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男達の使い魔 第八話

男達の使い魔 第八話

「うぉーーー!」

虎丸が雄たけびをあげながら馬を走らせる。
一部の塾生を除いて、一号生に乗馬経験者はいなかった。
ほとんどみな、この世界に来てはじめて馬に乗っているのだ。
そのような中で虎丸の上達具合は頭一つ抜けていた。
馬と気を合わすのが上手いのだ。

もともと誰とでもすぐに友人になれる男だったが、ハルケギニアに来てからさらにその才能が増した。
そんな虎丸だからこそ滅び行く国への使者にふさわしい。
少なくともJはそう考えている。
それに、

チラリとJは横を見る。桃は、いかにも仕方ないヤツ、という風をよそおっているが、
その目は温かく笑っていた。どうやら同じ気持ちのようだ。

さて、ルイズ達に追いつかないとな。
桃とJはさらに馬を飛ばすことにした。
虎丸もそれについてくる。
意外にも見事な乗馬術を披露するギーシュもまだまだ余裕だ。
シエスタにいたっては、時々馬の横を併走している。
どうやら大豪院流の鍛錬の一端らしい。

ルイズとワルドは、グリフォンに乗って先に行っているのだ。
少しはとばさないと追いつけなくなりそうだ。

そうして一同は、二日かかる道のりをわずか半日で駆け抜けた。

『金の酒樽亭』
港町ラ・ロシェールにある寂れた酒場だ。
この酒場には有名な看板がある。それには

『人を殴るときはせめて椅子をおつかいください』

と書いてある。
喧嘩が絶えないこの酒場で、せめて武器の使用を抑えさせたいという、店主の愛に満ちた看板だ。
そう、表向きはだ。真実を知るものはほとんどいないが。

キィ

そんな酒場をくぐる男がいた。
長身で痩せ型。それだけならなめられそうな者だが、男は杖を手にしていた。
どうやらメイジのようだ。
さらに白い仮面にマント。異様な風体に思わず酒場の住人達は口を閉ざす。

そんな酒場の空気をいっさい気にすることなく男は歩いていく。
そうして、一人の男の前に立った。

その男もまた異様な男であった。
2メイル以上はある大柄な体格を、窮屈そうに虎の毛皮で飾っていた。
頭の髪の毛は、全て綺麗にそりあげてある。
何よりも、その眼が異常だった。
睨んだだけで気が弱い者なら死んでもおかしくないその目は、まさしく凶眼であった。

そんな男の前に立った仮面の男は、机の上にどさりと金貨の入った袋を投げおいた。
そして言った。貴様達を雇おう、と。

「ほう。貴族様が俺達のことを知って雇おうというのか。」

その言葉に仮面の男は薄く、そしてひどく酷薄に笑ってこういった。

「知っているさ。メイジをも上回るという傭兵集団、巌陀亜留武(がんだあるぶ)三十二天だろ。」

聞き届けた男は、素手の方が武器を持っているよりも凶悪な、三十二天の頂点に立つ男も酷薄な笑みを浮かべた。

その巧みな馬術によって、ルイズたち一行は、無事日が暮れる前に港町ラ・ロシェールにたどり着いた。
スクウェアクラスの地の魔法使いたちが競い合って作ったというその町は、まさしく芸術であった。
その町並みに思わず驚きの表情を浮かべる、桃たちにルイズとギーシュは誇らしげに解説している。
その後ろには、シエスタが密やかにたたずんでいた。
そうして騒いでいるところにワルドが戻ってきた。
無事宿を取ることができたらしい。一行は『女神の杵』亭に向かった。


「は~い!」

そこにはキュルケがいた。タバサも椅子に座って本を読んでいた。
その様子に思わずルイズは足を滑らせる。

なんでこんなところにいるのかと尋ねるルイズに、キュルケは悪びれる様子もなく返す。
朝こそこそと学院を出て行くルイズを見たキュルケは、タバサのシルフィードで追いかけたのだ。
面白そうなことを独り占めするなんてゆるせない、そう考えたキュルケは、
行き先をラ・ロシェールと勘で決め、ルイズの泊まりそうなホテルに先回りしていた。
貴族が泊まりそうなホテルなんて一軒しかなかったから楽だったわ、と帰すキュルケ。
まことに恐ろしきは、女の直感である。

そんなキュルケとルイズは言い争っている。
いつもの光景に、思わず桃たちはほほが緩むのを感じた。

そんな中でシエスタとワルドが睨みあっていた。
どちらがルイズと一緒の部屋になるかを競っている。
ついにワルドが折れたようだ。虎丸と相部屋になることになったようだ。
あの男達と私を一緒の部屋にするおつもりですか、というのが決め台詞だったようだ。
本心ではぜんぜん危険を感じてなどいないはずなのに、平気でそういうことを言うシエスタに、
虎丸はひそかに戦慄を感じていた。

そうして一日目の夜がふけていった。

二日目の朝がやってきた。
みな疲れも取れたようでさっぱりとした表情をしている中、ワルドだけがなぜか疲労していた。

「そんな顔してどうしたんだ?」

同室だった虎丸が不思議そうな顔をして聞く。そこにワルドが恨めしそうな視線を向ける。
どうやら虎丸の鼾と歯軋りで眠れなかったようだ。
同じ経験をしたことのある桃とJは憐憫の視線をワルドに向ける。
どうやら二人は結託して虎丸との相部屋を避けていたようだ。
そんなワルドであるが、口には出さないあたりは、さすがグリフォン隊隊長といったところか。
そうしてワルドは、もう少し休んでいくと言うと、部屋に戻っていった。

そんなワルドを見送ったルイズたちは、町へと繰り出すことした。
なんだかんだで、見知らぬ土地は、旅心を刺激するのだ。

初めて見るハルケギニアの町は、印象的だった。桃たちは、今まで学院から出たことがなかったのだ。
そんな光景に浮かれた虎丸とギーシュは、出店を冷やかしては店主と話し込んでいる。

Jは一人壁に寄りかかって景色を眺めていた。

キュルケとタバサは、かつての決闘場を見学に行っていた。何でも「殺シアム」というらしい。

そんな中、桃とルイズは、通りに面した店で飲み物を飲んでいた。

ふと桃が話を切り出した。一度デルフリンガーをじっくりと見たい、と。
いつも剣を背負っていることから、桃を剣士あろうと考えていたルイズはOKを出した。
その代わりあんたの腕前を見せなさい、という交換条件を出して。

桃がゆっくりとデルフリンガーを引き抜く。

「おでれーた。兄ちゃん相当の腕だな!兄ちゃんほどの腕なら喜んで使われてやるぜ!
 ん?しかしなんか変な感じだなー。使い手のようで使い手でないような……。」

デルフリンガーの台詞にルイズが突っ込む。

「使い手って?」

「忘れた!」

即答するデルフリンガーに、使えないわねぇとつぶやいたルイズは、桃に期待するような視線を向けた。
あたりを見回した桃は、適当な大きさの岩を見つけた。
ついて来い、そうルイズに行った桃は、岩の前に立って静かに大上段にデルフリンガーを構えた。
デルフリンガーは何も言わない。

その姿に思わずルイズは息をのむ。構えたまま微動だにしない桃には一種の威厳があったのだ。


次の瞬間には真っ二つに切り裂かれた岩だけが残っていた。
風のメイジでもここまで簡単には切り裂けないだろうに。ルイズの感想である。

感嘆したルイズは、桃にしばらくデルフリンガーを預けることにした。

デルフリンガーも驚いていた。使い手以外で、これ程の腕前を持っている男はいなかったのだ。

そうして夜になった。

いよいよ明日はアルビオンだ。

酒場では、虎丸とギーシュが騒いでいる。キュルケやタバサも楽しんでいるようだ。
その風景を桃とJが楽しそうに見つめていた。
ルイズは二階でワルドと少し話している。
昔を掘り返そうとするワルドと、アンの親友としてあることを誓ったルイズでは話がかみ合わないようだ。

その時、酒場に男達がなだれ込み襲い掛かってきた。

反射的に、虎丸がどう少なく見積もっても200キロは下らないだろうテーブルをひっくり返して盾にする。
その音がゴングになった。

巨大なテーブルをいとも簡単にひっくり返した男に、傭兵達に戦慄がはしる。
とても人間の力とは思えないのだ。
しかし、自分たちとてプロである。矢を射掛けるのをやめると接近戦を仕掛けるべく突撃を開始した。


虎丸がテーブルを盾にするのとほぼ同時に、全員が合流した。
裏口まで完全に囲まれたことをワルドが知らせる。
そうして言った。血路を切り開く必要がある、と。

その言葉にJが答える。

「俺がやろう。全員合図とともに一斉に飛び出せ!」

「あら。あたしも参加させてもらうわよ。」

キュルケが不敵に笑って付け加えて化粧を始める。
いわく、この炎の舞台で主演女優がすっぴんじゃあしまらないじゃない。
タバサも、いつの間にか手に杖を持っている。どうやら残るつもりのようだ。
その風景にルイズは、思わず目に熱いものを感じた。

作戦は決まった。


傭兵達がテーブルの盾に近づいた瞬間、真っ二つにテーブルが切り裂かれる。
桃の抜刀術である。
その速度に、一瞬ワルドの眼が細まるが、気づいたものはいなかった。

「スパイラル・ハリケーン・パンチ!」

渾身の気合とともにJが拳を繰り出すと、巨大な竜巻が発生した。
タバサがそれに氷の呪文を合わせる。
氷の槍と竜巻で、傭兵達が蹴散らされる中、六人は竜巻の中心を駆け抜けた。
裏口の敵を倒してくる、そう告げたタバサを見送ったキュルケは、ようやく化粧の終わった顔を上げる。

「さて。後はあいつらを片付けるだけね。」


「ぐわはははは!やりおるわ。」

巌陀亜留武三十二天の将、棒陀亜留武(ぼうだあるぶ)百五十二世はそういて笑った。

「貴様らはわしら巌陀亜留武三十二天が直々に相手をしてくれるわ!全員下がれ!」

そうして舞台は決闘の様子をていしてきた。
二対三十二の不平等な決闘を。


Jが前に進みでようとするのをキュルケが止める。

「知らなかったミスタ?ヒーローは最後に登場するものよ。」

そう嫣然と笑って、キュルケが前に進み出る。
その様子に傭兵達が歓声をあげる。キュルケの姿に下卑た想像をしているのだろう。
まったく気にすることなくキュルケが声をあげる。

「さて、紳士の皆様!おあついのはお・好・き?」

一人目は足を燃やされた。二人目は足は庇ったが顔を燃やされた。
三人目は体を燃やされた。全身を盾に身を包んだ四人目はその自慢の盾ごと燃やされた。

ことここにいたって、相手がただのメイジではないことを悟った巌陀亜留武三十二天達の顔色が変わる。
いかに巌陀亜留武三十二天の中ではヒヨッコ同然の者達とはいえ、四人も倒されたのだ。
しかし、と棒陀亜留武は思う。これでメイジの手の内は見た!と。
そうして煙草を吸う振りをして、男達に目配せをする。一人の男が矢を放った。
完全に決闘と思い込んでいたキュルケにそれを避ける余裕はない。

ズドン!
矢が刺さる音がした。

その音に思わずキュルケは振り返る。Jの胸に矢が刺さっていた。
卑劣な相手への怒りがキュルケの胸を焼く。
そうして全員を燃やし尽くそうとしたキュルケをJが止めた。
胸筋は人間の体の中でもっとも瞬発力がある。ゆえに大丈夫だ。
そしてあいつらは俺がやる、と。その目に、主演女優は主演男優に場を譲ることにした。

メイジをやり損ねた棒陀亜留武は、不機嫌そうに鼻を鳴らす。
しかし、この人数ならば、いかに凄腕の炎のメイジとて造作もないだろう。
そう思い直した棒陀亜留武は、手下達に指示を出した。
連携戦闘に長けた五人が襲い掛かった。

Jの顔は怒りに燃えていた。
しかし、それを声に出すことはしない。ただ、行動で示すことにした。


襲い掛かろうとした五人が急に立ち止まる。
その光景に不審を感じた周りが囃し立てる。

(今のがわからないなんて、長生きできそうにない男達ね。)

そうキュルケは心の中で呟いたとき、五人の鎧が砕け散り、地面に倒れふした。
周りが雑然となる中、残りの三十二天は戦慄を覚えていた。
Jのマッハパンチが炸裂したのだ。

「面倒だ。全員まとめてかかって来い!」

その台詞に、棒陀亜留武を除く三十二天全員が構え、副将各らしき男が応える。

「まさか、本当にわしら全員でかからねばならんとはな!
 数多くのメイジ達をも瞬殺してきた巌陀亜留武三十二天集団奥義を見るがいい!」

「「「奥義!巌陀亜留武三十二天凶天動地!!」」」

そういって上から下から前後左右から男達が襲い掛かる。
天地を押さえ、四方を押さえた男達の攻撃に死角はない!
たとえメイジといえども、これだけの同時攻撃を避けられる道理はないのだ!

しかし、無理を押し通せば道理が引っ込む。
Jは己の拳を構えると、絶対の自信を持つ必殺ブローを放った。

「フラッシュ・ピストン・マッハ・パンチ!」

音速という名にふさわしい拳の連打が終わったとき、そこに立っているものはなかった。

「次はお前の番だ。」

棒陀亜留武の顔が凍りついた。

そういって棒陀亜留武へと歩き出したJの体がぐらりと揺れる。
その様子に、ようやく棒陀亜留武の顔に色が戻る。

「ふはははは!先ほど貴様が受けた矢には毒が盛ってあったのだ。
 しかし、竜であろうとも10秒で倒れるほどの毒を受けてここまでもつとはな。 正直驚いたぞ!」

そう言って、棒陀亜留武がゆっくりとJに歩み寄ると蹴りを加えた。
その様子にキュルケと、いつの間にか戻ってきたタバサは唇をかみ締める。
しかし、手は出さない。Jの眼が言っているのだ。まだ自分は終わっていないと。

動かない体に次々と攻撃が加えられる。Jはなんとか動く口を動かした。

「この下種野郎が!」

「うわはははは!この世は勝てばよいのだ!
 お前が死んだ後も、あのお嬢ちゃん達は俺達で面倒を見てやるから安心して死ぬがいい!!」

そう言って、下卑た表情を浮かべる男にJの血が煮え滾る。

なおも男は攻撃を加え続ける。
骨が折れた!それがどうした。
体が動かない!それがどうした。
Jは問答を続ける。怒りが彼の体から命が消えるのをゆるさない。
彼の両眼からは、怒りのあまり血の涙が滴っている。
そして……

「充填完了だ!」

そう言ってJは男を跳ね除けた。

「まだそれほどの力があるとは見上げたヤツよのう。
 最後に言い残すことがあれば聞いておこうか。」

「フィスト・オブ・フュアリー。これが貴様を地獄に送る拳の名だ。」

そう返すJに男は不快感を感じた。
そうして止めを刺すべく男は奥義を繰り出した。

「食らえ!巌陀亜留武三十二天秘奥義!」

しかし、それよりも早く

「マッハ・パンチ!」

Jの拳が男に突き刺さっていた。
男は大きく弧を描いて空を飛んでいた。

Jはゆっくりと崩れ落ちた。全てが限界だったのだ。
そこにキュルケとタバサが駆け寄ってくる。
それを視界におさめつつ、Jの意識は暗転した。


そのころ桃は苦戦を強いられていた。
無事敵陣を突破した桃達に、白い仮面の男が襲い掛かってきたのだ。
それを食い止めるべく、桃が躍り出たのだ。

白い仮面の男は恐るべき使い手であった。
桃は思う。このデルフリンガーがなければ、自分は初手で敗れていただろうと。
じりじりと時間がたつ。

初撃のライトニングクラウドをデルフリンガーで吸収することに成功した桃であるが、
以降はこうして対峙したまま膠着していたのだ。

下手に踏み込めば、あの閃光の餌食になってしまうだろう。
しかし、

(相手が間合いを取ろうとしたところを逆にしとめる!)

桃には勝算があったのだ。

そうして時間が経過する。
ふとキュルケの声が聞こえた。向こうを片付けたようだ。
その声に仮面の男の気配がゆれる。

好機!

そう判断した桃は、ついに男を一刀両断した。


二つに分かれた男が風となって消えいく光景に、桃は戦慄を覚えた。
あの男は実体ではなかったのだ。

まさか!桃の脳裏に根拠のない考えが浮かぶ。
キュルケ達が追いついた後も、桃はじっと空の方を見上げていた。

それはアルビオンの方であった。

男達の使い魔 第八話 完




NGシーン

雷電「あ、あやつらはまさか!」

虎丸「知っているのか雷電!」

雷電「うむ。あいつらこそまさしく、古代中国において恐れられた暗殺拳の使い手である巌陀亜留武三十二天!」


巌陀亜留武三十二天、ハルケギニアにおいて有名な傭兵集団であるが、その出自を知るものは少ない。
もともと彼らは、古代中国で迫害されていた暗殺拳の使い手であったのだ。
そのあまりの腕前に恐れを抱いた煬帝が、王虎寺に命じて征伐させたのはあまりにも有名な話である。
しかし、実は彼らは滅んではいなかったのだ。
間一髪表れた不思議な光に吸い込まれた三十二人は、不思議な人物に命を救われた。
彼こそ、後の始祖ブリミルの使い魔、ガンダールヴである。
命を救われた三十二人は、ガンダールヴにその命の借りを返そうと、数多くの戦いを共に闘ったという。
しかし、運命は無情にも、彼らよりもガンダールヴを先に死なせてしまった。
死因はわからない。ただ、そういう事実だけは伝わっている。
恩人に先を越された彼ら達は、それでも借りを返すべく闘い続けた。
そんな彼らを、民衆たちは敬意を込めて巌陀亜留武三十二天と読んだという。
なお、最近巷をにぎわしている傭兵集団にそう名乗る者達がいるが、
その因果関係はまったくもって不明である。
民明書房刊 「港町羅炉死獲流(ら・ろしえる)」(平賀才人著)



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