あの作品のキャラがルイズに召喚されました @ ウィキ

ゼロの大魔道士-5


『炎蛇』のコルベール。
彼はトリステイン魔法学院の学院長オスマンの片腕として知られている一教師。
火系統の魔法を得意とするトライアングルメイジで、その腕前は見たものこそほとんど皆無ではあるものの、凄腕だと噂されている。
そして、魔法の更なる活用法を発見しようと日夜研究している変人としても名が知れ渡っている。
教師としての評判はそれなりに悪くはない。
権威や主義に凝り固まった教師の多い中、コルベールは時折自分の世界に入り込むことを除けば気さくな大人だったからだ。

「…と、いうわけです」

そんな彼は今、学院長室にいた。
本日行われたサモン・サーヴァント及びコントラクト・サーヴァントの結果報告のためだった。
しかし、その表情は暗い。
原因は言うまでもなく、その左手の甲に刻み込まれているルーンの紋様にあった。

(ああ、何故こんなことに…)

ううむ、と唸るように考え込む表情を見せるオスマンを前にしてコルベールは真っ青な表情で立ち尽くす。
謎の平民の少年に刻まれたはずのルーンが自分に刻み込まれる。
しかもその原因と思われる少年は逃走。
残ったのは自分の手に浮かぶルイズの使い魔の証であるルーン。

(始祖ブリミルよ。私が一体何を……)

したというのですか、とは繋げられなかった。
過去を掘り起こせば十分自分はこんな目にあうにふさわしい所業をなしてきたのだから。
これも贖罪なのか…
コルベールは今更ながら真剣に自分の過去を悔やんだ。

「ふむ、大体の事情はわかった」

ギシ、とオスマンの座る椅子が軋む。
身を乗り出すようにして自身を見つめるオスマンにコルベールは冷や汗をかく。
どう考えても今回の事件は学院設立上最大の汚点となる事件である。
オスマンがどういった判断を下すのかは不明だが、最悪の場合はクビも覚悟せねばなるまい。
ぐびり、とコルベールは緊張に生唾を飲み込んだ。

「で、柔らかかったかね?」
「は?」

オスマンの第一声は意味不明だった。
柔らかい? 何が?

「またまた。お主がミス・ヴァリエールの使い魔になったということは…したんじゃろ、唇と唇をぶちゅっと!」

このこのっ。
ニヤけた表情で自分をつついてくる老人にコルベールは呆然となる。
が、すぐにその表情は憤怒へと変化する。
この老人は、自分が真剣に悩んで報告をしたというのに、ロクに話を聞いていなかったのだ。

「…オールド・オスマン?」
「なんじゃ、そんなに照れ……ぬおっ!」

ゾッとするような声がオスマンの耳に届いた。
やばい、流石にやりすぎた!?
自分に恐怖を与える男に、オスマンは場を和ませよう作戦が失敗したことを悟った。
なお、オスマンがコルベールをなだめるのに要した労力は普段秘書に行っているセクハラの謝罪の三倍くらいだったという。



「こほん。しかしまたとんでもないことになったもんじゃの」
「はい。情けないことですが、正直私も途方に暮れていまして…」

項垂れるコルベールにオスマンはさもありなんとばかりに頷く。
突然自身の生徒の使い魔になってしまったなど、想像を絶する事態である。
しかも主である相手はゼロのルイズことルイズ・フランソワーズ・ル・ブラン・ド・ラ・ヴァリエール。
もしも自分が彼の立場だったらと思うと、羨まし…ごほん、耐えられるものではないだろう、色々と。

「ところで、ミス・ヴァリエールはどうしたのかね?」
「それが…逃亡した少年に向けて一通り罵声、あ、いや、叫んだかと思ったらふっと気絶してしまいまして」
「まあ、無理もないがの…」

契約しようと思ったドラゴンは逃げた。
更に、契約を交わしたはずの平民は契約を解除してやはり逃げた。
これでショックを受けない方がおかしい。

「しかしどうするんじゃ? 件のドラゴンと少年は逃亡したまま。
 このままじゃとお主がミス・ヴァリエールの正式な使い魔ということになるが…」
「……」

オスマンの問いにコルベールは答えられない。
サーヴァントの儀式は始祖ブリミルに祝福された神聖な儀式である。
つまり、主側も使い魔側もお互いに結果に対して異議を唱えてはならない。
だが、今回のこれは通常とはとても言いがたい事態だった。

「…まずは、ミス・ヴァリエールの目が覚めるのを待つことにします」
「まあそれしかないじゃろうな…しかしコルベール君。もしもミス・ヴァリエールが君を使い魔にすると決めたらどうするのかね?」
「……彼女の意思に従います。立場としては私の方が従なのですから」

ともすれば溜息が漏れそうな表情をしながらも、コルベールはキッパリとそう宣言した。
過程がどうであろうと、結果がこうなっている以上、決定権はルイズにある。
それに、元はといえば自分の油断が招いたミスなのだ。

「ふむ、そこまでの決意ならば止めたりはせんが…しかしドラゴンのほうもじゃが、逃亡した少年が気にかかるところじゃの」
「はい。あまりの事態にデティクトマジックを使うことすら忘れていましたが…」

思い出す。
少年は確かに空に浮いて逃亡した。
しかも気がついた範囲では詠唱の声は聞こえなかったし、杖も持っていた様子はなかった。

「詠唱なし、杖なしでの魔法行使。その上コントラクト・サーヴァントの解除」
「できるものなら是非話を聞いてみたいものじゃが…」

それは無理だろう、と二人の男はそれぞれの理由で溜息を漏らすのだった。




男二人が顔をつき合わせて溜息をついていたその頃。

「ああっ、ジャン…っ!」

とある一室で赤い髪の女性がベッドの上で転げまわるという奇態を披露していた。
彼女の名はキュルケ・アウグスタ・フレデリカ・フォン・アンハルツ・ツェルプストー。
通称『微熱』のキュルケ。
燃えるような美貌とグラマラスな肢体で数多の男を魅了する彼女は今、たった一人の男に恋焦がれていた。
その男の名はコルベール。
先程の儀式で彼女の仇敵たるルイズの使い魔になってしまった男である。

「ああ、貴方のことを思うと胸が熱くなる…そう、これが…私の微熱!」

バッと起き上がり、両手を胸の前で拝むように組む。
頬は朱に染まり、その頭からはハートマークが乱舞している。
キュルケという女性は惚れっぽい。
それゆえにこういった行動に出ることは珍しいことではなかった。
だが、今度は相手が相手である。
相手は一回りどころか二倍以上の歳上、しかも容姿的にも良いとは言えず、パッと見はうだつのあがらない中間管理職。
いかにキュルケといえども惚れる要素が全くないような相手なのだが…

コルベールがマザードラゴンの羽ばたきに吹き飛ばされたあの瞬間。
キュルケは彼をその豊満な胸で受け止めていた。
いや、厳密には受け止めたのではなく受け止めさせられたのだが、そこは割愛する。
とにかく、コルベールを受け止めた彼女はその瞬間に恋に落ちた。
意外にガッシリした体躯。
胸を焦がす熱い体温(胸に突っ込む形になっていたハゲ頭が太陽熱で熱されていただけ)
猛禽のように前方を睨みつける凛々しい眼差し。
多分にフィルターが入ってはいるものの、キュルケはそれらを感じ、落ちてしまったのだ。

勿論、最後まであの場に残っていたのはコルベールを見つめていたからである。
まあ、ルイズが心配だったという点もなきにしもあらずなのだが。




一方、そんなキュルケの奇態を一顧だにせず黙々と本のページをめくる少女がいた。
キュルケの親友にして『雪風』の二つ名を持つタバサである。
彼女は、キュルケの様子を全く気にすることなく(というか慣れただけ)本に目を落とし続けていた。
だが、その頭に文字は入っていなかった。
彼女は別のことを考えていたのだ。
それは逃亡したルイズの使い魔のこと。
彼は杖もなしにフライに似た浮遊をし、かなりのスピードで逃げ出した。
しかも、詠唱をしていた様子も見られなかった。

(先住魔法…?)

エルフが使うといわれる杖を必要としない魔法。
少年が使っていたのもそれだったのかと考えるが、すぐにその思考は打ち消される。
少なくとも少年の見た目はエルフには見えなかった。
擬態しているという可能性もあるが、彼の立ち振る舞いを見た限りではそうとも思えない。
無論、エルフを見たことがあるわけではないのでタバサとて断言はできないのだが。

(それよりも)

だが、タバサが注目しているのはそこではなかった。
誰も使用の瞬間を見ていなかったと思われていたポップのシャナク。
彼女はそれをハッキリと見ていたのだ。
知る限り、コントラクト・サーヴァントを解除する方法は使い魔の死しかありえない。
にもかかわらず、あの少年はそれを生きたまま成し遂げた。
これは控えめにいっても異常である。
しかしタバサはポップに対し恐怖を覚えたというわけではなかった。
むしろ向けた感情は興味だったといえる。
何故ならば、彼は自分の望みをかなえてくれる存在なのかもしれなかったからだ。
自分の知らない魔法(?)を扱う少年。
彼ならば、あるいは…

「なんとしても、探し出す」

タバサは、決意の瞳で本を閉じた。


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