あの作品のキャラがルイズに召喚されました @ ウィキ

使い魔定光-3


朝靄が立ち上る早朝。学院内の人間、そのほとんどがまだ夢の中に居る時間。
すでに院内の誰よりも早く起床し、身支度をはじめる少女がいた。
使用人の朝は早い。とりわけ、このシエスタは勤勉なメイドだった。

「あれ?」

さぁ、今日も一日頑張ろう!と気合を入れ、ドアノブに手をかけたシエスタの視界に、意外なものが飛び込む。

「流れ…星?」

もう日もだいぶ高く上がってきているというのに、その輝く光の筋は、青空に白い絵の具で描きつけたように、くっきりと映し出されていた。
つづけて、また流れる星。

「ふふ、朝からいいものみちゃった」

めったに見れないものを続けざまに2度も見たシエスタは、すっかり上機嫌になって
部屋を後にした。


これまでの経緯を簡単にだが、まとめておきたい。
いずれバックアップはとるが、現時点では不明瞭な点が多すぎるため
後日、一部書き換える可能性あり。

私は流刑体・撃針を追ってこの惑星、「ハルケギニア」に落着。
その際の衝撃で、ユマノイド・デバイスの一部機能が停止。
付近には数多くの現地住民が存在していたため、予定を変更。
即座に回収行動へと移った。
現地住民の協力もあり、無事撃針の回収に成功。
その後、母星への帰還は困難と判断した私は、回収に協力した現地住民のもとで、「使い魔」なる――――

(エラー。辞書ファイルに登録のない単語の記載。「使い魔」とはなにか)

『・・・こちらが聞きたいよ』

外はすっかり明るくなり、鳥の囀る声も聞こえ始めていた。
窓から差し込む日光と、ポンコツの頭部から放たれる、なんとも形容のしがたい
不愉快な音が、今朝のルイズの目覚ましとなった。

『起こしてしまったか。すまない』

何食わぬ顔で…といっても、兜を被ったその頭部からは表情はうかがえないが
そのようなニュアンスで、さも当然とも言いたげに自分の部屋の隅に陣取る黒い影。
それを見たルイズは一瞬凍りつき、その後、回り始めた思考回路によって、昨日の出来事を思い出したのか、深くため息をついた。

「夢じゃ…なかったのね…」
『同情するよ』

基本的に朝は普段に輪をかけて怒りっぽいルイズにとって、ポンコツの何気ないフォローと呼べないフォローは、彼女の機嫌を損ねるには充分であった。

「アンタなんかに同情されたくないわよ!」

ルイズは、昨夜脱ぎ散らかした衣服をポンコツに投げつけた。
混ざっていた下着が、輪投げの要領でポンコツの角にひっかかる。

『……』

何の反応も示さないポンコツに、ルイズはなんとも虚しくなり、また大きなため息をついた。



「…そうだ。それ、洗っといてよ」

なんとなく気まずい空気に耐え切れなくなったルイズが、話を切り出す。

『私は「回収」を義務付けられたデータ生命だ。君の身の回りの世話をする義務はない』
「ご主人様に口答えするな!だったらその義務とやらを今ここで言い渡してやるわ。さっさと洗濯に行ってきて頂戴」
『…この刻印のことを言っているのか?』

冷静な話し合いは望めないと判断したポンコツは、自らの左手に刻まれた印をルイズに見せながらつぶやいた。
ルーンと呼ばれる、メイジが使い魔との主従を結ぶ際に刻まれる印。
もっとも、これはポンコツの左手を構成するユマノイド・デバイスに直接刻まれたものでなく、その外装を覆う強化ナノスキンに刻まれたものだが。
なんでも、このポンコツに刻まれたルーンはめずらしいものだそうだ。
立ち会っていたコルベールがひどく興奮していたのを思い出す。

「そうよ。つまり、それは使い魔としてあんたが私に主従を誓った証なの。
あんたは私の命令を聞かなきゃいけない義務があるの!」

昨日説明した内容と、ほぼ同じことを声高と言い放つルイズ。
メイジ、使い魔、ルーン…ポンコツのデータファイルに登録するには、あまりにも
抽象的かつ非科学的な説明であった。

『……わかった。回収に差支えがない範囲の命令には従おう。衣服の洗浄も了解した』
「! そ、そうそう。最初からそうやって素直に従えばいいのよ」

取りつく島もないと判断したポンコツは、一旦引き下がる。
一方、ルイズはあっさり引き下がるポンコツが意外だったようで、少し驚いた顔をしていた。


『ところで』


ルイズの衣服を抱えて、部屋を出ようとしていたポンコツの足がふと止まり、こちらにゆっくりと振り返る。頭には下着をぶらさげたままだ。
もそもそと身支度を始めていたルイズは、背後からのその声におもわずビクリ、と震えた。

「な、なによ?」
『衣服の清掃場所は?』
「ここの裏側!階段下りてすぐよ!」

八つ当たりのようにポンコツに怒鳴りつけるルイズ。
昨日からずっと彼女はこの調子であった。



さんさんと輝く太陽。青く澄んだ空。
文句のつけようない晴天。
今日は絶好の洗濯日和であった。今朝の幸運な出来事もあり、洗濯物を干すシエスタの顔にも、自然と笑顔を浮かんでいた。
浮かんでいたのだが…

『失礼。衣服の洗浄場所はここでいいのか?回答の入力を』

突如、目の前の純白のシーツにヌっと、大きな影が写りこんだかと思うと
人間の声とは少し違う、まるで作り物のように聞こえる声がシエスタの頭上で響いた。

「はい?」

シエスタが振り返ったその先に立っていたものは、がっしりとした体格で、いびつな形をした兜を被った大男であった。
あまりの光景にシエスタは、声もなくその場で気を失ってしまった。
ポンコツの角にかかった薄桃色の下着が、そよ風に吹かれふわり、と舞った。


「あのポンコツ…!洗濯も満足にできないの!」

午前の授業が終わり、昨日の事など忘れてしまったかのように、今までどおりの喧騒に
包まれていた教室を一人後にし、ルイズは食堂へと歩を進めていた。
肩は大きく揺れ、歩幅も普段より大きく、前肢いいで怒りを表現している。
原因はやはりポンコツだった。
今朝、洗濯しに出たきり、彼はとうとう戻らなかったのだ。

「お仕置き決定ね!」

ルイズは、昨日からの仕返しとばかりに、今日の昼食は無しにしてやろうと固く心に誓った。


『やあ、ルイズ。洗濯はすべて完了したよ』
「あ…あんた…」

ルイズがポンコツと再開したのは食堂だった。
そこで待っていたのはメイドに顎で使われ、給仕のようなことをしているポンコツだった。
あの特異な姿で行う配膳は、はっきり言って不気味だ。
とにかく、ルイズはずんずんとポンコツに近寄り、腕をむんずとつかむと、食堂の外へと連れて行った。
凄まじい怪力である。

「あ、あんたねぇ!私が―――!」
『ああ、すまない。ルイズ。実は私なりにこの星のことを調べようと思ってね』
「呼び捨てするな!」

ポンコツの口から、これまでの経緯が説明される。
曰く、洗濯場に言ったはいいが、勝手がわからずとりあえず近くにいたメイド、シエスタに声をかけた。
だが、彼女は自分の姿に驚き気絶してしまったため、シエスタの回復を待って洗濯をすることにした。
だから時間がかかった、という事のようである。
ポンコツの弁明を聞いたルイズは、内心おもしろくなかった。



『その後、彼女にこの星も政治体系、文化、思想、物理法則などを聞いてね
 不明瞭な点も多かったが、おかげでこの星について色々と知ることができたよ』

その礼として、こうして雑務を手伝っていた…と、今でも食堂でせっせと働くシエスタを見ながら、ポンコツが締めくくった。

「…あんたは今日お昼抜きだからね」
『私は「データ生命」だ。君達有機体のように食物を摂取する必要はない』

せめてこのモヤモヤを晴らしてやろうと思い、先ほど決意したお仕置きもあっさりかわされてしまった。
その物言いに、今朝から機嫌の悪かったルイズの怒りの沸点が爆発してしまった。

「っ!!もう勝手にしたら!」

そう大声で言い残すと、彼女は再び食堂へ向かおうとポンコツの身体を押しのけた。


まさに、その時であった。
食堂のガラスがバリーンと盛大な音を立てて割れたかと思うと、それと同時に女子生徒の絹を裂くような絶叫か悲鳴か、そんな大声が食堂全体に響き渡った。

『危ない!』
「え――――――?」

ルイズが振り向く暇もなく、ポンコツが信じられない勢いで背後からのしかかった。
背中に感じる重さと、ゴリッという鈍い音。

直後、ルイズの上方から食堂の壁の破片が降りそそいだ。
まったく状況が読めない。だが、何か恐ろしいことが起こっているということは理解できた。

一瞬にして、そこは地獄と化した。


「ヒャハハハハハハハァッ!100年飛んで14年ぶりのシャバはやっぱサイコーだぜぇ!」

食堂の壁を貫通し、宙に停滞する「それ」は、ひどく耳障りな声で高揚したようにそう叫んでいた。
一見、こぶし大の大きさの立方体にしか見えない、「それ」がこの凄惨な状況を作り出した張本人であった。

『や…ヤツの名は…「角鍔(かくがく)」…流刑…体だ…』
「ちょっと!あんたその身体!」

ルイズはおもわず絶句した。
なんとか、自分を庇うように覆いかぶさっていたポンコツの巨体から這い出たはいいが、そのポンコツは、腰を半分抉り取られたような「傷」を負っていたのだ。

「いぃぃーーはぁ!!破壊だ!破壊だ!破壊だぁぁぁぁぁぁ!!」

先ほどまでの立方体から打って変わって、鋭利な刃物のような姿に変化した角鍔は
回転しながら、猛スピードで壁に突進し、食堂内を蹂躙した。
その鋭利な刃で切られた者がいたのか、血が噴き出すような音が聞こえた気がした。

『やはり…ユ、ユマノイド、デバイスに…異常が…物理保護…欠陥品め…!』
『る、ルイ…ズ…皆を外に…そして、君も早く…逃げ…』

ポンコツの声はノイズが混じりはじめ、もうほとんど正確に聞き取るのは難しい状態だった。

「わ、わかったから!もうしゃべらないで!…もう!なんなのよこれは!」



ルイズは、ふらふらな足で何とか立ち上がり、食堂にいる生徒達にここ逃げるように呼びかけた。
ルイズの眼前に広がるのは、高速で飛び回り、食堂内をめちゃくちゃに破壊している流刑体。
そして、身をかがめてそんな角鍔の猛攻をしのいでいる、生徒達の姿だった。
その中にはルイズの見知った人間も多数取り残されていた。

(これじゃ、下手に動けない…!)

これでは出ることも、入ることもできない…
どうやら怪我人もいるらしい、真っ赤に染まった床と血の匂いがルイズを追い詰める。
目の前の惨状、そして昨日の今日での流刑体騒ぎ。ルイズは次々と起こる事態に頭がついていけず、もう泣きそうだった。
思わず後ずさって、傍らのポンコツを見る。

「ポンコツ!なんとかしなさいよ!義務なんでしょ!でーたせーめーなんでしょ!?」

ルイズの悲痛な叫びにも、ポンコツは答えない。
それもそうだ…こいつは、ポンコツは私を庇って息絶えようとしているんだ…
ルイズは己の無力さが悔しかった。
自分は所詮、メイジにも使い魔のマスターにもなれないのか?
ここで動かないポンコツにすがって泣いているしかないのか…

『方法は…まだ、ある…』
「え!?」

最後の力を振り絞ったかのようなポンコツの声が響いた

「方法?ねぇ!方法って!?」
『頭…ザッ…ユニッ…かぶ…ザザ!…んだ』
「わからない!わかんないよ!どうすれば!ねぇ!?」
『はや…ザザ…ルイ…ズ…』

雑音は先ほどより大きくなり、ポンコツの声を聞き取ることはすでに不可能になっていた。
ポンコツは完全に事切れた…?
そんな焦りからルイズは、ポンコツの肩をつかみぐらぐらと揺らす。

「ちょっと!ポンコツ!しっかりしなさいよ!死ぬんじゃ…ないわよぉ!」

ポンコツは答えない。
あまりに強く揺らしすぎたのか、ポンコツの兜がズポリと抜け落ちた。
残されたのは、昨日見たのと同じ、グロテスクな人型の姿。
だが、昨日とは違い、ルイズにはそれが抜け殻のように感じられた。

ポンコツの頭からすっぽりと抜けたそれは、まるで意思があるかのようにゴロゴロと
転がり、やがてルイズの目の前でぴたりと止まった。
兜と目があったような気がした

「こ、これを…被れって言うの?」



「げひゃひゃひゃひゃひゃ!」

ひとしきり暴れまわった角鍔は、食堂を穴だらけにすることに夢中になっていて、まだ誰も殺していないことに気がついた。
これではおもしろくない。物をぶっこわすのも好きだが、生き物をぶっこわすのはもっと好きだ。

あたりを見回すと、ぐったりとうなだれている黒髪の少女がいた。
どうやら気絶しているらしい少女は、切り刻めば、さぞやきれいだろうなと思わせる
ふくよかな体つきだった。

「ひゃひゃひゃひゃ!いいカラダしてんじゃねぇーか!?最高にハイになってきたぜぇぇぇぇぇ!!」

言うや否や、銛のような姿に変化した角鍔がシエスタに狙いを定める。
そして、勢いよくシエスタめがけて飛び出し、彼女の身体を一突き……
されなかった。

角鍔はシエスタの前に立ちふさがった何者かの手により行く手を阻まれていた。
常人では不可能な芸当である。

『物理保護を最大値に設定』
「ぶつり…なんですって?」
『物理保護だ。衝撃から君の身体を守る。現にこうして』

ルイズの右手を守るように、透明な角柱が発生し、それが角鍔の猛攻を妨げていた。

「てめぇぇぇぇぇぇぇなにもんだごらぁぁぁぁぁぁ!!」

「で、でも…まさか本当に変身しちゃうとはね…」
『驚いている場合じゃないぞ!角鍔は目の前だ!』

ルイズは左手を握っては開き、自分の身に起きた事実に感嘆を上げた。
例えるなら、全身をピッタリと隙間なく柔らかい鎧に包まれたような…
ルイズははじめて感じる高揚感によっていた。
ただ、お世辞にもこの兜は被り心地がいいと言えないのが難点だが。

「てめぇぇぇ!むしすんなぁぁぁぁぁぁぁぁ!!」

自分の言葉を無視され、ひどく憤慨した角鍔は、銛から槍のようなものに姿を変え
なんとしてでも物理保護をやぶろうと、その勢いを強めた。

「うっさいわね!」

物理保護を打ち破ろうと必死な角鍔を、ルイズは思い切り物理保護で守られた右腕で殴りつける。
自身の突進のエネルギーも相乗され、勢いよく窓ガラスを割り、屋外へと吹っ飛ぶ角鍔。

「私はルイズ!ルイズ・フランソワーズ・ル・ブラン・ド・ラ・ヴァリエールよ!」


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