あの作品のキャラがルイズに召喚されました @ ウィキ

るいずととら-1


(やった、ついに……ついに成功したんだわ!)

使い魔を呼び出す「サモン・サーヴァント」の儀式……いつものように「ゼロのルイズ」とクラスメイトたちに囃し立てられる中、
ルイズ・フランソワーズ・ル・ブラン・ド・ラ・ヴァリエールは杖を振った。
お約束の爆発と白煙に、湧き上がるクラスメイトたちの嘲笑。
しかし、もうもうたる白煙が次第に薄れると、笑いはさあっと波が引くように静まっていった。
煙の中から姿を現したのは、およそ2メイルにも達する巨大な金色の幻獣であった。

「まさか、成功したのか!?」
「ゼロのルイズがあんな幻獣を……」

クラスメイトのざわめきを、ルイズはこのうえなく心地よく受け止めていた。

(私だって、私だってやれば出来るのよ。これだけの幻獣を召喚できるメイジなんて、そうはいないわ!)

「ほう、これはお見事ですな、ミス・ヴァリエール! さあ、『コントラクト・サーヴァント』を済ませるのですぞ」

コルベール師がにこにこと相好を崩した。
劣等生で手のかかるルイズが見事に「サモン・サーヴァント」を成功させたことは、人のよいコルベールには大きな喜びだった。

「はい、コルベール先生」


ルイズは、すう、と息を吸うと、召喚した幻獣に向かって歩み寄る。
目の前にうずくまる使い魔は、見るほどに見事な幻獣だった。黄金に輝く体毛、力強い四肢に鋭い爪。そして、こちらをじっと射抜く視線――
この幻獣を自分が召喚したのだ、という喜びに、ルイズの胸が震える。

「我が名は、ルイズ・フランソワーズ・ル・ブラン・ド・ラ・ヴァリエール。五つの力を司るペンタゴン。この者に祝福を与え、我の使い魔となせ……」

杖を幻獣の額に置こうとした瞬間だった。

「人間か……」

幻獣が、ニヤリと口を開く。口の中には獰猛な牙がずらりと並んでいるのが見えた。

(――ししし、しゃべったー!?)

ルイズの目が驚愕に開かれた。人語を解する幻獣が居ないわけではない。例えば韻竜は先住魔法や人語を操るという。
しかし、実際に幻獣がしゃべるのを見るのは初めてであり――ルイズはペタンとその場でしりもちをついた。主人の威厳台無しである。

「あああんた、しゃ、しゃべれるのね。なな名前は?」

それでもルイズは、震える声で精一杯威厳を取り繕って幻獣の名前を聞く。

「やれやれ…相変わらず人間はやかましいな。まあ、いい……わしは……長飛丸――いや、ちがうな」

幻獣は、ずい、と身を乗り出し、ルイズの顔を見据えた。


「わしは、とらだ。小娘――覚えときな!」


ルイズは必死の表情で、コクコクと頷いていた……。


「驚きましたな……人語を操るとは。いやはや、わたくしでも見たことがない珍しい幻獣ですぞ!
 ふむ……サラマンダーでも、ドラゴンでもない。あえて言えばキマイラかスフィンクスでしょうか……」

コルベールが興味深々といった様子で近づいてきた。研究熱心な彼の目は好奇心で輝いている。彼の頭もまた、光を浴びてさんさんと輝いていた。

(コイツ、光覇明宗のボーズか……? まあ、いいやな)

「とら」と名乗った幻獣はルイズに向き直った。

「おい小娘……るいずといったか? 教えな、わしはどうしてここにいる? 冥界の門をくぐったとばっかり思ってたがな」

「コ、ムスッ……コホン、いいわ、おお教えてあげる。アンタは、わわ私が『サモン・サーヴァント』で使い魔として召喚したの!
 こ、ここれから『コントラクト・サーヴァント』の魔法で契約を結ぶのよ」

びびりながらもルイズは台詞を最後まで言い切った。それにしても、「とら」とは奇妙な名前だった。
いや、人語を解する幻獣だ。どんな名前だろうと不思議ではないのかもしれない。

とらは冷静に目の前に立つ人間を見つめていた。桃色の髪の娘は、西洋風の服を着て手に小さな杖を持っている。

(法具、じゃねえな。錫杖にしちゃ小さすぎる。どうやら、大陸の「魔術」ってやつか……)

妖怪を使い魔として召喚する術者たちのことは、とらにも聞きおぼえがあった。以前戦った「お外堂」たちのようなものだろう。

(ち、さっきからわしが動けねえのは、そのせいかよ……)


使い魔か、と考えてとらは少々うんざりした。できることならさっさと空に飛び出し、思うさまに暴れてみたいところである。
とはいえ、自分は確かに白面との戦いで消滅したはずだ。
状況から考えて、一度消滅した自分をここに召喚したのは、まぎれもなく目の前の小さな娘だった。

「……まあ、暴れたらまたうしおがうっせーだろーしよ……それにオマエには借りが出来たようだな、小娘――」

「ははは、はいっ!」

「さっさと済ましちまいな、その契約とやらを」

そう言って、とらは舌を突き出しながら凶悪に笑った。ルイズは失禁をこらえながら、ギクシャクととらに近づく。
そして、震える手で杖を差し出すと、とらの額にあて、そっと背伸びをしながら、とらにキスをした。

「こ、これで終わりよ。あああと、体のどこかに使い魔のルーンが刻まれるわ」

ルイズの言葉通り、とらの左手が熱を帯び、やがて金色の体毛にルーンが浮かび上がる。……やれやれ、呪印かよ、と呟くとら。

「ほほう、珍しいルーンですな……いや、まったく面白い。とら君、あとでぜひいろいろお話を聞きたいですぞ!
 幻獣から直接話を聞ける機会など、そう滅多にありませんからな!」

にこにこと笑うコルベール。しかし、その姿は、どこか不思議な力に満ちていた。ちょうど、法力を放つ直前の法力僧のように――

(そうか、こいつ、うしおのオヤジに似てやがるんだな。普段は笑っているが、こいつ、つええな)

とらはニヤリと笑った。強いものが好きな性格だけは死んでも変わるまい。

「……ボーズ、わしはその幻獣てのじゃねえ。バケモンよ。大キレーな呼び方だが、大陸じゃ字伏と呼ばれた妖怪だ」

「おおお! アザフセ、ですか。まったくの新種だ、素晴らしい、とら君! ……ハッ、いかんいかん、忘れておった」


メモを取っていたコルベールは、慌てて生徒たちを見回した。

「皆さん、教室に戻りますぞ」

生徒たちは次々と、「フライ」の魔法で飛んでいった。とらは感心して飛んでいくメイジたちを見ていた。
この連中はなかなか法力――いや、魔力が高いように見える。法力僧でも空を飛ぶような者はそう居なかった。なのに、子供まで――

「む、小娘――オメーは飛ばんのか?」

一人取り残されたルイズは、ふるふると震えていた。

「飛べないのよ……あああと、あたしの名前はルイズよ。小娘は、やや、やめて」

しゃーねえなあと、とらは頭をかく。そのまま、むんずとルイズの細い腰をひっつかんだ。

「きゃあ、ちょ、なにーっ!?」

「つかまってろ、るいず。飛ぶぞっ!」

日本で長飛丸の異名を持ち、そのおそるべき速さを恐れられた妖怪は、ルイズをつかんだまま風のように飛び上がった。
耳元で風が猛々しくうなりをあげる。

(ああ……ひょっとして、わたし、やばいの、召喚、しちゃった、か…も……)

「ひょおおおおおおおおおっ!!!」

薄れていく意識の中で、ルイズはとらの歓喜の雄叫びがトリステイン魔法学院に鳴り響くのを聞き……

気を失った。


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