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マジシャン ザ ルイズ 3章 (15)

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マジシャン ザ ルイズ (15)速やかなる反撃

トリステイン魔法学院からほどなくはなれた草原。
そこでは三百人からなる兵士達と、二十騎の竜騎士とが戦っていた。
三百人の兵士の指揮するは一人の貴族。その名をモット伯爵という。
「くそっ!バケモノどもめっ!」
波涛のモットの二つ名を持つ、水のトライアングルメイジによる水撃が、低空から襲い掛からんとしていた一騎を撃墜する。
だが、果たして打ち落とされたそれを竜騎士と言っても良いものか…
ドラゴンとは本来生命力に溢れ、恐ろしくも美しい肉体を誇るはずである。
しかし、撃墜されたものは余りにその印象とかけ離れていた。
目は淀んで落ち窪み、鱗は削げ落ち、いたるところに致命傷らしきものを負っている。
だらしなく開いた口からは悪臭を放つ粘液を撒き散らされ、見るものに汚らわしさと不快感を植えつける。
異常なのは竜だけではない、騎乗する騎士もまた異様であった。
先ほどの墜落の衝撃で投げ出された騎士が立ち上がる。
彼の首はあらぬ方向に曲がり、腹からは臓物がはみだしている。

一目見て分かる、生者に在らざる姿。
それらは動き回る死人であった。
「この世に迷うなどと…アルビオンは始祖ブリミルを汚すつもりか!」
再び水撃、別の竜騎士の飛竜の翼に命中し、その翼が根元から千切れ飛ぶ。
飛行不可能となり重力に誘われ地面へと落下する屍竜。
地表へ落ちた屍竜を追いかけるようにして地上に降り立つ多数の屍竜。
そうして周りを取り囲んだ屍竜達は、飛ぶ力を失った同胞に非情にも襲い掛かった。
その口を大きく開け、柔らかい腹や喉元に群がるようにして噛み付き、食いちぎる。

「う、うげぇっ…」
この光景を見たモットの副官が思わず口元を押さえて蹲った。
無理も無い、モットとて副官が先にそうしていなければ自分も吐いていたかもしれない。
「味方を食らうとは、そこまで外道に堕ちたかアルビオンッ!
 このような死者を手駒とするような行いが許されると思っているのか!?」

「思っているさ、戦場なんだからな」

上空から声。
モット伯爵達が見上げると、そこには一際大きな屍竜、そしてその背にはこの屍竜隊を率いる隊長らしき男の影があった。
「むしろ感謝を述べてもらいたいくらいだ。死してなお戦える喜びを。
 極上の死を迎えた上、更には何度も死を体験できるようにしてもらえるなど、幸せの限りではないか。
 勿論おまえ達にもくれてやるぞ、等しく平等な死を」
「おまえ達のような畜生道に堕ちた者どもに、我々が簡単に屈するとは思うな!」
モット伯が放った先ほどよりも強力な水撃が、敵指揮官の騎乗する屍竜に襲い掛かる。
しかし、モットの狙いすました必中の一撃は、屍竜の常識を無視した空中機動によって回避される。
「面白い、前言撤回だ。威勢の良いお前だけは生かしておいてやろう。
 だが、お前の部下達は殺す、焼き殺す。消し炭にしてやる。
 喜べ、お前は俺の炎の目撃者となることを許されたのだ!」
巧みな乗竜技能を発揮し、屍竜を低空まで滑空させる。

その時、指揮官の男の姿を月が照らし出した。
筋肉質な体つきはまるで鍛え上げられた剣士のようである。
だが、それ以上に特徴的なのは顔の左半分を覆う火傷のあと。
「さあ!お前たちの肉の焼ける芳しい香りを、俺に嗅がせてくれ!」
屍竜を操る男の右手が光った。


幸い、空から飛来する火炎の目標は魔法学院そのものであったのか、幸運にもウルザ達は障害に出会うことなくウェザーライトⅡへたどり着くことが出来た。
至近距離から見るその力強い勇姿はルイズ達に感嘆の息を漏らさせた。
全長は百メイル以上、その形はハルケギニアにあるどの船とも似ていない形をしている。
まず、船として最も目立つものであるはずのマストが無い、その上で船体が全体的にスリムであった。
このことによって横の全長に比べて、高さが圧倒的に低い。ハルケギニアのフネに比べて平たい印象を受けるフネとなっていた。
進空する船らしく翼を要しているが、本来なら艦中ほどに据えられる筈のそれは艦後方に配されている。
総じて、ルイズ達の思い描くフネとは違う、未知のフネ、それがウェザーライトⅡであった。

ルイズ達はフライの呪文を唱え、ウェザーライトⅡの甲板に降り立った。
もっとも、ルイズだけはウルザが魔法をかけて浮き上がったのであるが。
「ミスタ・ウルザ!」
ウェザーライトⅡの甲板に降り立ったルイズ達を出迎えたのは学院の教師、コルベールであった。
横には身長百八十サントとコルベールよりも長身の老人、学院長オールド・オスマンの姿もある。
「ミスタ・コルベール、事前の準備は全て整っているかね?」
「そんなことよりも、これはどういうことですかミスタ・ウルザ!どうしてこの場に生徒達がいるのですか!?
 きちんとポータルを用いてトリスタニアに送り届けると仰ったではありませんか!
 貴方は貴方の戦いに、私の生徒達を巻き込むおつもりですか!?」
学院の生徒達が驚く、彼女らはこのように声を荒げるコルベールを見るのは初めてのことである。
モンモランシーなどはあまりの剣幕にギーシュの後ろに隠れてしまった。
「落ち着きたまえ、ミスタ・コルベール。君の生徒が驚いているではないか。
 彼らがこの船に乗ることとなったのは事故だ。
 彼女達の到着を待たずポータルを使用したことに異論があるかもしれないが、ああしなければ敵の襲来でポータルそのものが破壊される危険性があったのだ。」
「む、しかし…」
論理的な説明に頭では納得したコルベールであったが、心はそう簡単についてゆかない。
彼の内部に蟠る暗部が、生徒達に戦場を見せることを許容しない。
「ミスタ・コルベール、今は君と言い争っている時間は無い、文句は後で聞こう。
 まずはこの場を飛び立つことが先決だ。準備は整っているかね?」
「………」
未だ心の整理がつかぬコルベールに代わり、横に立つオールド・オスマンが答えた。
「先ほど全ての準備が整ったところじゃ、後は動力があればとりあえず飛ぶことはできるそうじゃ」
「了解した。それでは事前の手順は全て省略の上、今すぐ緊急浮上を行う。
 諸君、念のため手近なところに掴まりたまえ」
ウルザは全員が手近なものにつかまったことを確認すると眼鏡を外し、両手を掲げた。
「………ウェザーライトⅡ、発進する」
ウルザの号令。

最初に彼の体を中心として、波紋の如き衝撃波が広がった。
体重の軽いタバサなどはこれで体が浮いてしまうほどであったが、それを見たコルベールが慌てて手を掴み、彼女を引き寄せた。
次に、稲妻が落ちたかのような閃光が閃き、ウルザを見つめていた者の目を一瞬焼いた。
そうして眩んだ目を再び開いた時、彼らが見たものはウルザの目から電撃の様なのたうつ何かが迸り、それが暴れ狂いながらウェザーライトⅡへ流れ込んでいく光景であった。
ウルザは歯を食いしばりながら己の頭蓋に埋め込まれた二つの魔力原動機、マイトストーン、ウィークストーンの力を制御する。
多すぎず少なすぎず、段階に応じた魔力を開放し、それをウェザーライトⅡのスランエンジンへと流し込む繊細な作業を続ける。



暫くするとルイズ達にも分かる、目に見えた変化が起こった。
ウェザーライトⅡの船体がぼんやりと輝き出したのである。
更には同じ輝きを灯した白く光る膜のようなものが船全体を包み込んだ。
自らの足元を照らす淡い光と、周囲を覆う白い輝き。
その幻想的な光景に、誰もが見入った。
そうして見入っていた中、この場で最も強く警戒心を持っていた人間が、迫り来る危険を迅速に察知した。
「フネだ!あれは…アルビオンの戦艦だよ!凄い速さで近づいてくる!?」
最初に気付いたフードを目深に下ろした女性の声に、全員が注目する。
そこには現在魔法学院を攻撃している影とは別の、アルビオンのフネの姿があった。
それが十隻、猛スピードで前方から迫って来ているのだった。

「…ん?今の声、何処かで聞いたことがある気がするんじゃが………」
「…うっ」
オールド・オスマンの鋭い指摘にフーケがフードを押さえてそっぽを向く。
「んー?んー?お嬢さん、ちょぉっと顔を見せてもらえんかなぁ」
「いえ、それは………」
「オールド・オスマン!こんな時に何を言っているんですか!敵が近づいているんですよ!?」
危機感無く謎のフードへの追求を開始するオスマンに、すかさずルイズが噛み付いた。
「しかしのぅ、わしらが騒いだとて、どうにかなるような問題じゃあるまいて。
 ………そら、どうやら飛ぶようじゃぞ?」
オスマンがそう言うや否や、船に搭乗したもの全員を浮遊感が襲った。
一瞬、大地からの重力を切り離されたように感じた時、既にウェザーライトⅡは宙へと浮かび上がっていた。
そして、次に彼らを襲ったのは復活した重力の軛。
突然軽くなった体が、再び本来の重さを取り戻す。
「諸君!しっかり掴まっていたまえっ!」
未だ力を放出し続けているウルザの声に、全員が体を固くする。
だが、次に身構えていた体に掛かったのは、緩やかな横の慣性であった。
先ほどの衝撃波や浮き上がった時の不思議な感覚に比べれば、こんなもの大したことは無い。
そう思ったものもいたのだが、その考えは前方を見た際に即座に改められた。
確かに横に引張られる力は弱い。だが、ウェザーライトⅡが前方に進んでいく速さは感じる慣性とは到底かみ合わぬ高速のものであった。
みるみるうちに視界の中で大きくなっていく敵戦艦。
それが目と鼻の先になった時、全体を覆っていた白い膜が前方に収束した。


そうして、ウェザーライトⅡは敵戦艦正面に突き刺さった。


だが、突き刺さっただけではない。
ウェザーライトⅡは、まるで何も阻むものが無いかのように敵戦艦を粉砕し、破壊し、貫いてく。

盛大な破砕音。
巨大な建造物が、力任せに引きちぎられる時の音。
ルイズはそんなものを聞いたことのある、数少ない一人となった。


                      もっとだ!もっと嗅がせろ!そうだ、肉の焼ける臭いをだ!
                                     ―――メンヌヴィル


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