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双月の女神 第五章

半円階段状に配置される石机のある教室の講堂。
デイン王立の学院よりも大きいと、ミカヤは見立てる。
既にメイド服とカチューシャは、巫女装束とサークレットに着替えている。
朝食は厨房のまかない食のシチューで済ませたが、非常に美味だった。
ルイズと共に中に入るとすでに、他の生徒達が集まっている。
此方に気がついたのか、一様に生徒達は驚きの表情と思考を向けてきた。
無論、思考もほぼ一致していた。
『ゼロ』のルイズが女神を連れて来た、と。
彼らの思考は分からないでもないが、快く思えない。
その中で今朝方、ミカヤと面識を持ったキュルケは落ち着いており、右手を軽く振り、笑みを浮かべつつ挨拶。
そんな気さくな彼女に苦笑し、少し気を持ち直した。
一方のルイズは周囲の使い魔を見比べながら、此方が注目され、満悦だった。
何しろ、今まで魔法の行使を一度たりとも成功できなかった自分が、今回の使い魔召喚で「大当たり」を
引き当てたのだから。
眼球の姿をした魔物、バグベアー。蛸と人魚を掛け合わせた怪物、スキュア。
一睨みで生き物を石に変える石化のトカゲ、バシリスク。
巨大な蛇や、梟、烏に猫。
いずれもミカヤの神聖さ、美しさには敵わない。
目の前の、ミカヤに馴れ馴れしく手を振る仇敵であるキュルケのサラマンダーも、羨ましくはあるが及ばないと、
胸を張って言える。

「ミス・ミカヤ、此方にいらして。あんた達、そこをのきなさい。」

周囲にはべらせていた男子達をキュルケはすげなく追い払うと、ミカヤとルイズ、二人分の席を確保した。

「さ、遠慮はいりませんわ。
それとルイズ、あんたはミスのおまけなんだから。
私の傍で授業を受けられるのを精々ありがたく思うことね。」
「何よそれ!?」

先程までの思考を見透かしたかのような、相変わらずの意地の悪い笑みでそう言われ、おまけ扱いされたルイズは
憤慨するものの、ミカヤはキュルケの、二人を好奇や揶揄の視線から外そうとしている心を汲み取り、
礼を返す代わりに笑みを浮かべ、好意を受け取る。

「ルイズ、キュルケの好意に甘えましょう。私が二人の間に座ればいいでしょう?」
「う~~・・・。」

唸りつつも、ミカヤお姉さまが言うことならば、と従い、席に着く。
召喚されて短期間で、姉妹のように絆を深めている二人に目を細めるキュルケ。
正直、羨ましいと考えていた。
こうして、ミカヤは右にルイズ、左にキュルケと、間に挟まれる形で席につく。
メイジ以外は席に座ることが出来ない席に、ミカヤがかけることに誰も文句を言うことはない。
学院でも指折りの実力と実績を持つキュルケが席をすすめた相手。
更には怒りを買えば裁きを下しかねない、神聖さを持つ彼女を咎めることは大いに憚られたからであった。
壮年の女性のメイジの教師が教室に入ってきた。
メイジの卵達の、魔法の授業が始まる。
ミカヤはルイズの系統を見極め、正しく導く指針とするために真剣に取り組もうと考え、ルイズから貰い受けた
羊皮紙と羽ペンを取った。






ファイアーエムブレム外伝 ~双月の女神~

第一部 『ゼロの夜明け』

第五章 『失敗の意味』





「皆さん、春の使い魔召喚は、大成功のようですわね。
このシュヴルーズ、こうやって春の新学期に、様々な使い魔達を見ることがとても楽しみなのですよ。」

紫のマントを纏い、いかにも優しそうな女性の教師―――『赤土』の二つ名を持つメイジ、シュヴルーズは周囲を見渡すと、
満足そうに一しきり頷く。
その中で、ルイズとミカヤを目に止め、こちらに感嘆の意思を向けつつ、語る。

「ミス・ミカヤ。貴女のことはオールド・オスマンから伺っております。
何でも、異郷よりミス・ヴァリエールに召喚された、特殊な系統に精通されたメイジであると。
ミス・ヴァリエール、そして皆さん。くれぐれも粗相のないように。」

彼女の言から、オスマンの根回しがあったことに気づき、ミカヤは感謝の念を抱いた。
しかし、メイジとは言え女神でないならば、そう恐れることもないと考える愚か者がいた。
―――『風上』の二つ名を持つ、風を操るにはあまりにも締まらない、たっぷりとした体躯の少年、
マリコルヌ・ド・グランドプレはルイズへのからかいの言葉を口にした。

「『ゼロ』のルイズ!実のところ召喚できなかったから、ミス・ミカヤを代理にしたんだろう!?」
「違うわ!ミス・ミカヤは私の召喚に応えてくれたのよ!」

それにムキになり、反論するルイズ。

「嘘をつくな!お前に『サモン・サーヴァント』なんて・・・、ひぃっ!」

更にからかい、ルイズを辱めようとするが、二つの怒りの視線が向けられたことで情けない声を上げ、絶句する。
一人はミカヤ。そしてもう一人はキュルケ。
特に、歴戦の英雄の鋭い視線は効果覿面だった。
魔法が使えないルイズへの優越感からなる、誤った自負心をもっての心無い中傷。
このハルケギニアで出来た『妹』へのそれを、ミカヤは許しはしない。
ルイズへの中傷はミカヤへの無礼。そして、悪友とは言え、友人であるルイズへの侮辱にキュルケは、愚かな行為をした
マリコルヌに侮蔑と怒りの意思を向けたのだった。
最も、ミカヤがこの場にいなければ、この感情を前面に出せなかったと、後にミカヤに語ることになるのは、別の話である。
隣に座るルイズは、何故、キュルケまで自分への侮辱に怒りの意思を示したか分からず、狐につままれた気分だった。

「はい、そこまで!
お友達を『ゼロ』だの何だのと、不名誉な二つ名で呼んではいけません。
ミスタ・マリコルヌ、分かりましたか?」
「は、はい・・・。」

シュヴルーズの言葉に従うマリコルヌ。
教師が生徒を治めるのを見て、一度瞑目したミカヤは、意思を授業へと向ける。

「では、授業を始めますよ。」

シュヴルーズはそう切り出し、杖を軽く振る。
すると、『土』の魔法で生成された握りこぶし大の石礫が幾つか出現する。

「私のは二つ名は『赤土』。『赤土』のシュヴルーズです。
『土』系統の魔法を、これから一年、皆さんに講義します。」

にっこりと笑みを浮かべながら、講義を開始する。

「魔法の四大系統はご存知ですね、ミスタ・マリコルヌ?」
「は、はいっ、ミセス・シュヴルーズ。
我らが行使する、始祖ブリミルからハルケギニアにもたらされた
魔法四大系統。
『火』、『水』、『土』、『風』のことです!」

マリコルヌの質問に対する応答に、その通り、と頷くシュヴルーズ。

「始祖ブリミル御自身が使われていた、今は失われた系統魔法である
『虚無』を合わせて、全部で五つの系統。
これがハルケギニアの五つの力を司るものになります。」

この解説に、ミカヤは召喚された時の、契約の呪文の一節を思い出す。
―――五つの力を司るペンタゴン。
すなわち、五つの系統の点を、線で結ぶことで星と成す。
これは後述される『系統複合』に関わる。
ここでミカヤは、羊皮紙に今のシュヴルーズの解説を書き込み、授業を聞きつつ、考察する。
ルイズの該当する系統の模索、見極めのためである。

「その系統の中で『土』は最も重要なポジションを占めていると、私は考えます。
それは私が『土』系統だから、という身びいきではなく、万物の組成を司る、重要な魔法であるからです。」

要約すると、『土』とは「造る」ことに長けた系統である。
貴金属の精製加工から、建造物に使用する岩石等の石切、農耕作業に至るまで、生活に密接に関わっている。
テリウス大陸の農耕、建造技術は原始的であり、ハルケギニアの魔法が、ここまで人々の生活に関わっていたことに驚く
ミカヤ。
同時に、選民思想と平民軽視の温床になっていることにも気づく。

「今から皆さんには『土』系統の基本である、『錬金』の魔法を覚えてもらいます。
1年生の時に出来るようになった人もいるでしょうが、基本は大事です。
もう一度、おさらいすることに致します。」

そう言うとシュヴルーズは、石礫に向けて杖を振る。
すると、ただの石礫が光沢を持つ真鍮に変化した。

「ゴゴ、ゴールドですか、ミセス・シュヴルーズ!?」
「いえ、ただの真鍮です。ゴールドを錬金できるのは『スクウェア』クラス。
私はただの・・・、『トライアングル』ですから・・・。」

興奮を隠せないキュルケに、謙遜した物言いで返すシュヴルーズ。
ここで質問の挙手をするミカヤ。

「はい、ミス・ミカヤ?」
「先程の話に出た、『スクウェア』、『トライアングル』とは何でしょう?」

ミカヤの質問に頷き、答えるシュヴルーズ。

「そうですね。では、おさらいを兼ね、生徒達に答えてもらいましょう。
ミス・ツェルプストー?」
「はい、ミセス・シュヴルーズ。
一人のメイジの、複合出来る系統の、総数の基準のことですわ。」

質問に優雅美麗な笑みをたたえつつ、解答するキュルケ。
同時に、どうだ、と言わんばかりにルイズに意地の悪い笑みを見せる。
ミカヤへの点数稼ぎと取ったルイズは、キュルケを睨みつける。
それに満面の笑顔で続けるシュヴルーズ。

「そうです。それにより、メイジのクラスを分け、実力の基準としています。
単一系統の『ドット』、二つ以上を『ライン』、三つ以上を『トライアングル』。
そして、四つの系統を複合出来る『スクウェア』になります。
複合出来る系統数により、より高度な魔法を使用できます。
複合する系統が重複する時も同様ですね。」

その解説に納得がいったように頷くミカヤ。
『トライアングル』はメイジ人口でも少数の実力者であり、『スクウェア』になればさらに一握りの者だけになるのである。
このことから、目の前のシュヴルーズの実力の程が測れる。
―――では、ルイズはどうだろうか?
魔法の失敗が爆発現象になるかを聞くか否かを黙考している。
魔法の行使を正しく行えないことは気づいている。
そして、今のルイズの思考はその解説から後ろ向きになり、その『失敗』はことごとく、爆発現象に帰結することも。
しかし、人の心を読めることも含め、表立って聞けばルイズを傷つけてしまいかねない。
ルイズからは、自身の魔法の『結果』について聞いてはいないのだから。
そうして悩んでいる間に、シュヴルーズは、生徒に実践の指名をした。

「では、実際に皆さんもやってもらいましょう。
ミス・ヴァリエール。」
「え、私、ですか?」

まさかいきなり自身を指名されたしまったことに、慌てるルイズ。

「ミセス・シュヴルーズ、やめといたほうがいいと思います。
ミス・ヴァリエールに魔法を使わせるのは危険です。」
「危険?どうしてですか?」

キュルケは顔面蒼白にしての進言に、シュヴルーズは首を傾げつつ訊ねる。

「ミス・ヴァリエールに講義をするのは初めてですよね?」
「ええ。でも、彼女が努力家だということは聞いています。
さぁ、ミス・ヴァリエール、気にしないでやって御覧なさい。
失敗を恐れていては何も出来ませんよ?」

なんとかしてシュヴルーズに、ルイズの魔法の行使を思い止まらせようと、キュルケは進言を続けるが、生徒を思って、
実践をさせようとする。

「・・・やります。」

しかし、その膠着を解いたのは、他ならぬルイズだった。

「ルイズ、貴女だけじゃないのよ?ミス・ミカヤにまで怪我をさせるわ。
お願い、やめて。」
「うるさいわね、やると言ったらやるのよ。
それに、・・・・・成功するかも知れないじゃない。」

キュルケに止められ、更にムキになるルイズ。
その言葉は、ミカヤを召喚できた今の自分ならば、成功できるかも知れないという、一縷の望みに賭けるものだった。

「キュルケ、やらせてあげてください。」
「ミ、ミス・ミカヤまで・・・・・。」

その心を受け取ったミカヤはキュルケにそう告げた。最早頭を抱えつつも、椅子の下に隠れるしかなかった。
この後に起こることを理解している生徒達もそれに、続く。

「頑張ってね、ルイズ。」
「・・・・・、うん。」

ミカヤの笑みを受け、勇気を貰ったルイズは、一度笑顔で頷いた後、真剣な表情で教壇の前に立つ。
ミカヤの応援を受けたならば、失敗は許されない。
覚悟を決めたルイズの隣に、シュヴルーズが立ち、指導する。

「ミス・ヴァリエール、錬金したい金属を、強く心に浮かべるのです。」

その指導を受け、石礫に向き合い、『錬金』の呪文を詠唱する。
周りが椅子の下に避難する中、ミカヤは身じろぎせずにルイズを見据える。
そして、杖を石礫に振り下ろした次の瞬間―――

――――閃光と共に、轟音と爆風が教室を満たした。






とっさに身を屈め、強い耐魔力を持つマントと魔力障壁で魔力の奔流から身を守ったミカヤの、光に眩んだ視界が元に戻ると、
教室は惨状と化していた。
今の爆発現象に驚いた使い魔達は暴れ出し、キュルケのサラマンダーが火を吐き、マンティコアが窓ガラスを割りながら
外へ飛び出した。
そこから大蛇が入り込み、烏を丸呑みに。

「だから言ったでしょう、ミス・ミカヤ。「危険」だって。」

溜め息混じりに、隣のキュルケは立ち上がりつつ告げた。

「もう!ヴァリエールは退学にしてくれよ!」
「俺のラッキーが食われた!ラッキーが!」

生徒達も、使い魔達の暴れぶりに混乱をきたしていた。
ルイズの安否が気になり、見やると、気絶しているシュヴルーズと、衣服がボロボロになり、うずくまり、泣いている
ルイズの姿が。

「っ・・・、っ・・・!どうして・・・?召喚は上手くいったのに・・・っ。」

そんなルイズに追い討ちをかけるように、他の生徒達が怒鳴りつける。

「どうしてじゃないだろ!『ゼロ』のルイズッ!」
「何時だって成功の確率、殆どゼロじゃないかよ!」

生徒達が口々にゼロ、ゼロ、と連呼する度に下唇を強く噛み、うつむくルイズ。
その時だった。

「静まりなさい!」

突如聞こえた、憤りを込めた声が教室に響き、生徒が、そして暴れていた使い魔達すらも、そこに視線を向ける。
そして思い出したのだ。
今、声を発した存在が何者かで、誰に召喚されたかを。
弾かれたように、ルイズも顔を上げる。

「貴方達に、彼女を愚弄する資格はありません。」

ミカヤは言い切り、ルイズとシュヴルーズの傍まで歩み寄ると、
左のホルダーの頭に取り付けていた、治癒の杖『ライブ』を左手で引き抜く。
右手の、聖杖『マトローナ』から持ち替え、それを二人に向け、掲げる。
杖からほのかな光があふれ、二人の軽い切り傷を癒していく。

「・・・・・。」

傷が癒え、未だ呆けているルイズ。
だが、徐々に思考が正常に回るようになり、ミカヤの一連の行為、発言を思い返すと、ひしと、ミカヤにすがり、
声を殺して泣いた。

「今一度言います。」

そんなルイズを抱きしめながら、ミカヤは告げる。

「ミス・ヴァリエールへの心無い言葉は、使い魔である私が許しません。」

そんな二人を見て、沈黙することしかできない生徒達。
キュルケは、ミカヤに抱きすくめられ、宥められている姿を、不謹慎ながらも羨ましいと感じていたのだった。

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