「遅かったね、平民。てっきり平民らしく逃げ出したかと思ったよ」
ギーシュの言うとおり、僕が中庭に辿り着くには少し時間がかかった。
それには幾つか理由があるんだけど、一番の理由はルイズに長い間引き止められたからだ。
メイジに平民は勝てない。僕の『ご主人様』はそう言ってこの金巻き毛の魔法使いに謝るように諭してきた。
確かに、僕自身も『魔法使い相手に何が出来るのか?』と、思わないでもない。
だけど謝る気にはどうしてもなれなかった。
それには幾つか理由があるんだけど、一番の理由はルイズに長い間引き止められたからだ。
メイジに平民は勝てない。僕の『ご主人様』はそう言ってこの金巻き毛の魔法使いに謝るように諭してきた。
確かに、僕自身も『魔法使い相手に何が出来るのか?』と、思わないでもない。
だけど謝る気にはどうしてもなれなかった。
「キタロー君、逃げて・・・私の事なら大丈夫だから・・・」
あの親切なメイドのお姉さんの震える声を思い出す。
シエスタさん自身が一番怖かったはずだ。
力を持った相手から一方的に理不尽な事をされて、罵詈雑言を浴びせられて。
それなのに、シエスタさんは僕のことを心配してくれた。
この世界の平民とか貴族の事は良くわからないし、どうでもいい。
でも、そんな人がただ悲しむなんて、許しちゃいけないと思う。
だから僕は此処に居る。
多分、凄い力を持ってる魔法使いと戦うために。
シエスタさん自身が一番怖かったはずだ。
力を持った相手から一方的に理不尽な事をされて、罵詈雑言を浴びせられて。
それなのに、シエスタさんは僕のことを心配してくれた。
この世界の平民とか貴族の事は良くわからないし、どうでもいい。
でも、そんな人がただ悲しむなんて、許しちゃいけないと思う。
だから僕は此処に居る。
多分、凄い力を持ってる魔法使いと戦うために。
「さて、決闘を始めよう。僕はメイジだから魔法で戦う。文句は言わせないよ?」
「・・・それで?・・・そんなの、どうでもいい」
「・・・いちいち気に障る奴だね、君も・・・まぁ、いい。せいぜい後で命乞いをするといいさ」
「・・・それで?・・・そんなの、どうでもいい」
「・・・いちいち気に障る奴だね、君も・・・まぁ、いい。せいぜい後で命乞いをするといいさ」
そう言うとギーシュは手にした薔薇を振るった。花びらがひとひらこぼれて、次の瞬間金属の女性騎士へと姿を変えた。
なるほど、これがあの魔法使いの魔法・・・
なるほど、これがあの魔法使いの魔法・・・
「言い忘れたが、僕の二つ名は『青銅』。青銅のギーシュだ。僕のこの青銅ゴーレム、ワルキュ「どうでもいい」「・・・なに?」
ギーシュがまた何か言おうとしたけど、僕は無視した。
金巻き毛の魔法使いの前に立つ金属の女騎士。こんなもの、どうでもいい。
金巻き毛の魔法使いの前に立つ金属の女騎士。こんなもの、どうでもいい。
雑魚に、用は無い。
「お、おい・・・どうなってるんだ」
青銅のギーシュとゼロの使い魔の決闘・・・それに名を借りた一方的な私刑を期待して集まった生徒たちは、思いもよらない光景に言葉を失った。
目の前で繰り広げられる光景が理解できないのだ。
目の前で繰り広げられる光景が理解できないのだ。
「な、何で僕のワルキューレの攻撃が当たらないんだ!?」
冷静さを失ったギーシュの声がそれに拍車をかける。
決闘が始まって暫く経ち、何時しか青銅のゴーレムは4体にまで数を増やしていた。
それぞれが、金属とは思えない軽快な動きを見せ、平民の使い魔へと襲い掛かる。
だが、ただの一撃も加えられない。
力を持たないはずの平民が手にした只の一本の木の棒。
その魔法などかかっているはずの無い棒を以ってして、平民は静と動の入り混じった見慣れぬ剣技でゴーレムたちの攻撃を捌いているのだ。
ゴーレム達が武器を持たされていないとは言え、それは集まった貴族たちにとって驚愕すべき光景だった。
決闘が始まって暫く経ち、何時しか青銅のゴーレムは4体にまで数を増やしていた。
それぞれが、金属とは思えない軽快な動きを見せ、平民の使い魔へと襲い掛かる。
だが、ただの一撃も加えられない。
力を持たないはずの平民が手にした只の一本の木の棒。
その魔法などかかっているはずの無い棒を以ってして、平民は静と動の入り混じった見慣れぬ剣技でゴーレムたちの攻撃を捌いているのだ。
ゴーレム達が武器を持たされていないとは言え、それは集まった貴族たちにとって驚愕すべき光景だった。
身体が、軽い。
こんなに身体が動くのは、剣道の大会でもなかった事だと思う。
次々と連携して殴りつけてくるゴーレムたちの動きが止まって見える。
これなら、関東大会で戦った早瀬のほうが余程強敵だとさえ思える。
こんなに身体が動くのは、剣道の大会でもなかった事だと思う。
次々と連携して殴りつけてくるゴーレムたちの動きが止まって見える。
これなら、関東大会で戦った早瀬のほうが余程強敵だとさえ思える。
始め、決闘には徒手空拳で向かうつもりだった。
だけど流石に魔法使い相手に素手で立ち向かうのは無謀だと思った。
だから、長い間続けた剣道を生かせそうな丁度いい棒を見繕った。
決闘の舞台につくのに時間がかかったもう一つの理由。
だけど流石に魔法使い相手に素手で立ち向かうのは無謀だと思った。
だから、長い間続けた剣道を生かせそうな丁度いい棒を見繕った。
決闘の舞台につくのに時間がかかったもう一つの理由。
だけど、こんな風に4体の相手が出来るとは思っても見なかった。
何故だろう?この左手に感じる熱のせいだろうか?
それとも、実はずっと感じていた違和感のせいだろうか?
そこまで考えて・・・木の棒が手元で断ち切られると同時、頬に一筋熱さが走った。
何故だろう?この左手に感じる熱のせいだろうか?
それとも、実はずっと感じていた違和感のせいだろうか?
そこまで考えて・・・木の棒が手元で断ち切られると同時、頬に一筋熱さが走った。
「っ!?」
「・・・見事だと言っておくよ、平民。君は大した実力の持ち主だ。つい僕に本気を出させるくらいにね」
「・・・見事だと言っておくよ、平民。君は大した実力の持ち主だ。つい僕に本気を出させるくらいにね」
同時に、背筋に走るものを感じて慌てて飛びのく。刃が僕の居た場所を通り過ぎていた。
ゴーレムが、ついに武器を抜いたんだ。そして、その数も増えてる。
ゴーレムが、ついに武器を抜いたんだ。そして、その数も増えてる。
「7体だ。僕の同時に作りうるゴーレムの限界の数だよ。君は良くやった。今謝れば、少しの仕置きだけで許してあげよう」
「・・・どうでもいい」
「・・・どうでもいい」
流石にこの布陣になれば勝利は動かないと考えてるのか、ギーシュはようやく余裕を取り戻してる。
もっとも、僕も不思議と冷静だった。煌く無数の白刃を前にして、何故か恐怖を感じない。
それよりも何だろう?・・・以前どこかでよく似た光景をみた気がする。
無機質な仮面のようなゴーレムたちの顔を見ながら、何かつかめそうな気がして。
もっとも、僕も不思議と冷静だった。煌く無数の白刃を前にして、何故か恐怖を感じない。
それよりも何だろう?・・・以前どこかでよく似た光景をみた気がする。
無機質な仮面のようなゴーレムたちの顔を見ながら、何かつかめそうな気がして。
「どうでもいい、じゃないわよ!」
聞きなれてきた声が僕を記憶の旅から現実に引き戻す。ふりかえると・・・居た。何だか泣きそうな目をしたルイズが。
「・・・来てたの?」
「来てたの、じゃないわよ!もう止めなさいよ。キタロー!もう十分じゃない!あいつは剣を持ち出したのよ!?」
「・・・やだ。謝るならあいつ。馬鹿みたいに怒鳴り散らしてたあいつが謝らない限り、止めない」
「来てたの、じゃないわよ!もう止めなさいよ。キタロー!もう十分じゃない!あいつは剣を持ち出したのよ!?」
「・・・やだ。謝るならあいつ。馬鹿みたいに怒鳴り散らしてたあいつが謝らない限り、止めない」
僕にとって、この決闘はそういうものだから。
ルイズは僕の説得をあきらめたのかギーシュに矛先を向けた。
ルイズは僕の説得をあきらめたのかギーシュに矛先を向けた。
「アンタもいい加減にしなさいよ!決闘は禁止されてるはずでしょ!?」
「禁止されているのは貴族同士のそれだけのはずだよ?」
「平民との決闘なんて、誰も考え付かなかっただけじゃない・・・」
「それよりも引っ込んでいてくれないか?正直に言うと、僕もここで止める気は無いんだ」
「禁止されているのは貴族同士のそれだけのはずだよ?」
「平民との決闘なんて、誰も考え付かなかっただけじゃない・・・」
「それよりも引っ込んでいてくれないか?正直に言うと、僕もここで止める気は無いんだ」
そう言うギーシュはゴーレム達をVの字の陣形に並ばせた。一気に勝負を決める気、だね。