「サモン・サーヴァント」の呪文が終った瞬間、大地から一条の雷光が昇り、天を貫いた。
雷が現れた場所から竜巻のようなものが生じ、大地を、水を、空気を分解し、巻き上げ、巨大な蛹のようなものに再構成する。
次の瞬間、蛹は強烈な衝撃波を撒き散らしながら爆発した。
雷が現れた場所から竜巻のようなものが生じ、大地を、水を、空気を分解し、巻き上げ、巨大な蛹のようなものに再構成する。
次の瞬間、蛹は強烈な衝撃波を撒き散らしながら爆発した。
「これが……私の使い魔……」
爆発が生み出したクレーターを前にして、ルイズ・フランソワーズ・ル・ブラン・ド・ラ・ヴァリエールは呟く。
蛹が爆発した後には、黒くタールのように煮え滾る大地があり、その大地の真ん中に見慣れぬ服に身を包んだ少女が横たわっていた。
そして、その少女の額には―――
蛹が爆発した後には、黒くタールのように煮え滾る大地があり、その大地の真ん中に見慣れぬ服に身を包んだ少女が横たわっていた。
そして、その少女の額には―――
……十字を逆さまにしたような刻印が刻まれていた。
◆ ◆ ◆
ティファニア・ウエストウッドは自分の愚を恥じていた。
何故、不用意に見知らぬ男達に話し掛けるなどと言う馬鹿な事をしたのか。
姉と慕うあの女が外の人間たちは危険だとあれほど忠告していたのに……。
何故、不用意に見知らぬ男達に話し掛けるなどと言う馬鹿な事をしたのか。
姉と慕うあの女が外の人間たちは危険だとあれほど忠告していたのに……。
だが、いくら悔いてももう遅い。
男達はもうその下卑た息が耳に掛かるほど、近くに迫っている。
涙の雫をこぼし、息を切らしながら、ティファニアは父と慕う男が教えてくれた呪文を口にしていた。
それを唱えれば彼女を守るものが現れるという彼の言葉を信じて……。
男達はもうその下卑た息が耳に掛かるほど、近くに迫っている。
涙の雫をこぼし、息を切らしながら、ティファニアは父と慕う男が教えてくれた呪文を口にしていた。
それを唱えれば彼女を守るものが現れるという彼の言葉を信じて……。
男の一人の指が方に掛かった瞬間、ティファニアの召喚が完成した。
鏡のように輝く次元の扉が開き、その中から凄まじい咆哮が轟く。
見た事も無いような獣にまたがった黒い騎士が扉を突き破るように姿を現した。
鏡のように輝く次元の扉が開き、その中から凄まじい咆哮が轟く。
見た事も無いような獣にまたがった黒い騎士が扉を突き破るように姿を現した。
ティファニアを捕まえていた一人は拳の一撃であっけなく昏倒した。
他の男達は浮き足立ち、騎士が天に向けて銃のような武器を撃つとあっという間に姿をくらました。
下郎たちが立ち去った後、騎士は視線をティファニアの方に向けた。
黒いカブトに隠されていたが、騎士の眼には男達のような欲望も残酷さも感じられなかった。
無意識の内に彼女は帽子を脱ぎ、騎士に問い掛けた。
他の男達は浮き足立ち、騎士が天に向けて銃のような武器を撃つとあっという間に姿をくらました。
下郎たちが立ち去った後、騎士は視線をティファニアの方に向けた。
黒いカブトに隠されていたが、騎士の眼には男達のような欲望も残酷さも感じられなかった。
無意識の内に彼女は帽子を脱ぎ、騎士に問い掛けた。
「わ、私はティファニア、ティファニア・ウエストウッド。あ、貴方のお名前は?」
言葉はわからなかったが、彼女の仕草から名乗りを上げている事を察したのだろう。
騎士は隙間一つ無い黒いかぶとを脱いで、ティファニアの問いに答えた。
騎士は隙間一つ無い黒いかぶとを脱いで、ティファニアの問いに答えた。
『俺は東亜重工の合成人間――――
それが姿を表した瞬間、部屋の中にいる全てのものが悲鳴を上げて逃げ出した。
ただ一人その豪奢な部屋の主、ガリアの王太子ジョセフ一世を残して。
だが、ジョゼフは自分をおいて逃げ去った者たちを気にしてはいなかった。
期待されない事も、見捨てられる事も、もはや慣れたもの。
今、彼にとって興味があるのは、自分が「サモン・サーヴァント」で呼び出した異形だけだった。
おぞましくも、圧倒的な存在を見上げながら、ジョゼフは狂おしい哄笑をあげる。
ただ一人その豪奢な部屋の主、ガリアの王太子ジョセフ一世を残して。
だが、ジョゼフは自分をおいて逃げ去った者たちを気にしてはいなかった。
期待されない事も、見捨てられる事も、もはや慣れたもの。
今、彼にとって興味があるのは、自分が「サモン・サーヴァント」で呼び出した異形だけだった。
おぞましくも、圧倒的な存在を見上げながら、ジョゼフは狂おしい哄笑をあげる。
「素晴らしい! ははは、これは素晴らしい! 良いぞ、化物! 貴様がおれの想いと呪いに相応しい存在だというのならば、名を名乗るが良い!」
それは自分の足元で笑う小さな生き物を見下ろした。
6メイル近い巨体は身を屈め、人間で言う中腰に近い姿勢でいるにも関わらず、頭頂が宮殿の天井を擦っている。
体も手足も驚くほど細長く、全身を覆う黒い甲殻と相まって、見るものにまるで奇妙な虫のような印象を与えた。
漆黒の体の中で唯一白い、人間の頭蓋骨のような顔。
その底なしの深淵のような目を覗き込んだ時、ジョゼフはその奥に青白い鬼火のような名状し難い感情が揺らめくのを見たような気がした。
6メイル近い巨体は身を屈め、人間で言う中腰に近い姿勢でいるにも関わらず、頭頂が宮殿の天井を擦っている。
体も手足も驚くほど細長く、全身を覆う黒い甲殻と相まって、見るものにまるで奇妙な虫のような印象を与えた。
漆黒の体の中で唯一白い、人間の頭蓋骨のような顔。
その底なしの深淵のような目を覗き込んだ時、ジョゼフはその奥に青白い鬼火のような名状し難い感情が揺らめくのを見たような気がした。
刹那―――怪物の体が細い針金のような触手が飛び出しジョゼフの体に突き刺さる。
怪物の言葉は空気の振動ではなく、電子と磁力で出来ていた。
常人の処理量を超えた情報をダイレクトに脳に流し込まれ、ジョゼフは喜悦とも悲鳴ともつかぬ叫び声を上げた。
常人の処理量を超えた情報をダイレクトに脳に流し込まれ、ジョゼフは喜悦とも悲鳴ともつかぬ叫び声を上げた。
◆ ◆ ◆
そして、トリステインのラ・ヴァリエール公爵家では!!
「あ、あの……エレオノールお嬢さま?」
「どうぞ、エレオノールと呼んで下さい、クマさん」
「あ、じゃ俺の事もコズロフと呼んで下さい」
「はい、コズロフさん(にこにこ)」
「ところで……このハチミツのタルトはエレオノールが?」
「はい、私がシェフにお願いして作ってもらいました(にこにこにこにこ)」
「あ、いや、俺は、ハチミツは……」
「まだまだ一杯ありますよ(にこにこにこにこにこにこ)」
「ハイ、アリガタクイタダキマス」
「どうぞ、エレオノールと呼んで下さい、クマさん」
「あ、じゃ俺の事もコズロフと呼んで下さい」
「はい、コズロフさん(にこにこ)」
「ところで……このハチミツのタルトはエレオノールが?」
「はい、私がシェフにお願いして作ってもらいました(にこにこにこにこ)」
「あ、いや、俺は、ハチミツは……」
「まだまだ一杯ありますよ(にこにこにこにこにこにこ)」
「ハイ、アリガタクイタダキマス」
一匹のクマーがエレオノールの使い魔になっていた!!