あの作品のキャラがルイズに召喚されました @ ウィキ

虚無の唄-2


──

ルイズ・ド・ラ・ヴァリエールは、使い魔召喚の儀式から、さらに周りに向ける態度を硬化させた。
己が呼び出した醜悪な生物の前以外では、全く喋らず笑わず、自分以外の者を、見るものを凍りつかせるような憎悪をこめた瞳で見るようになった。
たまに会話をできた時さえ、発言の端々に隠しようのない悪意と嫌悪が見て取れる様子に、次第に人は離れていく。
そして彼女は段々と講義への出席率が悪くなり、いずれは退学ではないかと噂され始めた頃の事であった。
学院の宝物庫がある本塔の付近で、学院長オールド・オスマンの秘書である、ミス・ロングビルらしき死骸が見つかったのは。

本人と断定できたのは前の晩から今まで姿が見えない事と、彼女の杖が現場に遺留品として残り、生前は彼女をそばに置いていたオスマンに確認が取れたためだ。
ロングビルは四肢を含む体の一部を残し、頭部と内臓を綺麗にそっくり失っていたという。
現場には血痕と肉片が散乱していたらしいが、魔法を使った痕跡は見当たらなかった。

彼女はオスマンの秘書を務めるだけあってその実力は高く、本人は隠していたようだがトライアングル・クラス程度の魔力はあったとされる。
そんな彼女が何の抵抗も出来ず、無残に殺されたという事実は学院の魔法使い達を戦慄させた。

学院創設以来の大事件であった。緊急の会議が開かれ、生徒達は全員寮内で待機となっている。
キュルケは召喚の儀以来激変したルイズの部屋の隣には居辛く、親友であるタバサの部屋に避難させてもらっていた。

「一体どうしちゃったのかしらね、ここは。
雰囲気がピリピリしてて気分が悪いわ」

独り言ちたキュルケに対し、横にいるタバサはその話題には特に興味が無いようで、手元の本に目を落としていた。
そっけない態度のタバサに、ふぅ、と溜息をついたキュルケは、ルイズについて考え始めた。
ルイズが召喚に成功するなり、あの醜悪な化物に抱きついた時は、背筋に寒気が走ったものだ。
自分だってフレイムを抱いて寝たりする事もあるのだ、自分の使い魔に対して情が芽生えるのは悪い事ではない。
しかし、ルイズのアレはいき過ぎではないか、とキュルケは思った。
ルイズの使い魔─沙耶とかいったか─に対する態度は、傍目から見ても親愛や信頼などではなく、明らかに依存にしかみえなかった。
しかも出会ったばかりの使い魔に対して。

─魔法使いがその手足たる使い魔に依存するんて、何かの冗談かしらね?

「ねぇ、タバサ。あなた、ルイズとその使い魔に対してどう思う?」
「……別に、何も」

長くは無い付き合いだが、タバサの表情や感情はそれなりに読める。
その声が普段より硬いものだったことに気づいたキュルケは、続けて尋ねた。

「あなた、何か知っているの……?」

この質問にタバサは結局答えず、沈黙のまま時間は過ぎていった。

───

あれから一週間以上経ったが、結局ロングビル殺しの犯人は見つからなかった。
中止されていた講義は再開される事となり、クラスでは皆久しぶりに全員が揃った事に喜び、談笑していた。
だが、教室の窓際に近いある一角は、不自然な空間が出来ていて誰も近寄らない。
ルイズだった。キュルケは相変わらず無愛想──を通り越して冷徹な表情をしているルイズの隣に座り話しかける。

「珍しいじゃない。もう講義には出ないのかと思ってたわ」
「……」
「ちょっと、無視?」
「流石に退学は不味いと思ったのよ……沙耶にも言われたし」

こちらに顔も向けず、独り言をするようにぼそり、と答えたルイズ。
そんな態度にも既に慣れたため、少々呆れるだけだったキュルケだが、最後の発言に引っかかった。

─沙耶にも言われたし

主人が使い魔に諭されるとはどういう事か! と立ち上がり、怒鳴りつけようとしたキュルケだったが
その時丁度教室の扉が開き、ミスタ・ギトーが入ってきた。
講義が開始され、渋々と席に着くキュルケに、何の関心も見せないルイズ。
彼女はずっと外を眺めていた。
ギトーの延々と続く風最強、俺最強談義にクラスの全員が倦んだ空気を出し始めた頃、突然教室の扉が開き、珍妙な格好のコルベールが乱入してきた。
何事かと憤るギトーに対し、コルベールは言った。「姫殿下が学院を来訪なさるのです」と。

──

その日の夜、ルイズは自室で沙耶の胸に包まれ、幸せそうな顔で目を閉じていた。
そんな彼女の頭を撫でつつ、苦笑する沙耶。
仲睦まじそうな二人だが、服を着ているかどうかは、君と僕だけの秘密だ。

「ルイズは甘えんぼだね」
「沙耶にしか甘えないわ」

二人が契約した日から毎晩続くたわい無い会話。
毎日この時間に沙耶と話す事を、ルイズは日々の糧としていた。
相変わらず醜く、喧しく、汚物の臭いを撒き散らす『化物ども』との学院生活は、彼女の心を酷く疲弊させる。
美しい沙耶との語らいは、そんなルイズのストレスを甘く溶かしてくれるのだ。
涼やかな沙耶の声、芳しい沙耶の香り、温かく優しい沙耶の感触、その全てがルイズにとって幸福感へと繋がる。
その時、まどろんでいたルイズの幸せを打ち壊す存在が現れた。急に扉の方へ視線を向け、耳をそばだてる沙耶。

「……誰か、来たみたいだよ」
「ベッドの下に」

人の目に付く事を嫌う沙耶を隠れさせ、自分は身だしなみを整える。
そして部屋に響くノック音。始めに長く二回、それから短く三回……。
その聞き覚えのあるリズムに眉を顰め、ドアを開くルイズ。
外に立っていた『モノ』は素早く部屋に潜り込み、ディテクトマジックを行使した。
そして此方にに振り向き、耳障りな声で話しかけてくる。

「オ久し鰤ne、塁ズ4わcぁ゛ーズ」

酷く聞き取りにくかったが、口調と先程のノックから、ソレが誰であるかをルイズは悟った。

「姫殿下……?」

───

久しぶりに見る幼馴染は酷く憔悴しているようだった。
感極まって抱きつこうとしたアンリエッタは、その事に気づき問いかける。

「一体どうしたというのルイズ? 元気が無いわ」
「……お気になさらず姫殿下。少々学院の課題に煮詰まっていただけです。
 姫殿下こそ、何故このような場所に?」
「まぁ! そんな堅苦しい行儀はいらないわルイズ! わたくしたちはお友達じゃない!」
「……一体何用でしょう。『姫殿下』?」

頑ななルイズの態度に、言い様の無い不安を覚えたアンリエッタだが彼女の言う事も確かだ。
まずは用を果たしてしまおうと、この部屋を訪れた理由を説明し始めた。

─アルビオンの内情不安から、ゲルマニアとの政略結婚でトリステインの地盤を固めねばならないこと。
─しかし、過去にアルビオンの皇太子に当てた手紙が、公にされれば婚姻を破棄されてしまうような内容だということ。
─それを貴族派が手に入れる前に何としてでも取り戻し、皇太子─ウェールズに新しい手紙を届けて欲しいこと。

芝居がかった仕草で一気にまくし立てるアンリエッタだが
その様子をルイズが冷めた瞳で見つめていたことに気づかなかった。

「──という訳なのです。トリステイン一国で立ち向かうにはアルビオンは強大過ぎる。
 ゲルマニアとの婚姻を成立させるためにも、どうかお願いされてくれないかしら。
 ルイズ・フランソワーズ?」
「……」
「ルイズ?」

王女の説明が終わっても、無表情で返答しないルイズ。訝しむ王女だったが、単に余りにも話が長すぎたため、言葉を『訳する』のに手間取っていたのだった。
暫し黙考し、話の筋を飲み込めたルイズは表情を変えずに一言。

「お断りしますわ。姫殿下」

──


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