あの作品のキャラがルイズに召喚されました @ ウィキ

ゼロのちグゥ-5

「うう……ここは……」
ルイズが意識を取り戻すと、そこは食堂だった。

足元ではグゥがどこから出したのか、ちびちびとケーキを食べている。
「ルイズは食事をとらないのか?」
「そんなことより、もっと深刻な問題についてあんたと語りたいと思うわ」
グゥは“何言ってんの?”的な表情でルイズの顔を見た。
その瞳からは特に悪気を感じない。

「わかった、わかったわよ。今は話したくないわけね?」
グゥがうんうんと頷く。
「そうそう。ちゃんと食べないとな」
「そのセリフ、そのままあんたに返すわよ」

ルイズは肉をナイフで切りわけながらグゥについて考える。
まだ呼び出して1日だが、ルイズにはいくつか判ったことがあった。
まず、こいつは少なくとも“無力な平民の子供”などでは決してない。
亜人だとすると身体的特徴や召喚したときの猫を被った様子から考えて、一番近いのは吸血鬼だ。

ただ、グゥはどちらかというと…いや、かなり熱と光を好んでいる。
嬉しそうに朝日を見上げていたし、何故か宿敵キュルケのサラマンダーにべったりだ。
そんな吸血鬼は有り得ないし、考えたくもない。

かといってエルフとは思えないし、オーク鬼や翼人とは外見が違いすぎる。
人に変身できる韻獣系の何かという可能性もあるが、最初から人型をしていたのでその線は薄そうだ。

結局、ルイズは考えをまとめきることができないまま食事を終わらせた。
気づくと足元にいたグゥがどこかへ消えている。

「ギャー助けてくれえ、ぼくが悪かった!謝る、謝るよ!」
数メイル先にできた人垣の中から、男の悲鳴が聞こえてきた。


あの声は…ギーシュかしら?

「そうそう、モンモランシー。ギーシュに近づく女を何とかするのではなく、ギーシュ自身を何とかすればいいのですよ」
え、この声はまさか?!

ルイズは慌てて人垣を掻き分け前に出た。
「ちょっとグゥ、何やってんの!」
「善意の第三者ですよ。言わばボランティア」

「そう。で、このボロ雑巾みたいな金髪男は何?」
「たった今二股がばれた哀れな少年、ギーシュ・ド・グラモン」
そう言うと、グゥは目に涙を浮かべた。ただし、満面の笑顔で。

「じゃあ、ギーシュを今もストンピングしてる一年生の子は?」
「このちょっぴり過激なガールはケティちゃんですよ」
ルイズは額に青筋を浮かべると、グゥの胸元をつかみあげた。
「ねえ、これあんたが焚きつけたのよね?そうよね?そうなのよね?変な事しないでって言ったわよね!ねえ!」
「そんなことないですよー」
グゥがあまりにもわざとらしい、間延びした声で弁解する。
ルイズが首を絞めようとしたその時。

「ちょっと、ルイズ」
「ん、どうしたの?ええと…モンモランシー、ごめんなさい、この馬鹿がなんかしたみたいで」
しかし、モンモランシーから返ってきた答えは意外なものだった。
「いや、違うわよ?」
ルイズから開放されたグゥが憮然として口を尖らせる。
「あらそうなの、じゃあ何で?」

「ちょっと相談に乗ってもらっただけよ」
「それはごめんなさい。でも、“それ”はこのままでいいの?」

ギーシュは哀れなほどぼこぼこにされ、現在進行形で生傷が増えつつある。
それを見ながら、モンモランシーはにっこり微笑んで答えた。
「天罰よ」

「そ、そう……。なら行きましょうか、グゥ。今日は午後の授業ないから、部屋でここの事説明してあげる」
「楽しい見世物がまだ」
「いいから行くわよ」
「…ッチ」



所変わって、ここは学院長室。

コルベールは、やや憔悴した様子で学院長老オスマンに相談に来ていた。
「あの、オールド・オスマン、それで“遠見の鏡”の使用許可の方は」

「うーむ、確かに人を使い魔として召喚することなど、このトリステイン魔法学院始まって以来のことではあるがのう」
オスマン氏は渋い表情で考え込んでいる。
「しかしじゃよ、ミスタ・コルベール。ルーンがいくら服の下にあるだろうと推測されるとしてもじゃ。
それを確かめるのに、“遠見の鏡”となあ……」
わしですら覗きには使ってないのにのう、と付け足した。

コルベールは、禿げ上がった頭をハンカチで拭きながら説明する。
「けれど、その、私がむりやり女の子の服を剥がすというのはちょっと。
それに、他の女性職員に頼んだとして、もしそのルーンが異常な、たとえば伝説の印とかだったらどうします?
まあ、それはないとしても実際問題、人間を召喚したという時点でかなりの異常事態なんですよ!」

異常といえば、あの時一瞬感じた巨大な気配も気になるが、とりあえず今は関係ない。

「言わんとすることはわからんでもないんじゃが……」
「そこをなんとか」

「……まあ、ここしばらく何の大事も起こってはおらんし、たまにはいいかの」
「ありがとうございます、オールド・オスマン」
「ところで、その使い魔とやらはどこにおるんじゃね?場所がわからんと、いかな“遠見の鏡”といえどうしようもないぞ」

コルベールは少し考えてから答えた。
「おそらく、召喚したルイズ・ド・ラ・ヴァリエールの自室にいるのでは?確か女子寮3階の2番目の部屋だったかと」
「あいわかった」
オスマン氏が杖を振ると、ルイズの部屋の中が映し出された。



そこでは、ルイズが色々な事をグゥに理解させようと悪戦苦闘していた。

「……だから、平民ってのはいわゆる普通の人のことね。で、貴族は基本的にはメイジで、メイジは魔法が使えて偉いのよ。
そのかわり、戦いがあったとき平民を守る役目があるの」
「ほう、魔法とやらが使えれば貴族なのか?」
「一概には言えないけど、大体はそういうことでいいわ。」
「魔法、か……」
グゥは目を細めた。

「わかった?」
「うむ」

「本当にわかったのならいいけど。じゃあ次は“使い魔”ね」

「それは昨日読んだから大丈夫っすよ。
感覚をいくつか共有して、秘薬?の材料を探してきて、主人を守る。オッケー?
……秘薬の材料の意味はわからへんけど」
グゥがにやにやと笑う。ルイズは頭を抱えた。

「……ねえ、グゥ」
「なにかな?」
「もしかして昨日こっちに来た直後から私の心読んでた?」
「うむ。ルイズが顔を赤らめてこの子可愛い!とか、使い魔が何で人間なの?とか悩んでる辺から全部。面白かったぞ」
ルイズの肩が怒りと、羞恥と、その他いろんなもので震える。
そしてグゥの頭を掴んだ。
「あああ、あ、あんたねええええええ!禁止!絶対禁止!勝手に心読むな!マジで!」

「えー」
「えーじゃない!」
「ルイズってばひどーい!」
「無駄にかわいくキレてもだめ!絶対!」

グゥが実に残念そうに溜め息をつく。
「しかたないなあ」
「お願いだからやめてね」
「はいはい」
こんな調子では、他人より早く年を取りそうだ。
ルイズは肩を落とした。


「ルイズも大変だな」
「今のわたしの悩みのうち8割ぐらいはグゥのせいよ!
ところで、あんたってなんだか色々できるみたいだけど、メイジなの?」

「さあ?」

「まあ、杖持ってないし多分違うわよね。じゃあ質問を変えましょうか」
「……?」
「グゥ、あんたって種族なに?」

「ルイズには、グゥがかよわい少女以外に見えるのか?悲しいな……」
グゥが悲しそうな表情を浮かべる。本気にはとても見えないが。

「あのね、見えるから聞いてるの。
少なくともわたしの知識によると、人間は普通一瞬で顔を変えたり、皿や梟を丸呑みしたりはしないわよ」
「そうかなあ。グゥは、グゥなんだが」

「そうに決まってるでしょ!はぁ……。
そういえば丸呑みで思い出したけど、マリコルヌの使い魔があんたの目から見えたじゃない?あれって生きてるの?」

グゥはちょっと首を捻ってから答えた。
「すごく元気してるぞ」
「どこで?」
「会いたい?」
「いや、別に会いたくはないけど。生きてるなら戻してあげなさい。さっきのマリコルヌ、自殺せんばかりだったわよ」

「むー……困ったなあ」

「なにがよ」
「あの鳥、こっちが気に入ってるみたいで出てきてくれない。会うだけなら簡単なのだが」

出すのは無理で、会うのは簡単ってどういうことかしら?

「うーん、じゃあ会ってみようかしら」
「後悔しない?」
「なによ、なんか怖いわね。危ないの?」
「いや別にそんなことは」
「なら後悔しないわ。どうすればいいの?」
「Come in!」
「はい?」


ばふっ



その頃。
学院長室では“遠見の鏡”を使い、なんとかグゥのルーンを確認したオスマン氏とコルベールが、それのスケッチを見ながら雑談していた。

「ふぅ、疲れたのう。服の下ギリギリに鏡の照準を合わせるのがこんなに大変とは……」
「色々すみません、オールド・オスマン」
コルベールが心底申し訳なさそうに頭を下げる。
「よいよい、十分な暇つぶしにはなったわい。ただ、できればもうちょっと育っていて欲しかったのじゃがな」

「……はあ。ところで、この平民の少女の胸に浮いたルーンですが、随分珍しいものですねえ」
「確かに、いまだかつて見たことがないルーンじゃが。ところで、ミスタ・コルベール」
「なんでしょう?」

オスマン氏の目が鋭くなった。
「あの子は、本当にただの平民なのかね?」
「少なくとも、“ディテクト・マジック”には反応がありませんでした。ただ……」
オスマン氏が髭を揺らしてコルベールの顔を覗き込む。
「ただ?」
「なんというか、得体の知れない不思議な雰囲気がありますね」

コルベールの返答に、オスマン氏は深く頷いた。
「やはりそう感じるか。というかの、わしにはあれが平民とか貴族とかいう以前に、人間じゃないような気がするんじゃが」

「むむ、しかし亜人のような感じは受けませんでしたが。王宮の研究室にでも知らせますかな?」
「いや、それはやめておいた方が良かろう。学院内のことはできるだけこちらで解決したいしの」
「わかりました、オールド・オスマン」
「内密にな」
「はい」



「ちょっと、グゥ!ここどこよ!暗いんだけど!」
突然視界が暗転したルイズは慌てふためいた。
頭に直接グゥの声が響く。

(危なくないし、痛くないから大丈夫。もうちょっと前に歩き?)

「本当でしょうね!」
もう既に“マリコルヌの使い魔に会いたい”と言ったことを後悔しているルイズではあった。

「あら?」

しばらく歩くと、いつの間にかルイズの周囲が明るくなっている。
そこは、見たこともない木がまばらに生えた見渡す限りの広野だった。
(鳥、見つかった?多分近くにいると思うねんけど)
そう言われてルイズは辺りを見回す。

「えーと、あ、居たわ!おいで、クヴァーシル…だっけ?」
しかし、すぐ横の木の枝に止まっていた梟は、ルイズの姿を見るや否や奇声をあげて飛び去った。
「ちょ、ちょっと!待ちなさい!」
(あーあ、嫌われちゃったねー)
やる気のないグゥの声が再び響く。

「うるさいわね!で、ここから出るのはどうすればいいの?
というか早く助けなさい!気が狂いそう!」
(あーい)

再び、ルイズの視界が暗転する。

「うーん……」
気づいた時には、既にルイズの体は自室にあった。
「おかえり。鳥は元気しとったろ?」
「い、今のは何なの?確かにクヴァーシルは居たけど……」
グゥが自分のお腹を叩く。
「はあ?冗談、よね?」
ルイズは開いた口がふさがらない。

「グゥは、いつだって真剣だぞ」
「そう……便利、ね……」
グゥはにやりと笑った。
「へへへ」


ルイズは確信した。こいつは人でも亜人でもない。確実に何か別の幻獣だ。

けど、もしかしてこの使い魔、当たりなのでは?
一瞬で人や動物を呑み込み、生きたまま異空間に封印できる生物なんて聞いた事がない。
しかも人語を解し、外見は普通の女の子なのだ。
使いこなせれば、凄いんじゃないかしら?
問題は、使いこなすめどが全くたってないということだが。

グゥがぽつりと呟いた。
「精進しなっせ」

「あんたね!勝手に心読まないでっていったでしょ!」
「難しい顔してたからつい」
「つい、じゃないの!駄目ったらだめー!」
「……」

「あと、無意味に人を呑むのも禁止だからね。特に杖を持ってる人は駄目よ!」

「……ルイズは禁止が多いなぁ」
「いや、普通のことだから、ね?」
「そうかなあ」
「そうなの!」

言い争いに疲れふと外を見上げると、太陽はまだ随分高いところにあった。
ルイズの長い長い一日は、当分終わりそうにない。

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