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エデンの林檎 十三話

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十三話 『ええい、なら死ぬまでミカンを食ってろ!』


 ワルドが金を出すといっていたが、それを無視してシエスタの意見を参考に宿を選ぶ。
 染髪剤で髪の毛を染め、その宿での部屋割りを決める。

「ルイズは僕と同じ部屋で良いかな?」
「え? ワルド様、いくら婚約者でも婚前にそれはダメですわ」
「ん、そうかな?」
「ええ、女性二部屋、男性一部屋で二人ずつ取りましたからそれで」
「そうれもそうだね……ならルイズ、後で二人で話がしたいんだが」
「ええ、それなら後で」


 二階のテラス、ルイズとワルドはワインで乾杯をする。

「本当に久しぶりだね、ルイズ。昔はかわいい女の子だったが今の君は本当にきれいだ」
「あら、お世辞がうまいのね、ワルド様」
「いや、正直なところだね、何と言うか染み出すような何かが今の君にはある」

 じっとルイズを見てワルドは言う。

「そうかしら?」
「何だろうね? 正直十年ぶりだ、まだ小さなルイズのままの感覚だったのだが、今の君を見ているととてもそんなことはいえないな」
「あれ、うれしいわね」
「何かきっかけがあったのかな?」
「きっかけ、ね」

 ゆっくりと、度数のあまり高くないワインをあおる。

「気づいただけよ」
「気づく? 何にかな?」
「くだらなさに。今まで自分が叫んできたことの」

 空になったグラスを置き二つの月を眺める。

「貴族、魔法、メイジ、そんなもの命に比べれば何の価値もない」
「……そうだろうか? 貴族にとって魔法は自分の、あ、いや、君を貶める気は……」
「わかってるわ。でもねワルド様、魔法って政治に必要かしら?」
「む……」
「キュルケやタバサは留学生で、外のことをいろいろ聞いたわ。トリステインの貴族が野蛮野蛮とさげずむゲルマニアの道具を見せてもらって驚いたわ。トリステインの何倍も、工業技術が進んでる」

 ルイズはワルドのグラスにワインを注ぎなおし、自分のグラスにも注ぎなおす。

「平民を登用しているから、それが私の予想。魔法が使えないからこそ、魔法以外の何かで埋め合わせる」
「しかし魔法のほうが早くて便利だろう?」
「そうね。でも途中経過を説明できる? どうやって鉄を鋼に変えるのか、さらに鋼鉄に変えるのか」
「むむ、そういえばわからないな。魔法で何とかなるから考えもしなかった」
「ワルド様、剣を習ってらっしゃるならわかると思いますけど、基礎から鍛えたものと魔法でごまかしたもの、どちらがより強いでしょう?」
「……そうか、そういうことか」
「いずれは超えていくでしょうね、平民の技術力は魔法のはるか向こうへ。そのときはきっと、このトリステインは勝てない」

 皮肉げな笑みを浮かべ、ルイズはグラスを揺らす。


「もっと後のことだろう?」
「いいえ、ワルド様。戦争が始まりそうなのでしょう? 戦争は人の技術力を飛躍的に進歩させるわ」
「確かに、いやな話だが戦争は技術力の向上の役にはたつ」
「魔法を技術が凌駕したとき、戦争の役にしか立たない貴族に価値などあるのかしら?」

 ワインを注ぎなおそうとビンを傾け、空になっているそれを残念そうに机に置く。

「いずれは必ずそうなるわ。そのとき、選民思想に凝り固まって平民をブタ以下に扱ってきた私たちを、誰が守ってくれるのかしら」

 空のグラスも机に置き、もう一度月を眺める。

「このトリステインに保護する価値のある貴族は、ほんの一握りしかいないもの」
「……耳に痛いね」
「そう思うなら利権のために古い体制に固持するお馬鹿さんを変える努力をすべきよ? グリフォン隊隊長さん」
「やれやれ、まさか言い含められるとは」

 肩をすくめながら、ワルドは空になったグラスを机に置く。

「ところでワルド様」
「何かな?」

 ルイズは床を指差す。

「この騒ぎは何かしら?」
「ふむ、ただの喧嘩という感じではないね」

 直後窓から飛び込んでくる火矢。
 ワルドが迎撃の魔法を唱えるよりも早く、ルイズはテーブルを蹴り上げ楯にした。

 騒がしくなった外から怒声と悲鳴が聞こえてくる。
 机を楯にしゃがみこみながら、ルイズは武装を生成する。
 完全とは言えなくともある程度隠蔽した自分たちをピンポイントで襲ってくるとは。

「完っ璧に情報がもれてるわね」
「内通者がいるということだろうか?」
「さあ? でも多分ばれたのはワルド様、あなたからね」
「え゛、僕かい?」
「ええ。グリフォン隊の隊長が抜けだしてるんですもの。そこから探られたのね」
「……まいったな、僕としたことが」

 帽子をかぶりなおし、ワルドは頭を振った。
 その様子に苦笑しながら、ルイズは武器の生成を完了する。
 二メイルはある銃身、かなり太目の口径、どう見ても長距離砲撃用のマスケット銃が生成される。
 筒に向かって息を一吹き、その銃口を襲撃者がいるだろう辺りに向ける。

「ばーん♪」

 何の音も光も出さない吐息で作られた不可視の砲弾が、襲撃者のど真ん中で爆発した。

「……マジックアイテムかい?」
「ひ・み・つ♪」


 ぐるぐる巻きにされて仏頂面で拘束されている傭兵たち。
 半分くらいは既に逃走した後だ。

「まあ尋問するまでも無く貴族派の手先でしょうけど。一応聞くけど雇い主の情報は?」
「はっ! 話すと思うか?」
「シエスタ」


 ずらりと、シエスタがデルフを抜き放つ。

「依頼人は?」
「い、言うと思ってんのか?」

 シエスタがデルフを振りかぶる。

「娘っこよ、一人や二人くらいぶった切ってもいいだろ? あんま使われてねえから感覚が鈍りそうだ」
「こいつが話さないっていう悲しい選択をしたら好きになさい」
「っしゃー! お前らしゃべるな! ぶった切ってやるかるぁあ!」

 武器として使われることが少なかったせいか妙なテンションになっているデルフ、その妖刀のような危ない発言に傭兵たちはあせった。

 尋問とかじゃなくて適当に憂さ晴らしで殺される?

「これが最後よ。依頼人は?」
「ひへっ? へえ、あ、いや」
「デルフ、ぶった切ってやりなさい」
「っしゃおるぅああああ! 真っ二つじゃあ!」

 空気を切り裂く音を上げてデルフが大上段から振り下ろされる。

「しゃしゃしゃしゃしゃしゃべる! しゃべるから!」

 デルフは男の額の皮一枚だけを裂いて止まった。


「白い仮面のメイジねぇ」
「怪しいどころじゃないわね」

 切らせろ~と叫ぶデルフを無視してルイズはキュルケと顔を向き合わせる。

「宿を変えましょう。できれば今すぐにでもここを出たいところだけど」
「船は明日にならないと出ないのよね。費用の削減ってやつかしら」
「いや」

 ワルドが杖を持ちマントを羽織る。

「僕が“風石”の代わりをやろう。こうなってはできるだけ急いだほうがいい」


 船の中、風の魔法で精神力を使い切ったワルドが椅子にへたり込んでいる。

「さすがに、船一隻ともなると疲れるね」
「そりゃそうよ。はい、元気が出るそうよ」

 渡された飲み物をあおり、ワルドは汗をぬぐう。

「しかし何だね、君は本当に成長してる」
「またそれ? 何回も同じくどき文句じゃ飽きちゃうわ」
「そうかな、なら次からは工夫するとしよう」

 すこしぼんやりとした後、ワルドは腕を組み話し始めた。

「ルイズ、僕はこの任務で君にプロポーズをしようと思っていた」
「と、唐突ね」
「君の家名や才能に興味がないといったら嘘になるが、また一人で我慢していると思っていたんだ」
「それで?」
「僕が守らなければ、と思っていたし、僕なら君の才能を開花させられると信じていた」
「ずいぶんね」


 片眉を上げるルイズに苦笑を孵しながら、ワルドは水をあおる。

「でも君に再会してね、正直惚れ直したよ。周りの人間は何故君の魅力に気づかないのだろうね」
「あら、さっきと違って素敵なくどき文句ね」

 飲み物を飲み干しワルドはルイズに向き直った。そこには真剣な眼光。

「ルイズ、どうしても答えて欲しい。どうして君は迷わないんだ? どうして姫様の任務を、こんな危険な任務を平気で受けられる? 僕は正直今のトリステインの王族には期待できないのに」

 その真面目な問いかけに、ルイズは顔をしかめる。

「私には誇りがある。誰にも譲れない誇り、自分を貴族足らしめる誇りが。ただそれに従うだけよ」
「姫様が間違っているとしたら? 王族でありながら自分のことを優先するあの責任感の無い彼女が!」

 興奮しているのか机を叩き大きめの声を出すワルド。
 その顔を見据えながら、ルイズはきっぱり言い放った。

「止めるわ、殴ってでもね」
「お、王族をかい? それに姫様は君の親友だろう?」
「部下だからこそ、親友だからこそ、その道は正す必要があるわ。場合によっては命を懸けてでも」

 そこに迷いはひとかけらも無かった。

「……かなわないな。君は僕よりも、ずっとずっと貴族らしい」
「そうかしら」
「ルイズ、プロポーズの件は今回はなしだ。僕も自分に納得がいったら今度は真面目にしてみるよ」
「期待して待ってるわ」

 微笑を交わす二人。
 だが突如響いた砲撃音が、その静寂を切り裂いた。

「無粋ね」
「まったくだ」

 ブリッジに上がると空賊船らしき船が砲門を向けて停船命令を出している。

「ワルド様、いける?」
「無理だね。風石の代わりをしたせいで戦闘には耐えない」
「私も、船を落とすことはできるかも知れないけど守るのは無理だわ」
「もう少し近づけば大砲をなまくらに錬金できなくもないんだけどねえ」
「あ、あのう……」
「船長、残念だけど停船したほうがいいわ。落とすことは不可能じゃないけどこの船も落ちるわね」

 船長はしぶしぶと停船命令に従った。

 船蔵の中、人質としてとらえられた彼らは縄もかけられずにいた。


「これ、硫黄よねぇ? 何で一緒に置いとくのかしら」
「ただの空賊じゃなさそうね」
「ふむ……」
「どしたのギーシュ」

 あごに手をやっていたギーシュがブーツに手を入れる。
 取り出されたのは、小さいが確かに杖だった。

「予備の杖があるんだが」
「……ならとっとと開けて制圧しちゃいましょ」
「いやね、彼らはまるで身体検査をしなかった。メイジもいたんだ、当然杖の予備がある可能性もゼロじゃないのに」
「そういえば変ね」
「ワルド子爵、次に来る敵が一人なら捕らえられますか?」
「魔法が来ないなら可能だ」
「ではお願いします」

 直後、戸が開く音がして空賊が一人入ってくる。

「ようお前ら、食事だぜ」

 スープを差し入れようと床にトレイを置いた瞬間、ルイズとギーシュ、それにワルドは行動に出た。
 ギーシュの錬金が鍵の周りの構造をもろくする、それを手を叩き込んだルイズが爆破、扉をこじ開ける、そこから飛び出したワルドが男を押さえ込み一瞬で片が付いた。

「て、てめえら!」
「動かないで、動いたら残念だけど二度と見れない顔になるわ」

 手のひらの中で男の持っていた短剣を爆破し、ルイズはその手を男の喉に添えた。

「さて、いろいろと……おや?」
「どうしたのギーシュ?」
「やっぱりだ。どうもただの空賊ではなさそうだね」

 取り出した布で男の顔をぬぐい、その眼帯を取り外す。
 その下から現れたのはかなり育ちのいい男の顔だった。

「ねえルイズ、このスープかなり上等よ」
「少なくとも空賊が捕虜に出すメニューじゃない」
「決まりね」

 ワルドに目配せをする。

「ふむ、正規軍の偽装、といったところかな。貴族派の船を襲っているところを見ると王党派か」
「なら都合がいいじゃない」

 ワルドは戒めを解くが、ルイズの手は喉に添えられたまま。

「責任者、この場合は船長ね。船長のところに案内してもらいましょうか」


 ブリッジで退治する面々。
 その態度はどう見ても捕虜と空賊ではなかった。

「ふむ、どうも見覚えがあると思ったら」
「ワルド様?」
「いや、顔に見覚えがあってね」

 そう言うとワルドはひざをつき頭をたれる。


「お初にお目にかかりますウェールズ皇太子、私はトリステイン王国グリフォン隊隊長ジャン・ジャック・フランシス・ド・ワルド、このたびは姫からの密命により参上しました」
「……あら」「……まあ」「……なんてことだ」「……」
「ふむ、僕の顔を覚えていたのか」

 そう言うと空賊たちは一斉に顔をぬぐい偽装を解き始める。
 あわててひざまずくルイズたちにその育ちのよさそうな顔をさらし、元・船長は声を上げた。

「ようこそ! もうすぐ滅びる王家の前へ! 歓迎しようお客人!」


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