あの作品のキャラがルイズに召喚されました @ ウィキ

3:先代の記憶


 気に入らない、何もかもが気に入らない。
『……おい、ルイズ。ひとまず我を下ろしてくれないか』
「黙ってらっしゃいッ!!」
 上に声をかける。どうせ役に立たないのにさらに仕事を増やすなこのバカ剣。
 今は教室の掃除中。教室にはルイズの魔法による爆発被害の残骸が散乱しており、それの片づけを命じられたのだ。
 元はといえばディムロスが悪い。ハルケギニアにおける基本的な魔法体系の授業で、勉強熱心なルイズからすれば今日の座学はカンタンなものだ。
 ただ他のワクセイから来たと豪語しているディムロスにとっては興味深い授業だったらしく、ここぞとばかりに鼻高々に説明をしていたら教師に目をつけられて魔法の実演をする事になったのである。
 実技内容は鉱石の錬金。石を真鍮に変えて見せろと言う基本的なものであった。

 それはいい。しかし直後にディムロスがとんでもない事を言いやがった。
『宝石リライズなら我の機能で可能だが』
 言われた通りに剣を翳したら本当に石を真鍮に変えやがったこの野郎。
 もちろん、使い魔が魔法を使える事が判ってその事自体は皆驚いたのだが、誰しも疑問である次の項目をつぶやいてしまった奴が居た。
「でも別にルイズがやったわけじゃないよな?」
 と。
 ルイズの使い魔の技量はわかったが、ルイズ自身の技量は判らない。それは教師も同じだったようで、次はルイズ自身が魔法の実演を求められたのである。
 ちなみにこの時、ルイズと授業を共にする者の多くは早々に机に隠れていらん事つぶやいたバカをフルボッコにしている。
 この先の危険を知らぬのはディムロスと教師くらいであった。
 当のディムロスも『そうか我がやってしまっては授業にならぬな』等とこんな所で物分りのよさを見せている。

 ルイズの魔法は例外なく失敗し爆発する。だからこそゼロのルイズなのだ。

『悪かった。まさかそういった事情があるとは我も知らなかったのだ』
 と弁明しているのが爆発の衝撃で天井に突き刺さってしまったディムロスである。現在進行形で放置を食らって天井からぶら下がっている。
「うるさいうるさい! 誰が自分の汚点を話したりするもんですか!」
『しかしあの威力はなかなか我にも……』
「いいから黙ってて!」
 ああもう、と片づけを進めるルイズに怒鳴られて、ディムロスは黙る。
 こういう気性の難しいマスターはディムロスにとっても初めてであり、しかも年頃の少女ともなればどうしたらいいか皆目検討が付かないのが実情だった。
(スタンはアレで体力気力に充実したまっすぐな若者だったからな。荒削りな所や猪突猛進を諌めるのが我の仕事であったが……)
 自分の能力にコンプレックスのある少女と言うのはどうフォローしたらいいものか、である。
 そういうのはアトワイトやクレメンテ老辺りの仕事だ。ああカーレルの奴ならハロルドの世話をよくやっていたな……。
(む……もしや我、ソーディアンで一番この手の仕事が苦手だったやもしれん)
 ええい自分は軍人で剣士で指揮官なのであって、などと自問自答していると、天井から無造作に引っこ抜かれた。ルイズの片づけが終わったのだ。
「……食事行くからもう要らん事言わないで」
『……気をつけるとしよう』
 そういえば周囲に声が聞こえすぎると言うこの環境も問題だな、とディムロスは思う。
 以前はマスターである者にしか聞こえない声であった為、特に気にする事も無い問題だったが、今はそうは行かない。
 環境の変化と言うのは難しいものだ、などとディムロスは考えていた。
 そんな事を考えていると、確かシエスタと言う名前のメイドが見繕ってくれた包み布に無造作に巻かれたまま、ディムロスは食堂に移動していた。

 全く気に入らない。使い魔とのしつけをしようにも、食事もいらないこの無機物にはオシオキの一つもくれてやる事は出来ないのも気に入らない。
 不機嫌なルイズが食事をとっていると顔見知りがやってきた。
「ルイズ、またやらかしたんだって?」
「からかいに来たなら後にしてキュルケ。私お腹すいてるの」
 取り付く島も無いといった様子のルイズである。無論お腹がすいているのは、昼食の時間ギリギリまで片づけをさせられていたせいだ。
「それもあるけど、あなた今日の朝部屋に居なかったでしょ。まさかあのゼロのルイズが朝帰りなんて思わなかったから。で、相手はどのクラスの男?」
 盛大に蒸せた。
「違うわよ! 朝はディムロスの世話をしていただけで!」
「ディムロス? 知らない名前ね」
 疑問に首をかしげたキュルケに、仕方なく腰に下げている剣を指し示す。キュルケはああ、と合点が言ったと手を打ってうなずいた。
「ああ、昨日呼んだって言うインテリジェンスソードの噂、本当だったんだ。で、それがコレ?」
『ディムロスだ。よろしく頼む』
 黙っていろと言われて黙っていたディムロスであったが、手にとられて見て初めて挨拶を口にした。
「あら、礼儀正しいのね。それに声もどこかダンディな響きが」
「ちょっとキュルケ、まさかアンタ無機物にまで手を出すつもりじゃないでしょうね」
 微熱のキュルケ。ルイズと同じく名門貴族の娘でありながら学院でも恋多き女として知られる。しかもそれが家系的に、であるのがどうしようもない。
「あらルイズ、知らないの? インテリジェンスソードにはね、普通作り主がいるものなのよ」
 キュルケはフフン、と鼻を鳴らして言う。
「そりゃ判るわよ」
「剣を作る時にモデルにするとしたら自分でしょう? それならもしかしたらディムロスの中の人…もとい製作者も凄いイケメンかもしれないじゃない!」
 ああ、見える、見えるわ風になびく麗しい長髪、剣を作るくらいだから剣にも魔法にも長けた美青年の姿が、などと一人盛り上がっているキュルケ。
 実際の所キュルケの妄想は殆ど(神がかり的に)的中していているのだが、本人もルイズにも知る由は無い。
 ディムロスはため息一つついて注釈を入れた。
『悪いが、我の人格モデルはすでにこの世には居ない』
「…え?」
『我が作られたのは1000年前の話だからな。こちらの人間の寿命がどれくらいなのかは知らんが、我の世界では普通寿命を全うして土に還る』
 キュルケはガックリと肩を落としてまだ見ぬ恋に破れると言う偉業まで達成していたが、ルイズは逆に驚いていた。
「アンタ、1000年も前に作られたの?」
『そうだが』
 モノに意識を与えるインテリジェンス系の魔法自体は、然程珍しいものではない。しかし1000年もの昔に作られたインテリジェンスソードともなれば、その希少価値は加速的に高まる。
 それを何が『別に普通だろ常考』見たいな顔をして(もとい口調で)しゃべっているのかこのバカ剣は。
『別に隠していたわけではないが、剣がしゃべると言う時点では然程驚かれなかったものでな。そこのキュルケしかり、あのコルベールという教師しかり。そちら……建造年数で驚かれるとは盲点だった』
 何でもディムロスの世界では剣がしゃべること自体が異常である為、普通はまずそっちで驚かれたらしい。
「って、あんたミスタ・コルベールの事なんで知ってるの?」
『召喚された時に話をしていただろう。我の事をものめずらしげにスケッチしていたようだったが』
 そうだったっけ、と思い出せば、召喚してから契約を行うまでの間に、興味深く観察をしていたようにも思える。
 ミスタ・コルベールといえば研究熱心な変人であるので、珍しい使い魔には興味を持ったのだろう。
「あら? 何かしら、あっちやけに人だかりが出来ているけど」
 思わずディムロスの話を興味深く聞いてしまっていたルイズは、キュルケの指摘でそちらの喧騒に気が付いた。
 そこは男子生徒が集まっているようなグループで、その喧騒の中でメイドが一心不乱に頭を下げているのがここからでも見えた。何か問題でも起こしたのだろうか。
 それであれば然程珍しい話でもなかったし、メイドがトラブルを抱えたらまぁいい結果には終わらないだろうなと、食べ残しの食事にフォークを戻したルイズであったが、ディムロスの言葉がそれを制止した。
『アレは……シエスタではないか?』
 確かに、その喧騒の中で貴族に頭を下げ続けているのは、今朝方世話になったシエスタという名前のメイドだった。



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