あの作品のキャラがルイズに召喚されました @ ウィキ

ゼロの大魔道士-6


ルイズは今、夢を見ていた。
召喚したドラゴンを駆り、大空を羽ばたく夢だ。
光り輝くドラゴンは衆目を集め、それを御する自分には尊敬と畏怖の感情が向けられている。
なんていい気分なんだろう。
そうだ、このままヴァリエールの屋敷に向かい、姉や父母にこの使い魔を見せよう。
きっと皆驚くに違いない。
ルイズは満面の笑みを浮かべて手綱をさばく。
だが、その瞬間ドラゴンはルイズを振り落とし、そして姿を変えた。
突然の出来事にルイズは目を白黒させるしかなかない。
そして、最後に彼女が見た光景は

光り輝くドラゴンが、光り輝く頭を持つ人間に変わる場面だった。



「!!??」

ガバッ!
跳ね上がるようにルイズは上体を起こした。
キョロキョロと見回した視界に入ってきたのは見慣れた自分の部屋。
着ている服は学園の制服。

「あ…そうか、私…」

一連の出来事を思い出したルイズはふらふらと窓へと向かう。
外は既に暗闇に包まれ、二つの月が己の存在を示すように淡い光を放っている。

「サモン・サーヴァントに成功して、でもコントラクト・サーヴァントに失敗して、使い魔に逃げられて…」

昼間の出来事が走馬灯のようにルイズの脳裏に駆け巡っていく。
短い人生だが、ここまで天国から地獄を味わったのは初めての経験だった。
二度も使い魔(候補)に逃げられたメイジ。
明日からそう呼ばれることになると思うとどうにも気が重い。

「ま、まだよ。まだ完全に失敗って決まったわけじゃ…」

自分を奮起させるように、言い聞かせるように呟くルイズ。
だがその言葉はどんどん尻すぼみになっていく。
ドラゴン、平民(?)と立て続けに召喚した生物に逃げられ、最終的にルーンが刻まれたのは学院の教師だったと思い出したのだ。

「…こ、こうしてはいられないわ」

なんとか気を取り直したルイズは素早くベッドから降りると自分の使い魔となった人物を探すべく部屋を飛び出した。
と、勢いよく開け放たれたドアに鈍い感触が伝わる。
続いて何かが倒れこむかのような音。
一瞬、何が起きたのか把握できず、恐る恐る確かめるようにドアの向こう側を覗き見るルイズ。

「…え?」

ルイズは間の抜けた声を発した。
まず目に付いたのは大の字に倒れ、気絶しているコルベールの姿。
次に目に付いたのは彼に押しつぶされ、目を回しているサラマンダーの姿。
ルイズは、探し人がいきなり見つかったことに呆気に取られ――とりあえずコルベールを自分の部屋へと引きずりこんだ。
サラマンダーは放置して。



「う、ううん…?」

痛みに顔を顰めながら起き上がったコルベールは自分を心配そうに見つめるルイズの姿を視界に入れた。
額にはじんじんと焼け付くような痛みを癒してくれるひんやりとした布の感触。

「ミス・ヴァリエール? ここは…?」
「私の私室です。外に出たら、コルベール先生が倒れていたので治療をするべくぶしつけかとは思いましたが…」
「なんと…ありがとう、ミス・ヴァリエール」

深々と頭を下げるコルベールにルイズは冷や汗を流す。
嘘は言っていないが、言うべきことも言っていなかったからだ。
そう、自分が気絶の原因だということを。

「そ、それよりもコルベール先生。どうしてあんなところに?」
「いやその、君の容態が気になってね。それにこれからのことを話し合わなければならないだろう?」
「…はい」

ルイズの問いにコルベールはギクリと体を竦ませつつそう答える。
彼の答えは嘘だった。
そもそもルイズが起きているかは定かではないし、こんな時間に女性の部屋を訪れるのはマナーに反する。
では何故コルベールはあんなところにいたのか?
それは彼と一緒にいたサラマンダー、フレイムのせいだった。

(いえない、あのサラマンダーに髪の毛を数本抜かれたことに憤慨して追いかけてきたなど…)

誘導されるようにサラマンダーを追いかけてきたコルベールはルイズの開けたドアに額をぶつけた。
それが真相である。
だが、ルイズはあっさりと信じた様子を見せ、コルベールはほっと息をついた。

「あ、あの。結局のところ、私のコントラクト・サーヴァントはどうなるんでしょうか?」
「ミス・ヴァリエール。それは君次第だ」
「それはどういう…?」

訝しげなルイズにコルベールは左手を上げてみせる。
そこには、ルーンがしっかりと刻まれていた。

「少し、調べてみたのだがね。このルーンはただの使い魔のルーンではない」
「え?」
「ガンダールヴ。知っているかね?」
「は、はい。確か始祖ブリミルが使役したといわれる伝説の使い魔の…」
「そのガンダールヴが持っていたとされるルーン。それがこのルーンだ」
「へ…?」

目をパチクリと瞬かせてルイズはコルベールの言葉を反芻する。
真剣なコルベールの顔には冗談の色はない。

「まだ確定的なことは言えないが、これが本物であるならばこれはちょっとした事件だ。
 伝説の使い魔のルーンなど私でなくても注目するし、調査してみたいと思う」

だが、とコルベールは続ける。

「本題はそこではない。事の真偽はいずれ明らかになるだろうが…今はまずそれよりも優先しなければならないことがある」
「優先しなければならないこと?」
「君のコントラクト・サーヴァントによって刻まれたルーンは今私の手にある。それはつまり、私が君の使い魔だということだ」
「あ……す、すみません!」

ルイズは自分を恥じた。
自分の都合ばかり考えていたが、コルベールこそが今回の一番の被害者なのだ。
直接的な責任はない。
だが、コルベールに刻まれているルーンが自分の魔法の結果である以上、責任が全くないとは口が避けても言えないのだ。

「謝る必要はない。不意をつかれたとはいえ、この結果には私にも責任はある。
 さて、君には三つの道がある。一つ目はこのまま私を使い魔として扱うという道。
 二つ目は、使い魔はいないとして過ごす道。三つ目は、契約を破棄するという道だ」
「契約を破棄…できるんですか、そんなこと!?」

ルイズは飛びつくようにコルベールへと迫る。
だが、コルベールはゆっくりとかぶりを振り、彼女を落ち着かせた。

「それに関してはわからない、としか言いようがない。本来使い魔との契約の破棄は使い魔の死によってしかなされない、しかし」
「あの男はそれをなした」
「そうだ。どうやったのかはわからないが、確かに彼はコントラクト・サーヴァントを無効化して見せた。
 それが自力によるものなのかはわからないが、方法は存在するということになる」
「つまり――」
「そう、三つ目の道は、あの少年を探し出すということになるな」

コルベールの提案にルイズは俯いた。
あの時は頭に血が上っていたので冷静に判断できなかったのだが、今思えばあの少年は異質すぎた。
成立したはずのコントラクト・サーヴァントの無効化。
杖なし詠唱なしで空に浮き、かなりの速度で逃走する能力。
コルベールの言からすると、まだ見つかっていないのだろうが、彼の発見は絶望的だろう。
これは最初のドラゴンにいえることだが、逃げ出した生物が見つかるような場所にいるはずがないからだ。

とはいえ、二つ目の道は論外だ。
ただでさえ今日の失態は同級生たちにしっかりと目撃されている。
少年が契約解除をして逃げ出した部分はキュルケとその連れしか見ていない。
だが、彼女らが吹聴しないという保証は何処にもない。
その上で結局使い魔はいないですなどということになれば明日からどの面下げて学院を歩けというのか。
しかし、そうなると残ったのは――

「コルベール先生。先生はいいのですか? その、私の使い魔なんて…」
「こういう言い方は君には悪いかもしれないが、私に決定権はないのだよ。あくまで、決断するのは君だ、ミス・ヴァリエール」

穏やかに、それでいて厳格な声にルイズは気圧された。
そうだ、彼の立場からすれば自分の決定に異議を唱えることなどできるはずがないのだ。
例外な事態とはいえ、コントラクト・サーヴァントは始祖ブリミルに祝福された神聖な儀式。
それをよくわかっているであろうコルベールが不満を表に表すことなどありえるはずがない。

「わ、私は…」

自分より年上、教師、トライアングル、ハゲ、メイジ。
数々の単語の羅列がルイズの脳裏を駆け巡っていく。
実際問題、純粋に使い魔としてコルベールを判断すればそう悪いものではない。
メイジとしてのランクはもとより、教師としての深い知識、経験は決して損をもたらさないだろう。
しかし、しかしである。
人間を、しかも目上の人間を使い魔にするなどメイジ以前に人としてどうなのかと思う。
元々は不慮の事故による結果なのだ。
それなのに、自分の都合でコルベールの人生を左右していいのだろうか?
これが見ず知らずの平民なら迷うことはなかっただろう。
だが、相手が相手だけにルイズは簡単に決断を下せなかった。

「ミス・ヴァリエール」

コルベールの発したその言葉に、ルイズはハッと頭を上げた。

コルベールはにこやかに微笑んでいた。
己の運命をすべて受け入れ、それでいて悲観のない澄んだ微笑。
ルイズは気がついた。
コルベールは自分に決断させるといった。
だが、それは責任を押し付けているわけではない。
彼は自分が主人に足る人物なのか見極めようとしているのだ。
それは学院の教師としてではなく、またトライアングルの称号を持つメイジとしてでもない。
コルベールという一人の人間として、自分を見ているのだと。

(なら、私の成すべき事は――)

ルイズは背筋を伸ばし、コルベールの前に立った。
ルイズの背は小さいため、見上げるような形になるが、それでもルイズは胸を張って威厳を示すように表情を整える。

「私、ルイズ・フランソワーズ・ル・ブラン・ド・ラ・ヴァリエールは貴方を私の使い魔に望む」
「その望みに応えます。私は貴女の盾となり、降りかかる万難を排しましょう。
 ルイズ・フランソワーズ・ル・ブラン・ド・ラ・ヴァリエールよ。いや、我が主人よ」

コルベールはルイズの足元に跪き、姫に対して忠誠を誓う騎士のように言葉を紡いだ。
主従の誓いは結ばれる。
二つの月の光が照らす中、牙を捨てた炎蛇は、何よりも硬い忠誠という名の鱗をその身に纏った。





なお、この数秒後にフレイムの様子に気がついたキュルケが乱入し、この状況を見て騒ぐことになる。
その際、二人の女性に挟まれたコルベールは襲い来るプレッシャーに髪を数十本死滅させることになるのだが
それは、余談である。


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