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白き使い魔への子守唄 第1話 呼び出されるもの


私にはお父様の望みをかなえる事はできない。
私にはそれだけの力が無いから。
だから私はお父様を眠らせようとした。
ひとつに戻ったお父様も眠る事を選んだ。
それでいい。
私もまた眠ろう、この子の中で。
願わくば、二度と目覚める事が無いように。
私が目覚めるという事は、お父様もまた目覚めるという事だから。

けれど。

「カミュちー?」
親友の少女が、この子に話しかける。
この子は故郷の方角の空を見上げ、呟いた。
「……おじさま?」
少女から渡された蜂の巣のカケラを、この子は地面に落としてしまう。
そして、この子の中で、私はひっそりと目を覚ました。

転移術? ううん、違う。それとはもっと異質な力の流れを感じる。
何が起きているのか、ここからじゃよく解らない。
けれど、ひとつだけ、なぜか確信できた事がある。
だから。

「……さようなら、お父様」

私はこの子の口を借りて、お別れを言った。
親友の少女も、理屈ではなく、本能的に何が起きたのかを察する。
「おと~さん……!」

それは誰の目にも留まらず、聞こえぬ場所で起こったはずの出来事。
けれどお父様に関わった人々は、親友の少女のように、それに気づく。

双子を従え、鉄扇を手に旅をする若者が空を見上げる。
「兄者……?」

戦場を渡り歩く美しき傭兵二人が空を見上げる。
「主様……」
「聖上……?」

皇の代理を務める武人が業務のかたわら、ふと窓から空を見上げる。
「……聖上」

無邪気に花畑で遊ぶ少女が空を見上げる。
「おろ~……?」

小さな村で墓参りをしていた少女が空を見上げる。
「……ハクオロ、さん?」

   第1話 呼び出されるもの

トリステイン魔法学院にて、春の使い魔召喚の儀式が行われていた。
二年生になった生徒達が、次々に自分に相応しい使い魔を召喚していく。
しかし、彼女の出番になった途端、儀式は滞りを見せた。
学院内の広場の中、多くの生徒と、教師のハゲ頭が見守る中、
彼女は一人前に出て、恥をかきながらも懸命に詠唱を繰り返し、爆発を起こしていた。
もう何度笑われたのか解らないし、もう彼女の失敗に飽きてそっぽを向いてる者もいる。
それでも、まだ嘲笑を浮かべて彼女を見ている生徒は何人かいた。
しかしその中に、嘲笑ではない表情を浮かべてルイズを見守る赤毛の美女や、
彼女のがんばりを重々理解しているハゲ頭の教師などは、
彼女の成功を半ばあきらめながら、成功するという奇跡を期待して見守っていた。

「我が名はルイズ・フランソワーズ・ル・ブラン・ド・ラ・ヴァリエール……」
この詠唱で、もう何度目だろうと彼女は杖を握りしめる。
「五つの力を司るペンタゴン!」
これを失敗すれば留年か落第か。
「我の運命に従いし」
今まで色んな魔法を唱えてきて、そのたびに成功して欲しいと強く願っていた。
けれど、今ほど強く願った事はない。
これで失敗してしまったら、もう、ここにいる事すら許されなくなってしまいかねない。
「"使い魔"を召喚せよ!」
だから、どうか使い魔を呼び出せますように。

神聖でも強力でもなくていい。
犬や猫でも構わない。
いっそネズミでもいい。学院長のオールド・オスマンの使い魔もネズミだし。
ホント、もう、何でもいいから、召喚されなさい! と、彼女は強く願った。

銀の光。
鏡のような、丸い銀の光が、彼女の前に現れる。召喚のゲートだ。
鳶色の瞳にその光を映してルイズは、純粋な驚きに目を見開いた。
感動は無かった。
強く強く願っていた事が起きたのに、それが信じられない。
信じていないから感動もできない。
それは赤毛の美女や、ハゲ頭の教師も同じだった。
赤毛の美女の異変に気づいて、その隣で本を読んでいた青髪の少女も顔を上げる。
だから真っ先に何が起きたのか理解したのは、その青髪の少女だった。
続いて、ルイズと、赤毛の美女キュルケと、ハゲ教師コルベールも理解する。

「成功、した……」
と、口にした瞬間、ルイズの胸に感動が湧き上がった。
キュルケも、コルベールも同様だった。
異変に気づいた生徒達は、感動ではなく、ただ驚くだけ。

小さな胸を震わせながら、ルイズは杖を握りしめて真っ直ぐにゲートを見つめる。
召喚の、サモン・サーヴァントのゲート。
後は、あそこから出てくる自分の使い魔をコントラクト・サーヴァントをすれば完璧だ。
いったい何が出てくるのか、自分の使い魔はいったい何なのか。
不安は無かった。期待と、すでに成功したも同然という歓喜が胸中を渦巻く。
そしてルイズの頬がほころぶと同時に――ゲートから、黒い霧が噴出した。
「えっ!? な、何っ!?」
黒い霧はあっという間にルイズの周囲に広がり、彼女を覆い隠す。
通常の召喚ではありえぬ異常事態にコルベールは慌ててルイズの元へ向かおうとする。
「ミス・ヴァリエール!」
だが黒い霧に阻まれ、中に入る事ができない。
魔法を詠唱しても黒い霧に呑み込まれるだけだった。
黒い霧の中で、いったい何が起こっているのか?
ルイズは――いったい何を召喚したというのか!

空も地面も、周囲にいるはずのクラスメイト達や教師の姿も、黒い霧によって隠される。
外でコルベールが叫んでいるが、その声すらルイズの元には届いていなかった。
「な……何なの? 何なのよこれ? まさか、また……失敗しちゃったの?」
期待も歓喜も、不安という霧に呑み込まれて消え去り、ルイズは後ずさりをした。
「み、ミスタ・コルベール! あの、どうすれば……ミスタ・コルベール!?」
助けを求めて声を張り上げても応えるものは無かった。
いや――あった。

「我ガ眠リヲ妨ゲタノハ汝カ、小サキ者ヨ」

重厚な、聞くだけで気圧される人外の響きにルイズは肩をすくめる。
「だ、誰!?」
「我ガ眠リヲ妨ゲタノハ汝カ、小サキ者ヨ」
声は、頭上から聞こえた。
ハッと見上げてみれば、黒い霧の中、光る一対の双眸が自分を見下ろしていた。
十メイルはあろうかという巨躯が、ゲートのあっただろう位置に立っている。
つまり、この声の主は、自分が召喚した――使い魔?
「そ、そうよ。あんたをここに呼んだのは、私よ」
「……我ガ眠リヲ妨ゲタ理由ハ何ダ」
「そ、それは……つ……」
使い魔、って言ったら怒るかな? と、ルイズは怯えた。
だって、何か知らないけどこのデカい奴、怖そうだし。
「……魔、として、召喚して……契約を……」
だからつい、使い魔という単語をどもらせてしまった。
そして、使い魔という単語が聞こえなかったため、
呼び出されたそれは『契約』という自分にもっとも係わりの深い単語に反応した。
「我トノ契約ヲ望ム。ソレガ汝ノ願イカ、小サキ者ヨ」
「え? け、契約してくれるの!?」
「ヨカロウ」
黒い霧のせいでよく解らないけど、こんなに大きくて、
しかも人語を操るとなれば、そりゃもうとんでもない幻獣か何かだろう。
不安や恐怖がすべて吹っ飛び、ルイズはガッツポーズを取った。
こんな規格外の幻獣を使い魔にできるなんて、それなんて勝ち組?
メイジの実力を見るには使い魔を見ろ、だなんて格言もあるし、
こんなすごい使い魔の主なんていったら、もんのすごくどえらいですよ自分。
「じゃ、じゃあ早速――」
コントラクト・サーヴァントを、と続けようとした。が。
「ナラバ、我ニ汝ガスベテヲ捧ゲヨ」
「……はい?」
「ソノ身体、髪一本、血ノ一滴ニ至ルマデ、ソノ穢レ無キ無垢ナル魂。
 汝ノスベテヲ、我ニ差シ出セ」
「…………」

このデカい奴、いったい何を言ってるんだろう?
だって、サモン・サーヴァントは使い魔を呼ぶための魔法。
なのに、呼び出された使い魔に、ご主人様がすべてを捧げるって何? 普通逆でしょ。
とはいえ下手に文句を言って、機嫌を害しては契約できないかもしれない。
「……じゃ、とりあえず契約するから、しゃがんで、顔をきちんと見せてくれない?」
ルイズの言葉を肯定と受け取り、黒い霧の中で、その巨体が膝をつき腰を折る。
そしてルイズの頭上に、光る双眸と鋭く生え揃う牙が近づく。
大きな口。ジャンプすれば、何とか届くかな?
「契約は成立シタ。汝ガ願イ、確カニ――」
「我が名はルイズ・フランソワーズ・ル・ブラン・ド・ラ・ヴァリエール。
 五つの力を司るペンタゴン。この者に祝福を与え、我の使い魔となせ」
早口に詠唱し、ルイズは力いっぱいジャンプすると、
獰猛な牙の並ぶ大きなそれに口付けした。
「娘、コレハ何ノ真似――」
疑問の声が途中で途切れ、巨躯は突然立ち上がる。
「グオオォォォォォォッ!?」
腹に響くほどの大声で吼えながら、そいつの顔の下、胸の辺りが輝いた。
「落ち着いて。使い魔のルーンが刻まれてるだけよ。
 ……うふふっ、契約しちゃえばこっちのものなんだから!」

呼び出された巨躯の幻獣の咆哮が小さくなるにつれ、
ルイズの周囲を包む黒い霧も次第に晴れていった。
ルイズはみんなの反応が見たくて、自分の召喚した使い魔の姿を見たくて、ニヤニヤと笑う。
巨体を誇る幻獣。
いったいどんな姿をしているのか? ワクワクが止まらない。
そして黒い霧が晴れた。
ルイズは前方を見上げていた、そこに自分の呼び出した使い魔の顔があると信じて。

「……あ、あれぇ?」
だが、霧が晴れた時、ルイズの前に使い魔の巨体は無かった。
青く晴れ渡った空が広がっているだけである。
使い魔の姿を探して、視線を降ろしてみる。

男が、仰向けに倒れていた。
白と青を基本としたゆとりのある奇妙な服を着ていて、
顔の上半分を隠す形の白い仮面が不気味であった。
……誰? これ?

呆然とするルイズ。その周囲で、失笑が、続いて爆笑が巻き起こる。
「見ろよ! ルイズの奴、平民を召喚したぞ!」
「何だあの恰好、大道芸の奴か何かか?」
「さすがは"ゼロのルイズ"だ!」
笑われて、ルイズはハッと正気に戻った。
「ち、違……これは、私の使い魔じゃ……あいつは? あの大きい奴はどこ!?」
慌ててキョロキョロと周囲を見回すが、あの巨体が隠れられるような場所は無いし、
姿形などどこにも見当たらない。何で? 何で!?
困惑するルイズを無視して、コルベールが倒れている仮面の男に歩み寄る。
男が胸元を押さえているため、手をどけて奇妙な服の胸元をはだけさせてみる。
仮面の男の胸には、くっきりと使い魔のルーンが刻まれていた。
「ふむ……珍しいルーンだな。ミス・ヴァリエール。あの黒い霧の中で契約したのかね?」
「え? は、はい。でも私が契約したのは――」
ルイズの説明を聞きながらコルベールは杖を振るい、光の粒子を舞わせた。
ディテクトマジック(探知)で男を調べるが異常は感じられない。
あの黒い霧の正体は不明で、まだ問題が無い訳ではないが、契約の成功は事実。
「人間の使い魔など前代未聞だが、ルーンも刻まれているし、成功だ。おめでとう」
「違っ……」
ルイズが否定しようとすると、倒れている仮面の男が頭を押さえながら半身を起こした。
「う、う~ん……」
その瞬間、ルイズの怒りが爆発する。
大股で詰め寄り、ギラギラと血走った双眸で睨みつけながら、仮面の男の前に立つ。
「ちょっと! あんた、誰? 私の使い魔は、どこ?」
声をかけられた仮面の男は、虚ろな目でルイズを見上げた。
「……ムツ、ミ?」
「寝惚けてんじゃないわよ! あんたいったい何なの?
 とりあえず、その仮面を外しなさい。貴族の前で無礼だわ」
ルイズに怒鳴られ、仮面の男はぎこちない仕草で顔に両手を当てた。
「仮面……?」
自らのかぶる、白い硬質の仮面の感触を確かめると、男は虚ろな瞳を、ルイズに向ける。
「……私は…………」
そして、言った。

「私は、誰だ」

二度ある事は三度ある。
この人、実は記憶喪失になりやすい体質なんじゃなかろうか?
とはいえこうしてハルケギニアの地に、彼は降臨した。
禍、元凶、解放者、大神(オンカミ)……うたわれるものが。


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