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『使い魔くん千年王国』 幕間2・『悪魔』 

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浮遊大陸アルビオンの北東部、岬の先端に聳え立つ名城ニューカッスル城は、
激しい敵艦からの砲撃と、百倍を超える大兵団の前に、遂に陥落した。
ウェールズ皇太子は、混乱の最中に『味方の裏切り』で死亡。
老王ジェームズ1世は、城を枕に討ち死に。アルビオンのテューダー王朝は断絶した。

略奪が始まるも、もはや目ぼしいものは軍資金として売り払われ、非戦闘員は逃れた後。
腹いせのように、残った将兵は嬲り殺しにされ、仲間同士の醜い争いも始まる…。

「おおミスタ・ワルド、不用意に『あの姿』を現さないで頂きたい。こちらの兵にも死者が出たぞ」
「いやいや、済まないね、クロムウェル閣下。ちと面白い奴らがいたもので」
部屋に入ってきた青年貴族はジャン・ジャック・フランシス・ド・ワルド――――
今は彼を乗っ取った『魔眼のバックベアード』が、にたりと笑いながら答える。
松下の放った『照魔鏡』の閃光で右目を焼き潰され、隻眼だ。
相手は三十代半ばの痩せた男。法衣を纏い、カールした金髪に聖職者の帽子を載せている。

ここは陥落した城内の一室。時は深夜。忌まわしい者たちの策謀が巡らされていた。

「まあ、『ウェールズの命』と『アンリエッタの手紙』は私が奪った。
 この恋文があれば、トリステインはゲルマニアと同盟を結べず孤立するだろう。姑息な作戦だがね」
「どちらにせよ侵攻するのに変わりはないさ。『聖地』に攻め込む前に、少し地上基地を作るだけのこと。
 遅かれ早かれ、地上の諸国は皆我ら『レコン・キスタ』の下にひれ伏す!! 忌まわしきエルフさえも!!」
『レコン・キスタ』の代表者、貴族会議議長オリヴァー・クロムウェルは、興奮して諸手を天に掲げる。
彼は人間であり、魔法さえ使えない『平民』の司教に過ぎなかった。だが…。
「そうなれば、私の野望も叶うというものだ。協力は惜しみませんぞ」
部屋の隅で声がした。低い嗄れ声ながら、巧みに人心を捉えるような魔性の声。

「ふっはははは、感謝しますぞベリアル閣下。あなたが水の精霊から『アンドバリの指輪』を奪い、
 古臭い王家を倒せるほどの強力な軍勢と権勢を私に授けて下さった。
 あなたこそ私の救世主、いや、神かもしれない!」
そこにいたのは、白髭の老いた貴族の姿をした『悪魔ベリアル』。
偉大な公爵、炎の王、虚偽と殺戮の貴公子、隠れた賄賂と暗殺の魔神。
闇の王にしてこの世の王。『無価値・邪悪』がその名であり、堕天使のうちで最も美麗にして卑劣。
悪魔の王サタンの別名。クロムウェルは司教でありながら、『悪魔』と結託したのだ…。


「どれ、雌犬(ビッチ)の姫様の恋文を拝見させてもらおうか。ひひひひ」
クロムウェルが下品に笑い、亡きウェールズが遺した古い手紙の封を切る。
すると封筒の内側から『青い炎』が立ち昇り、彼の手を焼き焦がした!
「ぎゃあっ!? 何だと!?」
炎は手紙自身をも焼き捨て、白い灰が残る。
「ふふん、魔法の封印かな。どうもあの『東方の神童』のにおいがするぞ」
『ワルド』とベリアルは、呻いてうずくまるクロムウェルをゲタゲタと嘲笑した。

「さてクロムウェル閣下、アルビオンは滅び、その空中艦隊も接収できた。
 準備が出来次第、難癖をつけてトリステインに侵攻することになろう。
 その前に私はゲルマニアとガリアを巡り、援軍が送れないよう宮中に細工をしてこよう」
ベリアルが提案する。
「戦場の後始末と軍需物資の徴発には、私の部下をお付けしよう。アルビオンの貴族より有能だよ」

ベリアルの足元の影から、二体の『悪魔』が現れる。
片方は二つの鴉の頭を備え、黒い体と鉤爪を持つ。
もう片方は猿のような顔に黒猫の耳と尾を備え、小役人の制服を着ている。
「『富の魔神』マンモンと、『地獄の出納係』メルコム。力はたいしたことないが、
 地下資源や金銭に関わることならお手の物だ。きっとお役に立つことだろう」
悪魔たちは人間に姿を変え、相手を軽蔑しきった笑顔でクロムウェルに恭しく一礼した。

クロムウェルは歯ぎしりしながら立ち上がる。
「ああ、頼みますベリアル閣下。陰謀にかけてはあなたの右に出る者はいない」
「そうだともクロムウェル閣下。私は『人の子』に虚偽と悪意と怒りを吹き込み、
 それを大きく育て上げるのが何よりの愉しみなのだからね……」
ベリアルはこの上なく邪悪な笑みを浮かべ、闇の中へ姿を消した。
『ワルド』も同様に部屋から立ち去り、クロムウェルと二人の悪魔が残された…。

「新国家は、『神聖アルビオン共和国』とでも名づけよう。私の、私の国だ。
 わ、私は『神聖皇帝』だ。平民も貴族どもも、この指輪で支配してやる」
クロムウェルは、『アンドバリの指輪』の妖しい輝きを見ながら、呟いた。
心を操り、死者にさえ仮初めの生命を与え、傀儡とする指輪。その使い手もまた、傀儡であった。
「ではお二方、まずは『皇太子のご遺体』を探し出して欲しい…」


「ご苦労だったな、『土くれのフーケ』。いや、マチルダ・オブ・サウスゴータ」
ラ・ロシェールの町に取り残され、場末の酒場で不貞腐れていたフーケのもとに、再び『白い仮面の男』が現れる。
「おかげさんでね、ワルド子爵。小童たちの足止めくらいにはなったかい?
 ……あたしは年増じゃない、二十三歳は女ざかり…ブツブツ」
よく分からないが、精神的に何かショックを受けている。ちょっと眼がうつろだ。

『ワルド』が仮面を外し、隻眼になった素顔を見せる。
本体は雲の上のアルビオン、ここにいるのは『遍在』の分身だ。
「ふふふ、『トライアングル』メイジは結構な戦力だ。もうすぐひと働きしてもらうさ。
 なあ、年増、小母さん、オールドミス、お肌の曲がり角、熟女、更年期。ウワッハハハハハハハハ」
「ブチ殺されたいかい…と言いたいが、あんたとは『格』が違う。やめとくよ。
 …第一人間かどうか、怪しいしね。命と自由とが保障されて、カネさえ貰えりゃ文句はないさ」
フーケ、いやマチルダも、『ワルド』の漂わせる冷たい妖気に引いている。

彼女はアルビオン貴族の出身。家はサウスゴータの太守で、かつて王家により家名を取り潰された。
アルビオン王家が滅んだと聞いても、『ざまあみろ』と思う以上の感慨はない。
いまさら貴族様に戻る気もないし、盗賊稼業が性に合っている。守りたいものもある。
…でも、一応結婚願望はあるのだ、やっぱり。

(ああ、始祖ブリミル様。どうかあたしに、いい男をお与え下さい。ロリコンの妖怪とかじゃなくて)

(つづく)

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