異世界に召喚された翌朝、静留は窓から差し込んでくる薄明るい日の出の光と左腕に感じて重みを目覚めた。
重さの原因を探して視線を下げると、ルイズが静留の腕に軽く抱きついて眠っていた。
重さの原因を探して視線を下げると、ルイズが静留の腕に軽く抱きついて眠っていた。
「……あらあら、意外とあまえたなんやね、ご主人様は」
静留はくすりと微笑み、ルイズを起こさないようにベッドから抜け出ると、背筋を伸ばして部屋の中を見回す。すぐにベッドの脇にルイズの脱ぎ捨てられた服が目に入る。
「そういえば、なつきもよくこうやって服を散らかしてましたな……そや、洗濯でもしときましょか」
ルイズの服を集めながら静留は懐かしそうに呟くと、洗濯するために部屋の外に出た。
「……さて、どないしよ」
寄宿舎のすぐそばで水場を見つけたものの、どうやって洗濯したものかと静留が悩んでいると、寄宿舎からメイド服を着た黒髪の少女が洗濯物の入った篭を抱えて出てくる。
「あの~、すいまへんけど……」
「きゃ!」
「きゃ!」
静留に急に声をかけられ、驚いたのか少女は篭を抱えたまま尻餅をついてしまう。
「驚かしてすいませんな、怪我とかあらしまへんか?」
「だ、大丈夫です! わた、私こそ、こんな場所に貴族様がいらっしゃるとは思わなかったもので」
「だ、大丈夫です! わた、私こそ、こんな場所に貴族様がいらっしゃるとは思わなかったもので」
少女は立ち上がると、怯えたような表情で静留にぺこぺこと頭を下げる。
「なにをそんなに怯えてるんか知らんけど、うちは貴族とかやあらへんから安心しいや」
「……え?」
「……え?」
静留の苦笑交じりの言葉を聞いて、少女は不思議そうに小首をかしげた。
「それじゃ、あなたがミス・ヴァリエールが呼び出した……」
「あら、うちのこと知ってはるん?」
「あら、うちのこと知ってはるん?」
誤解を解いて少女と一緒に洗濯をしながら静留がたずねる。
「ええ、貴族の方々が召喚の魔法で平民を呼んでしまったと、噂していらしたもので」
「そうどすか。そう言えばまだ名乗ってまへんでしたな。うちの名前は静留いうんよ」
「シズルさんですか、いいお名前ですね。私は貴族の方々をお世話するために、ここでご奉公させていただいているメイドで、シエスタっていいます」
「シエスタさんどすな。これから色々よろしゅうに」
「い、いえ、こちらこそ」
「そうどすか。そう言えばまだ名乗ってまへんでしたな。うちの名前は静留いうんよ」
「シズルさんですか、いいお名前ですね。私は貴族の方々をお世話するために、ここでご奉公させていただいているメイドで、シエスタっていいます」
「シエスタさんどすな。これから色々よろしゅうに」
「い、いえ、こちらこそ」
静留が笑顔で手を差し出すと、シエスタは頬を赤く染めながら、はにかむように微笑んでその手を掴んだ。
「朝どすえ~、ご主人様~♪」
洗濯を終えて部屋に戻った静留は、ルイズを起こそうと柔らかな頬をプニプニ突きながら声を掛ける。
「うう~ん、もうちょっと寝かせて」
「ええんどすか? 起きへんならキスしちゃいますえ」
「ええんどすか? 起きへんならキスしちゃいますえ」
寝ぼけ眼で毛布に潜ろうとするルイズの耳元に静留がささやくと、ルイズはバッと飛び起きて部屋の隅っこへと逃げた。
「おはようさんどす、ルイズ様」
「はあはあ……お、おはようじゃないわよ! シ、シズル、起こすなら普通に起こしなさい!」
「お気に召しまへんか?」
「当たり前でしょ! 着替えるから服出して頂戴――あ、手伝わなくていいから」
「そうどすか、残念やねえ」
「はあはあ……お、おはようじゃないわよ! シ、シズル、起こすなら普通に起こしなさい!」
「お気に召しまへんか?」
「当たり前でしょ! 着替えるから服出して頂戴――あ、手伝わなくていいから」
「そうどすか、残念やねえ」
全然残念そうじゃなさそうな静留が差し出した服一式をルイズは奪い取ると、壁を背にした警戒態勢で着替える。
「そないに警戒せんでもええのに」
「あのねえ……まあ、いいわ。着替え終わったから、食堂に行くわよ」
「あのねえ……まあ、いいわ。着替え終わったから、食堂に行くわよ」
のほほんとした静留の態度に毒気を抜かれたルイズは、軽く頭を振って気を取り直すと自室の扉を開く。
ルイズが静留と一緒に部屋を出ると、ちょうど向かいの部屋の扉が開いて真っ赤な髪の少女が現れた。身長は静留より10cmほど高く、褐色の肌と大きな胸が特徴的だ。
(随分と色っぽい子やね。胸とか鴇羽さんより大きいかも知れへんな)
静留がらちもないことを考えていると、少女はにやにやと不適な笑みを浮かべてルイズに声をかける。
「あら、おはよう、ルイズ」
「おはよう、キュルケ」
ルイズは仏頂面で、嫌そうに挨拶を返す。
「ふ~ん、それがあなたの使い魔?」
「ええ、そうよ」
「ええ、そうよ」
キュルケは一瞬、静留を値踏みするようにジロジロと見回した後、ルイズの方を向いて意地悪そうな表情を浮かべる。
「へえ、本当にただの平民喚んじゃったのね。すごいわ、さすがゼロのルイズ」
「うるさいわね」
「あたしも昨日、使い魔を召喚したのよ。誰かさんと違って一発だったけど」
「あっそ」
「見せてあげる。おいで、フレイム!」
「うるさいわね」
「あたしも昨日、使い魔を召喚したのよ。誰かさんと違って一発だったけど」
「あっそ」
「見せてあげる。おいで、フレイム!」
キュルケの呼びかけに答えるように、彼女の部屋からのっそりと炎の尻尾を持った真っ赤な大トカゲが現れた。
「それってサラマンダー?」
「そうよ、ここまで鮮やかで大きい尻尾は、絶対に火竜山脈のサラマンダーね。好事家に見せたら値段なんかつけられないぐらいのブランドものね」
「ほんに立派なトカゲやねえ~。ちょっと触ってもええ?」
「そうよ、ここまで鮮やかで大きい尻尾は、絶対に火竜山脈のサラマンダーね。好事家に見せたら値段なんかつけられないぐらいのブランドものね」
「ほんに立派なトカゲやねえ~。ちょっと触ってもええ?」
静留はそう言ってルイズをさりげなく後ろにかばいながらフレイムの頭を撫でた。その静留の行動を見てキュルケが感心した表情を浮かべる。
「あら、平民なのに驚きもせずにフレイムを撫でるなんて勇気あるのね。うふふ、気に入ったわ。あなた、お名前は?」
「うちの名前は静留」
「シズル……なんか不思議な響きの名前ね。あたしの名はキュルケよ、よろしくね。じゃあ、お先に失礼」
「うちの名前は静留」
「シズル……なんか不思議な響きの名前ね。あたしの名はキュルケよ、よろしくね。じゃあ、お先に失礼」
そう言うとキュルケは使い魔を従えて去っていった。
「なんなのよ、あいつは! 自分がサラマンダー召喚したからって偉そうに!!」
「まあまあ、そんなに怒るとご飯がおいしゅうなくなりますえ。それにかいらいしいお顔が台無しや」
「なっ……何、言ってんのよ! ほら、さっさといくわよ」
「はいな」
「まあまあ、そんなに怒るとご飯がおいしゅうなくなりますえ。それにかいらいしいお顔が台無しや」
「なっ……何、言ってんのよ! ほら、さっさといくわよ」
「はいな」
ルイズは静留の言葉に顔を真っ赤にすると、嬉々として追ってくる静留を連れて食堂に向かった。