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真白なる使い魔05


 オトメの育成機関ガルデローベ。その広大な敷地の地下の一角に学園の保険医を兼ねる研究主任『ヨウコ・ヘレネー』のラボはある。
 元々、遙か過去の地球時代の文物、はたまた乙式HiME関連機器が集められたこの部屋には、現在一つの医療ポッドが設置され、その中では呼吸機器を装着された一人の少年が深い眠りについていた。
「ヨウコ先生。マシロ陛下の容態はどうなのですか?」
「傷はもうふさがっているわ。完全な健康体と言って良いでしょうね。」
 黒髪を頭の両脇で結った特徴的な髪の少女ニナ・ウォンが、この施設の責任者である女性を前に、不安からか強い語調で問いかける。その周りには、このニナと同様にポッドで眠る少年を主とする二人の少女。そしてこの学園の長である美しき青服の美女など数名が居た。
 元来、このポッドで眠る少年は、本日の昼間に行われるハズであった式典に出席するハズであったが、その直前の事故により頭から血を流し昏倒したため、このラボへと身柄を移して治療を行う事となったのだった。この国の王たるこの少年マシロ・ブラン・ド・ヴィントブルーム。その身を案じる者は多い。
「ヨウコ主任。では、時間をおけばやがて目覚める。そう考えて構わないのだな?」
 学園長ナツキ・クルーガーの声に、ヨウコは頭を振る。
「いえ。そうではないの。マシロ陛下の脳は現在覚醒状態。つまり、起きているときと全く同じ状態なの。でも、身体は見ての通り睡眠状態にあるわ。」
 お下げの少女アリカがヨウコの白衣の袖を掴む。
「ねえ、それってどういう事?マシロちゃんはどうなってしまったの?教えて!ヨウコ先生!!」
 ヨウコは優しくアリカの頭を撫でながら答える。
「つまり、原因が掴めなければ、マシロ陛下が再び目を覚ます事は無いのよ。」
 その場に重々しい空気が流れた。医療機器の規則的な作動音だけがその場にこだましている。しかし、それは次の瞬間にかき消される。
 急激な容態の変化。悪化とかそういう物ではない。むしろその生命活動は、より一層活発な物となっている事を医療機器は計測していた。しかし、ヨウコ以下、その場に居合わせた者はソレよりもマシロその人の姿に注目している。
「真白なる金剛石?」
 金色の髪の少女エルスが呟く。それは正しくヴィントブルーム王の証であり、マシロ自身と融合している伝説のJEMであった。真白なる金剛石は、医療ポッドに浮かぶマシロの胸の前に出現し、目映い光を放っている。
「一体これはどういう事だ。」
「解らないわ。いまは見守ることしかできない。」
 ナツキの声に動揺を隠せないままヨウコは答える。一方、その光に怯む事無くポッドに走り寄る姿がある。即ちマシロのオトメであるアリカ、ニナ、エルスの3人と、元許嫁の妹であるアラシの併せて4人が。ことに、マシロの義理の姉であるアリカは錯乱したかのように必死でマシロの名を叫びつつポッドの外壁を叩いていた。
「やめろ!。マシロのポッドをオトメのバカ力で破壊する気か!愚か者」
「で、でもアラシ様」
 その時、目映くラボを満たしていた光は収束して一つの像を結んだ。それは3人のオトメには見覚えのある巨体。
『カグツチ!?』
 カグツチは大きく首を伸ばすと、その胸から口にかけて烈光が移動している。
 その場に居た者達が息を呑む。
 そして遂にそのプラズマ球が放たれ・・・・
 次の瞬間、霧のように、カグツチは吐きだしたプラズマ球諸共にかき消えた。
 その場の者達が、ホッと胸をなで下ろす。
「一体何がマシロ陛下の身に起こったというのだ。」
 ナツキはマシロのポッドを眺め、そう漏らした。
 それはその光景を見た全員の思った事。
 しかし彼女たちは気付いていない。その出来事がこことは異なる世界でマシロが行ったとある検査が原因で、時を同じくしてあちら側の世界でも同じ現象が起こっていたとは。そしてマシロがその世界をエアルの過去の姿と思いこんでしまっただなんて。




 オスマン学院長の審問を終え、二人が食堂に到着した時、すでに他の生徒は夕食を終えて部屋へ戻っており、二人はガランとしたアルヴィーズの食堂にぽつんと佇んでいた。
 「さすがに来るのが遅すぎたかしら?」「まあ、この時間だしね」と言葉を交わしていると、厨房の扉が開き、顎髭の立派な中年男性が手招きをして二人を呼び止めた。
「貴族のお嬢ちゃん達、話はミスタ・コルベールから聞いている。二人の分の夕食はこっちに置いてあるからさっさと来な。」
 夕食の時間に間に合わなかった事で、多少オスマン学院長を恨む気持ちのあったルイズだったが、ソレを聞いて先程の審問中にミスタ・コルベールが言いつけられていた用事はこれだったかと思い至り、心の中で感謝した。流石に突然召喚されたあげくに夕食抜きなどという事態では、これが男の平民相手ならまだしも、ただでさえ未来のトリステイン王らしいのに年下の少女であるマシロに対して気まずいといったらありゃしない。
 そういえば、この中年男性はマルトーとかいって、かなり腕のある料理人であると以前聞いた事を思い出し、早速ルイズはその事をマシロに告げた。
「この人は、ここの料理長で国一番のコックのミスタ・マルトーよ。この人の作った料理なら間違いなくマシロの口にも合うと思うわ。」
「へえ、スゴイ。ボクそんなスゴイ人の料理を食べるのはじめてだよ。マルトーさん、ボク達の為に料理を残しておいてくれてありがとうございます。」
 貴族嫌いではある物の、これだけの美少女二人に立て続けにその自慢の技術を褒められて悪い気がするわけもなく、ミスタ・コルベールの依頼にそれまで多少なりとも不満を持っていたマルトーも、「たまにはこういうのも悪くないか」と思い、自然に笑みが漏れる。そしてそれを見たルイズの方も、『平民にしては中々の紳士よね』とマルトーに良い印象を持つに至った。
 そんなルイズはマシロの言葉に、ふと腑に落ちない印象を受ける。『そんなスゴイ人の料理を食べるのはじめて』そうマシロは言っていた。王族だったら、そうした人間の作る料理位食べたことはあっても良いはずだろうに。
「ねえ、王族だったら園遊会とかでそういう機会あったんじゃないの?」
「いや、ボクは半年前に即位するまでは普通の一市民として育っているからね。それからも色々あってそういう席に参加することって、今まで無かったし。」
 こそこそと小さい声で言葉を交わす二人。
 そんな二人の様子を見たマルトーは『女の子ってヤツはホントにお喋りが好きだな。こういうところはウチのメイド連中と変わんねえか』と、この少女達に幾分親しみを感じるのだった。

 薄暗い食堂の奥にある扉を潜り厨房にはいると、そこには質素なテーブルの上にささやかな夕食が載っていた。その脇にはワインと薄切りにしたチーズの乗せた皿。どうもマルトー料理長は、晩酌しながら二人を待っていた様だった。
「じゃあいただきましょう。」
「うん」
 そう言ってルイズは始祖ブリミルへの祈りを初め、マシロもそれに習う。
 料理は、本来は大皿から各自取り分けて食べる形だったようで、見栄えは取り分けた後の状態で載っている現在は、それほど豪華には見えない。しかし、そ取り分けた後で暖め直されその上で一手間加えられていることもあって、いつもルイズ達生徒が口にして居るものと違い、暖かでいつもより遙かに旨く感じられる。
「おいし・・・・」
 思わず口をついて出る言葉。それは反射的に出たもので、そこに何の恣意も有りはしない。
 マルトーは腕の良いコックとして、この学園の料理長となる前は、自分の理想の店を持つ資金を得るべく、トリステインのみならずハルケギニア中を旅してまわる流しのコックであった。そんな彼は、『食通』を名乗る食い道楽の貴族の賞賛を幾度となく受けている。だが、そうした言葉が修飾に満ちた物であるのに対して、その味がわかる自分を持ち上げようとでもいう考えが見て取れる。そんな賞賛に物足りない物を感じるマルトーとしては、こんなルイズの素直で率直な感想こそ嬉しかった。
 ついつい楽しくなってしまったマルトーは、暖め直していたスープの鍋をどかすと、まだ火の落としていないそのコンロで、軽く一品作り足して、暖め終わったスープと一緒に二人の前に出す。
「コイツはほんのサービスだ。味わってくれ。」
 ほんのささやかな野菜のソテーではあるが、それは作りたてという事もあり、香しく食卓を彩る。マシロとルイズは礼を述べ、食事を続行した。
「まったく、最近の貴族どもと来たら、評論めいた言いぐさばかりで料理を素直に味わおうとしねえ。終いには生半可な知識で料理方法にまで口出しすんだからたまんねえ。もっと嬢ちゃん達のように普通に楽しんでもらえる方が、こちとら腕の振るいようもあるってのに・・・・・・。」
 時折こぼされる酔ったマルトーのそんな愚痴に、苦笑しつつも、二人は晩餐を楽しんだ。



 やがて料理はキレイに平らげられ、二人はマルトーに一礼してその場を去ろうとしたその時、その声が響く。
「ゼロのルイズ。ようやく見つけたわ。」
 途端にルイズの表情が不快感にゆがむ。マシロが声の方に視線を向けると、そこには美女と美少女の二人組の姿があった。烈火と吹雪、そんな赤毛と蒼髪の少女達にマシロの目が釘付けとなる。
「ツェルプストー。何の用?」
 不快さを隠そうともせずルイズが言い放つのと対照に、キュルケと呼ばれた少女は平然とした態度でマシロに手を差し出す。
「アタシはキュルケ・アウグスタ・フレデリカ・フォン・アンハルツ・ツェルプストーよ。よろしくね。こっちはアタシの友人のタバサ。」
「ヨロシク」
 勢いに流されるままに二人と握手を交わすマシロ。突如ルイズは二人との間に割って入る。
「こんなヤツに挨拶する必要は無いわ。」
 そう言うルイズの声は随分と気負っているように感じられた。マシロはルイズとこの二人、特にキュルケという少女との間に余程の事があるのだろうかと気が気でなかった。
 だが、そんな心配など杞憂とばかりにキュルケは、笑みを浮かべ、ルイズに向かって言いはなった。

「残念だけどそうはいかないわよ、ルイズ・フランソワーズ・ル・ブラン・ド・ラ・ヴァリエール。私達はそこにいる彼女の面倒を見てやってくれって、ミスタ・コルベールに頼まれたんだから。」



つづく。


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