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或る屍を越えてゆかれ損なった使い魔の独り言

姉と叔父、そして当主である父が死んだ。
憎き朱点童子の力に、惜しくも及ばなかったのだ。
俺の剣があと少し速ければ、と考えると悔やんでも悔やみきれない。
次に戦う時は、必ず勝てる。勝ってみせる。
それまで絶対に死ぬものか。死んでたまるか。

……それから一週間が経った。
明日はいよいよ当主襲名の儀が行われる日だ。
我が家では、当主臨終の際には女中のイツ花だけが次期当主の名を聞き、
一週間喪に服した後、初めてその名が明かされる。

――恐らく、次期当主に指名されたのは俺だと思う。
自惚れるわけでは無いが、姉の亡き今、心技体に最も優れるのはこの俺だからだ。
生き残った一族の最年長として、皆を引っ張っていかないといけないしな。
今月で丁度元服し、年齢的にも申し分ないはず。

……元服と言えば、交神相手の女神にも、実はもう目星を付けていたりする。
我ながら情けないと言うか浅ましいと言うか。

いけないいけない。邪念よ飛んでいけ。喝!
雪の降る中で諸肌脱いでの素振りは、なかなか堪える。
あと二十、いやあと五十回だ。

しかし、単純な動作を繰り返していると、どうしても頭がボーっとしてしまうもので。
素振りの疲れで、頭に酸素が行き渡ってなかったのかもしれない。
……目の前に現れた鏡のような物を、つい潜ってしまった理由はそんな所か。

…………ああ、分かったよ。正直に言うよ。
目の前の鏡を見て、有寿さんが会いに来てくれたんだと思ったんだよ!
有寿さんってのは、鏡国天有寿。……さっき言ってた、俺が目星を付けてた交神相手。
……それが、向こうから会いに来てくれたー、なんて。直接の面識もないのに。
ごめんね、馬鹿で!!

そんなこんなで、俺は今異世界にいる。

 *

で、俺を呼び寄せたルイズって娘(娘と言っても実年齢は俺よりずっと上なんだが)の
使い魔にされてしまった訳なんだが。

しかし何だ。左手のこの、『ガンガ・ルブ』とか言う紋章。
ん、『ダンザルブ』だったか? まぁいい。
これはすごい。何がすごいって、剣以外の武器なんて触った事もない俺が、
薙刀だろうが槍だろうが自由自在に操れるというのだから奮ってる。
たった一日で奥義を四つも編み出した時は、流石に自分が怖かったが。

ところで、実は俺以外にも俺と同じ世界から来た人が居るらしい。
ある時、土くれのフーケって盗賊に奪われた『破壊の杖』ってお宝を取り戻すために
色々奮闘したわけだが……実はその『破壊の杖』の正体というのは、
何十年も前にうちの蔵から盗まれたって言う、大筒『巨人四番砲』だったのだ。
こいつは威力は相当の物なのだが、撃つのにやたら時間が掛かり、構えてる内に集中攻撃されてしまう、という
欠陥がある。――いや、呪いだな一種の。
まぁ、そのおかげで何とか奪い返す事が出来たわけだが。

しかし何だ。こいつがこの世界にあるってことは、そいつを持って家出したって言う俺の先祖は、
実はこの世界にすっ飛ばされてたって事か。
……それにしたって、どうせならもっとマシな、せめて呪われてない物を
持ってきたかっただろうに……不憫なご先祖様。

んん。と、言うことは、元の世界では俺は朱点の奴に恐れをなして
家出したなんてことになってたりするのだろうか?
忠誠心と闘争心では誰にも負けないと自負していたこの俺が……
となると、もう新当主も決まってるだろうし、帰ったところで居場所も無いだろうな。
まぁ、使い魔生活も慣れてきたし、残り一年足らずの人生こうして過ごすのも悪くない……ってか。

ん? 俺が家から持ち出した物?
イツ花謹製・初陣の剣だ。
……ちょっと泣いた。

 *

そんな感じで俺の使い魔生活は過ぎていった訳なんだが……ある朝のこと。

何となく鏡を覗いてみると、朱点童子による呪いの証である、額に付いていた緑色のイボと言うか、
宝玉のような物が、綺麗さっぱり消えていた。
これは一体どういう事か。
もしかして、俺不在の内に朱点を倒してしまったりしたんだろうか。
これで、一族は忌まわしい呪いから解放され、子供も作れるし長生きも出来て万々歳
というわけだ。
……俺の生きる目的って。

まぁ、いいか。第二の人生を異世界で送ることになったのは不幸と言えば不幸だが、
新しい生きる目的を期せずして手に入れることが出来た俺は、
それはそれで幸運だったのかもしれない……


でもやっぱりちょっと泣いた。

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