの後頭部に回り、いっそう強く顔を胸に押しつけさせる。
あまりの気持ちよさにハクオロは力が抜け、そのまま流れに呑まれそうになってしまう。
と、そこに救世主が降臨する。
突然ノックされた窓の外で、ハンサムな黒髪の男がキュルケ達を睨んでいた。
「ノックしてもしもぉ~し。待ち合わせの時間に来ないから来てみれば……」
「ジョセフ! ええと、二時間後に」
「話が違うぞこのスカタン!」
ここは三階、どうやらジョセフという男は魔法で浮かんでいるらしい。
キュルケはわずらわしそうに杖を取り出すと、炎を出して窓ごとジョセフを吹っ飛ばした。
「まったく、無粋なフクロウね」
「……待て、今のは誰だ」
「ただのお友達よ。とにかく今、あたしが一番恋してるのはあなたなの、ハクオロ」
ピンチ再び。しかし風通しのよくなった窓から新たな人物が現れる。
シルバーの髪を垂直に立てた男が、汗をダラダラ流しながら言った。
「あ……ありのまま、今、起こった事を話すぜ!
 『俺はキュルケとベッドインしに来た思ったら、
  いつの間にか他の男がキュルケとベッドインしていた』
 な……何を言ってるのか解らねーと思うが、俺も何をされたのか解らなかった……。
 頭がどうにかなりそうだった……。
 浮気だとか二股だとか、そんなチャチなもんじゃあ断じてある。
 もっとも恐ろしいものの片鱗を味わったぜ……」
「ポルナレフ! ええと、四時間後に」
「キュルケに他の男がいるなどと……嘘をつくなぁ~!」
キュルケは再度杖を振り、炎でポルナレフという男を吹っ飛ばす。
「……キュルケさん? 今の彼も君に会いに来たようだが」
「愛って何? 振り返らない事よ。だから私は振り返らない。
 あなたの過去なんて気にしないし、自分の過去も気にしないわ! 好き!」
と、キュルケが愛の語らいを再開しようとすると、窓からさらに悲鳴が上がる。
見れば、今度は三人もの男が押し合いへし合いしながら窓から中に入ろうとしていた。
そしてそれぞれに叫ぶ。
「キュルケ!」「彼は誰なんです!」「恋人はいないと言っていたはずだ!」
「ソリッド! ドッピオ! ディアボロ! ええと、六時間後に」
「三人同時かよ!」
もはや語るまいと、キュルケは杖から大きな火の球を出して三人を吹っ飛ばした。
そしてキュルケの男癖の悪さを目の当たりにしたハクオロはげんなりとし、
「帰る」と呟いて起き上がろうとした。
が、その時ズキンと左手の火傷が痛み、彼は再びキュルケの上に倒れてしまう。
と、同時に部屋の扉が勢いよく開け放たれルイズが飛び込んできた。



ルイズの視点。
ハクオロの帰りが遅くてイライラしてたら、なぜかキュルケの部屋が騒がしい。
そこでキュルケの男癖の悪さ、およびヴァリエール家との対立を思い出し、
最悪の事態を予想しキュルケの部屋に突撃。
鍵が掛かってたので『アン・ロック』を唱えて扉を吹っ飛ばして入ろうとしたが、
なぜか普通に鍵が開いたので、構わず扉を蹴飛ばして踏み込んでみた。
すると、ベッドの上でハクオロがキュルケに迫ってる最中だった。

「こ、こここ、この……」
ルイズの全身から怒りのオーラが立ち昇るのを感じたハクオロは、
顔面蒼白になって脂汗をかき始める。
「えーと……だな、これは」
「この、好色犬ぅぅぅっ!!」
近くに立っていたロウソクを引っ掴んだルイズは、ハクオロ目掛けて全力投球。
ベッドの上に落ちたら大変だとハクオロは包帯の巻かれた左手でロウソクキャッチ。
包帯に引火。
「アァァァァァァッ!!」
火傷が悪化。

薬を塗り直し、包帯を巻き直したハクオロは、
ルイズの部屋に敷かれた藁の上に毛布一枚で寝転がる。
左手はまだ酷く痛み、とても寝つけそうになかった。
一方ルイズはふかふかのベッドの中でくつろいでいる。
が、空気が冷たく張り詰めていた。ただこの部屋にいるだけで寒気がする。
「な、なあルイズ……」
「何? 好色犬」
先ほど、ルイズのヴァリエール家とキュルケのツェルプストー家との確執、
誰を寝取られたとか彼を寝取られたとか彼女を寝取られたとか、
だいたいそんな話を火傷の手当て中に聞かされていたハクオロは、
他の話題で何とかルイズの怒りを静められないものかと考えていた。
そこで、思い浮かんだ質問をしてみる。
「キュルケの部屋は鍵がかかっていた。
 ドアを力ずくでぶち破るか『アン・ロック』を使わねば開けられないと言っていたが、
 あの部屋を出る時ドアを見たが、ドアノブや錠が壊れた様子は無かった。
 いったいどうやって開けたんだ?」
「どうやってって、『アン・ロック』でドアを吹っ飛ばそうと……アレ?」
ようやくルイズは、『アン・ロック』で爆発が起きなかった事実に気づいた。
しかもちゃんと錠が外れ、普通にドアを開けられた。
じゃあ、まさか。
ルイズはベッドから跳ね起き、枕元に置いてある杖を手に取る。


「わ、私、魔法、成功した?」
「サモン・サーヴァントとコントラクト・サーヴァントができたのだから、
 同じコモンマジックの『アン・ロック』が使えない道理は無い。
 今まで使えなかったというのなら、今はもう使えるようになったのだろう」
「う、嘘……だって、でも、そんな」
「試しに、何かコモンマジックを使ってみたらどうだ?」
言われて、ルイズは恐る恐る杖を扉に向けた。
他のメイジと違い、ルイズは扉の鍵を自分の手で閉めている。
その鍵を開ける方法も、当然手で開けるしかなかった。
でも。
短い詠唱の後、錠前が光り、暗がりの中錠の回る音がした。
「は、ハクオロ。ドア、開けてみて」
毛布から出たハクオロは、さっそく錠には触れず扉を開ける。
「どうやら君の努力が少しずつ実りつつあるようだな。
 恐らく魔法を失敗した時の爆発の威力が上がったのも、成長のひとつの結果なのだろう。
 失敗が派手になったというより、魔法の威力が上がったという事だ。
 後はその力を操れるかどうかだが、コモンマジックなら操れるようになったらしい。
 この調子でまずコモンマジックを使いこなせるようになってみてはどうだ?
 そうすればいずれ系統魔法も成功するかもしれない。……ルイズ?」
自分なりの考察を述べてみたのだが、ルイズはうつむいたまま反応しない。
しかしよく見れば肩がわずかに震えていて、彼女の目元から、雫が。
ハクオロは扉と鍵を閉めると、藁の上ではなく、ベッドの前に行った。
それから、火傷をしていない方の右手が、桃色の髪を撫でる。
「よかったな、ルイズ」

大きくて優しい手が、頭を撫でる。
まるで、まだ私が魔法が使えないと解る前のお父様に撫でてもらってるみたい。
込み上げてくる驚喜があまりにも激しくて、どうしていいか解らなかったのに、
ハクオロの手に撫でられていると、それらが心地のいい安らぎへと変わる。
嬉しさと安心感が溶け合って、胸の中にあった暗がりを灯す。
使い魔に頭を撫でられるなんて、って思っても、もっと撫でていてもらいたくて。
だから私は、ただ涙をこぼし続けた。
口を開いたら、悪態しか出てこなさそうだったから。
そうしたら、ハクオロが私の頭を撫でるのをやめてしまうだろうから。
ハクオロは、私の涙がおさまるまで、ずっと頭を撫で続けてくれた。

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