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雷撃のタバサ-4



「いやぁあぁあッ!! 熱い、あつい――――ッ!!」

エルザが悲鳴を上げながら身を悶える。『シルフィード』が吐き出した灼熱の炎が、一瞬で彼女の腕を塵に変えたのだ。

(なぜ、なぜ――! 『変化』の……先住魔法を使っているというのに、杖だって持ってないのにッ……!)

予想外の出来事にエルザは混乱していた。目の前に立つ長身の女性は、コキリ、と首をならす。

「よわっちいフリをするってのはずいぶん疲れるな……」

にい、と剥き出した歯に、眼に宿る凶暴な光。パシ、パシ、と電光を発する髪の毛。そして、全身から発せられる殺気。
自分が今まで大きな誤解をしていたことに、エルザの眼が大きく見開かれる。

「くっくっく……わからねぇ、ってツラしてやがるな、おい? ニンゲンと区別がつかねえ吸血鬼よ。
 それでずいぶん騙してきただろうが、自分が騙されるとは考えたこともなかったかよ?」
「まさか、まさか――最初から、メイジなんてどこにもいなくて――――ッ!」

美しい吸血鬼の娘の顔が、敗北感に歪んだ。ガクガクと小さな体が震える。相手は自分を油断させて、『変化』ですり替わったのだ。

「おら、いくぜッ!!」

一瞬で変化を解き、巨大な金色の幻獣の姿となったとらは、瞬間、雷を繰り出す。少女の小さな体に直撃したそれは、少女を窓の外に吹き飛ばした。
木製の扉が吹き飛ぶ音が響く。

ごしゃ!

大きな音を立てて二階の高さから地面に落下した少女は、それでも痛みの走る体を引きずり、森へと走り出した。

(あんな……あんな幻獣がいるなんて――――)

少女は恐怖に全身を包まれながら夜の村を走る。



「とらさま! 大丈夫!? 吸血鬼は――」

悲鳴を聞いて部屋に飛び込んできたシルフィードに、とらは外に向けてあごをしゃくる。やはり吸血鬼の正体はあの少女だったのか、とシルフィードは理解した。

「吸血鬼は逃げたぜ……いまから追う」

そう言って、とらが窓枠に足をかけたときであった。

「ババ、バケモノめっ!!!! エルザを、エルザをどうしたーっ!!!!」

とらが振り返ると、村長が片手斧を持ってぶるぶると震えて立っていた。咄嗟のことにシルフィードはうろたえる。
これでは、どう見てもとらがエルザを襲ったようにしか見えないではないか。

次の瞬間――村長の屋敷に、とらの哄笑が響いた。


「くっはははははああッ!!!!!! ニンゲン、ここにいたガキはわしが喰ったのよ! 美味かったぜぇ……
 この『めいじ』とやらも喰ってやらぁ!! あばよ!!」


とらは大声で笑いながら叫ぶと、シルフィードを引っつかみ、旋風のように窓の外に飛び出した。そのまま、一気に吸血鬼の後を追う。

「とらさま! なんで、なんであんなことを!! あれじゃあ、とらさまが悪者じゃない!?」

ぽろぽろと涙を流しながら抗議するシルフィードに、とらはフンと鼻を鳴らしながら答える。

「間違ったことなんざねぇ! わしはバケモノよ……! そして、アイツもな――――!!」

空気を切り裂き、びゅむ、ととらが地上に降り立つ。そこには……吹き飛ばされた片腕を押さえながら、荒い息を吐く吸血鬼の姿があった。



「なんで……なんでわたしを殺すの……? わたしは……自分が生きるために、やっただけなのに……!」

二つの月の妖しい光に照らされながら、吸血鬼の少女が叫ぶ。もはや戦う体力も残ってはいなかった。
そんな吸血鬼を見つめながら、金色の幻獣が低い声で喋りだした。

「確かに……オメエは喰っただけさ……生きるためにな。わりいとはいわねえ。喰えばいいのさ……だが――」

パリ、と金色のたてがみに稲妻が走る。夜の闇に電光を散らすその姿は、まさしく雷の化身だった。

「だがよ、オメエは喰っただけじゃねえ……オメエを退治しにきた『めいじ』を殺してからもこの村に居座ったのさ……『勝てる』と踏んでな……
 それが間違いってやつさ。逃げればよかったのに、戦うことを選んだんだ、オメエは」

ぼたぼたと血を流しながら吸血鬼が叫ぶ。

「わたしは……メイジに両親を殺されて……それで……それで――ッ!」
「違うな……愉しんでたのさ、オメエは。自分より弱いニンゲンをなぶり殺すのをよ」

ぶるぶると震える吸血鬼に、とらは冷酷に言い放つ。


「――――愉しみで殺すやつァ、いつか殺されんだよ」


轟ッ!!!!!!!

瞬間、巨大な稲妻が放たれ、吸血鬼の体は一瞬で塵と化した。とらは、さて、とシルフィードを振り返る。

「るいずとたばさのとこに帰るかよ、しるふぃーど」
「……きゅい」


二人を照らし出す二つの月――。
金色の獣が、青い髪をした長身の女性を乗せて、ハルケギニアの大地を越えてゆく。背中に乗ったシルフィードは、そっととらの背中に抱きついてみる。
そして、小さく呟いた。

「とらさま、元気、出してほしいの……きゅい」

む、ととらが反論する。

「わしのどこが落ち込んでるよ、しるふぃーど! け、あんなザコだと分かってたらわざわざ出向かなかったのによ……!」

くす、とシルフィードは笑ってしまった。まるでルイズの口調そっくりであった。使い魔も主人に似るものだろうか?

(とらさま……強いだけじゃなくて……ほんとはとってもやさしいの……きゅいきゅい)

こほん、とシルフィードがとらの背で姿勢を正す。赤くなった顔をなでる風がひどく気持ちいい。

「とらさまとらさま。シルフィは、とらさまが元気になるように唄を歌います。きゅいきゅい」
「こら、しるふぃーど、わしは落ち込んでなんかねぇと、さっきから――!」
「無理しないの、とらさま!」

るーるる、るるる、るーるる、るるる、るーるーるーるーるー……

文句を言うとらに構わず、歌いだすシルフィード。夜の闇に韻竜の歌声が響きわたっていく。
二つの月のやさしい光が、空を駆けていく二匹を照らし出した。

こうして、一匹の風韻竜と一匹の金色の幻獣は、一路トリステイン魔法学院へと急ぐのであった。


……後日、「サビエラ村に現れた金色の怪物」についてタバサに討伐命令が下り、タバサは頭を抱えることになるのだが……それはまた別のお話。


るいずととら番外編『雷撃のタバサ』終わり



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