あの作品のキャラがルイズに召喚されました @ ウィキ

4:青銅の少年メイジ


 ギーシュは不機嫌だった。平民のメイドの余計なお世話で浮気がばれたからだ。
 浮気がばれたというのは正確な表現ではない。ギーシュは女性皆に愛を持って接していると言うだけの話で、れっきとした誤解だ。
 その原因が平民の女である。何故平民のせいで僕が愛するケティやモンモランシーにこんな無様な弁明をせねばならないというのか。
「君が軽率に香水のビンなんか拾い上げたおかげで、二人のレディの名誉が傷ついた。どうしてくれるんだね?」
「も、申し訳ありませんミスタ・ギーシュ」
 全く、今日は最悪だ。怒りのぶつけどころといえばこの女だけだ。
 不意に、闖入者が現れるまでは。

「どうしたの?」
 キュルケが周囲の生徒を捕まえて事情を聞く。ルイズは結局、その後ろに連れ立って話を聞く事になった。
「ああ、ギーシュの奴が二股をかけてたって話でさ。ケティと付き合っていたはずなのに、モンモランシーの香水を持っていたんだ。しかもそれを運悪く拾い上げちまったのが…」
 あのメイドさ、と目で指し示す。
「あきれた、ただの八つ当たりじゃない」
 肩を竦めたルイズに、怒りのぶつけどころが不足していたギーシュは目ざとく噛み付いた。
「魔法もレディらしさもゼロのルイズには判らないかもしれないが、美しいレディと言うのは大変扱いが難しいものなのさ」
「何ですって!?」
 詰め寄るルイズに対し、ギーシュは自慢の巻き毛をいじりながら鼻で笑う。
「おお怖い怖い。聞けば今日も教室が爆発したらしいじゃないか。いくら嫉妬とは言え、 僕の美しい顔まで爆発させないでくれたまえよ。
 ……おっと、この距離では自分まで爆発してしまうからそれも無理か」
「試してあげましょうか!?」
 ルイズをからかう方がストレスが発散できると踏んだギーシュと、生来キレやすいルイズはまさに一触即発といった空気であった。
 周囲の生徒も遠巻きに距離をとる。
『ルイズ、落ち着け。食堂で被害を出すわけにもいかんだろう』
「おや、どこからか声が聞こえたな。ああ、その剣が噂のインテリジェンスソードか。
 なるほど、魔法が使えないルイズには剣のほうが相応しいかもしれないな。
 こんな所で油を売るより、外で剣の修行でも始めたほうが良いのではないかね?」
 ギーシュは気分よく芝居がかったそぶりで胸に飾った薔薇を手に取り余裕綽々、対するルイズは薔薇以上に顔が真っ赤になって、もはや暴発寸前だった。
「余計なこと言わないでって言ったでしょうディムロス!」
『怒るのは判るが、まずは横でおびえているシエスタを逃がしてやってからにしろ』
 見れば先ほどまでギーシュの怒りを買っていたシエスタが、間に挟まれておろおろとしている。
 ディムロスの声が聞こえないシエスタからすれば、貴族二人がよくわからない用語を交えて一触即発となれば、そりゃぁ怖かろう。


「あー……シエスタ、ここはいいから。行っていいわよ」
「す、すいませんミス・ヴァリエール」
「何と、ゼロのルイズは平民とお友達のようだ。 魔法が使えないどころか剣など持って、平民とも仲良しの貴族……ゼロのルイズは寛大さには恐れ入るね。
 魔法が使えない同士親近感があるのかな? それとも貴族の矜持や誇りもゼロになってしまったのか……」
 今度こそルイズはギーシュにつかみかかるつもりだった。しかしそれを静止したのは、あわてたキュルケではなかった。
『ギーシュとか言ったな』
「何だね剣の使い魔君? いくらインテリジェンスソードとはいえ、貴族に対して礼が欠けているよ。
 僕の名前はギーシュ・ド・グラモン……せめてメイジらしくミスタ・グラモンと呼んで頂きたいものだ」
『ならばギーシュ・ド・グラモン!』
 この一喝に、貴族の子弟達は静まり返った。その声には、幾多の修羅場を潜り抜けたような男の威厳があふれていたからだ。
「この僕を……貴族ギーシュ・ド・グラモンを呼び捨てにした…?」
『我はこの国の貴族について詳しくは知らんのでな。あいにく女子供をないがしろにする男に尽くす礼など持ち合わせておらん。それに、だ』
 ディムロスは、あまりの衝撃に混乱するギーシュに、一拍置いて言い放った。
『担い手を不当に侮辱されて黙っていられるほど、我は物分りの良い剣ではない。
 そちらの非礼こそ、詫びてもらおうか。無論我ではなく、我が主ルイズにな』
 ルイズは誤解していた。ディムロスというのは偉そうで、何かと物分りが良さが気に障る奴だが、
何だかんだで従順な使い魔ではないかと思い始めていたのだ。
 物言いの理屈はいつも全うであったし、使い魔としての待遇を嫌という訳でもない。
 世間知らずな所はあるが、それはこれから教え込んでいけば良いと思っていたのだ。
 しかしそれはディムロスの一面でしかない。

 ディムロス・ティンバー中将は地上軍にその人ありと謡われた、稀代の熱血突撃野郎である。不当な侮辱や差別を、目の前にいる泣きそうな少女を見過ごせるほど冷徹な男では断じて無い。

 ディムロスの方も、少々自己認識が甘いことを自覚していた。ソーディアンになった己は、冷静な人格になったのだと誤解していたのだ。
 しかしそれは単に、横に同じくらい熱血バカが居たとか、そもそもマスター以外にはろくに声が聞こえないとか、そういう外的要因によって抑えられていたに過ぎない。例えソーディアンに人格が投射されたとしても、ディムロスという個人が何か変化するわけではない。
(それでも1000年で成長したものだと思っていたんだがな)
 単にその仕事はスタンが持っていっていただけで、アレがいない以上今度は自分の仕事になったというだけだった。



 さて、今度我慢ならないのは、ここまで言われたギーシュである。
「ソーディアンだかなんだか知らないが……ルイズ、君の使い魔は本当に礼というものを知らないようだ」
『持ち合わせていないといったはずだ』
「ならばいいだろう、このギーシュ・ド・グラモン……青銅のギーシュが、礼のなっていない使い魔に礼を叩き込んで差し上げよう。
 ルイズ、食事を終えたらその使い魔を持ってヴェストリ広場まで来たまえ」
「ちょっとギーシュ、貴族同士の決闘は禁止なのよ!」
 流石に止めに入ったのは横に居たキュルケだったが、ギーシュは問題ないと背を向けた。
「何、決闘という程でもない。その大言壮語を吐いた使い魔君がどの程度のものか、ちょっとしたゲームで確かめるだけさ。
 『メイジの実力を見るにはまず使い魔を見よ』……というからね」
 薔薇を一輪手にとって歩くギーシュが食堂を出た所で、ルイズはディムロスに言った。
「……余計な事言わないで、って言ったはずよね」
『必要な事だと思ったから言ったまでだ。さて、今のうちに作戦会議と行くぞルイズ』
「本気? ギーシュはアレでもドットクラスの中では腕は良いのよ」
 二人の様子にキュルケが声をかけるが、ディムロスは動じない。
『ソーディアンの力を使いこなせれば勝算はあろう』
「……ねぇディムロス、私」
 勝てるの? と小さく呟いたルイズに、ディムロスは言う。
『勝てるかどうかは、やってみなければ判らない。もしかしたら負けるかもしれん。だがなルイズ、やってみなければ、絶対に勝利は得られん』
 ああ、やってみなけりゃ判らないじゃないか、と我に口うるさく言っていたのは、あのボサボサ頭の熱血バカだったな、と思い、内心笑った。
 迷うルイズは、ディムロスに肩をたたかれた気がした。
『ではルイズよ、今からソーディアンの使い方を教える』



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