あの作品のキャラがルイズに召喚されました @ ウィキ

ワイルドの使い魔-5

「僕の、勝ち。それとも・・・続ける?」

ルイズは確かにその姿を目の当たりにした。
彼女の使い魔が不思議な幻影を呼び出し、青銅のギーシュを瞬く間に敗北させた瞬間を。
ゼロと呼ばれた自分が呼び出した、何の役にも立たない平民だと思っていた使い魔。
それが、メイジを歯牙にもかけない力を持つ事を。

「・・・キタロー、アンタ一体・・・」

呼びかける声にも力が無い。
確かに、彼女の使い魔は言っていた通りに負けなかった。だけど、この力は何?
浮かび上がる幻影、金属のゴーレムを容易く吹き飛ばす衝撃、特定の物品のみを崩壊させる謎の旋律。
全てが、メイジの常識からかけ離れていた。
威力だけ見れば、スクウェアクラスのメイジの魔法の域と言えるかもしれない。
だけれども、杖を振ることも無くこんな魔法を使うなんて在りえない。
噂で聞くエルフ達の魔法でさえも難しと思う。
なにより、彼女の使い魔の少年が呼び出した幻影・・・あれは何なのか?
ギーシュが負けを認めてようやく姿を消したあの異質な存在は。
浮かんでは消える自問自答に頭が痛くなりそうだ。

とはいえ、彼女の心に浮かんだのは驚愕や疑問だけでは無い。

(これで、もう『ゼロ』なんて言わせないわよ!)

そう、彼女の呼び出した使い魔は、トリステイン魔法学園始まって以来の強力な力を持った使い魔なのかもしれないのだ。
これで彼女の事を無能扱いする事など出来ないはず。
何より、使い魔があれくらい力をもつなら、主の自分はどれ位の力が眠っているのか。
考えるだけで胸が躍る。

それは、ゼロと呼ばれ続けた少女が、始めて自分に自信を持てた瞬間だった。



「僕の、勝ち。それとも・・・続ける?」

シエスタは確かにその姿を見た。
彼女を救う為に(彼女にしてみれば)絶望的な戦いに赴いて・・・勝利を収めたその背中を。
揺らめく幻影を従えて、無数のゴーレム達を歯牙にもかけずにあしらったその強さを。
そして、相手に只の一筋も傷を負わせなかったその優しさを。

「キタロー君・・・凄い・・・」

始め見たときは、不思議な子だと思った。
使い魔になった平民の噂を聞いていたし、、立ち振る舞いが彼女の知る誰とも違っていたから。
次に、どこか手のかかる弟のような印象を持った。
無表情に見えて、その実感情豊か。だからかもしれない。少し背伸びをして接してしまう。
その横顔がとてもミステリアスで整っている事にも、暫くして気が付いた。そして、あの時。
メイジの二股を暴露するきっかけになってしまい、その八つ当たりをされたあの時。
目の前に現れた背中。勝ち目の無い相手にも一歩も引かなかった心。
全てが、一本の矢になって、彼女の心を射抜いていた。
だから怖かったけれども、この決闘の場に足を運んだ。
背伸びをしてお姉さんっぽく振舞ったって前もあるし、何より自分の為に戦ってくれる少年の姿を見ずに逃げるなんて出来なかったから。
例えあの少年が、キタロー君が負けたとしても・・・直ぐに手当てをしてあげれば命を救えるかもしれないから。
だけどあのキタロー君は、只の一本の木の棒でゴーレム達をあしらったばかりか、不思議な力で勝利さえ収めて見せた。
震えが、止まらない。
怖いんじゃない。興奮してる。あの人の姿をみるだけで頬が熱くなる。キタロー君の事を考えるだけで・・・

それはメイド少女の心に恋以上の何かが芽生えた瞬間だった。

ちなみに、同様の理由で某赤毛のお嬢さんも

「微熱の二つ名は伊達じゃないわよっ!! いいえ、私のこの気持ちは恋の微熱じゃないわ!愛の炎よ!!」

燃え上がっていたりしたのは言うまでも無い。

一方、水色の髪の少女は無表情の仮面の下で戦慄していた。
平民と思われた使い魔がメイジに勝利したからではない。
そんなものは、彼が一本の木の棒を振るった時から確信できていた。
もし、彼の手にしていたのが木の棒ではなく普通の剣であったとしたら、後の不思議な幻影を呼び出すまでも無く勝負は決まっていただろう。
一瞬の気の緩みで棒は断ち切られたけれども、もしそのまま戦っていたとしても・・・彼は大した傷もなく勝利を収めていたと思う。
そして後に現れた幻影と、魔法のような音の攻撃。
あれも正体はわからないが、興味深くは在っても戦慄にまでは及ばなかった。

では、何が彼女を・・・シュバリエの称号を持つタバサを戦慄させたのか?

「・・・・・・・・・」

今彼を見ても背筋に冷たいものが流れる。
この感覚は、今まで無数の任務で感じていたものと同じ。
それは『死』そのものの気配。
忍び寄る絶対的な運命・・・その概念そのものが、少年の姿をとって息をしているように見えるのだ。
おそらく、それに気付けるのは多くないだろう。
幾つもの死線をくぐってきたタバサだからこそ気付けるような・・・しかし、気付いたものにとって、あの少年は異形そのものだ。
なまじ整った顔立ちが、余計に不安を掻き立てる。

「・・・・・・・・・」

広場の片隅で、恋の炎に燃え上がる友人を片目に・・・タバサは瞬きも出来ずに死の気配を纏う少年を見つめていた。

水色の髪の少女が気付いた死の気配。それに気付いた者達がもう一組存在した。



「始祖の使い魔のルーンだけでも十分驚愕ものだというのに、その持ち主があのような力を持つとはのう・・・」
「・・・学長・・・彼は何者でしょうか?あの力もそうですが、私には彼が死神そのものに見えます」

学長室で遠見の水晶球をのぞく二人の教師。
学長のオスマンと教師コルベール・・・共に、死と隣り合わせの過去を持つが故に、使い魔の少年が放つ死の香りを鋭敏に感じ取っていた。

「もっと早くに報告するべきでした・・・あのガンダールヴのルーンもそうですが・・・」

コルベールは、流れる冷たい汗を拭いもせずに水晶球のなかの少年から目が離せない。
考えてみれば、彼が現れた時から違和感があった。
爆煙の中から姿を現した少年に、あの時近づけなかったのは何故だ?
左手に浮かんだルーンを確かめもせずに、その場から逃げるように立ち去ってしまったのは何故だ?
あの後の授業でも、使い魔の少年を無意識に避け、あまつさえルーンの確認を今の今まで・・・決闘の様子を遠見の水晶で見るまで出来なかったのは何故だ?

「・・・私は、過去の過ちが彼という形を成して目の前に現れたように思えてなりません。かつて私が振りまいた死が、彼となったかのように・・・」

そう、コルベールは逃げていた。かつて炎蛇の二つ名を持っていた頃の自分から。
使い魔の少年が纏う死の気配は、それほどまでに濃密だったのだ。

「濃はそこまで迷信深くは考えられんの。それよりも、じゃ・・・」

オスマンは一端言葉を切り、コルベールを見据える。無言の視線が、普段の耄碌した姿とは別人の、圧倒的圧力を放っている。

「あの死の気配、見極めねばなるまいて」
「・・・その役目はやはり・・・?」
「お主しか居るまい?見極めるにも、あの気配が判らぬ者では意味が無い」

水晶球に目を戻せば、勝利を収めたというのに主から涙目で食って掛かられる件の使い魔の姿が映っている。
死の気配さえなければ、特異な力を持つとしても・・・ふつうの子供に見えるし、そのように接する事も出来るはずだか・・・

「・・・場合によっては、ミス・ヴァリエールに特例を認めよう。代わりの使い魔の召喚を、な」
「・・・判りました」

その意味をかみ締め、学長室を後にするコルベール。
残ったオスマンは、飽く事無く水晶球を、キタローの姿を見つめ続けた。

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