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白き使い魔への子守唄 第2話 荒ぶる白の主

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白い仮面を着けた記憶喪失の男は、とりあえずルイズの部屋で事情を聞かされた。
使い魔を呼び出すサモン・サーヴァントの儀式で、黒い霧を呼び出し、
そこで"大きな身体の何か"と契約を、コントラクト・サーヴァントを交わしたはずなのだが、
霧が晴れてみたらそこには仮面の男がおり、胸には使い魔のルーンが刻まれていた。
それを聞いた仮面の男は、ようやく自分が使い魔であるという事を不承不承ながらも認めた。
が、ルイズは認めなかった。

   第2話 荒ぶる白の主

「なぜだ。こうして契約とやらをしてしまった以上、私は君の使い魔なのだろう?」
「違うわよ! 私が契約したのは、大きくて、鋭い眼と牙をした幻獣なの!
 メイジと使い魔は一生のパートナーで、家族も同然だっていうのに、
 何であんたみたいなみょうちくりんな平民を使い魔にしなくちゃならないのよ……」
「平民? ……素性の知れない自分が、平民だという確証はあるのか?」
「だって、マント着てないし、杖も持ってないでしょう? 貴族な訳ないじゃない」
「そうか、なら私は平民なのだろう。だが、貴族か。よく解らんな。
 貴族や平民といった格差は理解できるが、なぜマントや杖を持っていると貴族なんだ?
 足腰の悪い者なら、平民でも杖くらい使うだろう」
ルイズは呆れ返りつつも、仮面の男が記憶喪失なのだと思い出して、
面倒くさいという態度を全面に押し出しながら説明を開始した。
「貴族はみんなメイジなの。メイジは魔法を使うから、杖を持ってるのよ」
「魔法……。法術のようなものか」
「ホウジュツ? 何よそれ?」
「私のいた所ではそういうものがあるんだ。
 記憶喪失といっても、何から何まで忘れているわけではないからな」
男は仮面で顔の上半分が隠れているため表情を読みづらいが、
口は見えているため、彼が苦笑したのがルイズには解った。
「ねえ、ところでその仮面、本当に脱げないの?」
「ここに来る途中、引っ張ってみたのだが……無理なようだ」
「ちょっと貸してみなさいよ」
ルイズの白く細い指が男の仮面を掴み、遠慮ゼロで力いっぱい引っ張る。
「アダダダダダダダッ!」
悲鳴を上げる男を無視してルイズは仮面を引っ張り続けるが、仮面ははずれなかった。
「何なのよこれ?」
「それが解れば苦労はしない! 仮面の記憶は無いんだ。……はぁっ、何でこんな事に」
「それはこっちのセリフよ。まったく、平民の使い魔だなんて最悪だわ。
 とはいえ、一応私の使い魔なんだから、私の言う事を聞くのよ。いい?」
「解った解った。君の声を聞いていると、何だか知らんが逆らう気になれん」
「ふふん、なかなか従順じゃない」
「まるで娘のわがままを聞いているような――」
仮面の男が漏らした余計な一言により、ルイズの膝蹴りが男の鼻を強打した。
彼は鼻血をこぼしながらその場にうずくまり、ルイズの部屋の床を赤く染める。
微塵もいたわられる事無く仮面の男はルイズから洗濯などを命じられ、
ルイズは仮面の男の前だというのに構わず着替えをしてベッドに入った。

翌朝、目を覚ました仮面の男は室内に射し込む朝日に目を細め、
窓を大きく開けると深呼吸をする。清々しい朝の空気が肺を満たした。
「やれやれ。毛布一枚で寝るのは、さすがにつらかったな」
と、ついさっきまで寝転がっていた床を見て、男は溜め息をつく。
平民の使い魔である彼に与えられた寝床は床で、毛布が一枚与えられただけだった。
この先ずっとこんな扱いではやっていけない。
というより、使い魔なんてやりたくないというのが本音だ。
しかし自分は記憶喪失の身、行く宛てはまったく無いのだ。
それに自分の記憶に残る常識や知識は、目覚めてから目にしたもの大きく食い違っていた。
人の名前、容姿、衣類、建築物など、彼はそれを"西洋的なもの"として認識している。
西洋文化を否定するつもりは無いが、
自分にとってそれほど馴染みのあるものではない気がする。
記憶喪失になる前、自分がどこでどんな暮らしをしていたのかは解らないが、
家を思い浮かべれば木造建築が思い浮かぶ。
そう考えると自分の着ている服も、その建築物の文化とよく似合う。
だから、自分が大道芸人か何かというのは恐らく間違いで、
この西洋文化を持つトリステインから遠く離れた異文化の地より召喚された異人なのだろう。
召喚された時の学生達の反応を見ると、どうやら自分の住んでいた國と、
ここトリステイン王国には国交どころか互いの存在さえ知らない可能性が高い。
「……ん? となると、なぜ言葉が通じるんだ?」
異境なのだから、言語も違って然り。
それでも言葉が通じているのだから、何か理由があるのだろうが。
彼が思案にふけっていると、ベッドから「う~ん」といううめき声が聞こえた。
そういえば朝になったら起こすよう頼まれていたと思い出した彼は、
ベッドのかたわらに行きルイズの肩を揺さぶった。

「ルイズ。朝だ、起きるんだルイズ」
「ムニャムニャ……。……大きくて……が硬そうで……黒い……」
「……いったい何の夢を見ているんだ、この娘は」
とりあえずこれ以上夢の続きを見させては情操教育に問題があると判断し、
仮面の男はルイズの被っているシーツを剥ぎ取った。
「むっ……」
で、ルイズのネグリジェ姿。
凹凸が少ないというより無い。これなら守備範囲外だから、問題ないはずだ。うん。

「うぅっ……う? ……あんた誰?」
「早く目を覚ましてくれ、朝になったら起こすよう言ったのは君だろう」
「あぁ……そういえば、昨日呼び出して……ううん、私が呼び出したのは……」
「いいから、早く着替えて」
「着替えさせてー」
「やれやれ、仕方ないな」
本来なら「子供じゃないんだから自分で着替えろ」と言うべきなのだろうが、
ルイズの声はどこか懐かしい気がして、まるで娘のわがままのように感じてしまう。
少しでもそういう感情が湧くと、とことん甘やかしてしまうタチらしい。
それに、この声の少女の面倒を見てやるというのは、なぜか心があたたまる。

――まるで、面倒を見てやれなかったもう一人の娘に、ようやく構ってやれているような。

着替えや洗顔を済ませ身支度を整えたルイズは、仮面の男を連れて部屋を出た。
すると隣室から出てきた赤髪に褐色の肌の美女と遭遇する。
その色っぽい雰囲気に、仮面の男は思わずゴクリと生唾を飲み込み、
ルイズに足の甲を思いっきり踏みつけられた。
「アッー!」
「何見惚れてんのよ! この馬鹿ッ!」
「あ、いや、男のサガというか何というか……」
そんな二人を見て、赤髪の美女はカラカラと笑う。
「おはよう、ルイズ。本当に人間を使い魔にしちゃったのね」
「おはようキュルケ」
本当は召喚したのはこんな平民じゃなく、
鋭い双眸と牙を持つ巨躯の幻獣だと言いたかったが、
コントラクト・サーヴァントの時に場を包んでいた黒い霧のせいで目撃者ゼロだし、
この状況で何を言っても言い訳や負け犬の遠吠えにしか聞こえないだろうと、口をつぐんだ。
一方仮面の男は、二人の挨拶で目の前の美女がキュルケという名前と理解する。
そして、キュルケのかたわらにいる珍妙な生物に目が行った。
「そこの、トカゲのような生き物は何だ?」
「知らないの? サラマンダーよ」
キュルケは散々サラマンダーの自慢をして、ルイズを悔しがらせ、
仮面の男がそれなりに感心した反応を見せるのに満足するととっとと先に行ってしまう。
ルイズは地団駄を踏んで仮面の男を怒鳴りつけた後、彼を連れて食堂へと向かった。

アルヴィーズの食堂に着いたルイズは、仮面の男を床に座らせ貧しい食事を与えた。
彼が「これが貴族の平民に対する扱いか?」と訊いてきたので、
「これはメイジの使い魔に対する特別なはからいよ」と寛大な自分をアピールしてやる。
が、仮面の男にとっては貴族という存在そのものに不審を抱かせる言葉だった。
使い魔でこの待遇という事は、平民はそれ以下という事だろうか――と。
圧制に苦しむ民の姿が、一瞬だけ脳裏に浮かぶ。
自分はそういう人達を知っている。知っていて、一緒にいて、そして……そして……。
それ以上、男は何も思い出せなかった。
きっかけがあれば思い出せるかもしれないが、今は、何も。

授業の時間になって教室に入ると、そこには他の生徒とその多種多様な使い魔がいて、
それらからルイズと仮面の男は早速注目を集めた。
『ゼロのルイズ』と『平民の使い魔』という組み合わせをあざ笑っているらしい事は、
仮面の男にもすぐ解ったが、ルイズの名前の上についている『ゼロの』の意味は解らない。
「なぜ『ゼロのルイズ』と呼ばれているんだ?」
「……メイジは、二つ名を持ってるものよ」
「二つ名か。ゼロの……ゼロ……」

見てはいけない、と自覚しながらもつい、見てしまう。ルイズの胸を。
そしてしてはいけないと思いつつもしてしまう、納得を。
うむ。確かに、ゼロのルイズだ。
肘が鳩尾に入る。
「ゴフッ!」
「何を想像してんのよ! あんたは!」

そんな感じで周囲に笑いを提供しながらルイズは席に着いた。
仮面の男は当然というか、床である。
とはいえ男は特に苦には思っていなかった。
椅子に座るより床に座る方が身体が慣れているように感じるのだ。
とはいえできれば座布団の一枚くらい敷いて座りたいのが本音だが。
しばらくして赤土のシュヴルーズという、土系統の魔法を教える教師がやって来た。
今は失われた系統魔法である『虚無』を合わせて全部で五つの系統があり、
『火』『水』『土』『風』の系統があるそうだ。
(ふむ……火と水と土と風。これは四大元素と判断していいのか?
 それに、この四つ、覚えがある。法術も基本はその四つを使っていたはずだ)
ふと、頭に浮かぶ金髪と美女と銀髪の美少女。
前者は白い翼を持ち、後者は黒い翼を持つ。
彼女達が、自分の記憶にある『法術』という能力を使っていたような気がする。
もしかして文化が違うといっても源流は同じなのかもしれない。
いや、しかしそうなると『虚無』はどうなる?
『光』と『闇』もあったような気がするが『虚無』とは違うのではないか。
――と考察をしていると、赤土のシュヴルーズは土系統の素晴らしさを多いに語り、
金属の製造や加工、建築や農作物の収穫にも密接に関係していると説明した。
つまり生活基盤を魔法で支えているらしいが、
彼の記憶にある世界では鍛冶屋が製鉄し、大工が建築士、農民が田畑を耕していた。
単に法術より魔法の方が発展していて、この國では生活に関わるほど重要なだけなのか、
もしくは法術と魔法がまったく異なる能力というだけなのか。
考えれば考えるほど解らない。
記憶喪失の身で難しい事柄を考えるというのは相当の苦行だった。

シュヴルーズの授業は興味深いものだったが、
記憶喪失のせいなのかよく解らない単語も混じり、仮面の男を混乱させる。
小石を真鍮に錬金するのを見て、それは錬金ではなく原子配列を変えているのではとか、
錬金の魔法に失敗したら放射線を発生させるのではとかとんでもない心配をしたりもした。
が、土系統の基礎とされるような魔法なら安全なのだろうか?
また、トライアングルやスクウェアというクラスの話も出たが、
それはどうやら学年とかを示すのではないらしい。
メイジの実力によって数字(ランク)が上がり、スクウェアが最上位という事だろうか。
そういえば四元素、いや、四大系統というものがあるから、それと関係があるのかも。
色々と質問したい事が山積みだが、今は授業中であり、自分は生徒ではないため、
仮面の男はできる限りおとなしくしていた。
ところがおとなしくしていられない状況が発生する、錬金するようルイズが指名されたのだ。
その途端、ルイズに魔法を使わせるなだとか、訳の解らない口論が生徒間で起き、
さらにはルイズが教卓に向かうと、生徒達は机の影に隠れだす始末。
この状況でおとなしくしているのは、不安だ。
ルイズが教卓に向かったために空いた彼女の机の影に隠れつつ、
顔の上半分、仮面で隠れた部分だけ出して何が起こるのかを見守る。

はきはきとした口調でルーンを唱え、杖を振り下ろすルイズ。
小石が光り、光が広がり、それは閃光となって部屋を包んで、轟音と衝撃。
「なっ――」
教卓から放たれた爆発が迫りくるが、男は仮面を着けていたため顔が守られたものの、
当然両目の部分は穴が空いている訳で、閃光と爆風がそこに入り込む。
「目がっ! 目がぁ~っ!!」
仮面越しに両目を押さえながら、彼は机の裏で転げ回った。
そのおかげというか、彼はさらなる惨状を見ずにすむ。
教室の端まで届くほどの爆発は机を焼き、後ろの方の机は無事だったが、
教壇に一番近い机などは粉砕され、その影に隠れていた生徒に破片が突き刺さっている。
机の影に隠れていなかった使い魔達は爆風に吹き飛ばされて壁に激突して昏倒、
あるいは割れた窓から吹っ飛んで塔の外に墜落をしてしまうといった大惨事であった。
爆心地に一番近い二人、シュヴルーズは上半身を真っ黒焦げにして倒れている。
そして、もう一人、一番危ない位置にいた、ルイズ、は?

「……コホッ、コホッ。失敗したみた……い……」
無傷で、申し訳程度にすすで汚れた顔で教室内を見回し、唖然とする。
何で、教室中、こんなにボロボロになっているんだろう。
しかも、傷を負った生徒達のうめき声や、血の匂いまでするだなんて。
一年生の時、授業で何度も爆発を起こしたけど、これほどまで酷い惨状にはならなかった。
爆発の規模が、上がった?
そしてなぜ、自分は、一番爆心地に近いはずの自分は、傷ひとつ無いのだろう。

ルイズの爆発を確実に回避するため、一足早く退室して廊下に座って本を読んでいる、
青い髪の少女タバサは、予想以上の大爆発に驚き、中を覗き込んだ。
そこに広がる惨状に目を見張り、キュルケの席を見る。
彼女が隠れていた机は壊れていて、破片をどかしながら立ち上がっている最中だった。
「あ、タバサ……。他の先生、呼んできて」
そう言うとキュルケはその場に倒れ、タバサは急いで他の教師に事件を知らせにいった。

その日の授業はすべて中止となり、負傷した生徒と使い魔、
それからシュヴルーズの治療が行われた。
授業中の事故であったため、ルイズが責任を取る必要はなかったものの、
生徒達のルイズを見る目は以前より厳しいものとならざるえなかった。

仮面の男は、怪我をした生徒達の怒りの声を聞いて、ようやく理解する。
ゼロのルイズとは、魔法の成功率ゼロを示しているのだと。
どんな魔法を唱えても必ず爆発する。
例外は、自分を呼び出したらしいサモン・サーヴァントと、
コントラクト・サーヴァントのみ。これはコモンマジックという簡単な魔法らしい。
しかし成功率ゼロというからには、恐らく今までコモンマジックすら失敗していたのだろう。
さらに不可解な事があるとすれば、爆発の威力の急激な向上。
サモン・サーヴァントを失敗していた時も爆発を起こしていたらしいが、
これほどの大爆発ではなかったらしい。なぜ急に爆発の威力が増したのか?
それは誰にも解らなかった。

夕食後、ルイズの部屋で洗濯物をたたんでいた仮面の男に、ルイズが声をかける。
「……ねえ。何か、言いたい事があるんじゃないの?」
「うん? そうだな、さすがに腹が減った。
 質が悪いのは仕方ないにしても、もう少し量をもらえないだろうか」
「どうせあんたも、腹の中じゃ私の事、『ゼロ』だって馬鹿にしてるんでしょ」
不貞腐れたようにそう言う少女は、ベッドの上で枕を強く抱きしめる。
仮面の男は溜め息をついて、ルイズに向き直った。
「魔法が使えないくせに威張っている貴族、成功率ゼロの落ちこぼれ、
 無駄な努力ご苦労様……そう言われれば満足なのか?
「そんな訳……ないじゃない……!」
「君は授業を誰よりも真面目に聞いていた。成功させようと努力しているんだろう?
 ならそれでいいじゃないか」
「よくない」
小さな、本当に小さなその声は、泣いているようにも聞こえた。
「私はメイジなの、貴族なのよ。それなのに、失敗してばかりで……」
「そう悲観するな。自分は努力している人間を嘲るような真似はしない。
 それに一応、使い魔の、ええと、サモン・サーヴァントは成功――」
したのだろうか? 普通、動物や幻獣を呼び出すものらしいし、
人間の自分を呼び出したルイズはやはり失敗したともいえるが。
「失敗よ」
しかしルイズは失敗であると言い切った。
「なぜだ? 私の胸には、君の使い魔の印が刻まれているのだろう?」
「だって、あの時、召喚のゲートから出てきたのは、あんたじゃなかった」
「……何?」
「あんたみたいな平民じゃなかった!」
黒い霧の中に立っていたあの幻獣の力強さを思い出し、ルイズは苛立った。
あの時、自分の人生は拓けたはずだ。
『ゼロのルイズ』に終止符を打って、
素晴らしい使い魔と新たな生活が始まるはずだった。
なのに、なんで、平民が使い魔になって、魔法の失敗がより過激に……。
「あんたなんか、私の使い魔じゃない!」
力の限り怒鳴ったルイズはシーツをかぶり枕を抱きしめ、声を殺して泣いた。
そんなご主人様を見て、どうする事もできない仮面の男は、
空腹を抱えながら藁の上に寝転がってまぶたを閉じる。
(ゼロのルイズか……酷い二つ名だ。いったい誰がこんな二つ名をつけたのやら。
 しかし……名前か。自分の名前はいったい何なのだろう?
 もっとも、平民である自分の名前をわざわざ呼ぶ者など、ルイズを含めて誰もいない。
 名無しでも不便しないというのは、不幸せな境遇に思える……)
ルイズの泣き声が寝息に変わるのを聞き届けた後、仮面の男も眠りについた。

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