あの作品のキャラがルイズに召喚されました @ ウィキ

男達の使い魔 第九話

桃たちは、シルフィードに乗ってアルビオンを目指していた。

とうとうアルビオンがその目に捉えられた。

「……っ!」

思わず桃は絶句してしまった。
巨大な、そうまさしく大陸が空に浮いていたのだ。
ところどころから水が流れ落ちるその威容は、まさに白の大陸に相応しかった。

みなその光景を見つめている。
かつて訪れたことのあるキュルケとタバサは懐かしそうに。
桃とJは、心底感嘆したように。

そうして、静かに進んでいたところで、シルフィードが急にがたんと揺れる。
何があったのかと一同シルフィードを見ると、ある一点を凝視していた。

(一体何が?)

そう思って、シルフィードの見つめる方向に視線をやった桃は、不覚にも唖然とした。
Jもキュルケも、そしていつも冷静なタバサでさえも大きく口を開けて、間抜け面をさらしている。

「ひ、人が空を飛んでいるのねぇーー!」

全員の心を代弁するかのようにシルフィードが絶叫した。
しかし、だれもそのことに驚くほどの余裕はない。

視線の先では王大人が、棍をまるでプロペラのように回転させて、悠々と空を飛んでいた。

「おでれーた。人間って魔法によらなくても空を飛べるんだな。」

どこかのどかなデルフリンガーの声が響いた。



一方そのころ、ルイズ達は空賊に捕まっていた。
暴れようとした虎丸は、シエスタの一言で抑えられた。
ルイズ様たちまで危険にさらすつもりですか、と。
ギーシュは、己の使い魔と隔離されて寂しそうだ。
ワルドは積荷を眺めていた。

虎丸が、これからどうする?とでも言いたげな視線を向けてきた。
もちろん、ルイズはその視線の意味を誤解したりはしない。
確かに、現在ルイズたちの手元には杖も武器となるものもない。
海賊達はこれで安心したのだろう。杖さえなければ無力であると。
しかし、それは間違いであることをルイズは知っている。
虎丸は桁外れの怪力で、シエスタはその磨きぬかれた技でもって脱出できるのだ。

(でも)

とルイズは続ける。
それでもこの船の頭までたどり着くのは難しいだろう、と考える。
そこまで考えが及んだルイズは、

「しばらくチャンスをうかがいましょう。」

と言った。
虎丸にシエスタ、ギーシュはそれぞれ了解したようだ。
一方ワルドは軽く目を見張っていた。
この境遇にも関わらず、堂々と振舞うルイズに多少驚いたのだ。


ドアが乱暴に開かれる。痩せた男が部屋に入ってきた。
貴族派なら港まで送ってやるぜ、という男に対して、ルイズは胸を張って言った。

「誰が薄汚いアルビオンの反乱軍なものですか。バカ言っちゃいけないわ。」

そして、トリステインの大使としての扱いを要求する、と続けた。
いつの間にかルイズの横に立っていた。虎丸は、その男臭い顔に笑みを浮かべていた。

「チャンスをうかがうんじゃなかったのかよ?」

「それとこれとは話が別よ!」

そう断言するルイズに、虎丸が声を立てて笑う。
一瞬バカにされたのかと虎丸を見るルイズだが、認識を改める。
虎丸は獰猛な笑みを浮かべていた。そしてその拳は、いつでも戦えるように握りこまれていたのだ。
ルイズの後ろにはシエスタが立っていた。
ギーシュでさえもなんとかして闘おうと、腰を低く構えていた。

その光景にワルドは驚いていた。
言葉を交わすことすらなく一瞬で戦闘体勢を整えたその有様は、とても学生とは思えない。

(面倒なことになりそうだ。)

そう、一人考えていた。

「頭に報告してくる。その間にゆっくり考えるんだな。」

空賊の男は去っていった。

そうして虎丸が声をかける。

「そろそろ暴れても良いか?」

「まだよ!どうせなら頭とやらに合わせてもらおうじゃない!」

ルイズもまた獰猛な笑みを浮かべて答える。
ルイズには自信があった。
ただ王党派かどうか確認して始末するだけなら、わざわざ頭に報告に行く必要などないのだ。
それをわざわざ言いにいったということは、理由はわからないが、自分達に興味があるということだ。
そのルイズの説明に、一同はじっとチャンスを待つことにした。

「頭がお呼びだ。」

チャンスがやってきた。


「大使としての扱いを要求するわ!」

開口一番、ルイズはそう告げた。
その後もルイズと頭の問答は続く。
ふと、ギーシュは思った。

(魔法のろくに使えないはずのルイズがこれ程頑張っているのに、自分はいったい何をやっているんだ!)

しかし、今のギーシュにルイズの話に割り込むほどの考えはない。
そこで、ギーシュはルイズの左隣に黙って立つことにした。
いざというときは、男は女の盾になるものである。
そうギーシュは習ったのだ。父親と、そしてルイズの使い魔たちに。

一方ルイズは不思議な感覚を覚えていた。

(私、ちっとも怖くない。)

これ程の空賊達に囲まれながら、啖呵を切っているルイズ。
かつての自分なら、無理やり怖さを押さえつけて言っただろう。
同じ行動を取るにしても、考えた末の行動でないに違いない。
そこまで考えたルイズは、チラリと左右を見た。

左にはギーシュがいる。
最初はただの女たらしかと思っていたが、今はどうして!いつの間にか頼れる男になっているではないか。

右には虎丸が腕を組んで立っている。
今ならJが虎丸を選んだ理由がわかる。彼は、そこにいるだけで不思議と安心感を与えてくれるのだ。

見えないが、後ろにはシエスタが静かに立っているに違いない。
彼女がいる限り、自分は後ろのことを気にする必要はないのだ。

そして

姫さまが、親友のアンが自分の無事を祈ってくれているのがわかる。

だからこそ、ルイズは震えることもなく冷静に空賊の頭とやりあえているのだ。


その様子を見た空賊の頭は、笑いをこらえることができなかった。
彼らの姿は、あまりにも鮮烈であったのだ。

突如笑い出した空賊の頭に、ルイズを除く一行は怪訝な表情を浮かべていた。
ルイズだけは、会話の端々から推測がついていたのだ。彼らが王党派に関わりがあることに。
しかし、そのルイズも続く頭の台詞に驚きの表情を浮かべる。

「トリステインの貴族は、気ばかり強くって、どうしようもないな。」

突然頭が、その髭やかつら、眼帯などをむしりとり始めたのだ。
そうして、さっぱりとした男はこう名乗った。

「アルビオン王国皇太子、ウェールズ・テューダーだ。
 アルビオン王国へようこそ。大使殿。さて、御用の向きをうかがおうか。」

彼らは、アルビオン王国王党派であった。

一瞬驚いたルイズであったが、即座に気を取り直すと、前に出ようとしたワルドを遮って名乗りをあげた。
今のルイズには、アンリエッタの思いもまた背負っているのだ。
いつまでも呆けているわけにはいかない。

「ルイズ・フランソワーズ・ル・ブラン・ド・ラ・ヴァリエールと申します。殿下。
 失礼ではありますが、何か証拠はございますでしょうか。」

そう言って優雅に一礼をした。
その様子に、短く感嘆のため息を漏らしたウェールズは、この勇敢な使者をねぎらうと、懐から指輪を取り出した。
アルビオン王家の秘宝、風のルビーである。
本物であると確信したルイズは、自分の非礼を謝ると、アンリエッタから授かった手紙を差し出した。

その場で封を切り、その手紙を読み出したウェールズは、途中で一度溜息をついて尋ねた。
アンリエッタは結婚するのか、と。

ルイズとワルドは、無言で頭を下げることでそれに応える。

そうして、文章を読み進めたウェールズは、最後の一文で視線を止めた。
その目線はどこか悲しげであったが、手紙の主の成長を喜んでいるようにも見えた。
読み終えたウェールズは、顔をあげると、一同に告げた。
ニューカッスルまで来て欲しい、と。


幾つもの難所を潜り抜けて、イーグル号はニューカッスルに到着した。
流石にウェールズが自慢するだけのことはある、見事な船員の腕前であった。

ニューカッスルに到着したウェールズ達は、陽気に話し合っている。
しかし、その言葉の端々からは死の香りが漂っていた。

その会話にルイズの顔が少しだけ暗くなる。
ルイズは悟ったのだ。彼らが死ぬつもりであることを。

そこへ、ウェールズと話し込んでいた男がやってきた。
パリーと名乗ったその男は、今から祝宴を開くので参加して欲しい、と話しかけてきた。

パリーと話し終えたルイズ達は、ウェールズの部屋へと向かった。
彼の言によれば、アンリエッタの手紙は、ウェールズの自室にあるという。


「宝箱でね。」

そう言ってボロボロの手紙をウェールズは大切そうに取り出した。
その手紙を受け取ったルイズは、礼を述べると、大切そうに懐にしまった。
アンリエッタとウェールズの想いが詰まった手紙は、ズシリと重かった。

明日の朝一番に出る船で帰りなさい、というウェールズに、ルイズは一つ質問をした。
王軍に勝ち目はないのか、と。

「ないよ。」

ウェールズはあっさりそう告げた。元より三百対五万では相手になるはずがないのだ。
ここまで持ったこと自体、奇跡であったのだ。

昔話が進む。

その話の内容に、思わずルイズは亡命を勧める。
アンリエッタも手紙にそう書いてあるはずだと。
しかし、ウェールズは答えた。
そんな文句など一行たりとも書いていない、と。
そうして、ルイズに手紙を見せる。

確かに、そこには何も書いてはいなかった。
ただ、字がずいぶんと震えていた。なぜか水分でにじんでいた。
そして最後に、自分の使いの者たちをよろしく、と添えてあった。

そのことにルイズは愕然とする。ウェールズが声をかける。

「私の可愛い従妹は、私に死して後心配するようなことなど何もないと教えてくれた。
 だからこそ、私は安心して死ねるのだよ。」

あの時だ。あの時、アンリエッタは書かないことを決めたのだ。
ルイズの頭には、この手紙を受け取った時の情景が浮かんでいた。

そう。ルイズの、自ら危機に赴く親友の言葉に少しでも報いるために、アンリエッタは自分の思いを殺したのだ。
ルイズは自分の手を見つめた。水のルビーが光っている。
そのことにルイズは今の自分の決意を思い出していた。

(私は何でここにいるの?姫さまに依頼されたから?
違うでしょ!私はアンの、親友の頼みだからこそここまでやって来たのよ!)

ならば、言葉にならない思いまで汲み取るのが親友というものだろう。
ルイズはなおも言葉を続けようとする

ウェールズが優しくそれを静止した。

「そうか、思い出した。君がアンリエッタが親友だといっていたルイズだね?
 一つだけ忠告しよう。そのように正直では大使は務まらぬよ。しっかりしなさい。
 ただ……」

そういってウェールズはひどく魅力的な笑みを浮かべると言った。

「アンリエッタのために怒ってくれてありがとう。」

最後にウェールズは彼らをパーティに誘った。
彼らは王国最後の客であるのだ。是非とも歓待せねばならぬ。

全員が退席したのちも、ワルドは残っていた。
ウェールズに一つ頼みごとがあったのだ。
ウェールズはそれを快く聞き届けた。ワルドの目の光に気づかぬままに。


パーティは華やかに行われていた。
ジェームス一世の宣言どおり、みな踊り、食し、笑っている。

次々と料理や酒を勧めてくる貴族たちに対して、虎丸は全て平らげることで応えた。
その様に感嘆して彼らは去っていく。虎丸も貴族たちもみな笑顔であった。
とうとう誰かが歌いだした。大変楽しげな歌である。
虎丸も一緒に歌いだすが、どうも音程が取れないようだ。
周りからは、明るい失笑が漏れる。

対抗するかのように、今度は虎丸が男塾塾歌を歌いだす。
その歌詞に感じ入った何人かの貴族たちが一緒に歌いだした。

……明日の道を魁よ!明日の道を魁よ!


その様子をルイズにギーシュ、シエスタは黙って見つめていた。

「……どうして、どうして彼らはあんなに明るく振舞えるの?」

ルイズが搾り出すように声をあげる。
その言葉にシエスタが柔らかく、諭すように答える。

「本当はお分かりなのでしょう、ルイズ様。彼らには義務があり、責任があります。
 そして、」

シエスタが一呼吸間をおいた。

「全てを投げ打ってでも守らねばならないものがあるのでしょう。」

そう、ルイズにだって本当は分かっているのだ。
少なくとも、アンリエッタの頼みを受けたときには分かるようになったのだ。

今の苦しんでいるアンリエッタのためになるのなら、ルイズは喜んで毒杯でもあおる決意がある。
彼らもまた、それだけの決意をこのアルビオンという国に抱いているのだ。

そう悟ったルイズは、天を見上げた。
二つの月が優しく微笑んでいるように思えた。

「……シエスタ。少し胸を貸して。」

返事も待たずにシエスタの胸にルイズは顔を埋める。
シエスタは、それを優しく抱きとめていた。


そんな二人の様子に、自分は席を判断したほうが良いと考えたギーシュは、虎丸と合流することにした。
その前に、

「今顔を出すのは流石にどうかと思いますよ。ワルド子爵。」

「失礼な。私はメイドに嫉妬するほど狭量ではないよ。それに、私は明日彼女と結婚するのだよ。」

ワルドに声をかけておくことにした。
この男は、釘を刺しておかねば、平気でそういうことをやりかねない男だ。
短い経験からギーシュはそう判断していた。
しかし、ワルドの思わぬ台詞に慌てて振り返るが、既にワルドは立ち去った後だ。

ワルドの台詞の真偽は明日判断すれば良いことだ、そう考えて首を一つ振る。
気を取り直したギーシュは、今度こそ虎丸のほうへと足をすすめた。


虎丸と合流したギーシュは、自分も騒ぐことにして、酒をのみ始めた。
そこにウェールズも加わり、場はますます騒がしくなっていった。

そんな中、ウェールズが

「少し夜風にあたらないかい?」

と誘ってきた。そうしてテラスの方へと足をすすめるウェールズを二人は追いかけた。

テラスでは、ワイングラスを片手にウェールズは下界を見下ろしていた。
虎丸はもとより、その表情にギーシュも何もいえない。

「……君達はなにも言わないんだね。」

ウェールズが話しかける。

「俺は口下手でしてね、殿下。」

虎丸はそうとだけ告げ、黙って空いたグラスに酒を注ぐと、ウェールズとギーシュに勧めた。

「それに、こういう時は騒ぐものと相場が決まっているでしょう。」

慣れない敬語を使い、男らしく深い笑みを浮かべる。
その言葉にウェールズも笑みを浮かべた。

「それでは三人の出会いと、今後の前途を祝して乾杯!」

ウェールズが音頭を取った。

カチン、とグラスを合わせる音が響いた。

男達の使い魔 第九話 完



NGシーン

雷電「あ、あれはまさか!」

虎丸「知っているのか雷電!」

雷電「うむ。あれこそまさしく、古代中国においてその名を知られた亜瑠微温!」

アルビオン。浮遊大陸としてハルケギニア全土にその名は知れ渡っているが、その起源を知るものは少ない。
かつて周の武帝の時代、亜瑠微温なる仙道達の都があったという。
それは、栄耀栄華を極めたというその都の最大の特徴は、空に浮かんでいたことなのだ。
しかし、その都にもついに落日の日がやってきた。ある仙道使った術が暴走したのだ。
詳細は不明であるが、羽流守(ぱるす)というその術によって生み出された光は、
瞬く間に亜瑠微温を死の大陸に変えてしまったという。
僅かに生き残った仙道たちは、己の全ての力を用いて、その光が世界に漏れるのを防ぐことに成功した。
しかし、代償は大きく、全てが終わった時亜瑠微温は雲の彼方に消え去ってしまった。
この亜瑠微温の一部が、シルクロードを渡って当時の欧州へと伝わり羅比輸多(らぴゅた)になり、
大陸のほとんどがハルケギニアへと渡ってアルビオンへと名前を変えた、というのが近年研究者達の間で定説となっている。
~「アルビオンについて語る!」曙蓬莱武術協会副会長平賀才人氏の談話より引用



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