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Zero ed una bambola   ゼロと人形-15




 モット伯の屋敷に帰ってから丸一日が過ぎていた。だがアンジェリカは眠りから覚めない。
 学院ではモット伯の屋敷のことが噂に流れるのはその日の夕刻になってからだった。

 食事を終えて自室に戻り、ため息をつくルイズ。どうやら昨日のことは誰かに知られた様子はない。
 まるで他人事、昨日のことが夢のように思えた。言うなれば現実感がないのだ。

 ふと横になるアンジェリカに目を向ける。

「え、濡れてる…」

 それはどんな夢を見ているのだろうか、眠りながら涙を流すアンジェリカの姿があった。
 ルイズの脳裏に泣き叫ぶシエスタの姿が思い浮かぶ。そう、あれは夢ではなく現実に起きたのだ。
 アンジェリカは何故あのような凶行に奔ったのか、ルイズは思案する。そしてあるものが目に付く。

 そうだ、こいつなら何か分かるかも知れない。


「ねぇ、あんた。デルフリンガーっていったわよね?」
「あん? どうした娘っ子」

 ベットに横たわるアンジェリカの枕元、そこに立てかけたデルフリンガーに話しかける。

「あんたアンジェとずっと一緒にいたでしょ?何があったの?」
「お前さんが見たとおりだよ」
「違うのよ!あんたずっといたでしょ?」

 ルイズが聞きたいのはそういうことなのではない。あの行動の原因が知りたいのだ。

「…ああ」
「だからその時のアンジェの様子とか…ほら、いつもと様子が違ったとかないの?」

 ルイズの問いにデルフリンガーは何か躊躇っているように感じる。

「あの小娘とそんなに長くいたわけじゃねぇからよ、はっきりとしたことは分からないぜ?」
「それでもいいの。少しでもいいからあの子のことが知りたいのよ」
「そうか…」
「使い手って何? 武器屋でアンジェのことそういってたでしょ?」

 デルフリンガーはしばらく黙り込む。そしておもむろに鍔を鳴らす。

「まず使い手についてだが、悪いがオレにもよくわからねー」
「分からないって…自分のことでしょう?」
「正直いってよー。あんまりよく覚えてねーんだ。ただ直感で分かったんだ。こいつは使い手だってな」

 デルフリンガーは申し訳なさそうに鍔をカチャカチャ鳴らす。

「だけどな、あの小娘だがよ、ありゃあ少なからず戦闘の訓練受けてるぜ?」
「え? 訓練って…」

 あんな小さな女の子が? 何のために?

「剣の扱い方は素人みたいだが、あれはよーナイフくれーなら使ったことがあるな」
「ナイフね」

 そうだ護身用だ。護身用に訓練を受けていたに違いない、いやそうであって欲しい。

「それとな、気にいらねーがよ、鉄砲の腕はスゲーぞ。ありゃー生きた人間を撃った事があるぞ」

 ルイズの眼前にあの光景が広がる。過去にもアンジェリカは同じ惨劇を引き起こしたのだろうか。

「他に…他に何かないの?」

 アンジェリカが何者なのか、正面から向き合うためにデルフリンガーを促そうと声を絞り出す。

「オレって剣だから、使う奴の感情ってのは大体はわかんだ。だがよー、あの小娘は何も感じちゃいねぇ」
「感じていない?」
「そうだ。人を殺しても、その死を目の当たりにしても心に揺らぎがねぇ、まるで…そう人形のようだったな」
「人形……ね」
「それに頭の中もおかしいぜ? 思考がまともじゃねぇ」
「アンジェはおかしくないわよ!」

 思わず怒鳴ってしまう。
 ルイズの剣幕に慌てて補足をする。

「お、落ち着け。いいか、あの小娘は最初メイドの娘を助けようとしてたんだがよー」
「そ、それで?」
「途中から変わっちまってた。ただ敵を殺すことだけが目的になっちまった」

 話すのを躊躇っているのだろう、デルフリンガーの言葉が少しずつ弱々しくなる。
 だが聞かなければならないのだ。そして知らねばならない。アンジェリカ……己の使い魔のことを。



「続けてちょうだい」
「いいのか?」

 覚悟を決め、コクリと頷く。

「あいつは笑うんだ。殺しが楽しいわけじゃねー。人を殺すって事にはあいつは何にも感じちゃいない」
「じゃあ…何で笑うの?」
「お前だよ娘っ子。お前さんに褒めてもらえる、喜んでもらえるかと…そればっか言ってやがった」
「そんな!」

 デルフの言葉にルイズは頭を金鎚で殴られたような衝撃をおぼえた。
 そして、ぐっと言葉を一度飲み込んで、絞り出すように答えた。

「わたしそんなことで喜ばない…」
「そんなこたーオレだってわかってる。付き合いが短いがな。けどな、あの屋敷でも言ったろ?」

 ルイズは懸命に記憶を辿る。

「え、何か言ったかしら…」
「お前さんを通して誰かを見てんだよ」

 ルイズが思い出すより先にデルフリンガーが解答を提示した。

「誰かって…誰?」
「それはオレにもわからねーぜ。ただ…」
「ただ?」
「小娘は、そいつのために命を投げ出す覚悟があるってことだ」
「そんな…それって」
「きっとこれがアレだ。恋は盲目って奴だろーよ」
「何よ…何よそれ!」

 ルイズは堰を切ったように感情を爆発させる。

「お、おい」
「認めない、わたしは認めないから!」

 ルイズはベットに寝ているアンジェリカの胸倉を掴み揺する。

「アンジェ、起きなさい。起きなさいよ!あんたはわたしの使い魔なんだから!」
「娘っ子、やめな」

 デルフリンガーに止められ、荒い息を吐くルイズ。落ち着かなければと、深く息を吸い込む。

「ちょっと外に出てくるわ。シエスタの様子とか気になるし」
「おう、小娘のことは任しとけっていいてーが、何もできねぇ。悪いな」

 見守ってくれるだけで良い、そういい残してルイズは部屋を出て行った。
 それを見送りデルフリンガーはポツリと呟く。

「やっぱりいえねーよ。小娘がそう長くもたないなんてな…」

 デルフリンガーはあの戦闘を思い出す。そう、あの心の躍らぬあの戦いを…。

「もう使って欲しくねーぜ。もしオレが動けたらこいつを止められたのにな…」

 何もできなかった己を悔いる。

「もしオレが人間だったら…」

 誰に聞かせるわけでもなく一人呟いた。





Episodio 15

Sia umano
人という文字


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