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Bullet Servants-02



――変なエルフ。
いや、そもそもエルフという種族自体、わたし達人間から見ればおかしなところだらけなのかもしれないけど。
それでもやっぱり、こいつ、どこか変。


「……ええと、それでつまり。
 このトリステインという国では貴族は皆魔法使いで、この魔法学院はその子弟らの教育のために存在する、と……?」
「ええ、そうよ……にしてもあんた、妙な事言ってた割にはずいぶんと飲み込みが早いわね。
 で、何か他に聞きたいことはある?」
「はい、正直聞きたいことは山ほどありまして。申し訳ないとは思うのですが――」


……それが、わたしがこの眼鏡のハーフエルフに抱いた第一印象だった。

初めはびっくりし、混乱した。
次いで、発想を転換させてみて、小躍りした。
なにせ失敗し続けてきたサモン・サーヴァントがようやく成功したと思ったら、その相手はハルケギニアでも
ドラゴンと並び最も恐れられる種族、エルフだったのだ。
……ハーフだって知ったのは、部屋につれて帰ってからだったけど。

正直、いちおうトライアングルメイジの先生が近くに居たとはいえ……怖かった。
なにせ相手は仮にもエルフである。
召喚され、無理やり契約されたことに腹を立て、こちらに凶悪な先住魔法で襲い掛かってくるかもしれない――


『……失礼ですが、ここは何処で、貴女はどなたなのか。
 そして私が今置かれている状況について御説明願えれば、大変助かるのですが』
『……はぁ?』

……しかし、どうやらその危惧は杞憂に過ぎなかったらしい。
よくよく見れば噂に聞くような邪悪さとか凶暴さとかはまるきり感じなかった……とは思う、多分。
何より――

『ガリア……ゲルマニアに、トリステイン? 
 それに、ロバ……アルカリ……なんでしたっけ?』
『ロバ・アル・カリイエよ。しっかしもう頭痛いわ……結局どこなのよ、此処』
『……むしろ貴女の頭がどこなんですか、ルダ』
『……あんた、一体誰と喋ってるのよ?』

変な女声出して一人で悩んでみたり、

『いや、あの、その…………冗談、ですよね?』

ずれたメガネ直しながら、テンパった様子で苦笑いしてみたり。
彼の言動だけ考えてみても、丁寧口調とはいえ、ヘンに垢抜けなかったり。
だいいち、フォルテンマイヤーってどこの酔狂な貴族よ。エルフに執事やらせるなんて非常識な。


とにかくこの男、物言いは世相ズレしまくってるのに――――――超然と言うか、浮世離れした感じがしないのである。
エルフだから私達人間の常識知らず――の割りに、やけに人間くさいリアクション多いし。
ぶっちゃけた話エルフらしくないというか、なんというか、その――世間知らずのおのぼりさん?

ちょっととっぽそうだけど、まあエルフはエルフ。
理性的というか従順そうではあったし、ここ、これはしめたと思ったのよ、正直。
だからこそ恐怖心と、ちょっとの不安をねじ伏せて、強引にご主人様宣言してやったのだけど――――。




「はぁ…………。
 で、つまりあんたが来たのはロバ・アル・カリイエじゃなくって、アーク・メリアっていう国で。
 その国はこのハルケギニアの外にある、ゴルトロックっていう所にあって。
 そのうえそこじゃあ、人間だけじゃなくって亜人――ゴブリン鬼やオーク鬼とか、果てはエルフまで、一緒に生活してるですって?」

胡散臭げな視線・パート2。
まだギクシャクしたところはあるものの、呆れたような口調でこちらに語りかける目の前の少女――ルイズ・ヴァリエール。
というか、なぜゴブリンやオークにわざわざ『鬼』をつけるのだろう?

「……とても信じられないわね」

……それ、こっちの台詞です。

「まあ、眉唾ものだけど……あんたが何言ってるかはだいたい理解したわ。
 色々ややこしい事情はあったようだけど、ハーフとはいえ、エルフも召喚できたんだし。
 とりあえず、あんたはきょうからわたしの使い魔として――」
「お断りします」

少女の言葉を遮り、きっぱりと拒絶する。

「ちょ、ちょっと! どういうことよ!?」
「どういうことも何も……先刻説明したとおり、私には既に仕える主がいます。
 その我が主から遠く離れたこの地で――我が本来の主を放り出して、貴女の使い魔を始めるわけには参りません。
 申し訳ありませんが――私を元の世界に、帰していただけませんか?」

スーツの前を開け、ルダの収まったホルスターを顕わにする。
銃把にこそ手はかけないものの、言外に圧力を含ませるための行為である。

「………で、でももう遅いわよ!?
 わたし、もう、あなたと契約しちゃったんだから! それに――」
「それに?」
「帰す方法なんて、その……ないもの」


……いま、この少女はなんと言った。


「……聞き違い、でしょうか?
 私の耳には今、『帰す方法がない』と聞こえた気がしたのですが」

実際には、『聞き違いだと信じたい』というのが本音だった。
私が鋭敏な聴覚を持つハーフエルフでなければ、そう信じ込んで耳をふさぎたいところである。
我知らず声のトーンが下がり、右手が腰のホルスターに伸びていた。

「…………う、うう、う、嘘なんか言ってないわよ!?
 だって、『サモン・サーヴァント』は、呼び出すだけの魔法だもの。送り返す魔法なんてないのよ!」
「ない!? そんな馬鹿な……!」
「……だって、使い魔っていう存在は、契約したら死ぬまでご主人様に仕え続けるものじゃない。
 そもそも送り帰す必要なんて、なかったんだもの!」

その整った顔を引きつらせ、私の問いに絶望的な答えを返す少女。
……訊けば訊くほど、崖っぷちに追い込まれていくような感覚。
藁にも縋るような思いで、愛銃をホルスターから引き抜き、尋ねてみる。

「……ルダ?」
「少なくとも、この娘――嘘は言ってない、と思うわ。悪戯レベルの悪意すら感じられないし」
「……そうですか」
「て、鉄砲……!?
 そ、そそ、それになん、か、鉄砲が、女の声が、え? 喋って、え……!?」

冷静すぎるルダの言葉が、更なる追い討ちをかける。
目の前でなにやらあたふた慌てる少女に、私は問答を再会する。

「そ、それでも……魔法の術式を読み解けば、せめて解除式や、逆転式ぐらいは作れるでしょう!? それなら――」
「……ギャクテンシキ?
 なんなのよ、それ? エルフの先住魔法?」
「せ、先住……? い、いや、それよりも!
 貴女、使い魔を呼ぶことを許されるレベルの魔法使いなのですよね!?
 でしたら、発動している魔法の構造解析ぐらいは――」
「……なによ!? さっきっからシキだのコウゾウ解析だの――わけわかんないわ! エルフの常識でしゃべらないでよ!
 それになによレベルって! どうせわたしはゼロのルイズよ!」

……駄目だ、まるで話がかみ合わない。
やはり魔法の体系や、発展の仕方が違うせいか?
そのうえ詳細は分からないが地雷を踏んづけたらしく、彼女は少し腹を立てているようだ。
これは流石に――あまり会話を続けるのによろしくないだろう。
仕方あるまいと、私から折れることにした。

一歩足を踏み出す。
少女から、ひ、と小さな呼吸が漏れる。……怯えさせてしまったらしい。
少々銃をちらつかせ過ぎたか、と反省しつつ――

「……申し訳ありません、少々取り乱しました」

腰を九十度折り、頭を下げた。

「ひ、ぁわっ………って、え?!
 ……わわ、わ、分かればいいのよ、わかれば」
「ありがとうございます。
 落ち着いていただけたところで――お話の続きをさせて頂いても、よろしいでしょうか?」
「え、えぇと……ど、どうぞ」

何故だかは分からないが、慌てていた状態から一転して平静を取り戻し、頷く少女。


「では話を戻しますが――貴女が私を呼び出した『サモン・サーヴァント』の逆の魔法は存在しない、ということでしたね。
 なら、もう一度その魔法を使えば――」
「……無理よ。新しい使い魔も出てこないし、ゲートだって開かない。
 『コントラクト・サーヴァント』で契約した使い魔が生きている間は、何度唱えたって発動さえしないわ」
「『ゲート』も、ですか……やれやれ。
 それに、このルーンは……」

左の手袋をとり、その手の甲に刻まれた魔法文字を示してみせる。

「さっきも簡単に説明はしたけど――それが、契約した使い魔に刻まれる、使い魔の証のルーンよ。
これが刻まれた者は、その主の目となり耳となる能力を与えられるの」
「……ええ、話には聞いています」

ヴァレリア様とその使い魔のフクロウで、その辺りのことはある程度知っている。
戯れに窓の外、200m(モール――ハルケギニアではメイル、というらしい――)先の暗がりにある、植え込みに目をやる。
人間なら、魔法付与や道具抜きでは到底視認できない距離だが……ハーフエルフの私にはかろうじて見える距離。
さて――

「……それで、いかがでしょう。私の見ているものが見えたりは――」
「してないわ」
「……左様で」

「それから、使い魔は秘薬の材料や、触媒になるものを見つけてきたりするんだけど。
 あなた、そういうのは?」
「申し訳ありません。ある程度の薬草なら、知識はなくもないのですが。
 ただ流石にマジックアイテムやその材料となると、いつもはマジックショップで既製品を――」
「あんたほんとにエルフ!?」

……いや、ハーフエルフですってば。
というより今時のゴルトロックでは、エルフも森や秘境ではなく住宅地暮らしが当たり前ではあるのですが。

「……じゃあ、もういいわ。
 最後に、使い魔のやるべき仕事といえば――――そうね、やっぱり主を守る事よ!
 その点あんたの強さとかは――期待してもいいのよね? ハーフとはいえエルフなんだから」
「は、はい……?」
「いや、ほら、あんた半分はエルフじゃない。
 純血のエルフとまでは行かなくても、何かすっごい先住魔法の一つや二つ――」
「……申し訳ありません、一つよろしいですか?」
「あによ」
「私は、魔法使いではないのですが」



「な………………なによそれぇえええええええっ!?」



夜の魔法学院寮に、少女の怒鳴り声が木霊した。



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