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ドクターウェストの華麗なる実験 第一話

ドクターウェストの華麗なる実験・第一話:「天才はバカと紙一重ではない。バカが天才なだけだ!」

幾度の挑戦において成功は無し。
 ここまで来れば清々しいというか憎たらしいというか、それとも唯の現実逃避か。
 いい加減泣きたくなって来る。
 現在の季節は春。
 トリステイン魔法学院の二年生に進級するための使い魔を召喚しているところなのだが、このルイズという生徒の状況は芳しくない。
 というかヤバイ。
 ぶっちゃけ留年目前だ。
 しかも新入生と肩を並べて既に習った事を聞く自分の姿がルイズの脳裏にチラついていたりもするあたり既に片足突っ込んじゃいました感
全開である。

「よ、弱気になっちゃ駄目よるルイズ。次は絶対成功するわ。次は間違いなく成功するわ。次は宇宙的な何かで成功するわ」

 もはや支離滅裂だった。あと涙目でもあった。
 もう一度召喚に挑戦しようと手に持った杖を掲げる姿は何とも健気である。
 零れ落ちそうな涙を「涙は成功した時にとっておくのよ!」と口をへの字に曲げて堪える。

「宇宙の果てのどこかにいる私のしもべよ! 神聖で、美しく、何より完璧で全てを超越する強力な使い魔よ! 私は心より求め、訴えるわ! 
我が導きに、応えなさい!」

 震えそうになる声を誤魔化すように大声で何度目かの呪文を唱えた。
 するとルイズから少し離れた場所で爆発が起きる。
 既に見慣れた光景、つまりは失敗だった。
 目の前で粉塵を上げる光景と、当たり前に召喚を成功させた他の生徒からの嘲笑に、ルイズは体の力が抜ける感じがした。
 ルイズの脳裏に、両親や姉達の顔が走馬灯のように浮かんでは消えていく。
 悲しいとか悔しいとか、そういった感情はどこにもなかった。
 ルイズは胸の内に荒野のような渇きを覚えるのみ。
 俯き顔のルイズの身体は握った杖を握り締めながら震えている。
 そんなルイズの背後で見守っていたコルベールは何て声を掛けようか迷っていた時、

「ゲホッ、ゲホッ、グェッホォォ!
 土煙スゴッ! 土煙スゴォ!!
 口の中がジャリジャリして―――って目がっ! 目がぁぁぁ!!
 砂が目に入って痛てええええええええ!!」

 全くの不意にルイズの作った爆心地から悲鳴が聞こえてきて、この場に居る一同はギョッと未だに舞い上がっている土煙に視線を
向けると、土煙の中から人間が飛び出してきた。
 飛び出してきた人間は両目を押さえて地面でもんどりうって悶えている。
 だがすぐ海老のように跳ね起きると、涙を垂れ流して錯乱しながら狂ったようにエレキギターを掻き鳴らし始めた。
「おのれおのれおのれーーーーー!!
 どこのどいつかは知らぬが、この我輩の優美なランチタイムを侵害しようとはハラキリものの重罪なのであーる!
 下賎な賊め、表へ出るがよい!
 この神すら己の無知を恥じる超絶にして至高の超・弩・級大天才たる我輩から『我輩のお昼の楽しみベスト☆テン』における二位の
おもっくそTVを圧倒的投票数でブッチ切るニグラス亭のジンギスカン定食をオアズケしようとは、極悪非道迷惑千万当方に迎撃の用意あり
なのであーる!!
 よって、この大☆天★才の至福の一時に水をさした償いをキッチリ耳を揃えて支払ってもらう。
 だが安心するがよい。
 貴様は我輩に斃される事によって我輩の天才ッぷりを知らしめる人柱になるからして、感涙とその他諸々の体液が溢れるほどの幸福感に
浸りながら散るのだ。
 散った君の勇士は、後の世界に恒久的に残される我輩の偉業を称え崇めてやまないスペクタクル巨編の一部として永遠に語り継がれるだろう。
 ああ、それはどこか『美』に似た輝きとなって天国の君の頭上を眩く照らすのである。
つー訳で、神妙に死ねぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇい――――――って、アレ??」

 召喚された男は意味不明な罵詈雑言をあらかたぶちまけてようやく自分の置かれた状況に気が付いた。
 さっきまで居た香ばしい匂いの立ち込めるニグラス亭の店内は跡形もなく消え、かわりに遠くに石造りの大きな城が見える草原に立っている。

「あれ? アレ?? あれぇ??? 
 何故我輩はこのような辺鄙なとこでつっ立ているのであるか?
 つーか此処ど~こ?
 Why、Why、Why?
 ……おお! そこで何やら群れているホグワーツもどきの少年少女とハゲ、丁度いい。
 この見知らぬ土地に迷い込むという主人公的フラグが立ってしまった我輩に、此処が何所なのか詳細をプリーーズ ギブ ミィ!」

 まあ、突発的な電波をリミットブレイクでぶちかませばドン引きされるわけでぇ、現れた狂える男はどう見ても脳味噌に妖精さんを
飼ってそうなので彼を見つめる生徒達の視線は誤って踏んで靴に付いたガムを見る目に驚くほど似ていた。
 もっともハルケギニアにガムなんて存在しないけど。

「それよりアンタ誰なのよ」

 自分が召喚したと思われる使い魔?にルイズはとにかく話しかけてみた。
 背後から聞こえてきたルイズの声に召喚された狂える男は―――

「ナニ、我輩を誰か知らないとな!
 それはなんという悲劇であるか。
 我輩のような大天才を知らないとは、貴様は自らの不幸に気付けていないのである。
 何故なら、我輩は人類という種が歩む進化の道の最先端に立つ存在であり、六十五億九千九百九十九万九千九百九十九人の凡人とは
筆舌に尽くしがたいほどの差のある超絶の頭脳を有する我輩は人類の―――いや、生命の目指すべき輝ける星なのである。
 つまり我輩を知らないとは先の見えない暗黒で彷徨うのと同義なのだ。
 だが我輩を目指してはいけないロリっ娘よ。
 先も述べたとおり、我輩と貴様ではそもそもの脳の出来が絶望的に違うからして、貴様が残りの人生の全てで命を削るほど努力しても
決して我輩には追いつけないのである。
 目指すべき星でありながら目指してはならぬ存在とは、何と罪作りな。
 ああ、許しておくれロリッ娘よ。貴様には何も罪はない。
 全ては我輩が大天才だから、大天才過ぎるから悪いのである」

 よよよ、と狂える男は白衣の裾で目元を拭う。
 ルイズは更にドン引き。
「しかーーし! まだ間に合うのであーる!
 貴様が我輩の事を知りたいと願ったのは、我輩の偉大さに無意識の内に気が付いた証拠。
 ならば教えてやろうロリっ娘。
 そう。この我輩こそ、この普く宇宙の全てにおいて比類無しで天下無双の大天才!
 あらゆる神話・伝説の神々よりも神聖な頭脳とあらゆる芸術よりも美しい美学を備えた現在過去未来において
永久不出のパーフェクト・サイエンティスト。
ドォォクタァァァーーーーッ!! ウェェェェェェェェェェェェェェェェェェェストッッ!!」

「ど、どくたーうえすと??」

「ノンノンノン。
 ドクター・ウェスト。ドクター・ウェストなのである。Doctor・West、OK?」

「ドクター・ウェスト…………」

「イエーーーーーースッ!
 科学の悪魔、大天才ドクター・ウェスト!
 それこそが我輩の正体なのであーる!
 オーケィ・ベイビー!! イエース・サンキューッ!!」

 ギョギョギョギョギョンギョンピョイーーーーーーン!

 激しく掻き鳴らされるギターに腰のツイストも加わって、いよいよ珍妙というか滑稽というかDQNというか。
 つまりは変人奇人の類丸出しモロ出しモザイク無しである。

「ふっふっふ。
 さて、我輩の偉業の数々は後ほどの講演会でこれでもかってくらい聞かせてやるからいいとして、貴様の「あんた誰?」発言に
答えてやったのだから、今度は我輩のターンなのである。
 さっさと此処が何所なのか教えるのであるロリッ娘」

「トリステイン魔法学校だけど―――ってさっきから黙ってればロリッ娘ロリッ娘って、あんた平民のくせに何様!?」

「凡人が我輩に意見するなど百兆年早いのである。
 というかロリッ娘をロリッ娘と言って何が悪いのであるか?」

「失礼ね! わたしは十六歳よっ!!」

「なっ、なにぃ~~~~~~~!!!?? 貴様がJU・U・LO・CU~~~~~!!?
 そんな訳ないのであーる!
 貴様のようなアル・アジフに勝るとも劣らないチビッちゃいツルペタストトントーンがハイティーンなわけ―――まっ、まさか……
 これは孔明―――もとい大十字九郎の罠であるな!!
 ロリッ娘をハイティーンと言い張らせることで自らを『ロリコン』から『小柄な女性好き』に周りの評価をシフトチェンジしようという
魂胆であるな!
 うぬぬぬ~~、貴様がそんな卑怯な人間だったとは、我輩失望なのであーる!
 よくも貴様をライバルと認めていた我輩の顔に泥を塗ってくれたな。
 ロリコンはロリコンらしく、キッチリハッキリハァハァとロリコンしやがれ!!」

「だからわたしはロリじゃないわよ!!」
 ここには居ないライバルに向かって吼えるウェストの吼え声にロリッ娘の訂正を求めるルイズの叫びの合唱という名の阿鼻叫喚。
 今の状況にどうやって収拾をつけようか、いやつけられない。

「ミスタ・コルベール! 召喚のやり直しを要求します!」

「残念ながらそれは駄目だ、ミス・ヴァリエール。
 使い魔召喚は現れた使い魔で今後の属性を固定して専門課程へと進むんだ」

「先生はわたしにキ■■イの属性に固定してキチ■■の専門課程に進めと言うのですか!」

「そうは言ってない。
 それに人を基地外だなんて言ってはいけない。
 きっと彼の住んでいたところの方言とか風習がちょっと特殊なだけで、彼はその元で育ってきたから我々が受け入れにくいだけなのだよ」

 そんなわけがなかった。

 「前にオールド・オスマンが言っていたのだが「天才はバカと紙一重ではない。バカが天才なだけだ!」らしい。
きっと彼もその類かもしれないだろ?
それに春の使い魔召喚は神聖な儀式だから好みに関わらず彼を使い魔にするしかない」

「でも…でも……平民を、しかも異常をきたしているのに使い魔にするなんて聞いた事がありません!」

「そうやって人を貶すような事を言ってはいけません。
 それにこれは伝統なのですよ。
 例え古今東西において前例がなくとも、この儀式のルールは他のあらゆるルールに優先する。
 ですから彼を使い魔にしなくてはならないのです。
 さあ、早く儀式の続きを」

 内心でコルベールに「鬼ッ! 悪魔ッ! 毛根死滅眼鏡ッ!」などと罵声を浴びせながら、猛るウェストに近づいて正面にまわると
手で顔を掴み強引に引き寄せる。

「おい、ちょっ、なんであるか。
 我輩、餓鬼に至近距離から見つめられて発情するような趣味は装備されてないのである!」

「~~~~~~~ッ!!」

 ルイズは顔を真っ赤にして声にならない叫びを上げると、早口で呪文を唱えるてウェストにキスをした。
 ヘッドバットするような勢いをつけて。

「ぶぴょぉッ!!?」

 ヘッドバット/キスされたことで顔面を強打されたウェストは悲鳴を上げた。
 その際、ルイズの歯がウェストの歯茎に刺さってた。

「イタタタタタタタタタタタタタタッ!!
 キサマッ、キスと見せかけて我輩の歯茎を抉るとはなんという鬼畜か!
 ツンデレ・ヤンデレときて新たに鬼畜デレというジャンルを打ち立てるつもりで―――ギャーーーーーーーッ!!
 今度は胸が痛ぇぇぇぇぇぇぇっ!!」

 そう奇声を上げると再びもんどりうって悶え始める。
「らめぇぇぇぇ!! そこはらめぇぇぇぇぇぇ!!
 それ以上は…………アッー!!」

 やがてウェストは動かなくなった。
 コルベールはルーンを確認しようと思ったが、それをするには些か面倒だろうし、ちゃんと刻まれたようだったので止めた。

「無事に使い魔のルーンが刻まれたようだね。
 それじゃあ皆、教室に戻るよ」

 コルベールの言葉に今までモブっていた他の生徒が動き始める。

「キ■ガ■が使い魔だなんて、流石ゼロだ」

「フライもレビテーションも使えないお前にはピッタリだな」

 去り際に生徒達はこう言い残して学院へと飛んでいく。
 同じ貴族として生まれながら自分には出来ない魔法を使い去っていく生徒達を睨みながらルイズは悔しさに拳を握る。
 生徒達の小さくなるの背中から顔を背けると、腰に手を当てて呻きながら立ち上がるウェストに向き直った。

「まったく、何なのよあんた!」

「「まったく、何なのよあんた!」はこっちの台詞である! 見るがよい!」

 ウェストはシャツをたくし上げて胸を露出する。
 そこには焼印を捺されたようにルーンが刻まれていた。

「よくも我輩の柔肌を傷物にしてくれたな!
 もう我輩、お婿に行けないでわないか。
 即刻、このセンスの欠片もない字を消すのである!」

「そんなことは無理よ。もうコントラクト・サーヴァントは済んだんだから。
 不本意だけど、本ッ当に不本意だけどあんたは今日からわたしの使い魔よ」

「ぬわはははははーーっ!!
 ナニを言い出すかと思えば、我輩が貴様の使い魔だって?
 寝言は夢の中が言うのもであるからして、太陽燦々オハヨウさんの今現在では喋っちゃ「めっ!」なのであーる。
 笑止千万とはまさにこの事。
 今晩夢の中で出直すがいいのである。
 我輩はカダスにて待つ!!」

「ああっ! もう、黙んなさいこのバカ!!」

「のぉうわっ! なにやら懐かしい響きかと思えばいつぞやの貶し言葉!!
 即刻訂正するのである!
 この大天才がバカ呼ばわりされる謂れは論理的にも科学的にもまったくもって無いのである!」

「はいはい分かったわ、訂正するわ。だから黙んなさいよこの大天才バカ」
「なっ! なんであるかその相反する言葉の羅列は!?
 大天才とバカが一緒くたになって、それでは我輩がどっちなのか……いや、まて。
 バカは唯のバカだが大天才は大が付いているのだから、バカ<大天才が成り立つ。
 バカは大天才に比べて圧倒的微細、つまり我輩は圧倒的大天才でありバカなのはほんのすこし……あれ?
 大天才の我輩に無量大数分の一程もバカさなどありえる筈が無いのだから、我輩は常に大天才。
 よって、大天才バカ-バカ=大天才=我輩が成立する。
 おお! これで我輩の大天才は証明されたのであーる。
 これぞ、超ウェストの定理である!!
 ここテストに出るからしっかりメモしておくようにっ」

 暖簾に腕押し。馬の耳に念仏。天才と何とか―――もといバカは紙一重というかむしろ完全に向こう側。
 ウェストは炸裂しすぎであった。

「はぁ……
 もういい。まじりっけ無しでもういいわ。
 早く学院に戻りましょう……」

 憔悴するルイズ。
 もう何もかもを投げ出してベッドにダイブしたい心地だった。
 とぼとぼ。
 まさにこの擬音が足の裏から聞こえてきそうな足取りで、ルイズは歩き始める。

「待つである。
 貴様が何所へ行こうと我輩の知った事ではないが、その前に我輩を元の場所に戻すのであーる。
 我輩はジンギスカン定食をオアズケされている身。
 早く戻さねばお腹と背中がくっついて内臓が零式螺旋波紋掌打であーる。
 一刻も早く召還するのである」

「そんな方法は無いわ。
 コントラクト・サーヴァントは呼び出すだけ。
 送り返す呪文は存在しないのであーる」

「我輩の真似をするな!
 送り返せないって、一体どういうことであるか。
 ていうか此処は何所?」

「トリステインの魔法学校ってさっき言ったじゃない」

「トリステイン? 魔法学校?
 貴様、地球上のあらゆる言語に精通する我輩をおちょくろうなんてそうはいかないのである。
 我輩の記憶中枢は言語同様に地球上のあらゆる知識が蓄積されているのだから、その知識の中にトリステインという名詞がインプット
されてない以上、貴様の言ったことは嘘八百万なのはお見通しであーる。
 残念だったなロリッ娘!
 のわっはっはっはっはっはっはっ!!」

「何バカ笑いしてんのよ。
 ていうか地球ってなに?」

「はっはっは―――れれ??」  泣き笑いのアホ丸出しの顔でウェスト硬直した。
 脳内ではルイズの言葉が反響し反芻している。
 ていうか地球ってなに?
 ていうか地球ってなに?
 ていうか地球ってなに?

「えー、地球とは太陽系の3番目の惑星で、人類をはじめ各種生物が住む天体。
 太陽からの平均距離は約1.5億キロで、自転周期は23時56分4秒、公転周期は365.2564日。
 形はほぼ回転楕円体で、赤道半径6378キロ、極半径6357キロ。地殻・マントル・核からなり、平均密度は1立方センチ当たり5.52グラム。
 年齢は約46億年。表面は窒素と酸素とを主成分とする大気に囲まれ、水がある。
 衛星を1個もち、月と呼ぶ。総人口65億2517万(2006)。(『Yahoo!辞書 』より)
 っていうか、えええええぇぇぇぇぇぇえええぇぇえええええええっ!!?!?
 地球を知らぬとな!
 貴様、実は未だ明かされぬ秘境に住む原住民かなんかじゃないのかであるかホーナタタ?」

「人間の言葉を喋りなさい!
 とにかく此処はあんたの言う地球っていう所じゃないの。
 此処はハルケギニアのトリスタイン」

「ではここは地球ではないと?」

「そうよ」

「アーカムシティも知らぬと?」

「知らないわ。
 そしてあんたはわたしに使い魔として召喚されたのよ
 その胸のルーンは、わたしの使い魔としての証し」

「なんとーーー!!
 つまり我輩はツンデレロリッ娘に召喚されるに飽き足らず、異世界にすっ飛んでしまったであるか!?
 なんという驚愕! なんという展開! そしてなんという我輩の理解力と順応力!!
 いつの間にやら本当に主人公フラグが立ってしまったのである!
 だが我輩には我がライバルとの決着をつけなくてはならぬ。
 正義のロリコンから卑怯のロリペドに堕ちた奴を倒さねばならぬ宿命が我輩にはある。
 歯を食いしばれと叫んで食いしばる前にドリルの如き拳を奴のガンメンにぶち込まねば、我がドリルと他のドリラーに示しが付かぬのだ。
 さあ、早く我輩を地球に還すのだ!!」


「サモン・サーヴァントは使い魔を呼び出す為のモノ。
 送り返す事なんか想定してないのよきっと。
 せっかく召喚した使い魔を何で返さないといけない―――まあ、今のわたしはとっても送り返したいけど。
 そうすればもう一度サモン・サーヴァントをしてグリフォンだったりドラゴンだったりを召喚できるのに。
 まあ何にせよ、あんたはわたしの使い魔なんんだから大人しくついて来なさい」

「だから我輩は貴様の使い魔ではないと言っているであろうが。
 何にせよ、帰る方法が無いというのなら作るまで。
 古来より人はそうして技術を練り文明を発展させてきて現在に到る。
 空を飛びたいという願いから造られた飛行機はいまや世界を駆け巡り、ついに人類は無限の宇宙へとその足跡を残そうとしている。
 そう、この日々進歩する力こそ人類の力であり未知の世界を開拓する無限の原動力なのである。
 故に、その進歩の最先端を三十六倍速でひた走る我輩が無事アーカムに帰還する方法を見つけることは団子蟲をつつけば丸くなること以上に
予定調和なのであーる。
 だーーーーーはははは、のははのはなのはーーーーーーーーーーーっっ!!」
 高笑いと共にギターを掻き鳴らし、ウェストのテンションは最高潮へとまっしぐら。

「流石我輩。例え異世界に召喚されようと動じないこの精神の強さ。やはり我輩は完璧」

 顎に手を添え、ニヤリと笑い白い歯と共に光る(胡散臭い)二枚目オーラ。

「健全な精神は健全な肉体に宿る。
 ならば我輩の肉体は若さと才能が滲み出る健全バリバリの健康体。
 見よ! 我輩が誇る肉体美を!」

 シャツを引き千切らんばかりに脱いで再び胸を露出する。
 露出した胸には刻まれたルーンが。

「そっ、そういえば我輩、傷物にされたのであった…………
 我輩の純潔が、我輩の貞操が、見ず知らずのロリッ娘の鬼畜的蹂躙によって無惨にも散ってしまった。
 ノォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォッ!!!」

「だあぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ!!
 煩いわねさっきから! 奇声を吼えるのもいい加減にしなさい!
 学院に着いたら何か食べさせてあげるから、早く行くのよ!」

「フンッ!
 いくら我輩が空腹だからといって食べ物に釣られるほど愚かでは―――

 ふんぐるるるるるるるるるるるるるるるるるるるいきゅいきゅい

 言葉を続けようとした時、腹の虫?が盛大に鳴った。
 ルイズのSAN値が15下がった。

「―――まあどんなに明晰な頭脳も動かすエネルギーがなければ機能しないわけで、我輩の超天才的な頭脳もまた然り。
 ここは貴様の厚意を素直に受け取り、エネルギーを充填し策を練ったほうが得策と見て間違いない。
 よかろう。我輩の今後のため、貴様に付いていってやろう」

 ビシッ!とルイズを指差して言うウェスト。
 どうにかウェストが付いてくる気になったので、ルイズは何時の間にか溜まった疲労に溜息をついて歩き始める―――が

「ちょっと待つのであるロリッ娘」

 ウェストに呼び止められた。

「何よ。早く行かないよ日が暮れるわよ」

「我輩は科学の徒であるからして、此処からあの城までの距離を歩くなどという原始的な行動は至極遠慮するのであーる」

「はぁ? じゃあ、あんたどうやって帰るのよ?」

「我輩を舐めてもらっちゃ困るのである。
 こんな事もあろうかと。こんな事もあろうかと! こんな事もあろうかと!!
 我輩はあるモノを造っておいたのである。
 見よ!!」
 そう言うとウェストは白衣の中から何の変哲もない鍔の広い帽子を取り出し、それを被る。

「これぞ帽子型飛行装置『飛べ飛べガジェット』であ~~る。
 その威力、とくとその目に焼き付けるがよい!
 あ、それポチッとな♪」

 ウェストが帽子の前部に埋め込まれたボタンを押し込むと、帽子の天頂部が開いて中から複雑な機械が迫り上がる(どうやって入っていたかは不明)。
 出てきた機械は二枚の大きな長細い板を展開し、地面とは斜めに固定。
 更に取っ手が掴みやすい位置まで伸びてきて、最後にウェストの頭と帽子とを伸びてきたバンドで固定する。
 その摩訶不思議な光景にルイズは呆気にとられて口をポカンと開いていた。

「ふはーーーーーはっはっはっ!!
 どうであるかロリッ娘、我輩の発明品は?
 凄いであるか? 凄いであるよ。凄いに決まってるのであーる!
 そんな凄い発明をいたしますのはこの我輩。
 ドォクタァァーーーーーーーーーーーーーーッ! ウェェェーーーーーーーーーーーーーストッッ!」

 ウェストが叫んでいる間にも二機のプロペラは回転速度を増し、ついにはウェストの足が地上から離れてホバリングする。
 ちなみに「テールローターが無いのに反トルクでウェスト自身が逆回転しないのか」という疑問は持つな。
 どうせウェストだし。

「……うそぉ。飛んだ…………」

「当ったり前田のメジャー松井秀喜サブレ~~
 我輩にとってこんなこと朝飯夜食晩飯昼飯、グルっと回って昨日の朝飯前なのであーる。
 それでは、あの城へ我輩まっしぐら~」

 そう言うとウェストは取っ手を掴むと操縦し、ルイズに近づいて両足で挟んだ。

「ちょっ! 何すんのよ!」

「それでは快適な空の旅へアテンションプリーーーーーーズッ!」

 プロペラの速度が更に上昇し、二人は高度と速度を上げて飛び始めた。
 ウェストの足に挟まれるという不恰好ながらも、ルイズは始めて見る高さに驚きはしたが直ぐに慣れ、眼下に広がる光景に目を奪われていった。

「わたし……飛んでるのよね?」

「な~に当然のこと聞いてるのであるか。
 これを飛んでいると答えずして何と答えるであるか」

 この言葉を聞いてもルイズは未だ信じられないという面持ちで眼下を見下ろしていた。
 地面が瞬く間に後方に流れていき、召喚の儀式を行った場所は最早遠い。
 視線を前に戻せば先に出発した生徒達とコルベールの姿が直ぐそこに迫っていて、プロペラの音に気付いた彼らが驚愕の表情でこちらを見ていた。

「ドォクターーーーーッ! ウェーーーーーーーストッッ!!」

 ウェストは彼らの表情に気を良くしたのか、更に速度と高度を上げて生徒達の頭上をドップラー効果の効いた叫び声と共に追い越していった
「今の我輩はアドレナリンの分泌量は最高潮でテンションは臨界点突破!
 もう我輩を止める事など出来はしない。
 銀河よ、我輩の歌をきけぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇいっ!!!」

 ピレポレピレポレピレポレピレポレギョギョギョギョビャイーーーーンッ!!

 ピックを振り回すようにギターの演奏を始めるウェスト。
 その両手は取っ手から離れている。
 つまり今のウェストと『飛べ飛べガジェット』と繋いでいるのは頭部に固定するためのベルトのみ。
 プロペラの推進力と重力による綱引きはウェストの頭と身体+ルイズを引っ張り、その力は必然的にウェストの首に収束する。
 この事態がもたらす結果は―――

「ウギョォォーーーーーーーッ!
抜ける抜ける抜ける抜ける抜ける抜ける抜ける抜ける抜ける抜ける抜ける抜けるーーーーーーーっ!!
我輩の首がぁぁーーーーーーーーーーーーっ!!」

 予想だにしなかったことにウェストは藻掻く。
 これによってルイズを挟んでいた足が外れ、支える物が何もなくなる。
 突然の浮遊感。足場の無い不安感。空の青さ。雲の白さ。太陽の眩しさ。
 そして何より大地に立つ事の素晴らしさを痛感しながらルイズは思った。
 何で人間には翼が無いの?

「きゃああああああああああああああああああああっ!!」

 まっ逆さまに落ちるルイズ。
 しかし間一髪のところでウェストの片足にしがみつく。

「あっ、あっ、危ないじゃないのっ、てきゃあああああああああああああっ!!」

 間一髪の所でしがみついたのはいいがそれによってウェストはバランス崩し、結局二人は揉み切り回転で地面に落ちていった。
 勿論、墜落する前にコルベールによって助けられたが。



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