「――じゃあ何、シズルは異世界のニホンって国の風華学園という場所で戦って死んだけど、何故か生きて私に召喚されたっていう訳?」
「ええ、多分そうやと……と言うても、うち自身も信じられへんのやけども」
「ええ、多分そうやと……と言うても、うち自身も信じられへんのやけども」
自分の話を聞いて、疑るように聞き返してきたルイズに、静留はそう答えて肩をすくめた。
(まあ、信じろ言うても無理な話やろけど)
召喚の後、ルイズと共に彼女の自室に帰った静留は、彼女に自分が異世界から来たこと、HiMEとそれに纏わる『星詠みの舞』の結果、毒を飲んで自殺したということを説明した。
他に行く当てもない以上、なるべくルイズから信頼されるようにしておいた方が得策だろうと判断したからだ。
他に行く当てもない以上、なるべくルイズから信頼されるようにしておいた方が得策だろうと判断したからだ。
(別に話さなくてもええんやけど……これも何かの縁やろしね。それにうちも誰かになつきのこと話したかったことやし)
「確かに『星詠みの舞』とか高次物質化能力なんて聞いたこともないけど――そうだ、その高次物質化能力って奴を見せてよ。そしたら異世界から来たってのは信じてあげる」
「ええけど、できるかどうかは保障できまへんえ」
「ええけど、できるかどうかは保障できまへんえ」
静留は疑るようなルイズの視線を受けながら精神を集中させると、右手の掌中に一振りの薙刀を具現化させる。
「ちょ、い、今何したの!? さっきまで武器なんか持ってなかったのに!」
「これがさっき説明した高次物質化能力、うちらHiMEの武器――エレメントを作り出す力」
「これがさっき説明した高次物質化能力、うちらHiMEの武器――エレメントを作り出す力」
目を丸くするルイズの目の前で自らのエレメント『殉逢』をくるりと一回転させ、瞬時に消し去る。
(予想通り清姫の気配は感じられへんわ……力の流れは感じるんやけど、安定しとるわけやない。使いどこを考えんとえらい目にあいそうや)
「いいわ、異世界から来たって信じてあげる。でも、凄いわね、武器を自在に取り出せるなんて」
「出来るのはこんぐらいやし、魔法にくらべればたいしたことあらへんよ」
「まあ、魔法は万能だし、気にすることないわ」
「出来るのはこんぐらいやし、魔法にくらべればたいしたことあらへんよ」
「まあ、魔法は万能だし、気にすることないわ」
ルイズは静留にそう言うと、何故か得意そうにうんうんと頷く。
「そういえば聞くの忘れとったけど……使い魔っていうんは具体的に何すればええの? 召使いとは違うみたいやけど」
そばにあったテーブルにもたれると静留は使い魔についてルイズに尋ねる。
「うーん、そうね。まず、その一、使い魔には主人の目となり耳となる能力が与えられるわ。つまり、感覚の共有なんだけど――無理みたいね。私、何も感じないし」
「うちも感じませんえ。でも、お互い何もかんも筒抜けいうんは気持ちのええもんやないし、その方がええかと」
「そういうものかしら……で、その二、主人が望むものを見つけてくること――要は秘薬とかの原料の採取ね。これも異世界の人間じゃ、無理よね」
「そうどすな。ここらの地理もしらんし、そういう知識もあらしまへんから」
「うちも感じませんえ。でも、お互い何もかんも筒抜けいうんは気持ちのええもんやないし、その方がええかと」
「そういうものかしら……で、その二、主人が望むものを見つけてくること――要は秘薬とかの原料の採取ね。これも異世界の人間じゃ、無理よね」
「そうどすな。ここらの地理もしらんし、そういう知識もあらしまへんから」
ルイズは予想していたとはいえ、使い魔の義務三つのうち二つも無理だということに少々気落ちしたものの、異世界から呼びだして期待する方が間違ってるだろうと思い直す。
「とりあえず、この2つはいいとして、一番重要なのはその三、使い魔は主人をその能力で敵から守るってことなんだけど――シズルはさっきの武器で戦えるのよね? 能力的には期待していいのかしら?」
「そやね、『星詠みの舞』ではオーファンいう化け物の相手もしとったし、普通の人間やそこらの獣ぐらいには負けへんよ。魔獣やら幻獣とかが相手やと分からんけど」
「そやね、『星詠みの舞』ではオーファンいう化け物の相手もしとったし、普通の人間やそこらの獣ぐらいには負けへんよ。魔獣やら幻獣とかが相手やと分からんけど」
静留の答えから、三つ目はある程度はこなせそうだと分かってルイズはホッとするが、それを悟られないように冷静さを装って話を続ける。
「まあ、シズルは元の世界じゃ学生だったっていうし、別にそれで構わないわ。あとはそうね、身の回りの世話でもしてもらおうかしら」
「そういうことなら任せておくれやす。うち、こう見えても掃除や洗濯とかの雑用は得意なんよ」
「そういうことなら任せておくれやす。うち、こう見えても掃除や洗濯とかの雑用は得意なんよ」
静留は胸に手を当ててそう言うと、ルイズに向かって柔らかく微笑む。
「え、ええっと、その、な、なんか色々あって疲れちゃったし、もう寝ましょうか。ベッドは1つしかないから一緒でいいわよね。寝巻きは私のは入んないだろうし、今日はその服で我慢してね」
何故か頬を赤らめたルイズは一気にまくし立てると、寝巻きに着替えるために静留に背を向け服を脱ぎ始めた。
「……?」
ふと背後の不穏な気配を感じて振り返る。そこにあったのは悪戯っぽい表情を浮かべて両手をワキワキさせる静留の姿だった。
「えーっと……シズル、その手は何?」
「いや、着替えを手伝った方がええかなと思うて」
「け、結構よ。着替えぐらい自分で出来るわ」
「いや、着替えを手伝った方がええかなと思うて」
「け、結構よ。着替えぐらい自分で出来るわ」
(こんくらいで慌てるなんて、かいらしいとこもあるんやね。まあ、ろくでなしの男にでも呼ばれとったらどないな目にあったか分からへんし、この娘で良かったのかもしれへんわ)
静留はルイズの反応を好ましく感じて目を細める。もっともそれはルーンの影響なのだが、静留に分かるはずもない。
「着替えたし、寝るわよ――ただし、変なことしたら遠慮なくベッドから蹴り出すから、わかったわね!」
「いややわ、さっきのはほんの冗談どすえ。なんもしまへんから安心して眠っておくれやす」
「いまいち信用できないけど……おやすみ、シズル」
「はい、おやすみやす、ルイズ様」
「いややわ、さっきのはほんの冗談どすえ。なんもしまへんから安心して眠っておくれやす」
「いまいち信用できないけど……おやすみ、シズル」
「はい、おやすみやす、ルイズ様」
ルイズはベッドに入って警戒するように静留に背を向けると、疲れていたのかすぐにぐっすりと眠り込んでしまう。
「ふう、ほんまに遠いとこきてしもたんやね……」
静留は窓の外に見える二つの月を見ながら寂しげにポツリと呟くと、ゆっくりと瞳を閉じた。