あの作品のキャラがルイズに召喚されました @ ウィキ

2:朝の廊下にて


 朝だ。何事も変わりなく。
 ルイズは部屋に一人だし、特に変わったことも無い。
『……おいルイズ、いい加減に起きろ、もう朝だぞ』
 変わったことあったよおい、と言う顔で起き上がる。頭痛がした。

 例のインテリジェンスソード……ソーディアン=ディムロスとやらは、机の上に放り出されている。
 紆余曲折を経て契約を完了した一人と一本であったが、この世界の事を何も知らないディムロスに対し使い魔の事やトリステイン魔法学院のこと、それどころかハルケギニアの事まで説明しなければならず、大雑把に説明し終える頃にはもう夜もとっぷり更けていたのである。
 使い魔としての能力を把握するには至らず、取り敢えず最初の仕事として『朝起こせ』と言っておいた命令は忠実に実行されている、というわけだ。割と律儀な剣である。何か起こし方が手馴れてるし。
「つーかさー…」
『何だ? いい加減さっさと顔を洗え』
「私、アンタを抜き身で持って歩かなきゃいけないわけ?」

 割とそこら辺は原作でも描写されてない部分だったりする。元々盗品だし。

 気に入らないのはそこなのだ、とルイズは廊下を歩く。顔を洗うついでだ。問題のディムロスは取り敢えずタオルに包んでいる。
 ディムロスに朝起こす時間を指定し忘れたせいで早起きしすぎたのが功を奏して、廊下には生徒の影も殆ど無い。時折生徒に出会えば、いつものような視線に辟易するだけだ。
「ちょっといいかしら」
 手近に居たメイドを呼び止める。洗濯物を運んでいた黒髪の女は驚いたように姿勢を正した。
「み、ミス・ヴァリエール。洗濯物がありましたら今からお部屋に伺いますが」
「そういうのじゃないの。何かこれを包める布が欲しいんだけど」
 なるべく目立たないように持っていたディムロスをタオルから半分取り出す。…冷静になれば、剣を持った貴族に声をかけられて平静でいられる平民はいないか、とも思った。
「け、剣……ですか? そう言えば昨日、剣の使い魔が召喚されたって……」
「そ、剣なのに鞘がないのよ。まさか抜き身でぶら下げるわけにはいかないでしょう?」
 気に入らないのはそこなのだ。なぜ召喚した自分が、使い魔の世話を焼いてやらねばならないのだ。普通使い魔というのは主の世話をするのが普通なのだ。
 ディムロスは剣だから自分で動けないという、全く持って基本的な問題である。
 かといって、気に入らない使い魔だからといって召喚しなおすわけにも行かない。使い魔契約……コントラクト・サーヴァントは使い魔が死ぬまで有効だが、剣をどうやって「殺せ」というのか。折れた程度では意味がないらしいし。
 それでも契約関係にあるのは、ようやく成功したサモン・サーヴァントの成果を手放すわけにはいかなかったという現実的な理由が大きいわけで、気に入らないのも無理は無いと思う。自分では。
「し、しかし貴族様のお持ちになる剣をお包みするような布は、今すぐには…」
「ああ、取り敢えずだからいいのよ。後でちゃんとした鞘は買いに行くつもりだから。ディムロスって言うの。気難しいから気をつけて」
『心外だな』
「?……ええと、ディムロスという剣なのですね。よろしければお預かりしてもよろしいですか? 今すぐ見繕ってまいりますので」
「ええ。お願い」
 メイドの態度に一抹の疑念は抱いたものの、取り敢えずこれで問題が一つ片付いたと胸をなでおろしていると。
『ルイズ、あまり我の事を公言しない方が良いぞ。我の声は素養を持った人間にしか聞こえん』
「……はい?」
 ルイズとメイドが不思議そうに首を傾げる。
『このメイドには我の声が聞こえていない。この学院ではそういうケースの方が珍しいようだが』
 つまり何か。ディムロスの声が聞こえているのはこの場では私だけで、メイドからしてみれば剣を妙な名前付きで読んだり、独り言の多い奇人変人にしか映らないということか。
「ちょっと!」
「は、はい、何か粗相がありましたでしょうかミス・ヴァリエール!」
 ディムロスに文句をつけようとしたらメイドに文句をつけてしまうこの状況。この野郎そういうことは先に言いやがれ。
「……え、えっと……そう、名前! 名前聞いてなかったかなー、なんて。その」
「し、シエスタと申します」
 両者は大変ぎこちなく笑顔をかわしたのであった。



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