あの作品のキャラがルイズに召喚されました @ ウィキ

ゼロのイチコ07


右へ左へと曲がりくねってる森を潜り抜けると聞いたとおりのきこり小屋が見つかった。
外から見るに普通のきこり小屋だ。一体何があって教師たちはあんな怪我を負っただろう。
「イチコ、様子を見てきてくれる?」
「はい、頑張ります」
気合を入れ、地面を潜りゆっくりと小屋へと近づいていく。
顔を半分だけ出して動くその姿はちょっと不気味だった。
しかし、幽霊であると言うのはこういうところで便利だった。
絶対死なない、というより既に死んでるから、入ったとたんに罠が発動しても何も問題は無い。
あの宝物庫の魔法すらすり抜けたのだから、よほどの事がなければ大丈夫だろう。
小屋の下へと潜ると、そのままスルスルと地下から小屋の中へと侵入していく。
そうして一分もしない内に今度は扉から抜け出てきた。
「ご主人様、誰も居ませんよ~!」
隠れていた草むらから顔を出す。近くにロングビルが居るかもしれないんだから叫ばないで欲しい。

小屋の中はこざっぱりした物で、机と木材が少々、あとは斧などの道具があるだけだった。
暖炉が無いところを見ると冬には誰も来なくなるのかもしれない。
机の上には大きな筒状のモノが置いてあった。
筒の端に突起物が付いている。作りも細かいのだけれどそれがどんな意味を持つかは分からない。
なんだろう、これは。杖なんだろうか?
剣でも鎧でも装飾品にも見えなかった。
確かあの宝物庫に保管されているものは魔法に関するものばかり。しかし目の前の物体はそのどれにも当てはまらなかった。
「う、重いわね」
持ってみると相当の重量があった。
どうやら全て鉄で出来ているようだ。
しかしロングビルは見当たらない。これが宝なのだろうか?
それにしては無用心すぎる。しかしこれ以外でソレらしいものは小屋の中には無かった。
「これ、ロケットランチャーみたいですね?」
とイチコが筒を見て言う。
「イチコ、これが何か分かるの?」
「ぇえっと……いえ。やっぱり勘違いだと思いま――」
その時、轟音と共に床が揺れた。窓から見える空には一斉に鳥たちが羽ばたいて行く。
その空を覆い隠すように巨大な岩が現れる。窓から太陽が見えなくなり、小屋の中は薄暗くなった。
そこで自分たちが危ない状況に置かれてる事に気がつき小屋の外へと飛び出た。

外には塔と見間違えるほど巨大なゴーレムが歩いていた。
まるで子供がそこら中の岩や泥を固めて作った人形のようだ。しかしその大きさはゴーレムとしては最大級だと言える。
歩くごとに地面が揺れ、木がザワザワと音を立てる。
それを見て、思った。私は今日死ぬかもしれないと。
大貴族の娘として生まれ、魔法は使えないまでも誇りだけは失わないようにと生きてきたけれど。
まさか、こんな名誉も何も無いところで死に直面するとは考えていなかった。
それほど予想外だった、これほどのゴーレムを操れる術者が盗賊なんてしてるわけが無い。そんな思い込みもあったかもしれない。
「ご、ごごご主人様?! に、逃げないと!」
とイチコの声で我に返る。そうだ、戦わないと。



宝物をその場に置くと、杖を取り出し呪文を唱える。
炎を打ち出したつもりだったが、いつもどおり失敗。ゴーレムの肌に小さな穴を空けただけだ。
しかも、その穴はすぐに塞がってしまう。
二、三度呪文をぶつけるが結果は同じ。私の呪文では歯が立たない。
「こんなの無理ですよ! 逃げないと」
イチコが必死に叫ぶ。
そうだ、宝は取り戻したのだから逃げると言う手もある。
だけど盗賊相手に、背を向けて逃げるのか?
「逃げない!」
杖を振り、足を狙う。だけどバランスを崩すことすら出来ない。
ゴーレムはゆっくりと、まるで嘲るようにゆっくりと歩いてくる。
「ぇえ?! でも逃げないと、潰されちゃいますよ? あんな大きな足に踏まれたら車道で車に引かれたカエルさんみたいになっちゃいますよ?!」
また意味が分からない事を言っている。
でも、私は貴族。
「たかが盗賊に背は向けられないわ。イチコ、あんたは逃げなさい」
足に攻撃を集中させる。でも呪文が当たり、次の呪文の詠唱が終わる頃には穴が完全に塞がっている。
これでは埒があかない。
「ダメです、ご主人様が死んじゃいます」
「死なないわよ、あのゴレームに勝つつもりなんだから!」
コモンマジックに切り替える。
もう、このさい失敗を気にしててもしょうがない。どうせ失敗するなら詠唱が短い魔法を連発する。
だが、失敗魔法も込めた魔力に比例していたのか。威力が落ちるため一撃が弱くなる。結果、ゴーレムの表面が焦げるだけだ
失敗魔法の考察なんてした事が無かった。少しだけ後悔する。
そうしている間にもゴーレムとの距離は縮まり。
もう、手を伸ばさば掴まれる距離まで来ていた。
「ご主人さま!」
ゴーレムの手が振り上げられる。
あぁ、これは潰される。そんな考えが頭をよぎった。
その時横から勢いよく飛んできたイチコに突き飛ばされた。
いきなりの事で受身がとれず、地面を派手に転がった。
つづいて轟音が鳴り響き、破壊された小屋の木片が飛んでくる。
あわてて手で顔を庇うが飛んできた木片が右手にあたった。
激痛が走る、やばい、骨が折れたかもしれない。

右手も気になるが、左手はまだ無事。のんびり横になってて良い状況じゃない。
左手で体を支えて起き上がる。右手から走る激痛を噛み殺す。体からじっとりと汗が出た。
「イチコ、無事?!」
ギーシュのゴーレムもすり抜けたのだから大丈夫だとは思うのだけど。
改めてあたりを見渡すと当然のようにゴーレムは健在。ゴーレムが歩いた森の木はなぎ倒され、小屋はコナゴナになっていた。宝は……よかった、無事だ。
イチコは広場の中央に体半分埋まって居た。キョロキョロと辺りを見回してこちらの存在に気づく。
「ご主人さま~、無事ですか~?」
「無事よ……あんたは?」
痛みを殺してなんでも無い様に振舞った。イチコに知れると余計に混乱をきたすことは目に見えている。
「私は幽霊ですから大丈夫です。それよりご主人さま。やっぱり逃げましょうよ」
「しつこいわね、逃げるわけにはいかないのよ」
「どうしてですか、死んだらどうにもならないんですよ?!」
「死んでも名誉は守れるわ!」
と言ったら、イチコの表情が張り付いたように動かなくなった。
なんでいまさら驚くのよ。
アンタは貴族じゃなかったの?



ゴーレムがゆっくりとこちらへ向きなおす。
どうにも動きが鈍い。あれだけの大きさを動かせるほど術者が練達してないせいだろうか?
その時、ゴーレムの足元にある宝に目がいく。さきほど見つけた鉄製の宝物である。
あの宝は学院の宝物庫にあった品。だとするならば何らかの魔法道具である可能性は高い。
上手くアレを拾って使えば、まだなんとかなるかもしれない。
そう考えると、まずは身を軽くするために背中に背負っていたインテリジェンスソードをその場に置いた。
「おいおい、お嬢ちゃん何するんだ? 右腕骨折してるのにまだやろうってか?」
このお喋り剣、また余計な事を言う。
「ぇえ? 骨折してるんですか?」
「いいから、アンタは下がってなさい!」
また口論になりそうだったので、右腕を庇いながらも走り出す。
ゴーレムは相変わらずゆったりと動く、あれなら避けれないことも無い。
再びゴーレムの拳が振り下ろされる。
だがその拳は見当違いの場所へと落とされた。やはり、術者、ミス・ロングビルはこのゴーレムを完全に操りきっては居ないようである。
揺れた地面にバランスを崩されながらも私は宝の元へと走る。

宝は相当の重量があり、左腕だけで持ち上げるのは難しかったがなんとかなった。
「お願い!」
念を込めてそれを振る。
なんでも良い、なにかこの事態を好転させる結果が出てくれれば。
もうゴーレムはいつでも私を踏みつぶせる位置にいる。これで何も起こらなければ本当にチェックメイトだ。
だけど、無常にも何も起こらない。いつもの失敗魔法のように爆発すらしない。
「なんでよ?!」
杖じゃなかった? いや、何らかの魔法アイテムだとしても魔力を通せば何らかの反応はあるはず。
だったら、何故?
私がゼロだから?

何度振っても何も起こらない。ふと上を見上げるとゴーレムがじっとこちらを見ていた。まるで何かを待っているように。
それに違和感を覚えて私は手を止める。
それが合図だったとばかりにゴーレムは再び動きはじめた。
すぐさま潰されると思ったが、ゴーレムの手に掴み取られる。
「ああっ!!」
右腕が圧迫されて痛みが走った。
痛みで思考が一瞬中断されたが、すぐに元に戻る。ゴーレムはこのまま私を潰す気は無いようだ。
考えてみれば、私はまだ宝を抱えている。宝ごと握りつぶすわけにもいかないのだろう。
それでも、私の命がもうほとんど残ってないことは分かった。
こうなってしまえばロングビルが直接手を下すのもいいし、片手で私の頭を潰してもいい。
ともかく、私は死んだ。

これで良かったのだろうか?
良かったかどうかと言えば全然良くない。
魔法をちゃんと使えるようになりたかったし。
女王陛下のお役に立ちたかった。
家族にももう一度会いたかった。
キュルケをまだぎゃふんと言わせてない。
編み物ももうちょっと上手くなりたかった。

それでも、私は最良の選択はしたと思う。
そうするしか無かった。ここで背を向けて逃げる選択をしたら私は私でなくなってしまう。
使い魔の責任を取らなければ、私は一生魔法使いとしてダメになってしまっていると思う。
だから、ベストじゃないけど一番ベターな道だったと思う。

そう言えば、イチコには悪いことをした。
呼び出してまだ間もないのに、死ぬなんて無責任よね……



「ご主人様!」
声がしたほうを見る。
イチコが剣を引きずって走ってきているのが見えた。
まだ居たんだ。
あんなに逃げたいと言っていたのに、なんで向かってきてるのよ。
誰よりも争いごとが嫌いで、すぐ泣く癖に。
私よりも力が無くて、剣を持ち上げるのも一苦労のはずなのに。
下がってろって言ったのに。
なんで、そう泣きそうな顔で走ってるのよ。
痛みで頭が朦朧として、「逃げろ」と言う事もできない自分が腹立たしい。

「ご主人さまぁ!!」
剣が地面に引っかかるたびによろけ、顔は涙で前が見えてるか怪しかった。
「そうだ、相棒。それで良い!」
それでも両手で剣を握って離さない。
「『使い手』の力は心だ。もっと心を奮わせろ!」
左手のルーンが白く輝きはじめる。
剣先が浮き上がる。
ゴーレムはそれを見て私を掴んでいない方の手を振り上げた。
イチコには通じなくても、インテリジェンスソードは破壊可能だ。
ゴーレムは先ほどとは段違いのスピードで拳を振り下ろした。
イチコの体が浮き上がる、剣と共に。

魔法使いでも無い、剣士が空を飛んでいる。
剣を振り上げ、細身の少女が空を翔る。
地上からはるか高い、ゴーレムよりも頭上まで舞い上がった。
それはまるで、他愛も無い子供の頃に読んだ絵本の一幕のように感じられた。
「ご主人様を、離して下さい!」
振り下ろした剣は分厚い岩を切断し、私を握っていたゴーレムの腕を切り落とした。
握られていた力が緩められたことと、落下の浮遊感で

私は――意識を手放した。



目を覚ますと、そこは自室だった。
右手は包帯でぐるぐるに巻かれている。
一瞬何が起こったか分からず、ぼーっとベットの天蓋を見上げていた。
「……あれ?」
どうして、こんなところに。
生きてる?
起き上がると腕の痛みが走った。驚いて一瞬目をつぶる。だけどそのおかげで完全に目が覚めた。
そう言えばイチコは?
部屋を見回すとすぐに見つかった。相変わらず部屋の中央で浮いていたからである。
すぅすぅ、と小さな寝息を立てて眠っている。
窓の外を見ると綺麗な満月が空に上がっていた。
「ぉう、嬢ちゃん。起きたか」
部屋の壁にインテリジェンスソードが立てかけられていた。
「私、どうなったの?」
「とりあえず、全員無事だ。宝も取り返せた」
「そう……ロングビルは?」
「相棒が倒した。いまごろは王宮の地価牢だろうよ」
イチコが?
そう言われて思い出す。イチコがゴーレムの腕を一刀両断したことを。
「あれって、アナタの仕業?」
「どの仕業か大体予想がつくが、オレは剣だぜ。ただの道具だ」
つまり、正真正銘あれはイチコの力だったというのだろうか。
「一体、あの後何があったの? それになんでいきなりイチコが強く……」
と聞こうとしたのだけれど、再び睡魔が襲ってきた。
すごく、眠い。
「ま、それに関しては明日教えてやる。とりあえず今日は寝とけ」
「何よ、えらっそうね……」
そう言いながらベッドに横になった。


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