あの作品のキャラがルイズに召喚されました @ ウィキ

アーカードはそこにいる-7

「残念ながら、皆目見当がつきません。目ぼしい資料は粗方当たってみたのですが……」
「……まあ、致し方あるまい。」

何しろ死体を呼び出すなどというのは前代未聞の出来事だ。
人よりも幾分長く生きてはきたが、そんな例は寡聞にして聞いたことが無い。
況してや、そんな使い魔に刻まれたルーンのことなどそうそう簡単に判ろう筈も無い。

「一応もう少し調査を続けてくれんか。尤も、結果が出るかどうかは甚だ心許ないがの……。」

自分はこの魔法学院の長なのだ。
職責というものがある。放って置く訳にもいくまい。
それに、前例が無いだけに矢張りその死体は気になる。
サモンサーヴァントとは、その名の通り使い魔を召喚する魔法。
にも拘らず、そこで呼び出されたのが使い魔としての体を為さない只の死体というのでは、全くもって筋が通らない。
何か有る筈なのだ。あの死体が呼び出された理由が何か。
珍しいルーンだというのであれば、その理由を探る取っ掛かりになるかと思ったのだが……。

「伝承や民話などにも範囲を広げてみましょう。手がかりくらいは見つかるかもしれません。」
「すまんの。宜し―――ムッ!?。」

不意にモートソグニルが部屋に近づいてくる存在に気付いた。

この足音。どうやら女性の様だ。
こんな時間にこの部屋を訪れる女性となると……。
間違いない。彼女だ。
ならば為すべき事は一つ。
解っているな。我が使い魔よ。

「失礼します、オールド・オスマン。」

涼やかな声とともに入室してきたのは、予想と違わぬ女性―――ミス・ロングビルその人だった。

うむ。いつ見ても良い尻だ。眼福眼福。

これまで数多くの尻を見てきたが、これほどまでのものに出会ったのは彼女が初めてだ。
服の上からでも一目で確認できるその豊かな肉付き。これ以上ないくらい完璧に描かれたその曲線。
それはさながら禁断の赤い果実の如き瑞々しさを以って、周囲の者を魅了する。
一度心を奪われたならば、最早そのめくるめく官能の世界から逃れること能わず。
これぞ至高の尻。神が気紛れに創り給うた奇跡の産物。
こんな所でこれ程までに素晴らしい尻を拝めるとは。長生きはするものだ。
そもそも、最近の若いモンは尻の良さというものをちっとも解っとらん。
口を開けば『おっぱいおっぱい』と、矢鱈とおっぱいばかりを有難がる傾向がこの学院内にも蔓延しておるが、これは甚だしく遺憾な現状だ。
ワシとて、おっぱいを軽んじる積りは無い。
今にも零れんばかりにたわわに実った2つのクックベリーパイには、男の本能的な部分を強烈に刺激するだけの破壊力がある。
ああ認めよう。おっぱいは素晴らしい。が。
良いおっぱいというものはごく一部の、それこそ神に選ばれた一部の女性のみが持ちうる特権であり、決していつでも見れるという類のものではないのだ。
無論、だからこそ尊いものだという見方も出来る。その指摘自体は否定しないが、いずれにしろ良いおっぱいの絶対数が少ないことは間違いのない事実だ。
しかして尻はどうか。
確かに、ミス・ロングビル級の尻の持主はそうザラにはいない。
だがおっぱいとは違い、どのような女性でも努力次第で理想の尻に近付くことは可能なのである。
良いおっぱいの絶対数が増えるかどうかは、大部分が運に左右される。
対して良い尻の絶対数は、美しくなりたいと思う女性がいる限り『必ず』増える。
たとえ今はそうでなくとも、一年後には超一級の尻となっている可能性を殆どの女性が持っているのである。
であれば、尻を軽視するものは自ら人生の愉しみの半分以上を放棄している人間ということが出来るのではなかろうか。
『おっぱいと尻』が人を幸せにする。双方を平等に愛することが出来た時。
人間は幸福な人生を踏破する権利人となるのだ。

「オールド・オスマン?」
「ん?おお、どどうしたのかね、こんな時間に。」

ミス・ロングビルの表情が些か曇っている。
いかんいかん。何時の間にか嗜好に――否、思考に没頭してしまったようだ。
もっと時と場合を選ばねばならんな。頭を切り替えんと。

「先程、何人かの生徒が広場の騒ぎを鎮める為に『眠りの鐘』を使わせてほしいと言って来たのですが……。」

一体何事かと思えば。随分と戯けたことを言う生徒達も居るものだ。

「その騒ぎというのは何なのかね、ミス・ロングビル?」
「………良く解らないのです。生徒達は皆一様に混乱しており、何を聞いてもまともな返答が帰ってこず、全く要領を得ないのです。」

ふむ。どうしたものか。
彼女のもとに来たのが生徒だったのならば、生徒同士のいざこざには違いあるまい。
大方色恋沙汰か何かが原因の喧嘩といった所だろう。
そんな事ならば別段珍しいことでもないし、ほうって置いても構わない。が。
『眠りの鐘』を使わせて欲しい等というのは今回が初めてだ。
それが少々気に掛かるといえば気に掛かる。
だからといって貴重なマジックアイテムを生徒達に貸し与える積りはないが。

……覗いてみるか。なら。

「まあ良いじゃろ。放っておきなさい。その内収まるじゃろうて。」
「解りました。ではその様に。」

そう言ってミス・ロングビルは学院長室を後にした。

これで邪魔者は追い払った。
ミス・ロングビルは有能だが、些か口煩いのが玉に瑕だ。
彼女の前でそうホイホイと遠見の鏡を覗き込むわけにもいかない。

「さて。君も見るかね、ミスタ・コルベール?」
「宜しいので?」
「構わんよ。ああ、モートソグニルや。もう出てきても良いぞ。」

よしよし。我が使い魔よ、よくぞ任務を果たした。
しかし、今日も白だったか。うむ……。

下着の色が白というのは別に悪くない。というか寧ろ好みだ。
下着とは人が一番最後まで身に着けているもの。服の内側に隠された大いなる秘密の扉。
其処に在るのは単なる着衣ではない。謂わば精神の投影図。
人は下着に己の最も奥深くにある心を託すのである。
なればこそそれは一点の穢れなき純白であるべきだし、彼女もまた正しい選択をしたと言える。しかし。
矢張り其処は、こう、バリエーションというか何というか。
いつもいつも白ばっかりというのは、その、なんだ。飽きる。
偶には年相応の色気を感じさせるような―――例えば黒のレースといったものを履いてみても良いのではなかろうか。
とうに婚期を逃した彼女にとって、最早武器と成り得るのはその成熟した大人の女性としての魅力しか残っていない。
ならば、もっと刺激の強いデザインの下着を身に着けて然るべきではないのか。
それだのに、全く。ミス・ロングビルにも困ったものだ。
折角良い尻を持っているというのに、肝心の本人にやる気がないのでは……ん?
否。やる気がない訳ではあるまい。あの尻をキープする為にはそれはもう大変な努力をしている筈だ。
だが、どうも結婚等への執着が見られない。となると………っ!

ま、まさか!ひょっとしてミス・ロングビルはワシに気があるのか!?

いや、然し、その、ワシと彼女では親子どころか曾祖父と曾孫でも足りるかどうか判らない程の年の差が有るし。
アッチの方も大分御無沙汰だから彼女の若さに応えられるかどうかいまいち自信がないし。
何よりワシらは上司と部下なのであってそんなふしだらな関係を結ぶ訳には。
……うん。だが、まあ彼女がどうしてもというならワシとしてもその、所謂『大人としての付き合い』をすることも、こう、何というか、吝かではないみたいな。
美しい女性がワシのことを思ってくれているというのであれば、一人の男――――否、漢として受け止めない訳にもいかないだろうし。
こうなった以上、覚悟を決めねばなるまい。かくなる上は………。

「あの、オールド・オスマン?」
「ん?おおぅ、そうじゃったそうじゃった。広場の騒ぎの確認じゃったな。うむ。」

いかんいかん。『ハルケギニアに其の人在り』と謳われたこのオールド・オスマンともあろうものが。
二度までも思考の波間に足を捕られてしまうとは。
うむ、もっと気を引き締めねばならんな。

「……………………。」

ええい、そんな憐れむ様な視線をワシに向けるでないわ。
切なくなるではないか。

「……………………………。」
「……うん。見ようか。そろそろね。うん。」


一体どれ程の騒ぎが起こっているのか。
何が生徒達の心をそこまで乱したのか。
そんな事をぼんやりと考えながら杖を振ると、即座に遠見の鏡にヴェストリの広場が映し出される。
中心に見える二つの人影と、それを囲む生徒達の群れ。
これは………決闘か。
貴族同士の決闘は固く禁じられている。
退屈を持て余した貴族のボンボン共の暇潰しにしては、確かに度が過ぎる。
流石に本気で命を懸けている訳でもないだろうが、それにしても一体誰がこんなふざけた真似を。
再度杖を振り、当事者達の顔を確認する。
一方は直ぐに判った。
ギーシュ・ド・グラモン。トリステインでも一、二を争う見栄っ張り一族、グラモン家の三男坊。
成程、いかにも派手好きな彼が好みそうなことだ。決闘の理由も概ね察しがつく。
そしてもう一方は………これは、誰だ?
生徒でもない。教員でもない。それ以前に、その格好からして明らかにこの学院の関係者ではない。
杖を持っていない以上、メイジでないのは間違いないが……………。

「!!あの男は!?」

コルベールの表情が変わる。あの男を知っているのか。

「どうしたのかね、ミスタ?」
「そんなことが………いや、でもあの顔は……然し、あの時は確かに………。」

私の問いは聞こえていないようだ。頻りにブツブツと独り言を呟いている。

「ミスタ・コルベール!!!」
「ッ!?いやっ、し、失礼しました。余りにも予想外だったのでつい………。」

予想外?あの男に付いてだということは想像できるが然し、何にそれ程驚いたのか。
彼がここまで取り乱すのも珍しい。

「ミスタ、あの男は何者なのかね?君は何を知っている?」
「アレは……あの男は…………。」

コルベールがこちらを見る。その目に宿っているのは、驚愕と困惑か。

「………あの男が、ミス・ヴァリエールが召喚した使い魔です。」

何と。アレが件の死体だというのか。ふむ。
あそこに居る所をみると、矢張り只の死体ではなかった様だ。
死んでいなかったのか。或いは休眠状態のようなものだったのか。
理由は幾つか考えられるが……………それを調べるのは難しい。
コルベールの顔にも残念そうな色が浮かんでいる。それもそうだろう。
遠見の鏡に映っているその男は、ギーシュ・ド・グラモンが操る戦乙女によって。

胴体を貫かれていたのだから。

「しかし、あの様子ではもう……。」
「うむ………。」


二人は知らない。その男が人ではないことを。
二人は知らない。その男が化物であることを。
二人は知らない。その男がまだ死んではいない―――正確には、その男は端から生者ではないことを。

二人は知らない。

夜は―――彼の時間はまだ始まったばかりだということを。










第7話 了。

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