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マジシャン ザ ルイズ 3章 (16)

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マジシャン ザ ルイズ (16)空中戦闘

月夜、明るすぎる月光の夜。

耳障りな音を撒き散らして正面から敵艦を貫いたウェザーライトⅡは、その勢いを衰えさせずに飛翔を続ける。
前方には二隻の敵戦艦、ウェザーライトⅡはその隙間となる空間を目指し一直線に奔る。
結果、輝ける槍となった船は、これを避けそこなった片方の敵艦側面を抉った。
船翼がちぎれ、船体からは破片が撒き散らされる。
大小様々な破片がウェザーライト号の甲板にも飛来するが、甲板を覆うように発生した白い膜が、これを弾いて乗員を守った。
すれ違いざまに穂先がかすった形となった戦艦に残された裂傷は、横数十メイルにも及んでおり、航行不能となるには十分なダメージであった。
そして、飛ぶことができなくなったフネに待つ運命はただ一つ。


最初の会敵で二隻の戦艦を沈める戦果を挙げたウェザーライトⅡは、敵艦隊の後方を抜け戦闘空域を離脱する。


「おお、ロングビル!君はミス・ロングビルではないかね!」
突撃の衝撃でフードが捲れ、月光により素顔が露になったフーケ。
彼女を見たオールド・オスマンが嬉しそうに声をあげる。
「や、ちょっと、離しなさいよ。離してってば、離せよこの色ボケジジイ!」
「ミスタ・コルベール!見たまえ、ロングビルじゃ。生ロングビルじゃよ!」
正体を知るや否やフーケに抱きつく老学院長オールド・オスマン。
一方で、オスマンが声をかけたこの船に乗るもう一人の教師、ミスタ・コルベールは震える手を隠そうともせずに戦慄いていた。
「まさか、これほどのものとは…」
遠く聞こえる爆発音。
先ほどウェザーライトⅡに飛行機能を破壊されたフネが、地上に激突した音である。

コルベールは思う、果たしてあの中には何人の人間が乗っていたのだろうと…これが戦場、再び舞い戻ってきてしまった戦場。

「ミスタ・コルベール!す、凄いです!あっと言う間に敵艦を二隻も落としてしまうなんて、感動しました!」
苦渋に沈み込みそうになるコルベールの心中を引き戻したのは愛すべき生徒の声であった。
気がつくと目の前には自分の教え子の一人、ギーシュ・ド・グラモンがいた。
「このフネが、王室から開発を依頼された秘密兵器という噂は本当だったんですね!」
表向き、ウェザーライトⅡの設計・開発はウルザの協力を得たコルベールが行ったことにされている。
そうして、学院の一部の人間以外には、フネの建造に関する一切の事柄は国家機密として秘匿されていたのだ。
この為、噂好きの少年少女、学院生徒の間で『ミスタ・コルベールが王宮からの依頼を受けて、対アルビオン戦争の秘密兵器を開発している』という噂が広まっていたのは当然のことであった。
頬を紅潮させ、自分の関わった作品に感動の意を示してくれている少年。
そのような姿を見て、心踊らぬと言えば嘘になる。例えそれが戦いの為の道具であろうとも。
「ミスタ・コルベール!このフネはどうしてマストも無しに浮いているのですか!?」
コルベールの内心に渦巻く葛藤も知らずはしゃぐギーシュ。彼を見ているうちにコルベール自身の心も少し軽くなった気がした。

コルベールが教え子に説明を始めようと口を開きかけた時、それまでウェザーライトⅡの甲板にあって感じなかったもの、慣性が復活した。
よろける各々、先ほどまで感じなかった速度は今や体で感じ取ることができる。
「この船は、ある種のマジックアイテムなのです。
 従来通り風石を使って浮くだけでなく、船に組み込まれた各種マジックアイテムの作用によって、これまでハルケギニアにあったどのようなフネとも違う、新しい形の船として生み出されたのです。
 船の構造を守る為に複数の場所に設置された、周囲の船体に『固定化』の魔法をかける装置。
 風石の力を最大限効率的に運用する為に設けられた二基の風石炉。
 船を動かす魔法の力を、各所に送り込む心臓の役割を果たす動力部。
 唱えた呪文そのものを強化拡大する増幅装置。
 そして、この船最大の特徴でもある、エルフ達が使う先住の魔法『反射』を応用した理論を用いた、特殊な飛行機構が装備されているのです」

コルベールの説明を最後まで聞いていたギーシュの顔が引きつる。
「え、エルフって、あのエルフですか?」
「ああ…多分君が思っている、そのエルフだよ」
「エルフの魔法だなんて、危険じゃないんですか…」
ギーシュは自分が立っている足元を、気味悪そうに見下ろした。
自分は何かとても恐ろしい怪物の上に乗っているのではないか、そのような思いに駆られたのである。
教え子のそんな様子を眺めながら、悲痛な色を宿した声で、コルベールが語る。
「魔法は…魔法は様々な使い方ができる。
 その可能性を狭めてしまうことは、わたしはとても寂しいことだと思う。
 火が司るものは破壊だけではない、火には本当はもっと様々な可能性が秘められているはずなのだ。
 エルフの魔法もそうだ。先ほど、我々を救ってくれたのは確かにエルフの魔法の力だ。君の恐れるエルフの力だ。
 力とは、使い方次第で様々な側面を私達に見せてくれる、この船もその一つの形だと思う。
 いつか我々は一つ一つの思い込みを排除していければいいと思う。
 そうしたら、きっとその先には皆が豊かに笑える世界があると、私はそう思うのだ」



スランエンジンへと供給する魔力量を抑え、風石と飛翔機構によるハイブリット飛行に切り替える。
先ほどまで『反射』の盾を作り出していたアーティファクト『力場発生器』別名フォースフィールド発生装置への魔力供給も最低レベルにまで低下させる。
発生させる力場も、大きく魔力を消費する『反射』から消費の少ない『固定化』へと切り替える。
今や遠く背後に見えるだけとなった八隻の敵戦艦が、ウェザーライトⅡに追いつくまでには暫くの時間的余裕があるだろう。
ウルザはこのわずかな時間に、初飛行となるウェザーライトⅡに想定外の出来事か起きていないかを確認するつもりでいた。
しかし、懐から色眼鏡を取り出してかけ直し、船尾に向かって一歩を踏み出そうとしたところで、体のバランスを崩して膝をつく。

屈強なるプレインズウォーカー、両の瞳にスラン文明の遺産であるパワーストーンを宿すウルザ。
その彼をもってしても、ファイレクシアの闘技場で負った傷が完全に癒えぬ身で、飛翔艦一つを浮かして艦全体のコントロールを行うほどの魔力を放出するには無理があった。
ウルザの体中の神経を、パワーストーンからの負荷が焼く。
「ミスタ・ウルザ!大丈夫!?」
体中から白い煙を上げて膝立ちしているウルザ、そんな彼の異常に気付いたルイズが後ろから駆け寄った。
彼女の横にはタバサ、こちらはいつもどおりの表情でルイズについてまわっている。
「ちょっと、何よこれ。何でこんなに傷だらけなのよ!
 それにたくさん血も出てるわ、早く治癒をかけなきゃ…」
ウルザの体はまさに満身創痍であった。
ローブから露出した肌には至るところに内出血や火傷の痕が見て取れる。
試験飛行前の未調整なスランエンジン。それをいきなり全力で稼動させたのである、強大な反作用を受けて当然であった。

慌てて左右から肩を貸すルイズとタバサ。
身長差があり過ぎて、まるでちぐはぐであった。
「………やっぱりおかしいわね」
「無理」
ルイズは肩を貸すことを諦めると、大声で離れた場所で話し込んでいるコルベール達に呼びかけた。
「ミスタ・コルベール!肩を貸してください!ミスタ・ウルザが大変なんです!
 あとモンモランシーは治癒の呪文をお願い!」
その声に気付いたコルベールとギーシュ、それにオスマン、モンモランシーが駆け寄ってきた。
最後に一人残されたフーケも不承不承といった様子でついてくる。

「やや!ミスタ・ウルザ、これはどうしたことですか!?」
改めて、長身のコルベールとオスマンがウルザに肩を貸す。
「もうあまり時間が無い、早く船尾のブリッジへ…」
そう言いながら歩き出すウルザ、治癒呪文をかけようとしていたモンモランシーが文句の声をあげるがこれは無視された。
「年寄りのよしみで言うが、その傷で無理をするのは関心できんのぅ」
「そうです、まずは医務室で安静にすべきです」
二人の言葉にかぶりを振るウルザ。
「まだ敵は残っている、ここで叩かねばやがてこの船が危険に晒されることとなる。それはなんとしても避けねばならない」
ウルザの決意が固いことを読み取った二人は、それ以上口を挟むことをやめた。

ウルザ達は甲板から艦橋へと足を踏み入れた。
ウェザーライトⅡの艦橋はかなり広く作られており、広さは十メイル四方ほどもあろうか。
前方には大きく透明のガラスのようなものが嵌め込まれており、流れる雲を目にすることができた。このことから室内という圧迫感が驚くほどに少ない。
中央には床に埋まる形で球体が据えつけられており、その正面には艦長が座ると思われる椅子があった。
球体前には距離を離して左右正面に三つの席と、見たことも無い箱状のなにかが設置されている。
正面の椅子の前には丸い操舵環が設置されており、そこが操舵席というのは想像できたが、それ以外の役割はルイズ達には分からなかった。

ウルザが艦橋中央にある球体の横に立つ。
モンモランシーの治療によって立つことに支障は無くなった様子である。
しかし、それでも首筋などに見える内出血の痕は痛々しく残されている。
その片手には杖、色眼鏡は既に外して懐に仕舞われていた。
「諸君、各々手近な椅子に座ってもらえるかな、これから少々…揺れるものでね」
刃物のように鋭い目つきで言い放つウルザ。
言うや否や彼は両手で杖を掴み、それを勢いをつけて球体に突き立てた。
再び始まる魔力の放出。
今度は目から迸るのではなく、杖を通して流し込まれるようにして放出されるパワーストーンの魔力。

ルイズ達の前に、先ほどとは違う変化が訪れる。
「きゃっ!?何、何なの、一体何が起こったの!?」
モンモランシーの席の前にあった球体が輝き、その中には半透明のウェザーライトⅡの模型が現れた。
艦橋の中には次々に新たな変化が起こっていった。
あるものは輝き、あるものはせり出し、あるものは勝手に動き出す。
まるでそれは深い眠りについていた巨人が、ゆっくりと目を覚ましていくような光景であった。

一通りの変化を終えた艦橋内を、先ほども感じた不思議な浮遊感が襲った。
『反射』である。
重力の鎖と、慣性の鎖を緩められたウェザーライトⅡは、再び自由なる飛翔を開始する。
「それでは、このウェザーライトⅡの力をご覧に入れよう」

明るく地上を照らし出していた月が、尋常ならざる速度で動いた。
それだけではない、窓から見ることのできる何もかもが高速で動いたのだ。
いや、それは移動しているのではない。正しくは、動いていたのは自分達の方であった。
ウェザーライトⅡが急速な旋回を終え、一瞬の後に視界が固定された時、月に照らし出された八隻の敵戦艦が正面に見えた。


もしも、アルビオンから送り込まれたこの十隻の戦艦に生きた船乗りが乗っていたのなら、この後に起こる出来事に目を剥いたに違いなかった。


ウェザーライトⅡはその巨体に似合わぬ俊敏さを発揮し、恐るべき速度でアルビオン艦隊との距離を詰める。
その船首の先には輝く障壁。
先刻の焼き直し、ウェザーライトⅡの必殺の突撃が敢行される。
しかし、それも二度目、先ほどの轍を踏まぬようにとアルビオン艦は横一列に並んでいる。
更には船側に装備された砲をお見舞いしようと、一斉に船首を回頭させようとしていた。
だが遅い。
各艦が回頭を済ませる直前にウェザーライトⅡは攻撃圏内、つまりゼロ距離へと己が身を到達させた。
狙いは中央、最も大きな一隻。
その全長はウェザーライトとほぼ同じという大型艦。
巨大な質量同士の衝突。大型艦の防御が紙のように突き破られ、光壁に触れたものは圧倒的暴力によって粉砕される。
猛烈なる破砕音。
『反射』により本来ウェザーライト号に分割されるはずだった衝突エネルギーが向きを変え、敵戦艦に一方的に送り込まれる。
まず、一隻が沈んだ。

ウェザーライトⅡの一撃により指揮艦を失ったアルビオン艦隊。
けれど彼らは慌てない、騒がない、驚かない。
冷静なる狩人の目を持って己が敵に狙いを定める。
狙いとは、列を貫いて背後に出ようとするその背中である。
彼らは初めから来襲するウェザーライトを迎え撃つつもりなどは無かったのだ。
本当の狙い、それは背面へ抜けようとするその一瞬の隙だったのである。
冷静な分析、見事な連携、味方艦が撃沈されたというのに、彼らの動きは実に的確であった。

たった一つ、彼らに落ち度があったとすれば、それはウェザーライトⅡを常識によって捉えていたことだけであろう。

敵指揮艦を貫いたウェザーライトⅡ、それが敵を刺し貫いた位置にて静止する。
そう、静止したである。

慣性を無視した空中機動を可能としたウェザーライトⅡ、それは正に非常識の船なのであった。

ウェザーライトが時計回り船首を廻す。
力場が刃のように伸び、その通り道に位置した一隻の艦首が切り裂かれる。その傷の深さは二十メイル、致命傷。
残光の軌跡を残して船が舞う。
船首を回頭させること二百七十度、前方には船尾を覗かせる敵艦一隻。
敵を認めたウェザーライトが瞬時に最大船速にまで加速し、音速の壁を突破する。
背後からの一撃を受けて粉砕される、一隻、二隻、三隻のフネ。
一度の突撃で、三隻まとめて串刺しにするウェザーライトⅡ。

これで葬った敵艦は五隻、この間要した時間わずかは三呼吸。
出鱈目と形容することこそ相応しい船ウェザーライトⅡ。

それが散開しようとする三隻の敵艦を沈めたのは、二秒後のことであった。



                      ウェザーライトⅡは速い、ウェザーライトⅡは重い
                                 ―――ウルザ


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