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男達の使い魔 第十話

急いでいかねばならぬところがある、と王大人は言った。

なぜあんたがこんなところに、と問う桃とJに、わざと焦点をすこしずらした返事が返ってくる。
桃たちが聞きたかったのは、何故王大人がハルケギニアにいるのか、ということだ。

しかし、王大人の目を見た桃は、その問いを発することができなかった。
強い光を放つその目は、その問いを拒絶していた。

ようやく驚きから立ち直ったタバサは、王大人に一つ尋ねることにした。

「どこへ向かっているの?」

「ニューカッスルなる場所だ。」

その返答にキュルケとタバサは少し目を丸める。
彼らが向かう場所もまた、王党派に残された最後の拠点、ニューカッスルなのであった。

「でも、ニューカッスルは貴族派に囲まれて、今は入れないわよ。」

キュルケが問う。
王大人はにやりと笑って答えた。

「中国四千年をなめるでない。あてならある。」

そう言って懐から書物を取り出した。
そこには、ニューカッスルの抜け道が記されていた。


「きゅいきゅい。人って片手でも空を飛べるなんてすごいのねー。」

シルフィードは、頭上で棍を回しながら書物を取り出す王大人に、心の底から感心していた。



朝になった。

シエスタは歯噛みしていた。
彼女が撤収の準備をしている隙を突いて、ワルドがルイズを連れ出したのだ。
朝に弱いルイズ様のことだ。きっと寝ぼけ眼で付いていったに違いない。
そう確信したシエスタは、慌てて捜索を開始していた。
すぐに行く手を突き止めたシエスタであったが、そこで行動を止めざるを得なかった。
己の唇をかみ締めたシエスタの視線の先には、礼拝堂があった

虎丸とギーシュは、正装を着て、礼拝堂に座っていた。もちろん虎丸の正装は学ランだ。
二人には嫌な予感がしていた。
しかし、それを表情に出したりはしない。
ただ、いざという時に動けるようにだけはしていた。

ウェールズは皇太子の礼装に身を包み、新郎新婦を待っていた。
自分の人生の終わりに、予想外の晴れ舞台ができたことに嬉しさを感じながら。
既に死ぬことを決めていたウェールズは意図的に無視していた。
自分に危険が迫っているという勘を。

ルイズは戸惑っていた。
朝早くいきなりワルドに起こされて、気がついたら礼拝堂にいたのだ。
昨日ずいぶんと泣いたため疲れていたのかしら?とルイズは思う。
でも今は、
そうして思考をようやく整えたルイズは、今の出来事に対処することにした。

礼拝堂での結婚式は既に始まっていたのだ。



ウェールズが祝詞をあげる。
それに、ワルドが一言、誓います、と告げた。
次はルイズの番だ。ウェールズの視線がルイズを指した。

「今は、わたしはこの結婚式を望みません。」

ルイズははっきりと言い切った。
ルイズは考えていた。親友のアンのことを。
もし自分がこの場で好きな相手と結婚を挙げるなら、きっと彼女は喜んでくれるだろう。
それは間違いない。でも、

そこまで考えたルイズは、愕然としているワルドをチラリと見た。

この神聖な場で、最後のアルビオンの地で、流されて結婚したならば、彼女はとても悲しむだろう。
ルイズのことを攻めはしないかもしれない。しかし、

(わたしは、きっと自分を許せないわ。)

そこまで考えたルイズは、自分に詰め寄るワルドに対して、毅然として対峙した。

ウェールズは、そのルイズの表情に驚いていた。
意志の強い少女であることは知っていた。だが、この目は

(アンリエッタ。君が何か決意した時の目にそっくりだよ。)

ウェールズはひどく優しい気持ちになっていた。
自分が司祭役をつとめる結婚式が台無しになったにも関わらずだ。
そうしてウェールズはワルドに、結婚式の取りやめの声をかけることにした。

しかし、ワルドは止まらない。
なおもルイズに言い続ける。

「世界だルイズ。僕は世界を手に入れる!そのためにきみが必要なんだ。」

その言葉にルイズは、己の中のワルド像が崩壊したのを感じた。
この旅の途中、どこかワルドの様子が変に思えていたが、ようやく納得したのだ。
彼が、もはや昔の優しいワルドではないことを。
そのことに、少し悲しみを覚えたルイズ。
だが、彼女は言葉にして告げることにした。自分の今の思いを。

「わたし、世界なんていらないもの!」

ルイズが欲しいのは世界なんてありふれたものではない。
望まぬ結婚を強いられ、自分の思いさえも封じ込めたアンリエッタの悲しげな表情が頭に浮かぶ。
アンリエッタが、家族が、シエスタが、学友達が、使い魔たちがみな幸せに暮らせる日常が欲しい。
強く、とても強くそう思っていた。

その言葉に一瞬能面のようになったワルドが告げる。

「残念だよ。」

その言葉に不吉なものを感じたウェールズに虎丸、ギーシュは慌てて飛び出そうとするが、時既に遅し。
ワルドは、素早く当身をルイズにくれると、意識を失ったルイズを抱え、後方に飛び去っていた。



一方そのころ、学院にいた一号生達は、全員新男根寮の前に集まっていた。
みな顔が一様に張り詰めている。
その表情に田沢は確信を持った。誰かが危機に陥っていることを。
彼らはみな、同じ釜の飯を食べた仲間だ。共に命を預けた仲間だ。
その仲間の危機がわからないハズがない。

今ここで彼らにできることはただ一つ。
大鐘音のエールを切ることだけである。

秀麻呂が塾旗をあげる体勢に入ろうとする。
そこへ

「それは僕にあげさせてくれ!」

マリコルヌが割り込んできた。

マリコルヌは嫌な予感がしていた。
ギーシュが危ない!直感的にそう思ったマリコルヌは、思わず新男根寮の前までやってきてしまったのだ。
そこでマリコルヌは見たのだ。残ったものが、己ができる方法で闘おうとしていることを。
ならば自分も勇気をだそう。

その友を思う姿に、秀麻呂は黙って旗手を譲った。



「貴様!何が目的だ!」

ウェールズの怒声が飛ぶ。その手には既に杖が握られていた。
それに恐れる様子もなくワルドは答えた。

「一つはルイズ。一つはアンリエッタの手紙。そして最後は……」

「貴様の命だ!プリンス・オブ・ウェールズ覚悟ぉ!」

まさしく閃光のごとき詠唱速度で唱えられたライトニング・クラウドがウェールズを襲う。

「殿下!危ない!」

間一髪ギーシュに突き飛ばされたウェールズは、なんとか命を拾うことに成功した。
素早く体勢を立て直すと、ワルドに向かい魔法を唱えようとする。しかし、

「卑怯な!」

ワルドがルイズを巧妙に盾にしていた。
その様子に、ワルドが歪んだ笑いを浮かべた。そこへ

「ワルド子爵。あなたはレコンキスタということで間違いないですね。」

落ち着き払った声でギーシュが声をかけてきた。
あまりに場違いなその様子に、ワルドは思わず返事を返してしまう。

「それが、どうしたというのかね?」

「いえ。ただ確認したかっただけです。ということだ。やれヴェルダンテ!」

その瞬間ワルドの足元が爆発した。
そうして土の中から一頭のジャイアントモールが飛び出てきた。
不意打ちのアッパーをなんとかかわすことに成功したワルドは、
冷静に右手に杖を、左手にルイズを抱えなおし対処しようとする。
ヴェルダンテの不意打ちは不発に終わった。
多少の隙はできたとはいえ、その隙を突くには虎丸たちは遠すぎたのだ。



しかし、シエスタには十分であった。

「がっ!」

ワルドが短い悲鳴を挙げてルイズを取り落とす。
その左手には、槍の穂先のようなモノが刺さっていた。
大豪院流気功闘法繰条錘である。
その穂先は、まるで意志を持つかのようにワルドの手から抜けると、シエスタの手と穂先を結ぶ針金をルイズに巻きつけた。

ルイズが空を飛ぶ。それを無事受け止めると、シエスタは叫んだ。
正直限界であった。この技を使うには、気の絶対量がまだ足りなかったのだ。
しかし、それでも

「ルイズ様はお任せください!」

女の意地があった。

その台詞に三人は、弾かれたように突撃を開始した。
この卑劣漢を倒すために。


ルイズを奪い返されたワルドだが、それでも余裕の表情を崩さない。

(皆殺しにすればいいだけのこと。)

そう考えたワルドは、彼らに告げた。

「さて、ではこちらも本気を出そう!何故、風の魔法が最強と呼ばれるのか、その所以を教育いたそう!
 ユピキタス・デル・ウインデ……。」

呪文が完成したとき、そこには五人のワルドがたたずんでいた。
ワルドの必殺、風の遍在である。

二体がウェールズに、二体が虎丸とギーシュに、一体がシエスタに襲い掛かった。



うおおおおおお!
マリコルヌの雄叫びが上がるが、幻の大塾旗はピクリとも動かない。
重さは軽く三百キロを超える、まさしく大塾旗だ。
人間の力で挙がる代物ではない。

そのことを塾生達はわかっている。
それでも、誰一人としてマリコルヌを手伝おうとはしない。
これは、彼が一人で挙げねばならぬのだ。
一人で挙げねば、真の大鐘音は完成しないのだ。
そのことを知っている男達は、血が出るほど拳を握り締めると、それぞれの準備に入った。
マリコルヌがあげる事を信じて。

マリコルヌの心に、これを説明してくれたときの秀麻呂の声が響く。

(これは体力であげるものじゃない。友を思う気持ちであげるものだ。
 だからマリコルヌ、お前ならあげられるさ!)

マリコルヌはその思いに応えねばならない。
しかし、現実は非情である。

ピクリとも動かない大塾旗に、マリコルヌの心は砕けそうになる。

(ぼくでは無理なの?こんなぼくでは……)

そこへ秀麻呂の怒声が飛ぶ。
その檄に、マリコルヌが秀麻呂を見ると、そこには男達が並んでいた。
静かにマリコルヌを見つめていた。そこには、信頼があった。
彼らは、マリコルヌが幻の大塾旗をあげきると信じているのだ。

「一世一代の根性、見せてみろ!」

秀麻呂が叫ぶ。

マリコルヌの鼻から血が噴出す。また、力を入れすぎたこめかみからも血が流れ出る。
それでも大塾旗は上がらない。
さらに力を込める。筋肉が限界を超えて盛り上がり始める。
それでも大塾旗は上がらない。
そして、

雄たけびを挙げたマリコルヌの服が弾け飛ぶ!
ついに幻の大塾旗があがり始めた。

それを見届けた秀麻呂は、自分も大鐘音に加わり始めた。

(これからが本当の命がけだぜマリコルヌ!)

彼らの体に刻まれたルーンが静かに光りだしていた。



本性を現したワルドは恐るべき敵であった。
ワルドが作り出した遍在は、一体一体が魔法を使い、その体術の腕前も恐るべきがものがあった。

(やべえ!これじゃあジリ貧だ!)

虎丸はそう思う。自分達には、ワルドの魔法を防ぐ方法がほとんどない。
今はギーシュのゴーレムがなんとか魔法を代わりに受けてくれているが、直に限界が来るだろう。

(どうにかしないとな。)

虎丸はそう考えつつもワルドに猛虎流の拳打を放っていた。
しかし、良い案は浮かびそうになかった。


シエスタは焦っていた。遍在が一体とは言え、その大元は閃光と異名を取る程のメイジである。
今のシエスタには一体といえど、難しい相手には違いがなかった。

(でも!)

シエスタは思う。他はもっと不利な戦いを強いられているのだ。
せめてこの一体だけでも自分が倒さねばならない。

だが、杖による攻撃と魔法を巧みに組み合わせてくる相手に、攻撃をする暇がない。
シエスタは覚悟を決めた。

「はぁっ!」

左手を盾にして『エア・ニードル』を受け止める。
杖そのものに貫通力を帯びさせたその魔法があだとなった。
シエスタの左手の筋肉が、その杖を絡みとり離さない。
一瞬、遍在が杖を離すべきか逡巡する。
その一瞬が命取りとなった。
激痛がシエスタを襲う。だが、シエスタは痛みを無視すると裂帛の一撃を込めた。

「大豪院流!真空殲風衝!」

その風についに遍在の一体が砕け散った。
それを確認したところでシエスタの意識は途切れた。

その瞬間、全てのワルドが、思わず驚愕の表情を浮かべていた。
その隙を逃すほど、ウェールズは落ちぶれてはいない。
遍在の一体を風で切り裂くと、残りのワルドに向き合った。

虎丸とギーシュもまた、その隙を逃さなかった。慌ててライトニング・クラウドを唱える。
流石は閃光と名乗るだけのことはある。
詠唱が遅れたにも関わらず、その一撃は虎丸の一撃よりも早かった。
そうしてライトニング・クラウドが虎丸に走る。

「ぼくを忘れてもらっては困る!」

ギーシュが最後の力を振り絞ってゴーレムを作り出す。
そのゴーレムは虎丸の全身を覆いつくすと、ライトニングクラウドの身代わりとなって消えた。

うおおおおおおお!
ついに虎丸の渾身の拳が遍在の一体を捉えた。

残すは本体と遍在のみである。



その時、ウェールズの目は、予想外の事態を捉えていた。
他の者は気づいていない。
ならば!

「ライトニング・クラウド!」

シエスタ達の方から声が聞こえる。
慌てて虎丸が振り返ると、その視線の先で、ウェールズがゆっくりと崩れ落ちていった。

「切り札とは最後まで取っておくものだよ。」

最後の一人、気を失ったシエスタを始末しようとしたワルドが、
本体のワルドが姿を表していた。


虎丸が吼える。
ウェールズは、こんなところで薄汚い暗殺者などに殺されていい人間ではなかったのだ。
その勢いに不意を突かれたワルドが振り向く。
そこの虎丸の鉄拳が飛んだ。

ガキィーン

ワルドが杖を盾にガードするが、大きく後ろに吹き飛ばされた。

「くっ!このバカ力が!食らえ必殺!「「ライトニング・クラウド!」」」

三方向からのイカヅチが虎丸を襲う。
直撃を受けた虎丸は、ついに倒れこんだ。

「三点同時のライトニング・クラウドをくらってまだ生きがあるとは、貴様本当に人間か?」

その台詞に、かろうじて意識の残っていた虎丸は、悪口で返す。

「てめぇみてぇな外道にこたえることは、何一つねえよ。」

「まだ、喋れるとはな。ここは確実に止めを刺させてもらうとしよう。」

三体のワルドがゆっくりと近寄ってくる。
その手には、『エア・ニードル』を発動させた杖があった。



一号生達の大鐘音は止まらない。
だが、マリコルヌが限界を迎え始めていた。
徐々に大塾旗が下がり始める。
男たちが声をかけるが、マリコルヌの薄れ始めた意識には届かない。
その時

「「わたしも闘います(闘うわよ)!」

ケティとモンモランシーが姿を表した。
悪い予感がした二人は、己の直感の赴くまま行動し、ギーシュの不在を知った。
そして、同じようにギーシュの危機を感じたマリコルヌが何かしているのを知って、慌てて追いかけたのだ。

二人は、旗の下に座り込むと一心不乱に祈り始めた。
その光景に場の時間が止まる。

再び動かしたのは秀麻呂だった。

「あの姿が見えるか、マリコルヌ!見えるならば、無様をさらすな!
 最後のバカ力、振り絞ってみろ!」

マリコルヌの声にならぬ雄たけびがあがる。
再び大塾旗が高く、高く舞う。

そうして真の大鐘音が完成した。
主のために!友のために!


ルイズはようやく目を覚ました。
自分を守るように立ったまま意識を失ったシエスタ。同じく意識を失っているギーシュ。
傷だらけで倒れて、それでもまだ闘志衰えない虎丸。
ゆっくりと崩れ落ちたウェールズ。

彼が最後に誇らしげに微笑んだような気がした。
その時、ルイズは全てを悟った。
そうして思う。あの男だけは許してはいけない。
さらに、
ルイズは己の中に、熱い、熱い何かが流れ込んでくるのを感じていた。
かつて、シエスタとギーシュの決闘で感じたときと同じものを。
しかし、もっと純度の高い別のものが。
その思いを言葉に乗せる!
呪文は何でも良かった。どうせ結果は同じなのだから。

「ファイアーボール!」

ルイズのファイアーボールが炸裂した。


少しの間ギーシュは意識を失っていた。
ふと、マリコルヌにケティ、そしてモンモランシーの声が聞こえた気がしたギーシュは、意識を取り戻すことに成功した。
そうして見た。
ワルドが虎丸に止めを誘うとしているのを。

だからギーシュは、最後の力を振り絞ってゴーレムを作った。

「行け!ワルキューレ!」


シエスタは不思議なだった。
こんなに離れているのに、あの大鐘音の声が聞こえているのだ。
ならば、きっともう一撃だけなら、加えられるはず。
誇り高い祖父の技を受け継いだ自分が、こんな声援を受けて這い蹲っているわけにはいかない!
だから、

「大豪院流奥義!真空殲風衝!」

正真正銘最後の一撃を放った。


そこからのワルドの反応は芸術的ですらあった。
二人の遍在が風で障壁を作り、ルイズとシエスタの攻撃を防ぎきる。
そして本体が、『エア・ニードル』をかけた杖でワルキューレを切り裂く。
神業的な集中力と反応であった。
おそらく、ワルドにも二度とはできないであろう。
だが、

「くっ!」

その反動から、ワルドの膝が一瞬落ちた。


虎丸は考えていた。
ワルドを倒すためには、遍在を含めた全員を倒さなければならない。

(Jとか卍丸なら、こういう相手も得意そうなんだけどなあ。)

虎丸にはそういう手札がない。
しかし、ルイズが、シエスタが、ギーシュが死力を振り絞った一撃が、ついにワルドの膝を折ることに成功する。
ならば、

(あれこれ考えるのは俺らしくねぇ!今はこれだ!)

応えるのが虎丸龍次というものだ。

「食らえ!大放屁火炎放射!」

あたり一面が炎に包まれる。そう、屁は燃えるものなのだ。

そんな中、虎丸のルーンが静かに光っていた。


「うぬおーーーー!目が!目がーー!」

ワルドは思わず顔を抑えていた。
爆風にのまれて遍在は姿を消していた。

必死で魔法をかけて、己の顔の火を消す。
左目が潰れたその顔には、かつての色男など、かけらも残っていなかった。

なんとか、応急処置を完了したワルドは、虎丸を睨もうとする。

「貴様!男子の面体に屁などかますとは!」

そこでワルドは気がついた。
虎丸が既に動いていることに。

「どこをお探しだい?俺はここだぜ!」

既に懐近く入り込んでいた。


虎丸は久しぶりの感触に驚いていた。これはまさしく大鐘音だ。
力尽きたはずの自分なのに、力が湧いてくるのがわかる。
他の一号生達からは今の自分の様子などわかるはずもない。
それでも、今この時に大鐘音をしてくれる仲間に、虎丸は深く感謝の念を込めると

「お前なんざぁ、屁とこれで十分じゃあ!」

渾身の頭突きをワルドに食らわした。

ワルドの顔面が大きく陥没した。


「終わったのね。」

ルイズがそう呟いたその時!

「貴様ら、許さん!」

声が響く。ワルドがまだ生きていたのだ。
顔を焼かれ、片目を潰され、そして鼻の部分は陥没し跡形もなくなっている。
それでもまだ、生きていた。

流石はスクウェアクラス魔術師、閃光のワルドである。

しつこい!
そう思って魔法を唱えようとしたルイズは気がついた。
ワルドは、怒り狂っていてために、気づくのに遅れた。
それが命取りとなった。

「心眼剣、一之太刀!」

シルフィードから飛び降りた桃の一閃に、ワルドの左腕が落ちた。

「遅いわよ!」

ルイズの一声が飛ぶ!
その目は涙でにじんでいた。
すまんな、とだけ桃は返した。
キュルケにタバサ、J、王大人もそこにいた。

ワルドは、かすれる意識の中で、グリフォンを呼び出すと逃走した。
これほどの屈辱はなかった。



傷ついた一同を、王大人が簡単に見てまわる。
最後にウェールズ王子を見ると、眉をしかめた。
その様子に不安を覚えたルイズは尋ねる。

「ねぇ。ウェールズ王子は大丈夫なの?」

しかし、王大人は無情にも首を横に振ると、短く答えた。

「死亡確認」

と。

その言葉に、一同静まり返る。
大体の事情をギーシュから聞いたキュルケやタバサもまた、悲しそうな顔をしていた。

その時、外が騒がしくなってきたのが聞こえた。
どうやら、貴族派の兵士たちがここまで攻め込んできたようだ。
もはや、脱出までに許された時間の猶予はほとんどない。
最後にルイズは、ウェールズの手から、風のルビーを抜き取った。
アンリエッタに形見として渡そうと考えたのだ。
そして、

「ウェールズの遺体はわしが埋めよう。」

その亡骸は王大人が背負って脱出することになった。

その時、Jが立ち止まると、先に行けと指示を出した。
間に合わなくなる、というルイズに、下で待っていろとだけ言うと、Jは後ろを振り向いた。

Jが殿を務めようとしているとしていることに気がついたルイズは、立ち止まろうとする。
しかし、立ち止まったところを、虎丸に抱えられてしまった。

「虎丸!あんたJのことが心配じゃないの!」

泣きそうな顔でルイズが言い募る。
これ以上、知り合いに死人がでて欲しくないのだ。
その言葉に虎丸がニヤリと笑って返す。

「あのかっこつけが、そんな殊勝なことするかよ!それに、」

そう言って桃の方を見つめる。

「ああ!Jは『下』で待っていろと言っていただろう。ならば『下』で待っていようじゃないか!」

桃もまた、不敵に微笑んでいた。


Jは一人礼拝堂に立っていた。

「いいかげん姿を現したらどうだ?」

その台詞に反応して、上空から計三十二人の男達が落ちてきた。
リーダー各の男が感心したように話し出す。

「ほう!良くぞ我々の殺気に気がついたな!
 我々こそは!」

その名乗りを遮るかのように、Jが声を重ねる。

「貴様らの名乗りなどいらん!
 今のオレは機嫌が悪い。とっとと立ち去るかここでぶちのめされるか選べ!」

その台詞にリーダー各の男の眉間が細まる。

「この人数に勝てると思っているのか!」

「そうか。」

そうとだけ呟いたJの右手が異様に膨れ上がる。
まさしく異形そのものの姿に、男達の腰が引ける。
あれで殴られたならば、そういう想像が頭をよぎるのだ。

Jは高く、高く跳躍すると、その右手を地面に打ち込んだ。


ピシリ。

その様子に、呆気に取られていた男達がわれにかえる。

ピシリ。ピシリ。

こけおどしをしやがって!そう口々に罵り男達はJに近づいていく。

ピシリ。ピシリ。ピシリ。ピシリ。

「フライング・クラッシュ・メガトン・パンチ」

Jが短くそう告げたその瞬間、地面が崩壊した!

アルビオンの一角が崩壊する。
礼拝堂は、大陸の一部ごと粉々になって、地面へと落ちていく。

そんな中、Jは慌てる様子もなくこういった。

「You're Not My Match!(相手が悪かったな)」

Jの視界には、自分の下を悠々と飛ぶ風竜の姿が捉えられていた。

男達の使い魔 第十話 完






NGシーン

雷電「あ、あの術はまさか!」

虎丸「知っているのか雷電!」

雷電「あれぞまさしく古代中国において最強の暗殺術と恐れられた辺坐威(へんざい)!」

遍在、風のメイジが好んで使用する術であり、その知名度は高い。
しかし、実はその起源が古代中国に由来するものであることを知るものは少ない。
秦の時代、辺坐威という集団があった。
彼らは、己の秘術で持って、五つ子以上を好んで産んでいたという。
こうしてこの世に生を受けた彼らは、時には一人の影武者として、
時には暗殺者のアリバイを立証するために八面六臂の活躍をしたという。
五つ子として生を受けた彼らにとって、兄弟に成り代わるのは難しくなかったのだ。
そんな彼らがハルケギニアに渡った後、風のメイジとして遍在を編み出したであろうことは想像に難くない。
~曙蓬莱武術協会副会長平賀氏と風のメイジマリコルヌ氏の談話より引用



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